Spatial Analyst のライセンスで利用可能。
調整された直線距離が計算された後に、ソース特性を使用して、その距離に達する速度を制御することができます。 また、コスト サーフェス、垂直方向ファクター、および水平方向ファクターを使用しても速度を制御できます。
調整された直線距離に達する速度を計算する一般的な公式は次のとおりです。
移動者の特性コンポーネント (ソース特性) には、移動者の開始コスト、キャパシティ、移動モードの制御に使用できる乗数などが含まれます。 ソースの例として、複数の森林管理事務所があります。 各管理事務所には、異なる数の自然保護官が駐在できます。 ある管理事務所の自然保護官は全地形対応車両 (ATV) を使用し、別の事務所の自然保護官は徒歩で移動するかもしれません。 その結果、管理事務所が担当できる範囲は、事務所によってさまざまです。 ソース特性を制御できないと、それらのソースは同じ特性を持つものとして扱われます。 結果的に、実際の距離の相互作用が取り込まれません。
調整された直線距離に達する速さは、ソースから移動している場合とソースに向かって移動している場合で、異なる可能性があります。 これは垂直方向ファクターと水平方向ファクターのような、他の速度制御ファクターと結合した場合、特に該当します。 [移動方向] ソース特性パラメーターは、移動の方向を制御します。
上記の式が示すように、移動者の特性コンポーネントの乗数は、真に乗数です。乗数の単位は、距離解析の他の速度制御ファクターの単位と相対的に一致している必要があります。
ソース特性の使用例
ソース特性を使用して、以下のようなさまざまな問題を解決することができます。
- 2 か所の森林管理事務所から別々の移動モード (一方は全地形対応車、もう一方は徒歩) を利用して、道に迷ったハイカーを捜索できる場所を特定する。
- それぞれの管理事務所に駐在している捜索員の人数が異なる場合に、捜索隊はどこまでの範囲で行方不明者を捜索できるかを調べる。 捜索員が最も多い管理事務所は、最も広い区域を担当できます。
- 人道支援活動で遠方の目的地まで長距離を移動する必要がある医療用品運搬車の燃料補給所を設置する場所を決める。
- 離れた場所で山火事が発生した場合に、消防士が資機材を積載するのに平均 16 分かかることを考慮して、火事の発生現場までの所要時間を解析する。
- ATV や支援車両の燃料補給所を特定するとき、険しい地形では燃料を余計に消費することを考慮する。
ソース特性の組み込み
距離の解析は、概念的に、次の関連機能領域に分けることができます。
- 直線距離を計算し、必要に応じて、バリアまたはサーフェス ラスターを使用して計算を調整します。
- 直線距離が計算されたら、必要に応じて、コスト サーフェス、ソース特性、垂直方向ファクター、および水平方向ファクターにより、その距離に達する速度を決定します。 累積距離ラスターを作成します。
- 最適ネットワーク、特定のパス、またはコリドーを使用し、生成される累積距離サーフェス上に領域を接続します。
2 つ目の機能エリアから、下図のように、ソース特性によってその距離に達する速度を決定します。 シナリオには、4 つの森林管理事務所のコレクション (紫のドット) と数本の河川 (青いライン) が含まれています。
青緑色 (値 4) の管理事務所の捜索員のために、ATV が購入されました。 ATV に乗った捜索員は、より速くその距離に到達できるので、より広い区域を担当できます。
ソース特性を使用した距離マップの作成
ソース特性を使用したマップを作成するには、[距離累積 (Distance Accumulation)] ツールを使用します。
- [距離累積 (Distance Accumulation)] ツールを開きます。
- [入力ラスター、またはフィーチャ ソース データ] パラメーターにソースを入力します。
- 出力距離ラスターに名前を付けます。
- [ソース特性] カテゴリを展開します。
- 適切な特性 ([初期累積]、[最大累積]、[コストに適用する乗数]、および [移動方向]) を入力します。
- 特性が単一の値 (Double) かどうか、またはフィールド (Field) を使用するかどうかを指定します。
- [実行] をクリックします。
ソース特性は特定距離に達する速度に影響します
ソース特性により、異なるソース位置の移動者の属性を定義し、以下を制御することができます。
- 初期累積 - たとえば、コストが時間の場合に、移動者がソースを出発する前に ATV を準備する時間。
- 最大累積 - たとえば、ATV が燃料を補給しに戻ってくるために移動できる距離。
- コストに適用する乗数 - たとえば、ATV に乗った捜索員は、徒歩よりも速い速度でより多くの距離単位を捜索できます。 移動モードの違いは、乗数によって取り込むことができます。
- 移動方向 - 移動者が、ソースから移動するかソースに向かって移動するかを識別します。 移動方向を、垂直方向および水平方向ファクターとともに使用すると、結果が大きく異なる可能性があります。
ソース特性は、単一の値 (すべてのソースに適用される) で特定できます。 また、ソースに関連付けられた属性テーブル内のフィールド (各値はそれに対応するソースに適用される) によっても特定できます。 この属性テーブルの例を以下に示します。
OBJECTID | シェープ | ID | 乗数 | 開始コスト | キャパシティ |
---|---|---|---|---|---|
1 | ポイント | 1 | 3 | 50 | 170000 |
2 | ポイント | 2 | 2 | 60 | 160000 |
3 | ポイント | 3 | 3 | 50 | 155000 |
4 | ポイント | 4 | 1 | 150 | 160000 |
5 | ポイント | 5 | 3 | 40 | 130500 |
6 | ポイント | 6 | 1.5 | 170 | 185000 |
7 | ポイント | 7 | 1 | 120 | 190000 |
8 | ポイント | 8 | 3.5 | 60 | 160000 |
次のセクションでは、各ソース特性とその使用例について説明します。
初期累積
初期累積や開始コストは、単一の値 (各ソースに追加される) で特定できます。 結果として、指定された初期累積は、ゼロではなく、ソースからの開始コストです。
開始コストがさまざまなソースで異なる場合、開始コストは、各ソースに関連付けられた固定コストです。
初期累積コストの単位は、コスト距離解析の累積コストの単位と同じでなければなりません。 時間に基づくコスト サーフェスが [距離累積 (Distance Accumulation)] ツールへの入力である場合、初期累積コストの単位は時間でなければなりません。 コスト単位が相対的に主観的な好適度コスト スケールに基づいている場合、意味のある初期累積値を指定することは容易ではありません。ただし、初期コストは、主観的スケールに対して相対的である必要があります。
使用事例: ソースを出発する前の準備に要する時間。
最大累積
最大累積またはキャパシティは、ソース (またはソースからの移動モード) ごとに単一の値またはフィールドで定義できます。 各ソースのキャパシティに達するまで、計算が続行されます。 出力される距離アロケーションは、キャパシティ パラメーターが設定されている場合と設定されていない場合で異なることがあります。 つまり、低キャパシティのソースの近くに高キャパシティのソースがある場合、キャパシティが設定されていないと、高キャパシティのソースは、低キャパシティのソースに最初から割り当てられているセルの一部を取得できます。ただし、累積コストが低キャパシティのソースの定義済みキャパシティを超えているセルに限ります。
初期累積と同様に、最大累積で指定されるコストの単位は、コスト解析のコストの単位と同じでなければなりません。 コスト単位が相対的に主観的なコスト スケールに基づいていると、正確な最大累積 (キャパシティ) 値を指定するのが難しい場合があります。 たとえば、キャパシティ 500,000 の優先単位は何を意味するでしょうか? 絶対コスト スケールの 5 時間をより簡単に均等割り付けできます。
使用事例: 遠隔地の医療用品車両の燃料補給用地の候補の識別。
コストに適用する乗数
ソースからの移動モードが異なる場合またはソースでの強度が異なる場合、移動速度を上げたり下げたりするか、コスト サーフェス上のカバレッジを広くしたり狭くしたりすることができます。 これらの特性により、セルを通って移動する場合の速度が増減します。
使用事例 1: 各ソースからの移動モードが異なる (徒歩で移動する場合と全地形対応車に乗って移動する場合の比較など)。
使用事例 2: 各ソースでのリソースの強度が異なる (行方不明者を捜索する各管理事務所の捜索員の人数が異なる場合など)。 捜索員が最も多い管理事務所は、より少ない時間でより広い区域を捜索できます。
コスト乗数を使用すると、モードまたは強度を実装することができます。 全地形対応車は徒歩と比べてより迅速にコストに対応できるため、徒歩よりも小さい乗数が使用されます。
行方不明者を捜索する捜索員が多いほど、捜索員が少ない場合より広い区域を捜索できます。 ソースが払うコストは、捜索員の数に基づき、相対乗数によって制御できます。 ソースにより多くの捜索員が駐在していると、より広範な区域に対応できる (より迅速にその距離を移動できる) ため、捜索員が少ないソースと比べて小さい乗数を使用できます。
ATV と徒歩の移動モードのシナリオでは、解析の単位は時間です。 捜索員の数のシナリオでは、初期コスト単位は時間だったかもしれませんが、乗数を適用する際、単位は相対的な主観的スケールに基づいて設定されます。
このソース特性は乗数で、最小コスト解析を実行しているので、ロジックは逆に見えることがあります。 徒歩で移動している場合、移動者はより遅い速度でその距離を移動します。 この相互作用を取り込むため、各セルを通過するコストを増やすことで、移動者の速度を落とすことができます。 ATV はより速い速度で移動できるので、この相互作用を、より小さい乗数を使用して取り込み、移動者がより低コストでより速く移動できるようにします。
単位と乗数を指定して、移動モードや移動者の数を取り込む場合は注意してください。 移動モードの例では、単位は絶対コスト スケール、つまり時間です。 乗数は、最速モード、つまり ATV に対して相対的である必要があります。 徒歩での移動は速度が遅いので、より大きい乗数を使用して取り込みます。 乗数によってコストが増加し、徒歩で移動する際に各マップ単位の移動時間が長くなります。 適用される乗数は、相互に相対的である必要があり、一般に最も速いモードが、最も遅い基本の乗数を決定します。 乗数を特定してモードに基づく速度差を取り込むのは、場合によっては難しい作業です。
また、コスト サーフェスが入力され、たとえば単位が時間に基づく場合は、ATV と徒歩の移動に対して同じコスト サーフェスが使用されます。 入力コスト サーフェスは 1 つしかないので、2 つの移動モードはいずれも同じ特性に対応し、同じ相対コストが割り当てられていると仮定されます。
移動方向
このソース特性により、移動者の移動方向を指定できます。 [ソースから移動] オプションは、移動者がソースを起点として、ソース以外のすべての場所に向かう移動をシミュレートします。 [ソースへ移動] オプションは、ソース以外のすべての場所を起点として、ソースに向かう移動をシミュレートします。 移動方向は、垂直方向ファクターと水平方向ファクターにも影響します。
[ソースへ移動] と [ソースから移動] は、基本的に逆の計算です。
最適ネットワークを作成する場合、[最適リージョン接続 (Optimal Region Connections)] ツールにはコスト サーフェスのみが入力されるので、[移動方向] パラメーターにはアクセスできません。 コリドーを作成する場合は、垂直方向ファクターおよび水平方向ファクターは使用できません。したがって、[移動方向] パラメーターは無効です。 いずれの状況でも、移動の方向は不適切です。 ただし、[最適パス (ライン) (Optimal Path As Line)] および [最適パス (ラスター) (Optimal Path As Raster)] ツールを使用して作成されたパスに対し、[移動方向] パラメーターを垂直方向ファクターと水平方向とともに適用することができます。
使用事例 1: 安全のため、ボブキャットは道路から遠い場所を好みます。
使用事例 2: ボブキャットは、河川に簡単に行ける場所を好みます。
参考情報
以下のセクションでは、ソース特性に関するその他の情報を提供します。
解析への風の組み込み
[距離累積 (Distance Accumulation)] ツールを使用すると、風向によって決定されたコストから累積コスト サーフェスを作成できます。
風、流れ、傾斜のようなファクターを組み込む場合は、始める前に、ソース セルから移動するのかソース セルに向かって移動するのかを決定します。
出力累積サーフェスに風向のみを組み込む場合は、入力される水平方向ラスターで風向方位角をエンコードする (北から時計回りに 0 ~ 360、0 と 360 はいずれも北として処理される) ことができます。 次の画像には、10 x 10 の水平方向ラスターが示されています。 セル値は一定して 90 です。つまり、風は分析範囲を一定速度で東に向かって吹いています。
風速を、コスト サーフェスの摩擦として使用しないでください。コスト サーフェスでは、セルを通過する方向に関係なくコストは同じためです。 コスト摩擦サーフェスはまったく必要ありません。
風向に応じて移動コストを変えることはできますが、風向と風速の両方について移動コストを変えることはできません。
ソースから移動
このシナリオでは、次の前提が適用されます。
- 解析者は、単一のソース ポイント (次の画像のラスターの中央で選択されているシアンのポイント) に座っています。
- 風の向きへの移動が最も容易です。風に対して、あるいは風と直角の向きに移動することはできません。
- ソースから分析範囲内のその他の各セルへの累積コストを計算します。
このシナリオでは、[水平方向ファクター] パラメーターは、[正方向] に設定されています。 [移動方向] パラメーターは、[ソースから移動] に設定されています。 結果は次のとおりです。 出力された累積距離ラスターは、風で (または多少風で) 移動して到達できるエリアにのみ定義されます。
上の画像では、単一ソースは中央で選択されているポイントです。分析範囲の他のセルに達するためのコストを求めようとしています。 累積コスト サーフェスは、風の向きにのみ移動することができ、真東への移動が最も容易であることを示しています。
単一ソース セルを拡大し、[距離累積 (Distance Accumulation)] が風向を移動コスト (重み) に変換する方法を確認します。
そのソースから、8 方向に移動して近傍セルに達する可能性があり、その移動のステップ コストを決定する必要があります。 各選択で、それぞれのセルの風向に対して異なる角度が形成されます。
この場合、ステップ コストに影響を与えるのは風向のみです。 各ステップ方向は、優先する移動方向 (この場合は風向) と角度を形成します。 各近傍セルについて、この角度を計算する必要があります。 この角度は、水平方向ラスターに保存された方位角の値に相対的な移動方向なので、水平相対移動角度 (HRMA) です。
HRMA が特定されると、HRMA を重みに変換する、水平方向ファクターの関数が実行されます。 この例では、水平方向ファクターの Forward 関数が使用されます。 追加情報については、「水平方向ファクターを使用した到達距離の調整」をご参照ください。
HRMA および水平方向ファクターの関数は、各ステップで 2 回評価されます。1 回は、ソース セルの風向 (ソースの中心からセルの縁への方向) について、もう 1 回は近傍セルの方向 (ソース セルの縁から近傍セルの中心への方向) についてです。 この計算で、ソース セルから近傍セルへの移動をシミュレートします。 2 つの結果は、近傍セルへのステップのコストを計算する際に使用される水平方向の重みを得るために平均化されます。
ソースへ移動
このシナリオでは、単一ソース ポイントは、分析範囲の他のポイントから到達する位置を表します。 [距離累積 (Distance Accumulation)] への入力はすべて同じですが、[移動方向] パラメーターに [ソースへ移動] を選択します。 次の画像にその結果を示します。前のシナリオの結果と異なっています。
[ソースから移動] を指定すると、累積コスト サーフェスは、ソースから外側に向かって広がり、他のすべてのセルに達します。 [ソースへ移動] を指定すると、HRMA の計算が異なり、その HRMA に適用される水平方向ファクターの関数の出力も変わります。 この HRMA は、以下のように、[ソースから移動] のシナリオで計算された HRMA の幾何補正です。
[距離累積 (Distance Accumulation)] ツールは、セルを最も容易に通過できる方向に基づき、セルを通過する移動コストを調整することができます。 この計算は、ソースから他のセルに移動するか他のセルからソースに移動するかによって、異なる結果になる可能性があります。
[移動方向] と水平方向ファクターの間のロジックは、[移動方向] と垂直方向ファクターに適用できます。 ただし、水平方向の影響を考慮する代わりに、垂直方向ファクターが、セル間の標高の変化 (傾斜角) に対応するためのコストを決定します。