多次元ラスター タイプ

一般的に、多次元ラスター データは、気象データや海洋データ (気温、湿度、風速、風向など) を格納するために、科学分野で使用されています。 通常、データは変数として保存され、各変数は複数の時間および複数の高度、深度、または圧力で取得されたデータを表す多次元配列になります。 多くの場合、これらのデータは、ArcGIS Pro でサポートされる NetCDF、HDF、または GRIB ファイル形式で格納されます。

  • GRIB - General Regularly-distributed Information in Binary World Meteorological Organization は、一般的に気象学で使用される簡潔なデータ形式で、過去の気象データや予測データを格納するために使用されます。 GRIB ラスター タイプでは、GRIB 1 および GRIB 2 データをモザイク データセットに追加できます。
  • HDF - Hierarchical Data Format The HDF Group は、NCSA (National Center for Supercomputing Applications) によって策定された、科学データを格納するための形式です。 HDF ラスター タイプでは、HDF5 または HDF4 に格納されたラスター データをモザイク データセットに追加できます。 HDF ファイルに格納されている非ラスター データは、HDF ラスター タイプでは無視されます。
  • NetCDF - Network Common Data Form は、多次元データを格納するためのファイル形式です。 詳細については、「NetCDF の基礎」をご参照ください。 現在、NetCDF ラスター タイプでは CF (Climate and Forecast) CF 規約とメタデータ 規約および COARDS (Cooperative Ocean/Atmosphere Research Data Service) 規約がサポートされています。 他の規約を使用して作成された NetCDF ファイルも動作する可能性はありますが、これらはサポートされません。

さらに Esri の CRF (Cloud Raster Format) は多次元ラスター ストレージをサポートし、多次元ラスターを生成するジオプロセシング ツールのデフォルトの出力ラスター形式です。 CRF ファイルは、分散処理および格納環境で大きなファイルを読み書きするために最適化されています。 CRF ファイルでは、多次元ラスター データを小さなタイル バンドルに分けることで、複数のプロセスで同時に 1 つの出力への書き込みを行えるようにします。 CRF ファイルに対して多次元転置を構築することができ、これにより、時系列プロファイル チャートの作成時など、次元全体のデータを抽出するときのパフォーマンスが改善します。

[多次元ラスター レイヤーの追加] ダイアログ ボックスを使用して、ArcGIS Pro のマップに GRIB、HDF、または NetCDF データを表示できます。 レイヤーが追加されると、[多次元] タブのツールを使用して変数とスライスを視覚化したり、ラスター関数やジオプロセシング ツールを使用してレイヤーを解析したり、[ラスターのコピー (Copy Raster)] ツールを使用してレイヤーを CRF に変換したりすることができます。

GRIB、HDF、または NetCDF データをモザイク データセットに追加できます。これらを使用して、多次元データを管理および処理できます。 多次元モザイク データセットでは、1 つまたは複数の変数を管理できます。 すべての変数を 1 つのモザイク データセットで管理するか、変数ごとにモザイク データセットを作成するかは、アプリケーションに依存します。

  • アプリケーションが変数を 1 つだけ使用する場合や、少数の独立変数を使用する場合は、変数ごとに 1 つのモザイクを作成、使用、および管理すると簡単です。
  • アプリケーションの一部として、ラスター関数テンプレートを使用した複数の変数による計算が含まれる場合は、そのテンプレートで使用されるすべての変数を 1 つのモザイクに追加する必要があります。
  • 科学データを提供するとともに、サービスの数を最低限に抑えたい場合は、複数の変数をモザイクに追加し、変数選択テンプレートを使用してそれぞれの変数にアクセスできます。

たとえば、NetCDF ファイルに格納された気温、相対湿度、風速の変数をモザイク データセットに追加できます。 これらの変数から、風速冷却指数と熱指数を計算するラスター関数テンプレートを作成して、そのテンプレートをモザイク データセットに追加できます。 元の変数と新しいテンプレートを使用して、気温、風速、湿度、風速冷却、および熱指数を視覚化できます。

特定の深度と位置にある変数を検索するときは、Groupname フィールドを使用できます。 Groupname フィールドは、モザイク データセット内のアイテムのグループを定義します。 同じ Groupname 値を持つアイテムは 1 つのグループに属します。 アイテム グループ タイプのラスター関数テンプレートでは、各グループ内で変数による計算が行われ、グループごとにラスターが生成されます。

場合によっては、1 つのアイテムがすべてのグループの計算に関与していることがあります。 この場合は、このアイテムを各グループで複製する代わりに、そのアイテムの Groupname を「*」として設定して、TagVariable フィールドに有効な値を指定します。

注意:

多次元データは、モザイク データセットに存在している必要はありません。 モザイク データセットがワークフローに適切であることを確認してください。

NetCDF および HDF

一部の NetCDF または HDF データには、不規則に配置された配列としてデータのジオロケーションが格納されます。 モザイク データセットの追加時、表示目的でのみ、データが自動的に正方形のピクセルに変換されます。 セル サイズは推計されますが、内挿法の設定に加えてこのセル サイズの変更が可能です。 サポートされている内挿法には次のものがあります。

  • 最近隣内挿法
  • 共一次内挿法
  • 線形間引き
  • Natural Neighbor

ほとんどの場合で、最近隣内挿法と共一次内挿法が推奨されます。 低密度または不完全状態のデータセットを操作するときは、線形間引きや Natural Neighbor が適している場合もあります。

GRIB

一部の GRIB 製品は、実際の名前の代わりにパラメーター コードを使用して変数を格納します。 拡張メタデータ情報を含む GRIB TAB ファイルは、コードのインタープリターとして機能する必要があります。 テキスト ファイル (通常データを生成した組織が提供) には *.TAB 拡張子が付与され、データを生成するパラメーター コード、名前、センター、サブセンター、およびテーブル バージョンが含まれています。 たとえば、NASA の NLDAS データセットでは、変数コード 153 を解釈するために GRIB TAB ファイルが必要です。 データに付属する GRIB TAB ファイルは、以下の例のようになります。

GRIB TAB パラメーター。

要素:

153 はコードです。CONVfract は変数名です。変数名の後のテキストはロング ネームです。7 はデータ センターです。12 はデータ サブセンターです。130 はテーブル バージョンです。

GRIB ラスター タイプを使用してモザイク データセットに NLDAS データを追加すると、変数が VAR153 として定義されます。

GRIB TAB データのラスター タイプ プロパティ。

[ラスター タイプ プロパティ][GRIBTAB] をクリックし、GRIB TAB ファイルまたはデータセットのすべての GRIB TAB ファイルを格納するフォルダーを追加し、再度 [変数] タブをクリックすると、変数が [説明] 内で正しく解釈されていることがわかります。 モザイク データセットに変数を追加します。

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  1. NetCDF および HDF
  2. GRIB