説明
メルカトル図法は、元々は航海のための正確な磁針方位を表示するために作成された正角円筒図法です。この図法の特徴は、局所的なすべての形状が正確で、無限小スケールで適切に定義されている点です。
1569 年に Gerardus Mercator によって提案されました。この図法の Web メルカトル版は、Web マップおよびオンライン サービスのデファクト スタンダードになっています。ArcGIS Pro 1.0 以降と ArcGIS Desktop 8.0 以降で使用できます。
投影のプロパティ
次のサブセクションでは、メルカトル図法のプロパティについて説明します。
経緯線
メルカトル図法は円筒図法です。子午線は互いに平行かつ等間隔の垂直線であり、極に近づくと無限大に広がります。緯度線は子午線に垂直かつ赤道と同じ長さの水平な直線で、極に近づくにつれてその間隔が大きくなります。極は無限大に投影されるため、地図には表示できません。経緯線は赤道と中心子午線に対して対称的です。
歪み
メルカトル図法は正角図法です。方向、角度、および形状は無限小スケールで維持されます。
この投影法で描画される直線は、正しい磁針方位を表します。この正しい方向のラインは航程線ですが、ポイント間の最短距離を示すものではありません。
赤道上または正割緯度 (標準緯線) 上では、縮尺は正確です。
極地域に近づくほど面積が歪みます。たとえば、グリーンランドは南米の面積の 8 分の 1 しかありませんが、メルカトル図法では南米よりもグリーンランドの方が大きく見えます。歪み値は各緯線で同一、かつ赤道および中心子午線をまたいで対称になります。
使用法
この図法は、インドネシアや大西洋の一部などの赤道付近の地域における大縮尺マップの作成に適しています。等角航路が直線となることから、標準的な海図に使用することをお勧めします。この図法の Web メルカトル版は、Web マップおよびオンライン サービスの標準になっています。この図法は、世界地図、掛け図、および Web マップでの主題図の作成に誤用されることがよくあります。
オプション
ArcGIS には 4 つのオプションがあります。
- メルカトル図法はメルカトル図法 (オプション B) としても知られ、ArcGIS Pro 1.0 以降と ArcGIS Desktop 8.0 以降で使用できます。
- メルカトル図法 (球体補正) は楕円体をサポートしていないため、ユーザーが [球体補正タイプ] パラメーターで指定した球体による球体ベースの条件式を使用します。このオプションで楕円体を使用すると、正角でなくなり、等角航路も直線にならなくなります。ArcGIS Pro 1.0 以降と ArcGIS Desktop 9.3 以降で使用できます。
- メルカトル図法 (オプション A) は、投影パラメーターのみがオプション B と異なります。アルゴリズムは同じです。ArcGIS Pro 1.2 以降と ArcGIS Desktop 10.4 以降で使用できます。
- メルカトル図法 (オプション C) は、投影パラメーターのみがオプション B と異なります。アルゴリズムは同じです。ArcGIS Pro 1.2 以降と ArcGIS Desktop 10.4 以降で使用できます。
制限事項
メルカトル図法では、極を表現することはできません。すべての子午線を投影できますが、緯度の上限および下限は北緯 89°および南緯 89°です。EPSG:3857 を使用して Web マップを作成する場合、緯度の上限および下限は北緯約 85°03'04.0636" および南緯約 85°03'04.0636" です。メルカトル図法は面積が大きく歪むため、一般的な地理的世界地図や主題図には適していません。
パラメーター
次に、メルカトル図法のパラメーターを示します。
- 東距
- 北距
- 中央子午線
- 標準緯線 1
メルカトル図法 (球体補正) のパラメーターは次のとおりです。
- 東距
- 北距
- 中央子午線
- 標準緯線 1
- 球体補正タイプ (値は以下のとおり):
- 0 = 地理座標系の長半径または半径を使用
- 1 = 短半径または半径を使用
- 2 = 正積半径を計算および使用
- 3 = 正積半径を使用し、地理緯度を正積緯度に変換
メルカトル図法 (オプション A) のパラメーターは次のとおりです。
- 東距
- 北距
- 中央子午線
- 縮尺係数
メルカトル図法 (オプション C) のパラメーターは次のとおりです。
- 東距
- 北距
- 中央子午線
- 標準緯線 1
- 原点の緯度
Web メルカトル座標系
Web メルカトル座標系は、Google Web メルカトル、球体メルカトル、WGS 84 Web メルカトル、および疑似メルカトルとしても知られています。この座標系は、Web マップおよびオンライン サービスの標準になっています。この座標系とメルカトル図法の球体ベース バージョンを使用して、WGS 84 測地基準系で定義された測地座標が、球体上で定義されているように投影されます。球体の半径は、WGS 1984 の長半径と同じ 6378137.0 メートルです。楕円体上の測地座標と球面方程式と組み合わせると、すべての方向の縮尺係数が維持されない座標系になります。このため、Web メルカトルの座標系は正角ではなく、赤道から離れるにつれて面積と距離の歪みが大きくなり、等角航路も直線として投影されません。
Web サービスでメルカトル図法を利用するために使用される方式は 2 つ存在します。メルカトル図法の実装が回転楕円体 (楕円体) をサポートする場合、投影座標系は球体に基づく地理座標系を基準とする必要があります。このため、球体の式が必ず使用されます。メルカトル球体補正の実装には、球体の式のみが使用されます。また、地理座標系が楕円体に基づいている場合に、球の半径として使用するものを示す投影パラメーターがあります。デフォルト値はゼロ (0) で、長半径を使用します。
ソース
Snyder, J. P. (1987). Map Projections: A Working Manual. U.S. Geological Survey Professional Paper 1395. Washington, DC: United States Government Printing Office.
Snyder, J. P. and Voxland, P. M. (1989). An Album of Map Projections. U.S. Geological Survey Professional Paper 1453. Washington, DC: United States Government Printing Office.
Battersby, S., Finn, M. P., Usery, E. L. and Yamamoto, K. (2014). "Implications of Web Mercator and Its Use in Online Mapping." Cartographica, The International Journal for Geographic Information and Geovisualization, 49 (2), p. 85-101. DOI: 10.3138/carto.49.2.2313