日射量の計算方法

Spatial Analyst のライセンスで利用可能。

日射量解析ツールは、Rich 他 (Rich 1990、Rich 他 1994) によって開発された後、さらに Fu と Rich (2000、2002) によって開発された全天可視領域アルゴリズムから得た方式に基づき、地形上または特定の場所の日射量を計算します。

特定の場所またはエリアについて計算された総日射量は全天日射量として示されます。直達日射、散乱日射、および全天日射の計算が各フィーチャの位置や地形サーフェス上のすべての場所について繰り返し実行され、地理的エリア全体の日射量マップが生成されます。

日射量の計算式

全天日射量の計算

全天日射量 (Globaltot) は、すべての太陽軌道図セクターと天空図セクターのそれぞれの直達日射量 (Dirtot) と散乱日射量 (Diftot) の合計値として計算されます。

 Globaltot = Dirtot + Diftot

直達日射量

指定の場所の総直達日射量 (Dirtot) は、すべての太陽軌道図セクターの直達日射量 (Dirθ,α) の合計値です。

 Dirtot = Σ Dirθ,α    (1)

天頂角 (θ) と方位角 (α) で指定された重心を持つ太陽軌道図セクターの直達日射量 (Dirθ,α) は、次の式を使って計算されます。

 Dirθ,α = SConst * βm(θ) * SunDurθ,α * SunGapθ,α * cos(AngInθ,α)  (2)
  • 以下に、式の各項目を示します。
    • SConst - 地球と太陽間の平均距離における大気圏外の太陽エネルギー束。太陽定数として知られています。この解析で使用される太陽定数は 1367 W/m2 です。この値は、世界放射センター (WRC: World Radiation Center) の太陽定数と一致しています。
    • β - 最短距離 (天頂角の方向) での大気圏の透過率 (波長全体での平均値)。
    • m(θ) - 天頂角の光路長に対する比率として計測される相対光路長 (下記の式 3 を参照)。
    • SunDurθ,α - 天空セクターが表す時間。大部分のセクターでは、日間隔 (1 か月など) に時間間隔 (30 分など) を乗算した値に等しくなります。部分的なセクター (地平線近く) では、この時間が球面幾何学を使用して計算されます。
    • SunGapθ,α - 太陽軌道図セクターのギャップ比率。
    • AngInθ,α - 天空セクターの重心とサーフェスに垂直な軸との間の入射角 (下記の式 4 を参照)。

相対光路長 (m(θ)) は太陽天頂角と標高 (海抜) によって決まります。80 度未満の天頂角については、次の式を使って計算できます。

 m(θ) = EXP(-0.000118 * Elev - 1.638*10-9 * Elev2) / cos(θ)   (3)
  • 以下に、式の各項目を示します。
    • θ - 太陽天頂角。
    • Elev - 標高 (単位: メートル)

サーフェスの傾斜方向の影響は、入射角の余弦を乗算することにより考慮されます。入射面と、天頂角と方位角で指定された重心を持つ指定の天空セクターとの間の入射角 (AngInSkyθ,α) は、次の式を使って計算されます。

 AngInθ,α = acos( Cos(θ) * Cos(Gz) + Sin(θ) * Sin(Gz) * Cos(α-Ga) )   (4)
  • 以下に、式の各項目を示します。
    • Gz - サーフェスの天頂角。

      80 度を超える天頂角では、屈折が重要になります。

    • Ga - サーフェスの方位角。

散乱日射量の計算

重心における散乱日射量 (Dif) は、天空セクターごとに次の式で計算されます。時間で積分され、さらにギャップ比率と入射角で補正されます。

 Difθ,α = Rglb * Pdif * Dur * SkyGapθ,α * Weightθ,α * cos(AngInθ,α)   (5)

  • 以下に、式の各項目を示します。
    • Rglb - 全天標準日射量 (下記の式 6 を参照)。
    • Pdif - 全天標準日射量のうち散乱する比率。通常、非常に晴れた状況で約 0.2、非常に曇った状況で 0.7 になります。
    • Dur - 解析の時間間隔。
    • SkyGapθ,α - 天空セクターのギャップ比率 (全天可視領域の割合)。
    • Weightθ,α - 指定した天空セクターを起点とする散乱日射の、すべてのセクターに対する比率 (下記の式 7、8 を参照)。
    • AngInθ,α - 天空セクターの重心と入射面との間の入射角。

全天標準日射量 (Rglb) は、各セクター (不可視のセクターを含む) からの直達日射量を合計してから、入射角を補正せずに、直達日射量の割合 (1-Pdif) を補正することで計算できます。

 Rglb = (SConst Σ(βm(θ))) / (1 - Pdif)    (6)

均質な天空の散乱モデルでは、Weightθ,α は、次の式で計算されます。

 Weightθ,α = (cosθ2- cosθ1) / Divazi    (7)

  • 以下に、式の各項目を示します。
    • θ1θ2 - 天空セクターの境界の天頂角。
    • Divazi - 天空図の方位角方向の分割数。

標準的な曇り空のモデルでは、Weightθ,α は、次の式で計算されます。

 Weightθ,α = (2cosθ2 + cos2θ2 - 2cosθ1 - cos2θ1) / 4 * Divazi  (8)

場所の総散乱日射量 (Diftot) は、全天空図セクターからの散乱日射量 (Dif) の合計値として計算されます。

 Diftot = Σ Difθ,α     (9)

参考文献

Fu, P. 2000. A Geometric Solar Radiation Model with Applications in Landscape Ecology. Ph.D. Thesis, Department of Geography, University of Kansas, Lawrence, Kansas, USA.

Fu, P., and P. M. Rich. 2000. The Solar Analyst 1.0 Manual.Helios Environmental Modeling Institute (HEMI), USA.

Fu, P., and P. M. Rich. 2002. "A Geometric Solar Radiation Model with Applications in Agriculture and Forestry."Computers and Electronics in Agriculture 37:25-35.

Rich, P. M., R. Dubayah, W. A. Hetrick, and S. C. Saving. 1994. "Using Viewshed Models to Calculate Intercepted Solar Radiation:Applications in Ecology.American Society for Photogrammetry and Remote Sensing Technical Papers, 524-529.

Rich, P. M., and P. Fu. 2000. "Topoclimatic Habitat Models."Fourth International Conference on Integrating GIS and Environmental Modeling の議事録

関連トピック


このトピックの内容
  1. 日射量の計算式
  2. 参考文献