概要
指定された時間と距離の閾値を使用して、移動中のオブジェクトが停止した場所 (滞在した場所) を検出します。
図
使用法
入力レイヤーは、特定時点を表す時間対応ポイント フィーチャでなければなりません。
滞在場所は、一定の期間にわたって移動がほとんどないか、まったくない一連の観測点として定義されます。利用分野によっては、滞在地やアイドル状態検出と呼ばれることもあります。
[滞在場所の検索 (Find Dwell Locations)] ツールで使用される用語を次の表に示します。
用語 説明 滞在場所
トラックが動作を停止した時点を指定された時間パラメーターと距離パラメーターで表すフィーチャ。これは、このツールから生成される出力結果であり、滞在フィーチャがポイント、凸包、または地理的中心として表されます。
トラック
時間対応かつ時間のタイプが瞬間を示す一連のフィーチャ。フィーチャはトラック ID フィールドに応じて順番が決定され、時間順に並びます。たとえば、都市に 10 分ごとにその場所を記録する除雪トラックを配備できます。車両 ID は、個別のトラックを示します。
比較結果
トラック上のポイント。
測地線
球体上に描画されたライン。グローブ上に描画された測地線は、地球のジオイドの曲率を表します。
平面
平面 (デカルト平面) 上で計測される直線距離です。ユークリッド距離とも呼ばれます。
インスタント
開始時間は指定されているが終了時間は指定されていない、ある特定の時点を指します。
間隔
開始時間と終了時間が指定されている期間のことを指します。
結果は、時点を表すポイント フィーチャまたは時間間隔を表すエリア フィーチャになります。間隔の始点と終点は、滞在に含まれている最初のフィーチャと最後のフィーチャの日時によって求められます。
時間を持たないフィーチャは、解析から除外されます。
滞在場所は、複数のフィーチャを含むトラックでのみ検出することができます。
滞在場所を検出するには、時間の値 ([時間許容値]) と距離の値 ([距離許容値]) の両方を使用します。最初に、このツールは、一意識別子を使用してフィーチャをトラックに割り当てます。トラックの順序は、フィーチャの時間によって決まります。次に、トラック内の最初の観測と次の観測間の距離が計算されます。時間的に連続した 2 つのポイントが、少なくとも所定の期間、所定の距離内にある場合、フィーチャは滞在の一部であると見なされます。2 つのフィーチャが滞在の一部であると判断されると、滞在の最初のフィーチャは参照ポイントとして使用され、ツールは、滞在の参照ポイントから指定の距離内にある連続したフィーチャを検索します。指定距離内のすべてのフィーチャが検索されると、ツールは、滞在フィーチャを収集し、その地理的中心を算出します。現在の滞在の前後にあるフィーチャが滞在場所の地理的中心から所定の距離内にある場合、それらは滞在に追加されます。このプロセスは、トラックの終了まで継続されます。
トラックを識別するために、1 つ以上のフィールドを選択できます。トラックは、1 つ以上のトラック フィールドの一意の組み合わせで表されます。
デフォルトでは、測地線による方法を距離計算に使用して、滞在場所が作成されます。次の場合には、測地線距離を使用することをお勧めします。
- 国際日付変更線をまたぐトラック - 測地線による方法を使用する場合、国際日付変更線をまたぐ入力レイヤーには、国際日付変更線を正しく横断するトラックが含まれます。これがデフォルトです。入力レイヤーまたは処理空間参照は、国際日付変更線周辺の折り返しをサポートする空間参照に設定される必要があります (たとえば、正積円筒図法などのグローバル投影)。
- データセットがローカル投影法でない - 入力データがローカル投影法の場合は、平面距離による方法を使用します。たとえば、1 つの州内の滞在場所を調べる場合に平面による方法を使用します。入力レイヤーまたは処理空間参照は、データセットに対してローカルの空間参照に設定する必要があります。
出力滞在場所は、4 通りの方法で表すことができます。それぞれの例を次の表に示します。
出力タイプ 説明 例 すべてのフィーチャ
すべてのフィーチャが返されます。結果として生成されるフィーチャの時間タイプは [インスタント] になります。
滞在に属しているフィーチャは青でレンダリングされます。滞在に属していないフィーチャはグレーでレンダリングされます。
この出力タイプでは、カウント統計情報だけが算出されます。このカウントは、1 つの滞在に属しているフィーチャの数を表します。滞在以外のフィーチャのカウントは 0 になります。
滞在フィーチャ
滞在の一部となっているフィーチャだけが返されます。結果として生成されるフィーチャの時間タイプは [インスタント] になります。
この出力タイプでは、カウント統計情報だけが算出されます。このカウントは、1 つの滞在に属しているフィーチャの数を表します。
地理的中心
滞在ごとに、距離と時間で滞在の地理的中心を表す 1 つのポイントが返されます。結果として生成されるフィーチャの時間タイプは [間隔] になります。
滞在に含まれているフィーチャの数が常に算出されます。必要に応じて、このタイプの滞在フィーチャの統計情報を算出できます。デフォルトでは、統計情報が算出されません。
凸包
各滞在が滞在フィーチャの凸包で表されます。結果として生成されるフィーチャの時間タイプは [間隔] になります。
滞在に含まれているフィーチャの数が常に算出されます。必要に応じて、このタイプの滞在フィーチャの統計情報を算出できます。デフォルトでは、統計情報が算出されません。
入力レイヤー内のフィールドだけでなく、次のフィールドもすべての出力フィーチャに含まれます。
フィールド名 説明 count
滞在に含まれていたフィーチャの数
dwellid
該当するフィーチャが属している滞在に一意の ID
meanx
滞在を構成している X 座標の平均値
meany
滞在を構成している Y 座標の平均値
meandistance
滞在場所内の連続するポイント間の平均距離
date
出力タイプが [滞在フィーチャ]、[地理的中心]、または [すべてのフィーチャ] の場合に生成される個々のフィーチャの日時
start_date
出力タイプが [凸包] の場合に生成される開始日時
end_date
出力タイプが [凸包] の場合に生成される終了日時
出力タイプが [すべてのフィーチャ] の場合、滞在に属している結果では、上記のフィールドの値が算出されます。滞在に属していない結果では、count フィールドに値 0 が返され、date フィールドに入力フィーチャの時間値が返され、それ以外のすべてのフィールドに値 null が返されます。
トラッキングは次の方法で分割できます。
- [時間分割] - 入力間の時間に基づきます。時間分割を適用すると、入力データが指定時間よりも大きい場合に、トラッキングが分割されます。たとえば、同じトラッキング識別子を持つフィーチャが 5 つあり、その時間が [01:00, 02:00, 03:30, 06:00, 06:30]、時間分割が 2 時間に設定されている場合、2 時間以上の間隔のあるフィーチャは分割されます。この例では、結果は [01:00, 02:00, 03:30] と [06:00, 06:30] となります。03:30 と 6:00 は 2 時間以上開いているからです。
- [時間境界分割] - 定義された時間間隔に基づきます。時間境界分割を適用すると、定義済み間隔で追跡が行われます。たとえば、時間の境界を 1 日に設定し、1990 年 1 月 1 日午前 9 時から開始した場合、各トラッキングは毎日午前 9 時に切詰められます。この分割を使用すると、解析のためのトラッキングを短縮できるため、計算時間を高速化できます。時間の境界の繰り返しによる分割が解析で有効な場合は、ビッグ データ処理にこの方法を使用することをお勧めします。
- [距離分割] - 入力間の距離に基づきます。距離分割を適用すると、入力データが指定距離よりも大きい場合に、トラッキングが分割されます。たとえば、距離分割を 5 キロメートルに設定した場合、5 キロメートル以上の連続したフィーチャは異なるトラッキングに分けられます。
- [分割式] - Arcade 式に基づいています。分割式を適用すると、値、ジオメトリ、または時間値に基づいてトラッキングが分割されます。たとえば、フィールド値がトラッキング内の前の値の 2 倍よりも大きい場合にトラッキングを分割できます。このためには、たとえば、フィールド名を WindSpeed にして、var speed = TrackFieldWindow("WindSpeed", -1, 1); 2* speed[0] < speed[1] という式を使用します。前の値 (speed[0]) が現在の値の 2 倍よりも小さくなると、トラッキングが分割されます。
0、1、2、3、または 4 つの分割オプションを同時に適用できます。次に示されたすべての例で、間隔分割が使用されています。6 時間の時間分割、1 日の時間境界、16 キロメートルの距離分割を適用することを前提とした場合の結果は、次のようになります。
分割オプション 説明 時間と位置を含む 6 つの入力ポイント
同じ識別子の付いた入力ポイント。ポイント間の距離は点線の上にマークされ、各ポイント測定の時間はポイントの下にマークされます。タイムラインに 4 つの分割があります。赤色の分割は、午前 12 時から始まる 1 日の時間境界の分割を表します。青色の分割は、2 つのポイント間の距離が 16 キロメートルを超える距離分割を表します。紫色の分割は、2 つの連続したポイント間の時間距離が 6 時間を超える時間分割を表します。
時間分割なし、距離分割なしの例。
6 時間の時間分割を伴う例。2 時間以上離れているフィーチャは、別々のトラッキングに分割されます。
午前 12 時から始まる、1 日の時間境界を伴う例。指定された時間 (ここでは午前 12 時) から始まる 1 日の間隔に対して、それぞれトラッキングが作成されます。
16 キロメートルの距離分割を伴う例。16 キロメートル以上離れているフィーチャ (午前 5 時のフィーチャと午前 6 時のフィーチャ) は、別々のトラッキングに分割されます。
6 時間の時間分割と、午前 12 時から始まる 1 日の時間境界を伴う例。6 時間以上離れているフィーチャ、または午前 12 時の時間分割と交差するフィーチャは、 別々のトラッキングに分割されます。
6 時間の時間分割と 16 キロメートルの距離分割を伴う例。6 時間以上離れているフィーチャ (午前 6 時のフィーチャと午後 7 時のフィーチャ) または 16 km 以上離れているフィーチャは、別々のトラッキングに分割されます。
16 キロメートルの距離分割と、午前 12 時から始まる 1 日の時間境界を伴う例 16 キロメートル以上離れているフィーチャ、または午前 12 時の時間分割と交差するフィーチャは、別々のトラッキングに分割されます。
16 キロメートルの距離分割、6 時間の時間分割、および午前 12 時から始まる 1 日の時間境界を伴う例。16 キロメートル以上離れているフィーチャ、6 時間以上離れているフィーチャ、または午前 12 時の時間分割と交差するフィーチャは、別々のトラッキングに分割されます。
凸包を算出する際に、滞在場所がまったく変化していない場合 (1 つの一意の場所) または 2 つの一意のポイントで構成されている場合は、解析で使用されている空間参照の許容値に基づく小さい値が幅、高さ、直径として使用され、凸包の代わりに出力ポリゴンが生成されます。このポリゴンは視覚化のために使用され、滞在場所の空間範囲を表していません。これらのケースの例を次の表に示します。
入力ケース 説明 例 一致 (1 つの空間的に一意のポイント)
入力フィーチャが重ねて表示されている場合 (一致)、結果として生成される凸包は無効なポリゴンになります。
この例では、一致する入力フィーチャは、黄色のポリゴンの中心にある赤色の点で表されています。黄色のポリゴンは、一致するポイントの凸包の出力結果を表しています。青色のポリゴンは、1 つの滞在場所に一致しない 4 つのポイントがある場合に、実際の凸包がどのように表示されるかを示しています。
同一線 (2 つの空間的に一意のポイント)
入力フィーチャが 1 つのライン上にある場合 (2 つの空間的に一意のポイントでよく見られるケース)、結果として生成される凸包は無効なポリゴンになります。
この例では、同一線上のポイントは、黄色のポリゴン内の赤色の点で表されています。黄色のポリゴンは、同一線上のポイントの凸包の出力結果を表しています。
滞在場所を検出するパラメーターを選択する場合は、観測点のタイプと検出する滞在場所の縮尺を考慮してください。移動データから滞在場所を検出できるようにパラメーターを変更する方法の例を次に示します。
- 船舶フィーチャに vesselID フィールドと tripID フィールドがある。
- 個別のルートに沿って滞在場所を検出する場合は、vesselID フィールドと tripID フィールドを識別子として使用します。
- 船舶が 1 時間以上 1 海里以内に停泊していた場所を検出する場合は、1 時間の時間許容値と 1 海里の距離許容値を使用します。
- 動物追跡に animalID フィールドがある。
- 特定の動物の滞在場所を比較する場合は、animalID フィールドを識別子として使用します。
- 動物の行動範囲を特定する場合は、3 日の時間許容値と 10 マイルの距離許容値を使用して、対象となる動物生息環境を検出します。
- 対象地域が小規模な場合は、2 時間の時間許容値と 100 メートルの距離許容値を使用します。
- 船舶フィーチャに vesselID フィールドと tripID フィールドがある。
次の操作を 1 つ以上実行すると、[滞在場所の検索 (Find Dwell Locations)] ツールのパフォーマンスを上げることができます。
- 対象データのみが解析されるように、範囲環境を設定します。
- 結果を [滞在フィーチャ] または [地理的中心] として出力します。
- [トラック フィールド] の入力を追加して、できるだけ多くのトラックに分割します。
- 測地線の代わりに平面による方法を距離計算に使用します。
- [時間分割]、[時間境界の分割]、および [距離分割] パラメーターを使用して、トラックを分割します。[時間境界の分割] は、パフォーマンスが最も向上します。
- 解析が実行されている場所に対してローカルなデータを使用します。
ジオプロセシング ツールは、Spark を活用しています。解析は、複数のコアを並列に使用して、デスクトップ コンピューター上で実行されます。解析の実行方法の詳細については、「GeoAnalytics Desktop ツールに関する考慮事項」をご参照ください。
GeoAnalytics Desktop ツールを実行する場合、解析はデスクトップ コンピューター上で実行されます。最適なパフォーマンスを実現するには、データがデスクトップ上で使用可能である必要があります。ホスト フィーチャ レイヤーを使用している場合は、ArcGIS GeoAnalytics Server を使用することをお勧めします。データがローカルに存在していない場合、ツールの実行時間が長くなります。ArcGIS GeoAnalytics Server を使用して分析を行うには、GeoAnalytics Toolsをご参照ください。
構文
arcpy.gapro.FindDwellLocations(input_features, output, track_fields, distance_method, distance_tolerance, time_tolerance, output_type, {summary_statistics}, {time_boundary_split}, {time_boundary_reference})
パラメーター | 説明 | データ タイプ |
input_features | 滞在場所の検出元になるポイント トラック。特定時点を表すフィーチャを含む時間対応レイヤーを入力する必要があります。 | Feature Layer |
output | 結果として生成された滞在場所を含む出力フィーチャクラス。 | Feature Class |
track_fields [track_fields,...] | 一意のトラッキングを識別するために使用される 1 つ以上のフィールド。 | Field |
distance_method | 滞在フィーチャ間の距離を算出する方法を指定します。
| String |
distance_tolerance | 1 つの滞在場所で考慮されるポイント間の最大距離。 | Linear Unit |
time_tolerance | 1 つの滞在場所で考慮される最小期間。 滞在場所を検出する場合には、時間と距離の両方が考慮されます。距離は、[距離許容値] パラメーターで指定します。 | Time Unit |
output_type | 滞在場所の出力方法を指定します。
| String |
summary_statistics [summary_statistics,...] (オプション) | 指定されたフィールドに関して計算される統計情報。
| Value Table |
time_boundary_split (オプション) | 入力データを解析用に分割する期間。時間境界により、指定期間内の値を解析できます。たとえば、時間境界を 1 日として、時間境界基準を 1980 年 1 月 1 日に設定した場合、トラッキングは 1 日の開始時ごとに分割されます。 | Time Unit |
time_boundary_reference (オプション) | 入力データを解析用に分割する際に使用される基準時間。時間境界は、データの全期間に対して作成されます。基準時間は最初から作成する必要はありません。基準時間を指定しないと、1970 年 1 月 1 日が使用されます。 | Date |
コードのサンプル
次の Python ウィンドウ スクリプトは、FindDwellLocations ツールの使用方法を示しています。
# Name: FindDwellLocations.py
# Description: Find the mean centers representing locations where ships have stayed within 1 mile across 4 hours of travel
# Requirements: ArcGIS GeoAnalytics Desktop tools
# Import system modules
import arcpy
# Set local variables
inFeatures = "c:/mydata/ShippingData.gdb/MyAtlanticShips"
outFeatures = "c:/mydata/OutputDatasets/AtlanticShips_DwellLocations.shp"
trackIdentifier = "SHIPID"
distance = "1 Miles"
timeDuration = "4 Hours"
outputType = "MEAN_CENTERS"
statistics = [["SPEED", "MEAN"]]
# Execute Find Dwell Locations
arcpy.gapro.FindDwellLocations(inFeatures, outFeatures, trackIdentifier,
"GEODESIC", distance, timeDuration,
outputType, statistics)
環境
ライセンス情報
- Basic: いいえ
- Standard: いいえ
- Advanced: はい