ジオプロセシング サービスの作成および共有のクイック ツアー

ジオプロセシング サービスを作成するには、作成の手順と共有の手順が必要です。作成のプロセスでは、まず ArcGIS Pro でモデルや Python スクリプト ツールを作成します。ツールを作成し正常に実行したら、ツールをジオプロセシング サービスとして ArcGIS Server で共有できます。作成と共有の際には、一部のデータ、ツール パラメーター、共有権限について考慮する必要があります。このような考慮事項については、次の例と、本トピックの関連セクションに記載しています。全体的なプロセスは、以下のワークフローで構成されます。

  1. ツールボックスのツールを使用してスクリプトやモデルを構築し、ワークフローを構成します。
  2. ツールに必要なデータセットを収集し、ジオデータベースで使用可能にするか、プロジェクトのマップに追加します。
  3. ツールを実行し、ジオプロセシング履歴に正常なエントリを作成します。
  4. 必要に応じて、マップに出力データセットのシンボルを設定します。
  5. 履歴アイテムをジオプロセシング サービスとして共有します。ジオプロセシング サービスを共有するときに、ツールとサービスのツール プロパティを設定できます。

例: 提案するパイプラインが住民に与える影響の検証

次のモデル ツールは、パイプラインに漏れが発生した場合に影響を受ける人数を検証するツールのコレクションです。このワークフローではパイプラインと河川との交差部分を探し、下流解析を行って影響を受ける人数を調べます。このモデルはプロジェクト データとパラメーターで設定され、ジオプロセシング サービスとして公開されます。この場合、アナリストや一般の人が提案されたパイプライン経路を変更し、漏れによる下流の住民への影響を確認できます。ジオプロセシング サービスの結果には、パイプラインが河川と交差する部分と、影響を受ける人口のサマリーが表示されます。

パイプラインの影響を受ける人口を解析するためのモデル

ツールの設計

実用的なツールには、入力パラメーターと出力パラメーターが必ずあります。これらのパラメーターを使用すると、ツールを実行するたびに別の値を指定できます。そうすると、ツールは別の解析結果を返します。入力パラメーターと出力パラメーターに加え、ツールにはプロジェクト データと中間データもあります。これらは、通常はツールの実行者がコントロールできないデータセットです。モデルでは、入力パラメーターには「P」とマークが付けられます。モデルをツールとして実行すると、「P」が付いた入力がツールのダイアログ ボックスに表示され、ツールの実行時に使用される値を設定できます。パイプライン モデルでは、下流解析を実施する際のパイプライン経路と、バッファー距離を指定できます。誰かがこのツールを使用すると、パイプラインの場所とバッファーのサイズが変更され、パイプラインに最終的に影響を受ける人数が表示されます。この例に示すパイプラインの交差部と解析ラインは、モデル ツールの実行時に生成される中間データセットです。これらの中間データセットは、ツールの実行者には必要ないため、結果として返されません。モデルが共有されると、ジオプロセシング サービスを動作させるジオプロセシング サービスは中間データの書き込み先を指定し、最終的に中間データが必要なくなったら消去します。

モデル ツールの入力パラメーター

すべての有効なツールにとって入力パラメーターは重要ですが、それと同様に出力パラメーターも重要です。出力パラメーターを使用すると、ツールから実行者に結果が返されます。ArcGIS Pro では、出力パラメーターは重要です。これらのデータセットはマップに自動的に追加されるからです。出力パラメーターのないツールでも出力は生成しますが、この情報は自動的に表示されません。ジオプロセシング サービスもほぼ同じように動作します。つまり、エンド ユーザーに結果を返すには、1 つ以上の出力パラメーターが必要です。パイプライン モデルでは、2 つの出力パラメーターが存在します。1 つは、下流のバッファーの場所を示す影響エリアの人口、もう 1 つは影響を受ける人口全体のサマリーを示す人口サマリー テーブルです。影響を受けるエリアの人口は、中間データでもあり出力データでもあります。このパラメーターが中間であるのは、統計情報のサマリー ツールで必要ではあるもののモデル パラメーター (P) として定義されているため、ツールが正常に完了したときにこの結果がクライアントに返されるからです。

モデル ツールの出力パラメーター
ヒント:

スクリプト ツール スクリプト の作成時にも、ツールの入力および出力パラメーター、プロジェクト データ、中間データの原則が該当します。

ツールのドキュメント化

ツールができるだけ幅広い層のユーザーに検索、理解、使用されるようにするには、ジオプロセシング サービスの作成方法をドキュメント化することが必要不可欠です。効果的なドキュメント化は、まずオリジナル ツールから始めます。モデルやスクリプト ツールにも、システム ツールと同じ種類のメタデータを提供できます。

ツールのドキュメント化の詳細

ツールの実行

ツールが作成されたら、正常に実行する必要があります。ツールを実行すると、ジオプロセシング履歴にエントリが作成されます。実行に失敗したツールは共有できません。

メモ:

ModelBuilder でモデルを実行しても、[ジオプロセシング履歴] にはエントリは作成されません。モデル ツールは、[ジオプロセシング] ウィンドウでツールとして実行する必要があります。

ジオプロセシング サービスの共有

ジオプロセシング サービスは、管理者接続タイプで [ArcGIS Server コネクション] を介したスタンドアロン サーバーにのみ共有できます。適切なタイプのサーバー接続を追加するには、次の手順に従います。

新しい ArcGIS Server コネクションの追加

新しい ArcGIS Server コネクションの追加には、2 通りの方法があります。

  1. ArcGIS Pro[カタログ] タブの [プロジェクト] ウィンドウで、このウィンドウ内の任意の場所を右クリックし、[新しい ArcGIS Server コネクション] を選択して、次に示されているようにコネクション ウィンドウを起動します。
  2. ArcGIS Pro の上部にある [挿入] リボン タブから [接続] リボンを選択し、[新しい ArcGIS Server] を選択すると、次のようなコネクション ウィンドウが開きます。サーバー コネクションを追加します。

[サーバーの URL] および [管理者のログイン認証情報] を入力します。入力が完了すると、[プロジェクト] ウィンドウの [サーバー] に *.ags 拡張子が追加された新しいサーバー コネクションアイテムが表示されます。

ArcGIS サーバー コネクション タイプの構成

前のステップで作成した最初のコネクションでは、コネクション タイプに [公開者] が使用されています。ジオプロセシング サービスを共有するには、管理者接続が必要です。コネクション タイプを変更するには、サーバー コネクションアイテムを右クリックして [プロパティ] を選択し、[ArcGIS Server コネクション プロパティ] ウィンドウを開きます。タイプを [公開者接続] から [管理者接続] に変更します。

サーバー コネクション タイプの変更

ジオプロセシング サービスの公開

サーバー コネクションのコネクション タイプが管理者の場合は、サーバー コネクションを右クリックして [公開] を選択します。[ジオプロセシング サービス] オプションを使用して、[選択した履歴アイテム] ウィンドウを起動します。リストからアイテムを選択し、[ジオプロセシング サービスの公開] ウィンドウを起動します。サービスを公開する前に、[一般][構成][コンテンツ] の各ウィンドウのプロパティを確認することをお勧めします。

[ジオプロセシング サービスの公開] ドロップダウン

ジオプロセシング サービス プロパティの設定

漏出評価ツールはフィーチャとテーブルを出力します。このツールが生成して表示するデータ量にはサイズ制限があるため、ジオプロセシング サービスは結果のマップ サービスのない非同期サービスとして設定されます。デフォルトでは最大 1,000 件のレコードですが、これで十分です。メッセージ レベルをエラーにしておくと、ツール障害に関連するメッセージのみ表示できます。ジオプロセシング サービスが正常に実行されると、通常の処理メッセージはエンド ユーザーに返されません。

ジオプロセシング サービス プロパティの設定

データのコピーと参照

すべてのジオプロセシング サービスは、データを入力として使用するか、プロジェクト データを使用します。漏出評価モデルをジオプロセシング サービスとして共有すると、ユーザーからのデータを受け入れ、それをモデルで参照されるプロジェクト データに対して処理します。ツール共有のこの時点では、データをサーバーにコピーして、サービスがデータの静的コピーを使用できるようにするか、またはサービスがアクセスできる参照を作成するかを決定する必要があります。今回のワークフローでは、プロジェクト データには河川と人口のデータセットが含まれており、そのいずれも静的です。つまり、データセットが更新されることはほとんどありません。ここでは、データをサーバーにコピーする方が適しています。この処理により、データが収集されて (必要に応じて) ファイル ジオデータベース フィーチャクラスに変換されます。それがサーバーに抽出され、サービスによって使用されます。

解析方法が少し変更され、ユーザーが独自のパイプラインを提案しなかったとします。パイプラインの代案は別のプロセスから提案され、ユーザーがツールに異なる入力を提供しました。このような場合は、提案されたパイプラインがプロジェクト データになります。そのため、このデータをエンタープライズ ジオデータベースに入れ、ツールが参照できるようにすることをお勧めします。公開時には、ArcGIS Server データ ストアを使用してデータへの参照を設定します。公開プロセスにより、静的コピーを作成する代わりにデータベースへの参照が保持されます。プロジェクト アナリストが後からエンタープライズ ジオデータベースのデータを更新すると、ジオプロセシング サービスは最新のパイプライン案に対して解析を実施します。

ジオプロセシング サービスの公開

分析

ジオプロセシング サービス共有の [分析] 分析 プロセスは、ツールをポータルに正常に公開できるよう実施されます。また、データに関する警告メッセージが表示されることもあるため、必要に応じて対応します。漏出評価ツールにはデータ ストアがすでに設定され、ツールのドキュメントが存在し、ジオプロセシング サービスで動作する対応ツールを使用しているため、警告やメッセージは表示されません。

公開

ジオプロセシング サービスのプロパティが設定され、分析ツールのエラーが解消されると、ジオプロセシング サービスをポータルに公開します。統合し、サーバーに送信するデータの量によっては、数分かかることがあります。

ジオプロセシング サービスの使用

ジオプロセシング サービスは [カタログ] ウィンドウの [ArcGIS Server コネクション] にあり、そこから開くことができます。利用可能なジオプロセシング サービス

ArcGIS Pro でツールを実行する以外にも、ジオプロセシング サービス ジオプロセシング サービスPython スクリプトWeb アプリケーション でも使用できます。

ArcGIS Pro でのジオプロセシング サービスの検索と使用の詳細