限界値到達圏の生成 (Generate Threshold Drive Times) の仕組み

Business Analyst ライセンスで利用できます。

[限界値到達圏の生成 (Generate Threshold Drive Times)] ツールでは、道路ネットワークを利用して、限界値の基準に達するまで外側に拡大する道路距離/時間商圏を生成できます。 出力ポリゴンのサイズは、Business Analyst データセットから選択された限界値変数の [限界値] パラメーターに指定された値によって決まります。

[限界値到達圏の生成 (Generate Threshold Drive Times)] は、入力ポイント フィーチャクラス、限界値変数、および限界値に依存しています。 このジオプロセシング ツールには、距離ベースのパラメーターが含まれるため、ネットワーク データセットを使用して解析が実行されます。

アルゴリズムの詳細

[限界値到達圏の生成 (Generate Threshold Drive Times)] ツールでは、ルート検索アルゴリズムの概念が使用されます。 ルート検索アルゴリズムの目的は関数 F(t) について 0 を求めることですが、このツールに実装されているアルゴリズムは最適化されているため、その目的は、厳密に 0 ではなく、関数 F(t) の最小値に近付くことです。

アルゴリズムの公式

  • THvalue - ユーザーが指定する限界値 (定数)。
  • THvariable - 解析で使用される限界値変数 (例: 2021 Total Population)。 DTpoly には、反復ごとにこの変数が付加されます。
  • DTpoly(Point(xy),t) - 座標 (xy) と距離単位の値 (t) が指定されるポイントの周囲の到達圏ポリゴン。

このアルゴリズムは反復的であり、最終目標は、F(t) がほぼ 0 (または 0) と等しい距離単位 (t) を求めることです。 反復ごとに、アルゴリズムは (t) の新しい推定値を計算し、F(t) の新しい値を計算して、個別の停止条件をチェックします。 停止条件 (下記を参照) のいずれかが満たされると、反復が停止します。 次に、距離単位 (t) の値を使用して、通過可能な道路の周囲に到達圏ポリゴンが生成されます。 その後、このポリゴンが按分され、限界値変数が付加されます。情報付加された値は限界値により近くなります。

このジオプロセシング ツールの次のパラメーターが、ルート検索アルゴリズムの停止条件を示します。

  • [反復制限] - F(t) が 0 である距離単位の値 (t) を求める反復の回数。 このパラメーターはオプションです。
  • [最小ステップ] - 1 つの限界値エリア候補と次の候補の間の最小距離単位。これは、モデルが限界値に近付くときに無限に反復されるのを防ぐためです。 このパラメーターはオプションです。
  • [限界値パーセント誤差] - 限界値到達圏を決定する際に使用される目標値と限界値の最大パーセント誤差 (例: 5%)。 デフォルト値は 5 です。
注意:

アルゴリズムは関数 F(t) の最小値に達するように最適化されているため、ルート検索アルゴリズムは常に 0 に達するとは限りません。 この理由は、厳密に 0 に達しようとすれば、反復が無限に続く可能性があり、その場合は、ツールのパフォーマンスが影響を受けるためです。 このような状況を避けるために、ツールは、2 回の反復間の最小ステップが 2 秒または 22 メートルになるまで反復されます。 デフォルトの最小ステップは、ユーザーが別の値を入力するとオーバーライドされます。

ルート検索アルゴリズムの距離単位の値 (t) は、到達圏アルゴリズムをベースとする到達圏ポリゴンの生成に使用されます。 到達圏アルゴリズムの目的は、指定されたネットワークの距離またはコスト カットオフの範囲内にある接続されたエッジ フィーチャのサブセットを含むポリゴンを返すことです。

ツールのワークフロー例

新しいコミュニティ センターに最適な場所を探すための解析を考えてみましょう。 これまでの解析に基づき、新しいコミュニティ センターを支援するために必要な合計世帯数は 7,000 であることがわかっています。 この情報を [限界値到達圏の生成 (Generate Threshold Drive Times)] ツールで使用すれば、住民がコミュニティ センターに向かって移動する商圏や、移動するまでにかかる時間を視覚化できます。

道路ネットワーク上への予想される位置への配置

[限界値到達圏の生成 (Generate Threshold Drive Times)] ツールには、ネットワーク データセットを利用する距離ベースのパラメーターが含まれているため、ネットワーク データセットを構成している道路上に、提案されたコミュニティ センターを最初にスナップする必要があります。

反復時間の値、道路距離/時間商圏、および按分

次に、このツールはルート検索アルゴリズムを採用して、関数 F(t) が 0 に等しくなるまで複数回反復されます。 ルート検索アルゴリズムが反復される時間の値 (t) ごとに、解析で時間値 (t) を使用して道路距離/時間商圏が作成されます。 その後、各商圏に限界値変数 (この例では 2021 Total Households) が付加されます。 この反復は、関数 F(t) が 0 (またはほぼ 0) に等しくなるまで続行されます。 この時点で、次のステップで使用される時間値 (t) が解析に含まれます。

F(t) が 0 に等しくなる時間 (t) を使用した道路距離/時間商圏の解析

関数 F(t) が 0 (またはほぼ 0) に等しくなる時間値 (t) を求めることができたら、提案された入力コミュニティ センターの周囲に最終の道路距離/時間商圏が作成されます。

次の図は、2 つの入力コミュニティ センターの周囲に生成された到達圏ポリゴンを示しています。

2 つのコミュニティ センターの周囲の到達圏ポリゴン

2 つのポリゴンのサイズは同じでないことがわかります。 この理由は、シャーロット市の中心部 (左下のポリゴン) の人口密度がシャーロット市郊外と比べて高い、つまり、エリアが小さいほど、合計世帯数が多いためです。 アルゴリズムに関して言えば、これは、ルート検索アルゴリズムによって、2 つの入力コミュニティ センターについて求められた (t) の値 (F(t) が 0 に等しくなる) が異なることを意味しています。

限界値変数の付加

次に、ブロックによる按分方法を使用して、道路距離/時間商圏に限界値変数 (2021 Total Households) が付加されます。 この按分方法は、商圏のサイズと解析の範囲に依存しています。

出力ジオメトリと属性

解析によって、各入力ポイントの周囲にポリゴンが生成され、ポリゴン レイヤーの属性テーブル内に主要な属性情報が生成されます。

上記の解析の場合、次のような主要な属性があります。

出力属性テーブル

2021 Total HouseholdsActual Value - これらのフィールドには、各コミュニティ センターの周囲に作成された到達圏ポリゴンの情報付加された値が含まれます。 これらの値は限界値である 7,000 に近い値ですが、合計世帯数を取得するエリアのサイズは異なります。

注意:

2021 Total Households はこの解析の限界値として使用されたため、テーブルにはフィールド名 2021 Total Households が表示されます。 選択した限界値変数に応じて、適切なフィールドが出力レイヤーに生成されます。

RadiusRadius Units - Radius フィールドには、F(t) が 0 近くに達した時間値が含まれます。 コミュニティ センターの周囲の道路距離/時間商圏はこの値を使用して作成されています。 Radius Units フィールドには、商圏の計測単位が表示されます。 半径単位は、このツールで使用された [距離タイプ] および [距離単位] パラメーターに依存しています。

2 つの入力コミュニティ センターで Radius の値がどの程度異なるかを確認できる一方で、これらのエリアでは約 7,000 の世帯が取得されています。 シャーロット市中心部にあるコミュニティ センターの場合、世帯人口に対して限界値を満たすために必要とされる運転時間はわずか 3.17 分ですが、コンコード市 (シャーロット市郊外) のコミュニティ センターの場合、世帯人口に対して限界値を満たすために必要な運転時間は 6.3 分です。

上記の解析により、意思決定者は、基礎となる人口統計および提案されたコミュニティ センター周辺の実際の道路ネットワークを考慮に入れた上で、商圏を視覚化できます。 [限界値到達圏の生成 (Generate Threshold Drive Times)] ツールから得られた商圏をさらに詳しく解析すると、新しいコミュニティ センターに最適なサイトを選択することができます。

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