多次元データは、複数の回数、複数の深度または高さで取得されたデータを表します。 これらのデータ タイプは、大気、海洋、および地球科学でよく使用されています。 多次元ラスター データは、データを特定の時間間隔で収集する衛星観測によって取得したり、データを他のデータ ソースから集約、内挿、シミュレートする数値モデルから生成することができます。
多次元ラスター データの一般的な格納形式は、netCDF、GRIB、HDF です。 多くの場合、海洋データは netCDF 形式 (*.nc)、気象データは GRIB 形式で格納され、NASA は科学データの格納に HDF 形式をよく使用します。 これらの多次元形式は、複数の変数を格納するために共通の機能を共有し、各変数は多次元配列になります。 Esri の Cloud Raster Format (CRF) とモザイク データセットも多次元ラスター データ ストレージをサポートしています。 たとえば、多次元データには 2010 年から 2020 年までの各月の、標高 0、1、10 メートルにおける気温、湿度、および風速を含むことができます。 詳細については、「多次元ラスター タイプ」をご参照ください。
ArcGIS Pro は、多次元ラスター データの視覚化、管理、処理を実行したり、それを Web サービスとして公開したりする機能があります。 多次元ラスター データをマップ ビューに追加することで、1 つのファイル内の変数を調査できるようになります。また、[多次元] コンテキスト タブによって、必要なデータ スライスを表示し、多次元ラスター データを処理するためのツールや機能にすばやくアクセスするための対話型エクスペリエンスがユーザーにもたらされます。
多次元ラスター データの管理
多次元ラスター データは大規模で、管理が困難なことがあります。 多次元ラスター データ管理の基本となるデータ管理構造は、多次元モザイク データセットと多次元 CRF です。
多次元クラウド ラスター形式
CRF は、多次元ラスターを生成するジオプロセシング ツールのデフォルトの出力ラスター形式です。 *.crf ファイルは、分散処理および格納環境で大きなファイルを読み書きするために最適化されています。 *.crf ファイルでは、多次元ラスター データをより小さなタイル バンドルに分けることで、複数のプロセスで出力への同時書き込みを行えるようにします。
多次元 CRF は、複数の変数、ディメンション、および処理テンプレートの格納をサポートしています。 データの追加と置換もサポートしますが、挿入または削除はサポートしません。 格納要件を最小化するために、LERC および LZ77 圧縮方法を使用してデータを格納できます。 時系列プロファイルの実行時など、相当数のスライスに長時間アクセスする場合は、多次元 CRF が高速です。 次のシナリオでは、多次元 CRF データセットをお勧めします。
多次元モザイク データセット
多次元モザイク データセットはデータを格納および管理し、データ解析を実行する効果的な方法です。
多次元モザイク データセットは、複数の変数、ディメンション、および処理テンプレートの格納をサポートしています。 テーブル操作によるデータの追加、置換、挿入、または削除もサポートしています。 変更が行われた後、多次元情報を再構築する必要があります。 モザイク データセット自体はピクセルを格納しないため、モザイク データセットの格納要件は、データセット内の元画像に依存します。 次のシナリオでは、多次元モザイク データセットをお勧めします。
- 1 つのタイム スライスの重複画像へのアクセスを維持します。
- データに空間的に不連続な広いエリアが含まれています。 たとえば、アラスカとハワイは米国本土と隣接しておらず、CRF データ形式を使用すると NoData の広いエリアが生成されるため、追加のストレージが必要になります。
- データは主に画像のカタログとして使用され、時系列プロファイルは行われません。
- データは、(データの追加だけでなく) 新しい挿入と削除で定期的に更新されます。
- バンド数が異なる複数のデータ タイプがあります。 たとえば、データセットには、気温データ (1 バンド) と Landsat 8 データ (8 バンド) が含まれています。
多次元モザイク データセットを CRF データセットに変換できます。 このためには、[ラスターのコピー (Copy Raster)] ツールを使用し、*.crf を出力形式として選択して、[多次元として処理] チェックボックスをオンにします。 必要に応じて、多次元転置の構築を選択できます。
多次元データの変更
[多次元] ツールボックスにあるツールを使用して、既存の多次元ラスターを変更したり、モザイク データセット内で多次元メタデータを生成したり、パフォーマンスを最適化するためにデータを転置したり、サブセット データセットを抽出したりできます。 [リサンプル (Resample)]、[クリップ (Clip)]、[統計情報の計算 (Calculate Statistics)] など、多くの標準ラスター データ管理ツールも多次元データをサポートしています。 さらに、[投影変換と座標変換] ツールセットにあるツールの多くが多次元ラスターをサポートしており、これらを使用して空間データの投影と座標変換を行うことができます。
多次元ラスター データセット内の各変数の説明、単位、カラーマップは、[カタログ] ウィンドウからアクセスできる [プロパティ] ウィンドウで変更できます。 表示または解析されるデフォルトの変数も [プロパティ] ウィンドウで設定できます。
多次元ラスター データの視覚化
多次元モザイク データセットと *.CRF ファイルは、ArcGIS Pro のマップに直接追加できます。
多次元の netCDF、HDF、または GRIB ファイルを多次元ラスター レイヤーとして追加するには、[マップ] タブで > [データの追加] > [多次元ラスター レイヤー] オプションを使用します。
デフォルトでは、システムが多次元ラスター処理テンプレートを適用し、選択した各変数の多次元ラスター レイヤーを 1 つ作成します。 新しいラスター レイヤーには、変数からの多次元情報が含まれ、この情報を視覚化、解析、共有できます。 選択した変数を 1 つの多次元多変量解析ラスター レイヤーに結合することもできます。 または、[多次元ラスター レイヤーの作成 (Make Multidimensional Raster Layer)] ツールを使用して、サポートされている多次元データ タイプからレイヤーを生成できます。
多次元ラスター レイヤーをマップ ビューに追加した後は、[多次元] タブの [多次元範囲] グループにあるオプションを使用して、表示したいスライスを表示することができます。
多次元ラスター レイヤーの表示の詳細については、「多次元ラスター レイヤーの操作」をご参照ください。
多次元モザイク データセットの視覚化の詳細については、「多次元データ モザイク データセットの視覚化」をご参照ください。
多次元ラスター データの解析
複雑な時系列分析、高さまたは深度のトレンド分析、予測、回帰分析はすべて、ArcGIS Pro の ArcGIS Image Analyst または Spatial Analyst エクステンションによって可能になります。 [多次元解析] ツールセットにあるツールによって、時間の経過に伴ってデータを集約し、異常を識別することができます。
また、時系列プロファイル チャートを使用して、多次元ラスター データを視覚化および解析することもできます。
詳細については、「ArcGIS Pro での多次元解析」をご参照ください。
注意:
ArcGIS Image Analyst エクステンションでは、その他の多次元解析ツールを使用することもできます。