OD コスト マトリックス解析レイヤー

OD コスト マトリックス解析レイヤーは、複数の起点から複数の終点まで、ネットワークに沿って最小コスト パスを検出し、計測します。OD コスト マトリックス解析の設定では、検出する終点の数と最大距離を指定することができます。

OD コスト マトリックス解析で、ネットワークに沿ったラインが出力されない場合でも、ライン属性テーブルに格納されている値は、直線距離ではなくネットワーク距離を反映しています。OD コスト マトリックス解析の結果は、多くの場合、他の空間解析の入力になります。このときは、直線コストよりもネットワーク コストの方が適切です。たとえば、人工環境における人々の動きの予測は、ネットワーク コストを使用したほうが適切にモデリングできます。人々が道路や歩行路を移動する傾向があるためです。

ヒント:

直線距離を検出する方が望ましい場合は、[近接情報テーブルの生成 (Generate Near Table)] ジオプロセシング ツールの使用を検討してください。

ヒント:

最寄り施設の検出と OD コスト マトリックス解析では、ほぼ同様の解析が行われます。主な違いは、出力と計算速度です。OD コスト マトリックスは高速に結果を生成しますが、ルートの正確な形状やルート案内を返すことができません。大規模な M x N 問題をすばやく解決するように設計されているため、ルートの形状やルート案内を生成するために必要な情報を内部に保持しません。一方、最寄り施設の解析はルートとルート案内を返しますが、OD コスト マトリックス解析よりも低速です。ルート案内やルートの正確な形状が必要な場合は最寄り施設の解析を使用し、それ以外の場合は OD コスト マトリックス解析を使用して計算時間を短縮します。

OD コスト マトリックスをカスタマイズするには、OD コスト マトリックス解析レイヤーのプロパティを設定し、解析レイヤーを構成するフィーチャクラスのフィールド値を設定します。

このトピックでは、OD コスト マトリックス解析レイヤーとその解析プロパティおよびフィーチャクラスについて説明します。

起点フィーチャクラス

このフィーチャクラスには、終点までのパスの生成で開始点として機能するネットワーク ロケーションが格納されます。

OD コスト マトリックス解析レイヤーを作成したときの起点クラスは空です。これは、ネットワーク ロケーションの追加時に挿入されます。解析を実行するには、少なくとも 1 つの起点と 1 つの終点が必要です。次の表に、起点フィーチャクラスの入力フィールドと入力/出力フィールドを示します。

起点: 入力フィールド

入力フィールド説明

ObjectID

システムで管理される ID フィールド。

Shape

ネットワーク解析オブジェクトの地理的な位置を示すジオメトリ フィールド。

Name

ネットワーク解析オブジェクトの名前。

TargetDestinationCount

このプロパティには、起点に対して検索する必要のある終点の数が格納されます。このプロパティの値が NULL の場合は、この解析レイヤーの [OD コスト マトリックス] タブに指定された、検索する終点の数が解析で使用されます。

Cutoff_[Cost]

(たとえば、DriveTime 属性が移動コストの場合は「Cutoff_DriveTime」となります)

このプロパティを使用すると、OD コスト マトリックスでどのくらい遠くまで終点を検索するかを制限できます。カットオフ値を超える終点は、この起点の対象になりません。

起点に Cutoff_[Cost] が設定されていない場合は、この解析レイヤーの [OD コスト マトリックス] タブで指定されたデフォルトのカットオフ値が解析に使用されます。このタブでデフォルトのカットオフ値も設定されていない場合は、すべての終点が解析に使用されます。

ネットワーク ロケーション フィールド

  • SourceID
  • SourceOID
  • PosAlong
  • SideOfEdge
  • SnapX
  • SnapY
  • SnapZ
  • DistanceToNetworkInMeters

これらのプロパティを組み合わせて、オブジェクトが配置されているネットワーク上のポイントを表します。

ネットワーク上での入力の特定の詳細

CurbApproach

CurbApproach フィールドには、車両がネットワーク ロケーションに到着する方向およびネットワーク ロケーションから出発する方向を指定します。2 つの地点の間の最短パスは、到着または出発するときに許可されている移動の方向によって異なります。このプロパティには 4 つの値を設定できます (それぞれのコード値は括弧内に示されています)。

  • Either side of vehicle (0) - その地点において、車両はどちらの方向でも到着および出発できます。U ターンは許可されます。車両がその場所で U ターンできる場合または車道や駐車場で方向転換できる場合は、この設定を選択します。
  • Right side of vehicle (1) - 車両がその地点に到着するとき、およびその地点から出発するとき、縁石は車両の右側にある必要があります。U ターンは許可されません。
  • Left side of vehicle (2) - 車両がその地点に到着するとき、およびその地点から出発するとき、縁石は車両の左側にある必要があります。U ターンは許可されません。
  • No U-Turn (3) - 車両がその地点に到着するときはどちらの側でも到着できますが、方向転換せずに出発する必要があります。
U ターンとアプローチ制限の詳細

OD コスト マトリックス解析では、[U ターンなし](3) の値は [車両の両側] (0) と同様に機能します。

起点: 入力/出力フィールド

入力/出力フィールド説明

Status

このフィールドは、その地点のステータスを示します。ステータスは解析実行後に変化することがあります。このフィールドの値は、次に示す値のドメインによって制約されます (それぞれのコード値は括弧内に示されています)。

  • OK (0) - 地点が有効です。
  • Not located (1) - 地点がネットワーク上で正常に特定されませんでした。
  • Network element not located (2) - その地点のネットワーク ロケーション フィールドによって特定されるネットワーク エレメントが見つかりません。これは、その地点があるはずのネットワーク エレメントが削除され、ネットワーク ロケーションが再計算されなかった場合に発生する可能性があります。

解析の実行が終了したら、ステータスを次のいずれかのステータス値に変更できます。

  • OK (0) - ネットワーク ロケーションは正常に評価されました。
  • Element not traversable (3) - 地点があるネットワーク エレメントは通過不能です。この状態は、規制属性によってネットワーク エレメントが規制されている場合に発生する可能性があります。
  • Invalid field values (4) - 1 つまたは複数の地点のフィールド値が、解析レイヤーのコード値ドメインまたは範囲ドメインから外れています。たとえば、正の数値が必要な場合に負の数値が存在しています。
  • Not reached (5) - 解析によってその地点に到着できません。他の入力から切り離された別個のネットワーク領域にその地点が存在するか、バリアまたは制限によってその地点との往来が禁止されています。
  • Time window violation (6) - 指定されたタイム ウィンドウ内にその地点に到着できませんでした。このステータスは、タイム ウィンドウをサポートする解析タイプにのみ適用されます。
  • Not located on closest (7) - 規制またはバリアがあるため、その地点に最も近いネットワーク ロケーションを通過できません。これにより、代わりに最も近い通過可能なネットワーク フィーチャ上にその地点が配置されています。

終点フィーチャクラス

このネットワーク解析クラスには、起点からのパスの生成で終了点として機能するネットワーク ロケーションが格納されます。

新しい OD コスト マトリックス解析レイヤーを作成したときの終点クラスは空です。これは、ネットワーク ロケーションの追加時に挿入されます。解析を実行するには、少なくとも 1 つの起点と 1 つの終点が必要です。次の表に、終点フィーチャクラスの入力フィールドと入力/出力フィールドを示します。

終点: 入力フィールド

入力フィールド説明

ObjectID

システムで管理される ID フィールド。

Shape

ネットワーク解析オブジェクトの地理的な位置を示すジオメトリ フィールド。

Name

ネットワーク解析オブジェクトの名前。

ネットワーク ロケーション フィールド

  • SourceID
  • SourceOID
  • PosAlong
  • SideOfEdge
  • SnapX
  • SnapY
  • SnapZ
  • DistanceToNetworkInMeters

これらのプロパティを組み合わせて、オブジェクトが配置されているネットワーク上のポイントを表します。

ネットワーク上での入力の特定の詳細

CurbApproach

CurbApproach フィールドには、車両がネットワーク ロケーションに到着する方向およびネットワーク ロケーションから出発する方向を指定します。2 つの地点の間の最短パスは、到着または出発するときに許可されている移動の方向によって異なります。このプロパティには 4 つの値を設定できます (それぞれのコード値は括弧内に示されています)。

  • Either side of vehicle (0) - その地点において、車両はどちらの方向でも到着および出発できます。U ターンは許可されます。車両がその場所で U ターンできる場合または車道や駐車場で方向転換できる場合は、この設定を選択します。
  • Right side of vehicle (1) - 車両がその地点に到着するとき、およびその地点から出発するとき、縁石は車両の右側にある必要があります。U ターンは許可されません。
  • Left side of vehicle (2) - 車両がその地点に到着するとき、およびその地点から出発するとき、縁石は車両の左側にある必要があります。U ターンは許可されません。
  • No U-Turn (3) - 車両がその地点に到着するときはどちらの側でも到着できますが、方向転換せずに出発する必要があります。
U ターンとアプローチ制限の詳細

OD コスト マトリックス解析では、[U ターンなし](3) の値は [車両の両側] (0) と同様に機能します。

終点: 入力/出力フィールド

入力/出力フィールド説明

Status

このフィールドは、その地点のステータスを示します。ステータスは解析実行後に変化することがあります。このフィールドの値は、次に示す値のドメインによって制約されます (それぞれのコード値は括弧内に示されています)。

  • OK (0) - 地点が有効です。
  • Not located (1) - 地点がネットワーク上で正常に特定されませんでした。
  • Network element not located (2) - その地点のネットワーク ロケーション フィールドによって特定されるネットワーク エレメントが見つかりません。これは、その地点があるはずのネットワーク エレメントが削除され、ネットワーク ロケーションが再計算されなかった場合に発生する可能性があります。

解析の実行が終了したら、ステータスを次のいずれかのステータス値に変更できます。

  • OK (0) - ネットワーク ロケーションは正常に評価されました。
  • Element not traversable (3) - 地点があるネットワーク エレメントは通過不能です。この状態は、規制属性によってネットワーク エレメントが規制されている場合に発生する可能性があります。
  • Invalid field values (4) - 1 つまたは複数の地点のフィールド値が、解析レイヤーのコード値ドメインまたは範囲ドメインから外れています。たとえば、正の数値が必要な場合に負の数値が存在しています。
  • Not reached (5) - 解析によってその地点に到着できません。他の入力から切り離された別個のネットワーク領域にその地点が存在するか、バリアまたは制限によってその地点との往来が禁止されています。
  • Time window violation (6) - 指定されたタイム ウィンドウ内にその地点に到着できませんでした。このステータスは、タイム ウィンドウをサポートする解析タイプにのみ適用されます。
  • Not located on closest (7) - 規制またはバリアがあるため、その地点に最も近いネットワーク ロケーションを通過できません。これにより、代わりに最も近い通過可能なネットワーク フィーチャ上にその地点が配置されています。

指定したカットオフか、検出する終点の指定数により、ソリューションに終点が含まれない場合、ステータスは [到着しませんでした] (5) に更新されません。

ライン フィーチャクラス

ライン フィーチャクラスには、解析の結果として得られた起点から終点までのパスに関する情報が格納されます。ライン クラスは、出力のみのクラスであり、解析が完了するまで空です。

OD コスト マトリックス解析レイヤーでラインを表示するように選択すると、直線で表示されます。しかし、ラインのコスト属性では常に最小コストのネットワーク パスが報告されます。次の表に、ライン フィーチャクラスの出力フィールドを示します。

ライン: 出力フィールド

出力フィールド説明

ObjectID

システムで管理される ID フィールド。

Shape

ネットワーク解析オブジェクトの地理的な位置を示すジオメトリ フィールド。

Name

ネットワーク解析オブジェクトの名前。

OriginID

ラインに関連付けられた起点の一意な ID。

DestinationID

ラインに関連付けられた終点の一意な ID。

DestinationRank

関連付けられた起点に対して検索されたすべての終点における終点のランク。起点に最も近い終点のランクは 1 です。

Total_[Cost]

(たとえば、Minutes 属性が移動コストの場合は「Total_Minutes」となります)

関連付けられた起点と終点との間をネットワークに沿って移動するときの累積コスト。このフィールドは、インピーダンス属性および累積属性に対して設定されます。

OD コスト マトリックス解析レイヤーのプロパティ

解析レイヤーで設定できるパラメーターを以下に示します。これらは [OD コスト マトリックス] タブにあり、[コンテンツ] ウィンドウで OD コスト マトリックス レイヤーまたはそのサブレイヤーのいずれか 1 つが選択されている場合のみ使用できます。

[OD コスト マトリックス] タブ

実行

入力フィーチャを読み込み、解析プロパティを設定したら、[実行] 実行 をクリックして、OD コスト マトリックス解析を実行します。

起点のインポート

[起点のインポート] 起点のインポート[入力データ] グループ内にあります。クリックすると、ポイント フィーチャ レイヤーなどの別のデータ ソースから起点フィーチャクラスにフィーチャを読み込みます。

終点のインポート

[終点のインポート] 終点のインポート[入力データ] グループ内にあります。クリックすると、ポイント フィーチャ レイヤーなどの別のデータ ソースから終点フィーチャクラスにフィーチャを読み込みます。

バリアのインポート

[ポイント バリアのインポート] ポイント バリアのインポート[ライン バリアのインポート] ライン バリアのインポート、または [ポリゴン バリアのインポート] バリアのインポート をクリックすると、別のフィーチャ レイヤーなどの別のデータ ソースから、バリア フィーチャクラス (ポイント バリア、ライン バリア、またはポリゴン バリア) の 1 つにフィーチャを読み込みます。

フィーチャ作成

[フィーチャ作成] ボタン フィーチャ作成 をクリックして [フィーチャ作成] ウィンドウを開きます。利用可能なテンプレートを選択して現在のマップにフィーチャを作成します。

モード

[モード] ドロップダウン リストを使用すると、移動モードを選択できます。移動モードは、歩行者、車、トラック、その他の移動モードの移動をまとめてモデリングする設定のグループです。このドロップダウン リストで選択できる項目は、ネットワーク解析レイヤーが参照しているネットワーク データ ソースに対して構成されている移動モードによって異なります。

カットオフ

OD コスト マトリックス解析では、起点から終点への最小コスト パスを計算するとき、終点がこのインピーダンス カットオフを超える場所にあると、それらの終点の検索を中止します。この制限を超える終点は、当該起点についての検索対象になりません。カットオフ値に使用すべき単位は、[モード] ドロップダウン リストの隣に表示されます。

メモ:

[カットオフ] は、Cutoff_[Impedance] フィールドに数値が格納されていない起点にデフォルト値を割り当てます。

終点

各起点からすべての終点までのコスト マトリックスを生成するように選択できます。あるいは、[終点] に値を入力して、1 つの起点あたりに検出する終点の数を制限することもできます。

メモ:

[終点] の値は、起点サブレイヤーの TargetDestinationCount プロパティに個々の値を指定して、起点ごとにオーバーライドすることができます。

日時

[到着/出発の日時タイプ] ドロップダウン リストは、[日時] グループにあり、コストの単位が時間ベースの場合に使用できます。このドロップダウン リストでは、ルートが最初のストップを出発する時間を表す特定の日付と時刻の値を指定するかどうかを選択できます。特定の日付と時刻を設定する主な目的は、変動する交通状況または公共交通機関のスケジュールを利用して解析を実行することです。ただし、解析で交通量または公共交通機関を使用する場合は、ネットワーク データセットまたはルート サービスに交通量データまたは公共交通機関を含める必要があります。

ドロップダウン リストでは次のオプションが選択できます。

  • [時間を使用していません] - ネットワーク データ ソースに時間ベースのデータが含まれているかどうかに関係なく、結果は静的な移動時間に基づきます。ネットワーク エッジ上の移動時間は、1 日を通して変動しません。[時刻][日付] テキスト ボックスは使用できません。

  • [日時] - 開始時間を時刻とカレンダー日付で指定します。この情報を入力できるように、[時刻][日付] テキスト ボックスが使用可能になります。

  • [曜日] - 時刻と曜日を指定します。この情報を入力できるように、[時刻][日付] テキスト ボックスが使用可能になります。曜日を設定するには、次のいずれかの値を [日付] テキスト ボックスに入力します:

    • 月曜日
    • 火曜日
    • 水曜日
    • 木曜日
    • 金曜日
    • 土曜日
    • 日曜日

  • [今日] - 時刻を指定します。日付は現在の日付になります。時刻を入力できるように、[時刻] テキスト ボックスが使用可能になります。[日付] テキスト ボックスは [今日] に設定され、変更できないように無効になります。

  • [現在の日時] - 解析を実行する際に、日付と時刻が現在の日付と時刻に設定されます。これは、ネットワーク データセットにライブ交通量データが構成されており、解析を実行した直後に取り込まれるルートがドライバーに配信される場合に便利です。[時刻][日付] テキスト ボックスは変更できないように無効になります。

[基準タイム ゾーン]ドロップダウン リストでは、解析で使用するタイム ゾーンを選択できます。次のようなオプションがあります。

  • ロケーションのローカル タイム
  • UTC (世界協定時)

出力ジオメトリの線形形状タイプ

このコントロールを使用すると、出力をマップに表示する方法を選択できます。OD コスト マトリックス解析では、常に、ネットワークに沿って最小コストパスが解析されますが、これらのネットワーク パスはマップに表示できません。マトリックスをマップ内で視覚化する場合は、起点と終点間のパスを直線として表現できます。また、出力のライン クラス テーブルのコストのみに関心がある場合は、ラインを一切表示しないようにすることができます。

コスト属性の累積

[移動モード] グループの [コスト属性の累積] ドロップダウン メニューを使用して、累積するコスト属性を構成できます。ネットワーク データ ソースがサービスの場合、出力ジオメトリ タイプにラインが含まれない場合、またはコスト属性が存在しない場合、このドロップダウン メニューは使用できません。属性は、グループ ヘッダーとして示される単位ドメインごとにグループ化されます ([時間][距離] など)。チェックボックスがオンの場合、解析時に解析レイヤーがこのオンになっている属性を累積します。

[コスト属性の累積] ドロップダウン メニュー

同じレイヤー タイプの複数の解析レイヤーが選択されている場合、すべてのレイヤーが 1 つの属性に対して同一のオンになったステータスを共有しているのでなければ、チェックボックスは混合状態を示します。次の画像では、[WeekendFallbackTravelTime] 属性が複数のレイヤーに対して選択されているため、ここにはチェック マークがあります。

混合状態を示すチェック マーク

選択したレイヤーが 1 つの属性に対してオンになったステータスを共有している場合、チェックボックスはその状態を示します。

チェックボックスは属性に対してオンになっています。