公共交通機関エバリュエーターは、スケジュールされた公共交通サービスに基づいて、公共交通機関のライン セグメントに沿って移動時間を計算します。返される移動時間には、スケジュールされた次の移動が開始するまでの待ち時間と、公共交通ライン セグメントの端から端への移動時間が含まれます。このエバリュエーターを使用して、公共交通機関による人の移動をモデル化します。これは、道路上を走行するバスの移動時間をモデル化するために設計されたものではありません。
公共交通機関エバリュエーターは、ネットワーク データセットのフィーチャ データセットとジオデータベースに、Network Analyst 公共交通機関データ モデルで必要とされるすべてのフィーチャクラスとテーブルが含まれている場合に、エッジ ソース上の時間ベースのコスト属性 (LineVariantElements) に対してのみ使用できます。
概要
Network Analyst の解析では、ネットワーク データセットのエッジを通したグラフ検索が実行されます。解析で、公共交通機関エバリュエーターを使用するように構成されたエッジが出現すると、公共交通機関エバリュエーターがそのエッジを通過する移動時間を求めるための計算を実行します。このエバリュエーターは、エッジの到着時刻を考慮に入れ、公共交通機関データ モデル テーブルに保存されている公共交通機関のスケジュールを検索することで移動時間を計算し、可能な限り効率的な移動ルートを見つけます。エバリュエーターから返される移動時間コストは、ラインに沿った公共交通サービスが出発するまでの待ち時間と、公共交通サービスがエッジの端からもう一方の端へと移動する時間の合計です。
たとえば、旅行者がエッジに午前 8 時 6 分に到着するとします。スケジュールされたバス サービスは午前 8 時 10 分に出発し、次の停留所までの移動にかかる時間は 5 分です。この場合、エバリュエーターは移動時間として 9 分を返します。旅行者はバス サービスが始動するまで 4 分待つ必要があり、その後 5 分間バスに乗って次の停留所に到着するからです。
エバリュエーターは常に最も効率的なサービスを選択します。それは、属性パラメーターまたは解析日付によるサービス制限の下で、最も早く終着の停留所に到達できるサービスのことです。時刻を到着時刻として扱うネットワーク解析の計算では、エバリュエーターは出発の停留所を最後に出発するサービスを選択します。
公共交通ラインを (デジタイズの方向に対して) 逆方向に通過することは禁止されています。エバリュエーターは、この方向の移動が制限されていることを示す値を返します。
現時点では、旅行者が使用する移動の数を制限することはできません。
日時の解析
公共交通機関のスケジュールを検索する場合、公共交通機関エバリュエーターはその公共交通ラインが到着する平日または日時を考慮します。この平日または日付に運行される公共交通サービスのみが考慮されます。解析の日付と時刻が指定されていない場合、公共交通機関エバリュエーターを使用するネットワーク エッジは制限されたものとして扱われます。
解析日付が水曜日のような一般的な平日である場合、Calendars 公共交通機関データ モデル テーブルで定義されているように、水曜日に運行されるすべての定期便が考慮されます。一般的な水曜日を使用する場合、CalendarExceptions テーブルを使用して特定の日付に追加または削除されたサービスは無視され、Calendars テーブルで指定された日付範囲も無視されます。
解析日付が特定の日付の場合、その特定の日付に運行されるすべての公共交通サービスが考慮されます。ここには、(解析日付が Calendars テーブルで指定された範囲内にある場合は) そのテーブルで定義された定期便と、CalendarExceptions テーブルで定義された定期便の例外が含まれます。
場合によっては、特定のラインに沿った公共交通サービスが深夜に出発し、真夜中を過ぎて、翌日の早朝まで走り続けることもあります。解析時刻が早朝の場合は、前日から運行を続けるこのタイプのサービスが考慮されます。解析時刻が深夜の場合は、真夜中まで続くサービスが考慮され、翌朝の早い時間に出発するサービスも使用されます。
サポートされているパラメーター
公共交通機関エバリュエーターを使用するコスト属性に対しては、オプションで、エバリュエーターの動作を詳細に制御する 1 つ以上の属性パラメーターを定義できます。たとえば、属性パラメーターを使用して、車椅子で利用できない公共交通サービスを除外することができます。サポートされているパラメーターを次の表に示します。パラメーターは、この表にリストされた正確な名前とタイプを持つ必要があります。
サポートされている属性パラメーター
名前 | 説明 | 種類 |
---|---|---|
Exclude lines | このパラメーターは特定の公共交通ラインまたはルートを解析から除外します。たとえば、このパラメーターを使用して、一時的な地下鉄路線の閉鎖やバス路線の廃止をモデル化できます。 このパラメーターは、Lines テーブルの ID フィールドの値をスペースで区切った文字列としてフォーマットする必要があります。たとえば、バス路線 2 と 6 を除外する場合、パラメーターは「2 6」と設定します。 | String |
Exclude modes | このパラメーターは特定モードの公共交通機関を解析から除外します。たとえば、一時的にすべての地下鉄路線上の移動を阻止することで、地下鉄システム全体の閉鎖や労働者のストライキをモデル化できます。ただし、バス路線はすべて運行状態にします。 このパラメーターは、Lines テーブルの GRouteType フィールドの値をスペースで区切った文字列としてフォーマットする必要があります。たとえば、地下鉄 (メトロ) の路線を除外する場合、パラメーターは「1」と設定します。地下鉄とバスの両方の路線を除外するには、スペース区切りの文字列「1 3」を使用します。 サポートされているモードは、Network Analyst 公共交通機関データ モデルに示されています。 | String |
Exclude runs | このパラメーターは特定の公共交通の運行を解析から除外します。たとえば、このパラメーターを使用して、特定の時刻以降のサービスの廃止や、ある路線の一部の運行を廃止してその他の運行は維持することなどをモデル化できます。 このパラメーターは、Runs テーブルの ID フィールドの値をスペースで区切った文字列としてフォーマットする必要があります。たとえば、12 の運行のみを除外する場合、パラメーターは「12」と設定します。たとえば、12 と 16 の運行を除外する場合、パラメーターは「12 16」と設定します。 | String |
Traveling with a bicycle | True に設定した場合、このパラメーターは旅行者が自転車で移動していることを示します。自転車が許可されていない公共交通サービス (Runs テーブルの GBikesAllowed フィールドで定義) は、除外されます。 メモ:このパラメーターは、ネットワーク データセット内の公共交通機関ラインのみに適用されます。道路を自転車で走行する旅行者をモデル化するには、道路上の自転車の移動時間を適切に計算するために、インピーダンス属性の道路エッジに対してエバリュエーターを別途構成します。 Runs テーブルに GBikesAllowed フィールドが含まれていない場合、このパラメーターは無視され、すべての運行で自転車が利用可能である見なされます。 | Boolean |
Traveling with a wheelchair | True に設定した場合、このパラメーターは旅行者が車椅子で移動していることを示します。車椅子が利用できない公共交通サービス (Runs テーブルの GWheelchairAccessible フィールドで定義) は、除外されます。 メモ:このパラメーターは、ネットワーク データセット内の公共交通機関ラインのみに適用されます。停留所や駅の車椅子のアクセシビリティは、たとえば、Stops、StopsOnStreets、StopConnectors データ モデル フィーチャクラス内の GWheelchairBoarding フィールドを使用する帰省属性を作成することなどで、別途操作します。 Runs テーブルに GWheelchairBoarding フィールドが含まれていない場合、このパラメーターは無視され、すべての運行で車椅子が利用可能であると見なされます。 | Boolean |
ネットワーク ロケーション
公共交通機関エバリュエーターを使用するネットワーク エッジは、配布可能だと考えることができません。つまり、これらのいずれかのラインの途中の部分的な移動はモデル化できないということです。エバリュエーターが正確に返すことができるのは、ラインの端から端までの移動に必要な全体の移動時間のみです。ラインの途中ポイントまでの移動時間は正確に推定されません。移動時間の計算は、ラインのジオメトリではなく、完全にスケジュールによるものだからです。
このため、ネットワーク解析の入力ポイント (停留所や施設など) を公共交通ライン上に配置することはできません。これらのポイントは道路上に配置する必要があり、旅行者が公共交通ラインにアクセスするには、停留所まで歩き、その停留所で公共交通サービスに乗車する必要があります。Network Analyst では、公共交通機関エバリュエーターを使用するネットワーク エッジ上にネットワーク解析の入力を配置することが自動的に回避されます。
公共交通機関エバリュエーターを使用するネットワーク エッジ上には、バリアも配置できません。公共交通ライン上のサービスを一時的に保留にするには、上記の表の属性パラメーターのいずれかを使用します。
到達圏
公共交通機関エバリュエーターを使用する場合、公共交通ラインに沿った移動時間は、ラインのジオメトリではなく、完全にスケジュールから計算されます。ラインは、交通車両が使用する経路の真の表現だとは見なされません。さらに、スケジュールされた公共交通サービスを使用する旅行者は、停留所の位置で公共交通サービスを乗降するように制限されます。停留所間で移動中のバスや列車から降りることはできないのです。
到達圏ポリゴンは、一定時間内に到達可能な領域や、特定の場所からの距離制限を表すためのものです。公共交通ラインは必ずしも地理的に正確ではなく、乗客が降車できるのは停留所だけなので、通過する公共交通ラインの周辺に到達圏ポリゴンを生成することはできません。ラインに直接隣接する領域は、旅行者が停留所で降車して時間制限内に同じ道路に沿って歩けるのでなければ、到達可能にはなりません。デフォルトでは、Network Analyst では、公共交通機関エバリュエーターを使用するネットワーク エッジは到達圏ポリゴンの生成から自動的に除外されます。それでも公共交通ラインは解析で使用され、到達圏ラインの出力に表示されることもありますが、その周囲にポリゴンが生成されることはありません。
出力される到達圏ポリゴンには、公共交通の停留所や駅の周囲に、接続されていないように見える領域を示すマルチパート フィーチャが含まれることがあります。これは想定どおりで正しい状態です。30 分の到達圏を作成する場合、旅行者は列車で 25 分移動した後に駅で降車して 5 分間歩くことが考えられます。または、列車に乗り続けて 28 分後に次の駅で降車すると、徒歩時間は 2 分だけ残されます。ただし、一般的には列車の方が徒歩よりも速いので、歩行による旅行者が、30 分の移動時間制限を超えずに 2 駅間のすべての領域に到達することはできません。したがって、各駅周辺の小さな領域には 30 分以内で到達可能ですが、駅間の大部分の領域には到達可能でないので、30 分の到達圏ポリゴンには、到達可能な駅の周辺のこうした接続されていない領域が個別に含まれることになります。