ArcGIS Network Analyst extension は、市街地での最適ルートの検索、一番近い緊急車両または施設の検出、ある位置の周囲に存在する到達圏の特定、配送車両の走行順序の指定など、交通ネットワークの解析を実行できる 6 つのタイプの解析をサポートします。 以下のセクションでは、各解析と実行可能なネットワーク解析のタイプについて説明します。
ルート
ルート解析を使用すると、ある場所から別の場所への最適なルート、または複数の場所を訪れる場合の最適なルートを検索できます。 最適ルートとは、1 日の所定の時刻における交通状況を考慮した上での最速ルートや、移動距離が最小になる最短ルートのことです。 また、ルート解析を使用して、指定した許容時間中に各ストップを移動する最適ルートを検索することもできます。 訪問するストップが複数ある場合、指定した場所の順序を固定して最適ルートを決定することができます。 このようなルートは、単純なルートと呼ばれます。 また、場所を移動する最適な順序を決定することもできます (巡回セールスマン問題)。 このようなルートは、最適化されたルートと呼ばれます。
入出力
解析には次の入力パラメーターと出力パラメーターがあります。
- ストップ (入力) - 出力ルートで訪問する入力ロケーション
- ルート (出力) - 解析の結果として得られたルート
ルート解析はソリューションの各ルートに対してルート案内を生成します。
入力と出力の詳細については、「ルート解析レイヤー」をご参照ください。
ルート解析用 arcpy.nax モジュールの使用方法については、「Route input data types」および「Route output data types」をご参照ください。
最寄り施設の検出
最寄り施設の検出解析は、インシデントと施設の間を移動するコストを計測し、一方に最も近いものを決定します。 最寄り施設を検出するとき、検索件数と、移動方向を施設に向かう方向にするか、施設から向かう方向にするかを指定できます。 最寄り施設の検出解析は、インシデントと施設の間の最適なルートを表示し、その移動コストを報告して、ルート案内を返します。
最寄り施設を検出するときに、カットオフ コスト (解析が、それを超える施設を検索しない) などの制約を指定することができます。 たとえば、事故現場から 15 分以内の運転で到着できる病院を検索するように、最寄り施設の検出を設定できます。 到着が 15 分を超える病院は結果に含まれません。 この例では、病院が施設で、事故がインシデントになります。 複数の最寄り施設解析を並行して実行することもできます。 つまり、複数のインシデントを設定し、各インシデントに対して 1 つまたは複数の最寄り施設を検索することができます。
ヒント:
最寄り施設の検出と OD コスト マトリックス解析では、ほぼ同様の解析が行われます。主な違いは、出力と計算速度です。OD コスト マトリックスは高速に結果を生成しますが、ルートの正確な形状やルート案内を返すことができません。大規模な M x N 問題をすばやく解決するように設計されているため、ルートの形状やルート案内を生成するために必要な情報を内部に保持しません。一方、最寄り施設の解析はルートとルート案内を返しますが、OD コスト マトリックス解析よりも低速です。ルート案内やルートの正確な形状が必要な場合は最寄り施設の解析を使用し、それ以外の場合は OD コスト マトリックス解析を使用して計算時間を短縮します。
入出力
解析には次の入力パラメーターと出力パラメーターがあります。
- 施設 (入力) - 最寄り施設の解析で始点または終点として使用される入力ロケーション
- インシデント (入力) - 最寄り施設の解析で始点または終点として使用される入力ロケーション
- ルート (出力) - 解析の結果として得られたルート
最寄り施設解析はソリューションの各ルートに対してルート案内を生成します。
入力と出力の詳細については、「最寄り施設解析レイヤー」をご参照ください。
最寄り施設解析用 arcpy.nax モジュールの使用方法については、「ClosestFacility input data types」および「ClosestFacility output data types」をご参照ください。
到達圏
到達圏解析を利用すると、次のような質問に答えることができます。
- ここから 5 分間走行すると、どこまで行くことができるのか。
- 店舗から運転距離が 3 マイル以内のエリアはどこか。
- 消防署から 4 分以内のエリアはどこか。
到達圏の作成は、ポイントのバッファー処理に似ています。 ポイントをバッファー処理する場合、直線距離を指定し、その距離内のエリアを示す円を作成します。 ポイントの周囲に到達圏を作成する場合も同様に距離を指定しますが、バッファーとは異なり、道路網などのネットワークに沿って移動できる最大距離を表します。 その結果、指定した距離内に到達できる道路を覆う到達圏が作成されます。
たとえば、以下の図は、5 マイルのバッファー (暗い円) と 5 マイルの到達圏 (バッファー内にある明るい色の不規則な形状) を比較したものです。
到達圏は、人や物がネットワークに沿って移動する動きをモデル化したものです。 バッファーは、任意の方向に障害なく移動できることを想定しています。
たとえば、応急手当のできる施設から 5 マイルの走行距離内の人口を調べるには、到達圏を使用して道路に沿った距離を計測し、潜在的な患者の移動をモデル化することが適切です。 直線のバッファーを使用して人口数を計測すると、本当に 5 マイル以内の移動距離で施設に到着できる人の人口を過大に評価することになります。
到達圏をカスタマイズするには、到達圏解析レイヤーのプロパティを設定し、解析レイヤーを構成するフィーチャクラスのフィールド値を設定します。
入出力
解析には次の入力パラメーターと出力パラメーターがあります。
- 施設 (入力) - 周囲に出力到達圏ポリゴンを作成する入力施設
- ポリゴン (出力) - 指定された時間、距離、その他の移動コスト カットオフ内に到着できるネットワークのエリアをカバーする結果の到達圏ポリゴン
- ライン (出力) - 指定された時間、距離、その他の移動コスト カットオフ内に到着できる道路またはネットワーク エッジをカバーするライン フィーチャとしての結果の到達圏
入力と出力の詳細については、「到達圏解析レイヤー」をご参照ください。
到達圏解析用 arcpy.nax モジュールの使用方法については、「ServiceArea input data types」および「ServiceArea output data types」をご参照ください。
ロケーション-アロケーション
一般的に、立地は、民間企業または公共サービスの効果的な運営に最も重要な要因であると考えられています。 民間企業の場合、地元の常連が通う小規模な喫茶店であっても、配送センターを伴う多国籍製造流通ネットワークであっても、世界規模の小売チェーンであっても、適切なロケーションにより利益を得ることができます。 また、適切なロケーションにより、低い固定費および間接費と高いアクセス性を維持できます。 学校、病院、図書館、消防署、ERS (緊急対応サービス) センターなどの公共サービスの施設は、ロケーションが適切であれば、高品質なサービスを低コストでコミュニティに提供できます。
ロケーション-アロケーション解析の目的は、商品とサービスを提供する施設およびそれらを消費する需要地点に関する情報に基づいて、需要地点に商品とサービスを最も効率的に供給できるように施設を配置することです。 名前が示すように、ロケーション-アロケーションは、施設を配置すると同時に施設に需要地点を割り当てる 2 つの要素で構成される解析です。
すべてのロケーション-アロケーション解析が同じ問題を解決するわけではなく、最適なロケーションは施設のタイプによって異なります。 たとえば、ERS センターにとって最適なロケーションは、製造工場にとって最適なロケーションとは異なります。 次の 2 つの例は、ロケーション-アロケーション解析の目的が配置される施設のタイプによってどのように異なるかを示しています。
例 1: ERS センターの配置
救急車を呼ぶと救急車は至急到着するのが当然であると考えられています。緊急対応時間は、救急車と患者の間の距離に大きく左右されます。 通常、ERS センターに最適なサイトを決定するときの目標は、救急車が所定の時間枠内に最も多くの人に到達できるようにすることです。 具体的には、3 つの ERS 施設をどこに配置すれば 4 分以内にコミュニティの最も多くの人に到達できるかなどの課題を検証します。
例 2: 製造工場の配置
多くの小売店は商品を製造工場から受け取ります。 製造する商品が自動車、電化製品、または加工食品であるかを問わず、製造工場はその予算の多くを輸送に費やします。 ロケーション-アロケーション解析により、全体的な輸送費を最小限に抑えるにはどこに製造工場を配置する必要があるかという課題が解決できます。
ロケーション-アロケーション解析のタイプ
ロケーション-アロケーション解析レイヤーには、上の 2 つの例で示したような課題も含め、具体的な課題に対応できるように、7 つの解析タイプが含まれます。 7 つの解析タイプは、次のとおりです。
- 加重インピーダンスの最小化 (P 中央値)
- カバーエリアの最大化
- カバーエリアの最大化および施設数の最小化
- アテンダンスの最大化
- 市場シェアの最大化
- 目標市場シェア
- カバー容量の最大化
入出力
解析には次の入力パラメーターと出力パラメーターがあります。
- 施設 (入力) - ロケーション-アロケーション解析で実際のロケーションを選択する候補施設、必須施設、競合施設として使用される入力ロケーション
- 需要地点 (入力) - 施設が提供する商品とサービスを必要とする人または物を表すロケーション
- ライン (出力) - 需要地点とそれらが割り当てられている施設を接続するライン フィーチャ
入力と出力の詳細については、「ロケーション アロケーション解析レイヤー」をご参照ください。
ロケーション アロケーション解析用 arcpy.nax モジュールの使用方法については、「LocationAllocation input data types」および「LocationAllocation output data types」をご参照ください。
OD コスト マトリックス
起点と終点の (OD) コスト マトリックスの解析は、複数の起点から複数の終点までのネットワークに沿った最小コスト パスを検出して計測します。 OD コスト マトリックス解析の設定では、検出する終点の数と最大距離を指定することができます。
OD コスト マトリックス解析で、ネットワークに沿ったラインが出力されない場合でも、ライン属性テーブルに格納されている値は、直線距離ではなくネットワーク距離を反映しています。 OD コスト マトリックス解析の結果は、多くの場合、他の空間解析の入力になります。このときは、直線コストよりもネットワーク コストの方が適切です。 たとえば、人工環境における人々の動きの予測は、ネットワーク コストを使用したほうが適切にモデリングできます。人々が道路や歩行路を移動する傾向があるためです。
ヒント:
直線距離を検出する方が望ましい場合は、[近接情報テーブルの生成 (Generate Near Table)] ジオプロセシング ツールの使用を検討してください。
ヒント:
最寄り施設の検出と OD コスト マトリックス解析では、ほぼ同様の解析が行われます。主な違いは、出力と計算速度です。OD コスト マトリックスは高速に結果を生成しますが、ルートの正確な形状やルート案内を返すことができません。大規模な M x N 問題をすばやく解決するように設計されているため、ルートの形状やルート案内を生成するために必要な情報を内部に保持しません。一方、最寄り施設の解析はルートとルート案内を返しますが、OD コスト マトリックス解析よりも低速です。ルート案内やルートの正確な形状が必要な場合は最寄り施設の解析を使用し、それ以外の場合は OD コスト マトリックス解析を使用して計算時間を短縮します。
入出力
解析には次の入力パラメーターと出力パラメーターがあります。
- 起点 - 終点までのパスの生成で開始点として機能する入力ロケーション
- 終点 - 起点からのパスの生成で終了点として機能する入力ロケーション
- ライン - 起点と終点の間の接続および移動時間または移動距離を表すライン
入力と出力の詳細については、「OD コスト マトリックス解析レイヤー」をご参照ください。
OD コスト マトリックス解析用 arcpy.nax モジュールの使用方法については、「OriginDestinationCostMatrix input data types」および「OriginDestinationCostMatrix output data types」をご参照ください。
配車ルート (VRP)
さまざまな組織が保有車両を使用して訪問先にサービスを提供しています。 たとえば、大型の家具店では何台かのトラックを利用して顧客の自宅まで家具を配達しています。 油を再利用する専門の会社では、レストランから使用済みの油を引き取るために、施設からトラックを一定の経路で走らせています。 保健所では、各健康診査官の毎日の検査訪問をスケジュールしています。
このような例に共通する問題として配車ルート (VRP) があります。 各組織は、どの訪問先 (住宅、レストラン、または検査現場) に各ルート (トラックまたは検査官) でサービスを提供するのか、訪問先をどのような順序で訪れるのかを決定する必要があります。 この主な目的は、訪問先に最善のサービスを提供し、保有車両の全体の運用コストを最小にすることにあります。 このため、Network Analyst のルート解析では多くのストップを訪問する単一車両にとっての最適ルートを検索し、VRP 解析ではさまざまな訪問先にサービスを提供する車両にとっての最適ルートを検索します。 さらに、VRP 解析の場合は、多数のオプション (車両の積載制限と注文数量の一致を図る、運転手に休憩をとらせる、複数の訪問先を同じルートに関係付けるなど) を利用できるため、より具体的な問題を解決することができます。
入出力
解析には次の入力パラメーターと出力パラメーターがあります。
- 訪問先 (入力/出力) - VRP 解析のルートで訪問先となる場所を 1 つ以上指定します。 「訪問先」というオブジェクトによって想定される現実の業務として、顧客への配達、顧客からの集荷、その他があります。
- 拠点 (入力/出力) - 車両が就業日の初めに出発し、就業日の終わりに戻ってくる場所です。
- ルート (入力/出力) - 車両および運転手の特性を指定するルートを 1 つ以上指定し、拠点と訪問先の間の通行を表します。
- 休憩 (入力/出力) - VRP のルートについての休憩時間や休憩を指定します。
- ルート ゾーン (入力) - 特定のルートの担当区域を指定します。
- 拠点立ち寄り状況 (出力) - ルートが拠点で開始、積み替え (荷降ろしまたは再積み込み)、または終了したときに、拠点立ち寄り状況が作成されます。 拠点立ち寄り状況オブジェクトは、ルートが拠点を訪問した理由と、そこで行われたことに関する情報を提供します。
- 訪問先特別指定とルート特別指定 (入力) - 訪問先が要求しており、かつルートが対応可能な特別指定をリストしたテーブルです。 ルートは、訪問先が必要としている特殊な条件をすべてサポートしている場合に限り、その訪問先にサービスを提供できます。
- 訪問先ペア (入力) - 配達と引き取りの訪問先をペアにし、同じルートでサービスされるようにするために使用されるレコードのテーブルです。
- ルート リニューアル (入力) - VRP 解析のルートがアイテムを配達するか引き取るときに、再積み込みおよび荷降ろしのために立ち寄ることができる中間の拠点を指定します。
VRP 解析はソリューションの各ルートに対してルート案内を生成します。
入力フィールドと出力フィールドの詳細については、「配車ルート解析レイヤー」をご参照ください。
VRP 解析用 arcpy.nax モジュールの使用方法については、「VehicleRoutingProblem input data types」および「VehicleRoutingProblem output data types」をご参照ください。