従来のオーバーレイ ツールとペアワイズ オーバーレイ ツールの比較

従来のオーバーレイ ツール ([バッファー (Buffer)][クリップ (Clip)][ディゾルブ (Dissolve)][イレース (Erase)][インテグレート (Integrate)][インターセクト (Intersect)]) と ペアワイズ オーバーレイ ツール ([ペアワイズ バッファー (Pairwise Buffer)][ペアワイズ クリップ (Pairwise Clip)][ペアワイズ ディゾルブ (Pairwise Dissolve)][ペアワイズ イレース (Pairwise Erase)][ペアワイズ インテグレート (Pairwise Integrate)][ペアワイズ インターセクト (Pairwise Intersect)]) は、非常に大規模で複雑なデータセットを 1 つのデスクトップ上で処理するときのパフォーマンスと精度を最大化するために設計されています。 類似する機能のツール間のさまざまな機能やパフォーマンスの違いによって、ワークフローで使用するツールが決まります。 すべてのジオプロセシング ツールに影響する追加の注意事項があり、使用するツールによっては出力の精度や解析のパフォーマンスに影響を与えます。

ツールの比較

[ペアワイズ オーバーレイ] ツールセットは、従来のオーバーレイ ツールに代わる多数のツールを提供します。

ペアワイズ バッファー (Pairwise Buffer) とバッファー (Buffer)

[ペアワイズ バッファー (Pairwise Buffer)][バッファー (Buffer)] ツールの比較は次のとおりです。

  • どちらのツールも並列処理を使用します。 [ペアワイズ バッファー (Pairwise Buffer)] ツールでは、デフォルトで並列処理が有効になります。 [バッファー (Buffer)] ツールでは、並列処理は並列処理ファクター環境によって有効になります。
  • [ペアワイズ バッファー (Pairwise Buffer)] ツールの出力フィーチャは、デフォルトでは [バッファー (Buffer)] ツールで作成される出力フィーチャよりも滑らかさが少なくなります。
  • [ペアワイズ バッファー (Pairwise Buffer)] ツールでは、バッファーの出力フィーチャの滑らかさを制御できます。 [最大オフセット偏差] パラメーターについては、ツールのドキュメントをご参照ください。
  • [バッファー (Buffer)] ツールでは、サイド タイプやエンド タイプなどの出力バッファー オプションを設定できます。

ペアワイズ クリップ (Pairwise Clip) とクリップ (Clip)

  • どちらのツールも並列処理を使用します。 [ペアワイズ クリップ (Pairwise Clip)] ツールでは、デフォルトで並列処理が有効になります。 [クリップ (Clip)] ツールでは、並列処理は並列処理ファクター環境によって有効になります。

ペアワイズ ディゾルブ (Pairwise Dissolve) とディゾルブ (Dissolve)

  • これらのツールの出力は似ており、2 つのツールを互いに区別なく使用できます。
  • [ペアワイズ ディゾルブ (Pairwise Dissolve)] ツールはデフォルトで並列処理を使用します。 [ディゾルブ (Dissolve)] ツールには並列処理機能はありません。

ペアワイズ イレース (Pairwise Erase) とイレース (Erase)

  • これらのツールの出力は似ており、2 つのツールを互いに区別なく使用できます。
  • どちらのツールも並列処理を使用します。 [ペアワイズ イレース (Pairwise Erase)] ツールでは、デフォルトで並列処理が有効になります。 [イレース (Erase)] ツールでは、並列処理は並列処理ファクター環境によって有効になります。

ペアワイズ インテグレート (Pairwise Integrate) とインテグレート (Integrate)

  • [ペアワイズ インテグレート (Pairwise Integrate)] ツールはデフォルトで並列処理を使用します。
  • 統合を実行する基となるエンジンが異なるため、[ペアワイズ インテグレート (Pairwise Integrate)] ツールの内部許容値は [インテグレート (Integrate)] ツールよりも少しだけ大きくなります。

ペアワイズ インターセクト (Pairwise Intersect) とインターセクト (Intersect)

  • これらのツールの出力は、相互に根本的に異なっています。 ワークフローと、出力の違いをなくすためのワークフローの変更度合いを評価せずに、これらのツールを交換して使用することはできません。 詳細については、「ペアワイズ インターセクト (Pairwise Intersect) の詳細」をご参照ください。
  • どちらのツールも並列処理を使用します。 [ペアワイズ インターセクト (Pairwise Intersect)] ツールでは、デフォルトで並列処理が有効になります。 [インターセクト (Intersect)] ツールでは、並列処理は並列処理ファクター環境によって有効になります。

すべての解析ツールの機能とパフォーマンスに関する注意事項

これらの補完ツールのどちらをワークフローで使用するのか決定するときに、どちらのツールも使用可能なことがよくあります。 ただし、以下の情報を参照すれば、使用するツールの選択時にツール間の違いを理解しやすくなります。

機能に関する注意事項

どちらのツールを使用するのか決定する際の第一の注意事項は、その出力が自分のプロジェクトのニーズを満たしているかどうかです。 比較可能なツールの一部は同等の出力を作成しますが、そうでないものもあります。 ツールの出力の主要な違いは、前のセクションに示してあります。 使用するツールを比較する場合には、各ツールのドキュメントで詳しい内容を確認してください。

すべてのツールについて、解析時にリアルタイム投影変換は行わないでください。 リアルタイム投影変換が使用されるのは、ツールの入力が同じ空間参照を共有しない場合です。 リアルタイム投影変換は、出力座標系を変更するジオプロセシング環境 (出力座標系、XY 許容値、XY 座標精度など) を設定するときにも使用されます。 リアルタイム投影変換を行うと、レイヤー間でデータがずれて不正確さが生じる可能性があります。 詳細については、「座標系と投影法」をご参照ください。

XY 許容値と XY 座標精度は、すべてのツールで生成される出力の機能に影響します。 詳細については、「フィーチャクラスの基礎」をご参照ください。 何十年にもわたって、割り当てられた空間参照でデータを処理する際に最も正確な結果を生成するのに使用できる適切な XY 座標精度と XY 許容値を決定するために、多大な研究が行われてきました。 入力データの空間参照にはデフォルトの XY 座標精度と XY 許容値を使用し、データの生成時や解析中にジオプロセシング環境を使用するときには、これらを変更しないことをお勧めします。 不正確な解析結果を生まないためには、[XY 許容値] ツール パラメーターを使用しないこともお勧めします。

  • 実装される XY 許容値はツールごとにわずかに異なる可能性があります。 たとえば、一部のアルゴリズムは反復し、解析中に許容値が何度も適用されます。 XY 許容値をデフォルト値から大きい (または小さい) 値に変更すると、その影響が増殖します。 使用する XY 許容値がデフォルトから大きく離れているほど、問題が発生する確率が高まります。
  • XY 許容値を誤って変更すると、エラー、不正確な解析、フィーチャの移動、トポロジ エラーなどが発生します。
  • XY 座標精度を誤って変更すると、出力のデータが不正確になり、解析結果も不正確になる可能性があります。 XY 座標精度がデフォルトよりも小さくなるように変更すると、フィーチャのサイズが増大します。 これにより、データの処理方法も変わってきます。 従来のオーバーレイ ツールでは、このサイズの増大により、使用可能なリソース内で解析を完了するためにデータのタイルが増え、タイル境界をまたぐフィーチャに導入される頂点の数が増えることになります。 詳細については、「大規模データセットのタイル処理」をご参照ください。

入力フィーチャ ジオメトリは有効でなければなりません。 ジオメトリを処理するすべてのツールは、不良なジオメトリの影響を受けることで、エラー、不正確な解析、プロセスのフリーズ、クラッシュ、最悪の場合は問題の表示なしという事態に陥ります。 すべての入力データに含まれるジオメトリが確実に有効であるようにするのは、ユーザーの責任です。 ジオメトリのチェックと修正に関する詳細

  • 従来のオーバーレイ ツールでは、無効なジオメトリを感知することができます。

パフォーマンスに関する注意事項

すべてのジオプロセシング ツールのパフォーマンスは、入力データのサイズや複雑さに基づいてさまざまに異なります。 各シナリオを処理するツールを効率的に選択するために役立つと思われる傾向がいくつかあります。

大規模にオーバーラップしたエリア

複雑な [インターセクト (Intersect)] ツールの出力例

ラインとポリゴンの大規模にオーバーラップしたエリアは、従来のコア オーバーレイ ツールのパフォーマンスを妨げる可能性があります。

密集したバッファー出力ポリゴンの場合、バッファー ポリゴンがポイントとオーバーラップしている可能性があり、そこでデータ内の 1 つのエリアを選択すると、数十の (あるいは無数の) バッファー フィーチャによる選択セットが返されることになります。 [インターセクト (Intersect)][イレース (Erase)] などのコア オーバーレイ ツールでは、このオーバーラップすべてから作成された一意のすべてのポリゴンを決定すると、コストが高くかかります。 このシナリオでは、ペアワイズ オーバーレイ ツールを選択する方が適していると思われます。

密集した交差ラインの場合、すべての交差ポイントとオーバーラップが、従来のオーバーレイ ツール ([インターセクト (Intersect)][イレース (Erase)][クリップ (Clip)]) によって前もってある程度決定されます。 厳密なケースでは、これはコストが高くかかる可能性があります。 このシナリオでは、ペアワイズ オーバーレイ ツールを選択する方が適していると思われます。

オーバーラップのすべてのインスタンスを見つけることに頼る解析の場合 ([インターセクト (Intersect)] ツールや [ユニオン (Union)] ツールを使用する場合など) は、従来のオーバーラップ ツールを使用する必要があります。 ただし、数万または数十万の入力フィーチャが、それぞれ一意のオーバーラップのインシデントを表す数億の出力フィーチャの出力を作成するような場合には、オーバーラップ操作の結果を理解するためのアプローチを考え直す必要があるかもしれません。 解析目標の再評価によって、解析結果をもっとよく理解するには異なる縮尺のサイズや範囲で解析にアプローチする必要があることが明らかになることもあります。 入力フィーチャのオーバーラップが極端な場合は、より合理的な対象領域にデータを分割することで、従来のオーバーレイ ツールのパフォーマンスが向上することもあります。

極度に大きいフィーチャに関する注意事項

従来のオーバーレイ ツールもペアワイズ オーバーレイ ツールも、データを処理するコンピューターのリソースを超えたフィーチャには対応できません。

  • これらのフィーチャは大きすぎるため、解析を実行するコンピューターでは処理できません。 これらの多くは、解析を実行するコンピューターよりも使用可能なリソース量が多いコンピューターで実行された [ラスター → ポリゴン (Raster to Polygon)] または [ディゾルブ (Dissolve)] 操作によって作成されたものです。
  • これらのフィーチャはまったく描画できないか、一部しか描画できません。
  • ジオプロセシング ツールでこれらのフィーチャを使用すると、目に見える処理のフリーズ、メモリ不足エラー、誤った出力の原因となり、ひどい場合にはクラッシュすることもあります。
  • フィーチャによって、1 つのコンピューター上で大きすぎたりそうでなかったりする可能性があります。 フィーチャを大きすぎると見なすかどうかは、解析を実行するコンピューター上で使用可能な RAM 容量に依存します。 コンピューター上の RAM 容量が大きいほど、大きなフィーチャを問題なく処理できるできるようになります。
  • ジオデータベース内に存在できる個別のフィーチャの最大サイズは 2 GB です。
  • 大きすぎて処理できないフィーチャがある場合は、解析を成功させるために、[フィーチャの分割 (Dice)] ツールを使用してそのフィーチャを分割する必要があります。 既存のフィーチャを操作するために以前から使用されているその他のツールだと、頂点が数百万もあるようなフィーチャの編集はまずできません。

フィーチャが大きすぎると処理中に問題が発生する可能性がありますが、これらのフィーチャを使用して単純なタスクを実行することはできます。 これらは非常に多くの数の頂点を含んでいますが、それ自体が問題を起こすほどの多さではありません。 ただし、従来のオーバーレイ ツールとペアワイズ オーバーレイ ツールのパフォーマンスを阻害し、エラーを発生させるには十分な多さなのです。

  • これらのフィーチャは描画され、単純な解析では問題なく使用できます。しかし、こうした単純な操作の実行中でも、顕著なパフォーマンス低下やメモリ フットプリントの増大が発生する可能性はあります。
  • 場合によっては、これらのフィーチャが対象領域の大部分に広がっていると、そのフィーチャの処理のために (特に並列処理のために) メモリ内で複製の必要が生じることがよくあります。 これにより、最終的にはコンピューター上の使用可能なリソース容量が低下することになります。 重大なパフォーマンス低下やエラーが発生する可能性があります。
  • これらのフィーチャは、従来のオーバーレイ ツールとペアワイズ オーバーレイ ツールのパフォーマンスを低下させます。 ペアワイズ オーバーレイ ツールの方がシンプルなデータ解析アプローチを行い、そのためのメモリ フットプリントも一般的に小さくなるので、このツールの方がこれらのタイプのフィーチャによりうまく対応できることになります。
  • データ内にこれらの非常に大きなフィーチャが含まれている場合は、解析目標を再評価することをお勧めします。 大陸の海岸線の解析や渡り鳥の移動境界の定義のためにミリメートル単位の精度が必要なのか、検討してみてください。
  • データにこうした大規模フィーチャが含まれている場合、解析をより成功させるためには 2 つの方法があります。 データで表されているレベルの精度が必要ない場合は、データの単純化を検討できます ([ポリゴンの単純化 (Simplify Polygon)] や同様のツールを使用)。 フィーチャの精度を維持するには、フィーチャを小さいパートに分割することができます。 フィーチャに多数のパートがある場合は、[マルチパート → シングルパート (Multipart To Singlepart)] ツールによって、解析が十分にうまくいくようにフィーチャのサイズを小さくすることができます。 そうでない場合は、[フィーチャの分割 (Dice)] ツールを使用して、解析前にフィーチャを分割することができます。 分割されたフィーチャは、[ディソルブ (Dissolve)] または [ペアワイズ ディゾルブ (Pairwise Dissolve)] を使用して、分割前に各フィーチャに割り当てられた一意の ID によって、ワークフローの後半で再構成できます。

空間参照に関する注意事項とリアルタイム投影変換

空間参照が異なる 2 つの入力を持つジオプロセシング ツールを使用する場合、ほとんどのツールでは出力座標系が最初の入力に設定され、空間参照が異なる 2 つ目の入力からのデータは、解析のためにこの座標系に投影変換されます。 投影を動的にリアルタイムで変更すると、パフォーマンスが低下することになります (さらに、レイヤー間でデータがずれて不正確さも生じます)。 信頼のおけるパフォーマンスと出力精度を確保するために、可能な場合は常に、すべての入力が同じ空間参照を共有するようにしてください。