ソース特性がコスト距離解析に与える影響

Spatial Analyst のライセンスで利用可能。

[コスト距離 (Cost Distance)] ツールと [パスの距離 (Path Distance)] ツールでは、移動者のソース特性を定義して、次の内容を制御できます。

  • 各ソースからの別々の移動モード (車での移動や徒歩での移動など)
  • ソースの強度 (場所ごとに異なる数の軍隊が配備されている場合など)
  • コスト減衰関数 (ハイカーの疲労など)
  • ソースの開始コスト (トラックを出発させるまでに要する時間など)
  • ソースのキャパシティ (燃料切れになるまで車両が走行できる距離など)
  • 移動者の移動方向 (移動者がソースから移動するか、ソースへ移動するかなど)

ソース特性によって解決できる問題の例

ソース特性を使用すると、次のコスト距離およびパス距離の用途に対応できます。

  • 2 か所の本部から別々の移動モード (一方は全地形対応車、もう一方は徒歩) を利用して、道に迷ったハイカーを捜索できる場所を特定する。
  • 3 か所の施設に異なる数の消防士が配属されていることを考慮して、それぞれの施設から消防士が到達できる場所を確認する。最初の施設には 25 名、2 番目の施設には 15 名、3 番目の施設には 10 名の消防士がそれぞれ配属されています。
  • 疲労からくるハイカーの体力の消耗を考慮して、キャンプ場に最適な場所を特定する。
  • 離れた場所で山火事が発生した場合に、消防士が資機材を積載するのに 16 分かかることを考慮して、火事の発生現場までの所要時間を解析する。
  • 人道支援活動で遠方の目的地まで長距離を移動する必要がある医療用品運搬車の燃料補給所を設置する場所を決める。

ソース特性を考慮したコスト距離の式

ソース特性を考慮したコスト距離の式を次の各セクションで詳しく説明します。

基本的なコスト距離の式

隣接セルをどのように通過するかに応じて、2 つの基本的なコスト距離の式を適用できます。

垂直セル

垂直セルへのコスト距離の式を次に示します。

accum_cost = a1 + (cost2 + cost3)/2

  • 各要素は次のとおりです。

    a1 - セル 1 からセル 2 への累積移動コスト

    cost2 - セル 2 の移動コスト

    cost3 - セル 3 の移動コスト

    accum_cost - セル 1 からセル 3 への累積移動コスト

隣接していないセルのコスト計算

対角線セル

対角線セルへのコスト距離の式を次に示します。

accum_cost = a1 + (1.4142 * ((cost2 + cost3)/2))

パス距離の式

隣接セルをどのように通過するかに応じて、2 つの基本的なパス距離の式を適用できます。

垂直セル

accum_cost = a1 + ((((cost2 * HF(2)) + (cost3 * HF(3)))/2) * Surface_distance(23) * VF(23))

  • 各要素は次のとおりです。

    cost2 - セル 2 の移動コスト

    cost3 - セル 3 の移動コスト

    HF(2) - セル 2 の水平方向ファクター

    HF(3) - セル 3 の水平方向ファクター

    Surface_distance(23) - セル 2 からセル 3 までのサーフェス距離

    VF(23) - セル 2 からセル 3 までの垂直方向ファクター

対角線セル

accum_cost = a1 + ((((cost2 * HF(2)) + (cost3 * HF(3)))/2) * 1.414214 * Surface_distance(23) * VF(23))

ソース特性を考慮したコスト距離およびパス距離の式

ソースからの移動者の特性を考慮するには、次の式を適用します。

垂直セルへのコスト距離

accum_cost = (a1 * (1.0 + resistance_rate) + (((cost2 + cost3) / 2) * cost_multiplier))

  • 各要素は次のとおりです。

    resistance_rate - ハイカーの疲労など、累積コストの増加に伴うコスト単位の変動への対応をシミュレートするために累積コストに動的に加えられる調整。

    cost_multiplier - コスト単位に適用する乗数。値が大きいほど、移動にコストがかかります (徒歩で移動する場合と全地形対応車に乗って移動する場合の比較など)。

垂直セルへのパス距離

accum_cost = (a1 * (1 + resistance_rate)) + ((((cost2 * HF(2)) + (cost3 * HF(3)))/2)               * Surface_distance(23) * VF(23) * cost_multiplier)

ソース特性は、単一の値 (すべてのソースに適用される) で特定されるか、ソースに関連付けられた属性テーブル内のフィールド (フィールド内の各値がそれに対応するソースに適用される) を使用して特定されます。

ソース特性を特定するテーブル
各ソースに適用されるソース特性を特定するテーブル

コスト乗数

使用事例 1: 各ソースからの移動モードが異なる (徒歩で移動する場合と全地形対応車に乗って移動する場合の比較など)。

使用事例 2: 各ソースでのリソースの強度が異なる (本部ごとに配属されている消防士の人数が異なる場合など)。

ソースからの移動モードが異なる場合またはソースでの強度が異なる場合、移動速度を上げたり下げたりするか、コスト サーフェス上のカバレッジを広くしたり狭くしたりすることができます。これらの特性により、セルを通って移動する場合のコストが増減します。

コスト乗数を使用すると、モードまたは強度を実装することができます。全地形対応車は徒歩と比べてより迅速にコストに対応できるため、徒歩よりも小さい乗数が使用されます。また、多数の消防士が配属されているソースは、少数の消防士が配属されているソースと比べて、より広範な地域に対応できる (より迅速にコストに対応できる) ため、少数の消防士のソースよりも小さい乗数が使用されます。

乗数が単一の値の場合、その乗数はすべてのソースに適用されます。モードまたは強度 (乗数) がソースごとに異なる場合は、各ソースに関連付けられたフィールドを使用して乗数を指定できます。

開始コスト

使用事例: ソースを出発する前の準備に要する時間。

開始コストは、単一の値 (各ソースに追加される) で特定するか、各ソースに関連付けられたフィールド (開始コストがソースごとに異なる場合) を使用して特定することができます。開始コストは、各ソースに関連付けられた固定コストです。

最初のセルに到達するには、ゼロからソース計算を開始する代わりに、次の式を使用します。

a1 = (((cost1 + cost2) / 2) * cost_multiplier)

この累積式では、starting_cost (ソースに関連付けられた開始コスト) を使用しています。

a1 = starting_cost + (((cost1 + cost2) / 2) * cost_multiplier)

耐性率

使用事例: 体力を消耗したハイカー。

このソース特性は、動的に変化する唯一のソース特性です。累積コストが増加すると、それに伴って耐性率の影響も大きくなります。次のセルへの移動にかかるコストを算出する場合は、概念上、そのセルに到達するまでの累積コストに耐性率を乗算し、求められた積を実行中の累積コスト計算に加算します。この結果、耐性率の影響が移動者と密接に関係していることが分かります。つまり、耐性率が高いほど、次のコスト単位への対応に要する労力が大きくなります (移動者が疲労しやすくなります)。

耐性率は複利と似ており、累積コストの値が非常に大きいため、耐性率を低くすることをお勧めします (0.005 など)。

キャパシティ

使用事例: 遠隔地の医療用品車両の燃料補給用地の候補の識別。

コスト キャパシティは、ソース (またはソースからの移動モード) ごとに単一の値またはフィールドのいずれかで定義します。動的なコスト距離アルゴリズムは、各ソースのキャパシティに到達するまで拡大を続けます。出力コスト アロケーションは、キャパシティ パラメーターが設定されている場合と設定されていない場合で異なることがあります。つまり、低キャパシティの領域の近くに高キャパシティの領域がある場合、キャパシティが設定されていないと、高キャパシティの領域は、低キャパシティの領域に最初から割り当てられているセルの一部を取得できます (ただし、累積コストが低キャパシティの領域の定義済みキャパシティを超えているセルに限ります)。

移動方向

使用事例 1: ボブキャットは、安全のために道路から遠い場所を好みます。

使用事例 2: ボブキャットは、河川に簡単に行ける場所を好みます。

このソース特性により、移動者の移動方向を指定できます。[移動方向] パラメーターの [ソースから移動] オプションは、移動者がソースを起点として、ソース以外のすべての場所に離れていくことをシミュレートします。[ソースへ移動] オプションは、ソース以外のすべての場所を起点として、ソースへ戻ることをシミュレートします。移動方向は、移動者の移動方向に影響を受けるすべてのパラメーターに影響します。これには、[コスト距離 (Cost Distance)][コスト アロケーション (Cost Allocation)][コスト バック リンク (Cost Back Link)] の開始コストおよび耐性率、[パスの距離 (Path Distance)][パスの距離アロケーション (Path Distance Allocation)][パスの距離バック リンク (Path Distance Back Link)] の開始コスト、耐性率、垂直方向ファクターおよび水平方向ファクターがあります。

前のセクションで説明した式は、[ソースへ移動] 移動方向を使用した計算方法を反映しています。[ソースから移動] オプションの場合、式は基本的に反転されます。たとえば、式の耐性率の部分だけを見ると、ソースから離れる移動の場合、最初の 5 つのセルに次の一般公式が使用されます。

[ソースから移動]

a5 = c1 + c2 (1+r) + c3 (1+r)2 + c4(1+r)3 + c5(1+r)4

  • 各要素は次のとおりです。

    a5 - 最初の 5 つのセルの最小累積コスト

    ci - セル識別子

    r - 耐性率

このパラメーターのその他の設定は、次のように、式の反転を表します。

[ソースへ移動]

a5 = c1 (1+r)4 + c2 (1+r)3 + c3 (1+r)2 + c4 (1+r) + c5

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