横メルカトル図法

説明

横メルカトル図法はガウス クリューゲル図法とも呼ばれる図法で、メルカトル図法に似ていますが、円筒が赤道ではなく子午線上で球体または楕円体に接する点が異なります。結果的に、正確な方向が維持されない正角図法となります。中央子午線は、対象となる地域の中心に設定されます。地域の中心に設定することで、その地域のすべての特性の歪みが最小となります。この図法は、南北に広がる地域に最も適しています。ユニバーサル横メルカトル (UTM) 座標系とガウス クリューゲル座標系は横メルカトル図法を基準にしており、State Plane Coordinate System では南北に広がるすべてのゾーンでこの図法を使用しています。さまざまな国の地形図や大縮尺座標系で、この図法が活用されています。

この図法の球体バージョンは、Johann H. Lambert が 1772 年に考案しました。楕円体の修正を加えた最初の数式は Carl F. Gauss が 1822 年に考案しました。「ガウス クリューゲル」という名称は、1912 年に Louis Krüger が再評価した楕円体にちなんでいます。ArcGIS Pro 1.0 以降と ArcGIS Desktop 8.0 以降で使用できます。

横メルカトル図法の例
グリニッジを中心にした横メルカトル図法による地図投影を示します。

投影のプロパティ

次のサブセクションでは、横メルカトル図法のプロパティについて説明します。

経緯線

横メルカトル図法は横円筒図法です。中心子午線と天底子午線は、投影図中央で 1 本の垂直線として表示されます。中心子午線から 90°離れた場所の北側は北極を通過する水平の直線として投影され、赤道に近づくと無限に延長します。同様に、これらの子午線の南側は南極を通過する水平の直線として投影され、同じく無限に延長します。

赤道は 2 つに分割されます。1 つ目の部分には、中心子午線の 90°の範囲内にある子午線が含まれており、マップ中央の水平の直線として投影されます。これは、投影した領域を 2 つの半球 (北半球と南半球) に分割します。赤道の 2 つ目の部分は、マップ上部と下部の 2 本の直線として投影されます。同様に、これら 3 本の線は中心子午線から 90°離れた子午線に近づくと、両端が無限に延長します。その他の緯線は複素曲線です。

両極はポイントとして投影され、いずれも各半球の中心にあります。中心子午線からちょうど 90°の位置にある赤道上の 2 つのポイントは無限に投影され、マップには表示されません。

歪み

横メルカトル図法は正角図法です。一般に正確な方向は維持しませんが、角度と形状は無限縮尺で維持されます。縮尺係数が 1.0 の場合は、中心子午線上の距離は正確です。縮尺係数が 1.0 よりも小さい場合は、縮尺が正確な線 (ほぼ直線) が 2 本あり、中央子午線の両側で同じ距離にあります。面積、距離、縮尺の歪みは、中心子午線か、前述の 2 本の緯線から離れるにつれて急激に大きくなります。歪みはマップの左端と右端で非常に大きくなります。歪みの値は、赤道と中心子午線で対称的となります。

使用法

横メルカトル図法は、南北方向に広がる傾向がある範囲で大縮尺または小さい面積の投影に適しています。これは非常によく使われる図法です。さまざまな国の地形図や大縮尺座標系で、この図法が活用されています。ユニバーサル横メルカトル (UTM)、State Plane、ガウス クリューゲル座標系では、この図法を使用しています。

バリアント

ArcGIS には 3 つのバリアントがあります。

  • 横メルカトル図法は、John P. Snyder が発表した数式と、国防地図局の技術マニュアルを基準にしています。ArcGIS Pro 1.0 以降と ArcGIS Desktop 8.0 以降で使用できます。
  • 横メルカトル図法 Complex は John P. Snyder の著書と、米国海洋大気庁が発表した Jeff Dozier による技術レポートに基づいています。ArcGIS Pro 1.0 以降と ArcGIS Desktop 9.0 以降で使用できます。
  • 横メルカトル図法 NGA 2014 は国防地図局による技術マニュアルを改訂したもので、米国国家地球空間情報局による標準化ドキュメントを基準にしています。ArcGIS Pro 1.2 以降と ArcGIS Desktop 10.4 以降で使用できます。

制限事項

赤道上で、中心子午線からちょうど 90°離れた 2 つのポイントは、横メルカトル図法 NGA 2014 バリアントには投影できません。横メルカトル図法と横メルカトル図法 Complex は中心子午線からそれぞれ最大で 45°および 80°までの範囲内でしか投影できず、実装の数式が不安定であることから天底子午線は表示されません。横メルカトル図法 NGA 2014 は、天底子午線上の領域も含む地球上のより広い部分を投影できますが、マップの左端と右端には制限があります。

パラメーター

横メルカトル図法のパラメーターは次のとおりです。

  • 東距
  • 北距
  • 中央子午線
  • 縮尺係数
  • 原点の緯度

横メルカトル図法 Complex のパラメーターは次のとおりです。

  • 東距
  • 北距
  • 中央子午線
  • 縮尺係数
  • 原点の緯度

横メルカトル図法 NGA 2014 のパラメーターは次のとおりです。

  • 東距
  • 北距
  • 中央子午線
  • 縮尺係数
  • 原点の緯度

ユニバーサル横メルカトル座標系

ユニバーサル横メルカトル (UTM) 座標系は、横メルカトル図法を特殊化して応用したものです。世界は、それぞれ 6°幅の 60 の南北に広がったゾーンに分割されます。各ゾーンにはそれぞれ中心子午線があり、縮尺係数は 0.9996 です。ゾーン 1N と 1S は 180°W から始まります。各ゾーンの範囲は、84°N から 80°S に限定されており、北と南のゾーンは赤道で分割されています。

各ゾーンの原点は、中央子午線と赤道の交点です。負の座標系をなくすには、南ゾーンの原点の座標値を変更します。中央子午線に指定される値が東距、赤道に指定される値が北距です。東距には 500,000 メートルが設定されます。北ゾーンの北距にはゼロが設定され、南ゾーンの東距には 10,000,000 メートルが設定されます。

State Plane Coordinate System

State Plane Coordinate System (SPCS) は投影法ではありません。アメリカ合衆国内の大縮尺地図を作成するために設計された座標系です。その目的を達成するため、3 つの正角図法が選択されました。その中でも、南北方向に長いゾーンには横メルカトル図法が使用されます。

ガウス クリューゲル座標系

ガウス クリューゲル座標系は UTM 座標系に似ており、ヨーロッパ、ロシア、中国で使用されています。3°幅と 6°幅のゾーンが存在します。縮尺係数や、場合によっては東距といったパラメーター値が UTM とは異なります。

ソース

Dozier, J. (1980). Improved Algorithm for Calculation of UTM and Geodetic Coordinates. NOAA Technical Report NESS 81. Washington, DC: National Oceanic and Atmospheric Administration.

Snyder, J. P. (1987). Map Projections: A Working Manual. U.S. Geological Survey Professional Paper 1395. Washington, DC: United States Government Printing Office.

Snyder, J. P. and Voxland, P. M. (1989). An Album of Map Projections. U.S. Geological Survey Professional Paper 1453. Washington, DC: United States Government Printing Office.

The Universal Grids and the Transverse Mercator and Polar Stereographic Map Projections. National Geospatial-Intelligence Agency Standardization Document. Version 2.0. オンラインで提供: https://earth-info.nga.mil/GandG/publications/NGA_SIG_0012_2_0_0_UTMUPS/NGA.SIG.0012_2.0.0_UTMUPS.pdf [2018 年 10 月 10 日にアクセス]

The Universal Grids: Universal Transverse Mercator (UTM) and universal Polar Stereographic (UPS). Defense Mapping Agency Technical Manual 8358.2 (1989). オンラインで提供: https://earth-info.nga.mil/GandG/publications/tm8358.2/TM8358_2.pdf [2018 年 10 月 10 日にアクセス]