ArcGIS Pro ソフトウェア リリースは「セマンティック バージョニング」仕様に準拠しています。 この仕様では、major.minor.patch スキーマに準拠してソフトウェア バージョンが定義され、見込みが設定されます。そのため、スムーズなアップグレード プロセスを計画して、リスクを軽減し、共同作業の中断を回避できます。
次の表は相違点をまとめたもので、後続のサブセクションでより詳しく説明しています。
Major.minor.patch | 例 | 追加された新機能 | インストールと互換性の注意事項 |
---|---|---|---|
Major | 2.0.0 | はい | 新機能をサポートする重要な新しいコードが導入されています。 後方互換性に影響する変更が加えられているため、ArcGIS Pro のドキュメントを以前のメジャー バージョンと共有することはできません。 |
Minor | 2.8.0 | はい | 新機能をサポートする重要な新しいコードが導入されています。 |
Patch | 2.8.3 | いいえ | 不具合を修正し、セキュリティの脆弱性に対処するために、最小限のコードの変更が加えられています。 |
メジャー リリース
メジャー リリースでは、後方互換性のない変更が導入されます。 これには、ArcGIS Pro プロジェクト ファイル (*.aprx) のほか、レイヤー ファイル、マップ ファイル、プロジェクト テンプレート、レポート、レイアウト ファイルなどのドキュメント形式の変更が含まれます。 また、ArcGIS Pro SDK の API の最新の変更も導入されます。
一般的に、互換性に影響する変更点はプロジェクトでわかります。 あるメジャー リリース バージョンの ArcGIS Pro でプロジェクトを作成すると、このプロジェクトを以前のメジャー バージョンのソフトウェアで開くことはできません。 プロジェクトは、メジャー リリース間で前方互換性がありますが (たとえば、ArcGIS Pro 2.x.x で作成されたプロジェクトは 3.x.x で開くことができます)、プロジェクトを新しいメジャー バージョン (3.x.x) で保存すると、古いメジャー バージョン (2.x.x) で再び開くことはできなくなります。 こういった理由から、共同作業者はよく新しいメジャー バージョンへのアップグレードを調整します。
ArcGIS Pro のメジャー リリースはまれです。組織は通常、ワークフロー、カスタマイズ、およびドキュメントのスムーズな移行のために、事前に計画する必要があります。 メジャー リリースには、不具合を修正し、セキュリティの脆弱性に対処するためのコードも含まれています。
メジャー リリースの例
2.8.1 では、メジャーの部分は 2 で、このバージョンが 1.x.x シリーズのソフトウェアから互換性に影響する変更が加えられていることを意味します。 2.8.1 のドキュメントと API は、1.4.0 などの以前のリリースと互換性がありません。 2.8.1 で作成されたプロジェクトまたはレイヤー ファイルは、1.4.0 で開くことはできません。 バージョン 2.x.x のプロジェクトをバージョン 1.x.x と互換性のある形式で直接保存することはできません。ただし、一部のプロジェクト アイテムは、1.x.x 形式でパッケージを作成できます。 詳細については、下の「パッケージ」のセクションをご参照ください。
パッケージ
マップ パッケージ、モバイル マップ パッケージ、レイヤー パッケージ、ジオプロセシング パッケージには、以前のメジャー リリース間での互換性があります。つまり、ArcGIS Pro 3.x.x で作成されたパッケージを ArcGIS Pro 2.x.x プロジェクトにインポートしたり、追加したりすることができます。 同様に、ArcGIS Pro 3.x.x で作成されたプロジェクト パッケージを 2.x.x バージョンで開くことができます。
アドイン
「アドイン」は、メジャー リリース間で後方互換性も前方互換性もありません。 バージョン 3.x.x 向けに構築されたアドインは、バージョン 2.x.x では読み込まれません。バージョン 2.x.x 向けに構築されたアドインは、バージョン 3.x.x では読み込まれません。 メジャー リリースでは、最新バージョンの ArcGIS Pro SDK を使用してアドインを再構築する必要があります。 詳細については、「開発者のための新機能」をご参照ください。 ユーザーはアドインの更新版についてプロバイダーに問い合わせる必要があります。
マイナー リリース
マイナー リリースは新機能を提供しますが、既存のワークフロー、カスタマイズ、ドキュメントの互換性は損なわれません。 以前のマイナー バージョンの ArcGIS Pro は、メジャー リリースが同じで、後のマイナー バージョンで作成されたドキュメントを開くことができますが、新しい機能は使用できません。 マイナー リリースには、新機能をサポートする重要なコードの変更が含まれているため、組織によっては、そのリリースを広く導入する前に、限定的なテスト環境で公開します。 環境がそれほど厳密に制御されていない組織では、多くの場合、ユーザーが ArcGIS Pro の「ソフトウェアの更新」を使用して次のリリースにアップグレードします。このアップデートは、新しいリリースまたはパッチが利用可能になると、自動的に通知されます。
ArcGIS Pro では、マイナー リリースは通常、年に 2 回行われます。 これには、不具合を修正し、セキュリティの脆弱性に対処するためのコードも含まれています。
マイナー リリースの例
2.8.1 では、マイナーの部分は 8 で、このバージョンに 2.7.x シリーズのリリースでは利用できない新機能が含まれていることを意味します。 2.8.0 で導入された新しいシンボル タイプは、レイヤー ファイルに保存することができます。このレイヤー ファイルを 2.7.x で開くことはできますが、新しいシンボル タイプは表示されません。
パッチ
パッチで導入されるすべての変更には、後方互換性と前方互換性があります。 パッチは、既存のプロジェクトおよびドキュメントとシームレスに連携します。 パッチは不具合とセキュリティの脆弱性のみを修正するため、一般的に、パッチをインストールすると、インストールしない場合より安全になると見なされます。
マイナー リリースと同様に、パッチでは既存のワークフロー、カスタマイズ、ドキュメントの互換性は損なわれません。 パッチは新機能を提供しないため、最小限のコードの変更が含まれ、通常は、メジャーまたはマイナー リリースで行われるような動作の詳細な再確認を行わずに配置されます。
レガシー:
一部の Esri ソフトウェア製品は、セマンティック バージョニング仕様に準拠していません。 これらの製品も、この種のリリースをパッチと呼びますが、バージョン番号は変更されず、パッチの存在は、Windows のコントロール パネルまたは Esri の PatchFinder ユーティリティを使用してのみ表示できます。
パッチの例
2.8.1 では、パッチの部分は 1 で、このバージョンには、2.8.0 リリースで特定された問題を修正するための不具合の修正が含まれていることを意味します。
ArcGIS Pro のリリース情報
「製品ライフ サイクル チャート」には、ArcGIS Pro 3.1 以前のバージョンに関するすべてのリリース日とサポート終了日、およびその他の関連情報が記載されています。