トレース ネットワークでのトレースは、ネットワークの状態に関する問題を解決し、疑問に回答するのに常時役立ちます。 トレース ネットワークを「トレース」するには、[トレース (Trace)] ツールを使用します。
[トレース (Trace)] ツールでは、さまざまな「トレース タイプ」を使用できます。
これらのトレース タイプと合わせて、[トレース (Trace)] ツールには、提供される各トレース タイプの調整に使用する詳細構成の包括的なセットが含まれています。 これらの構成により、「通過可能性」を構成し、返されるフィーチャを識別し、実行する計算を設定できます。 ModelBuilder を使用して複雑な構成を保存し、モデル ツールのインターフェイスに表示されるパラメーターの数を減らすことができます。 これにより、詳細なトレースを 1 クリックのみで再実行できるようになります。
各構成要素について以下のセクションで説明します。 パラメーター オプションと使用法については、「トレース」ツールをご参照ください。
結果にバリアを含める
デフォルトでは、始点と並んでバリア フィーチャが存在しなければ、バリア フィーチャはトレースの結果の中に返されます。 これは [バリア フィーチャを含める] および [始点でバリアを無視する] オプションを使用して制御できます。
バリア フィーチャを含める
「バリア」をトレース結果に含めます。 これは、[トレース] ウィンドウのフィーチャ バリア セットと動的に構成されたバリア (条件バリア、関数バリア、フィルター バリア、関数バリアのフィルター) を包含します。
トレースが返した選択セットは、バリアが「ミッドスパン接続」でエッジ フィーチャに置かれており、[バリア フィーチャを含める] オプションが無効のとき、予期しない結果を表示することがあります。 フィーチャのいずれかの部分がトレースによって返された場合、全フィーチャが選択されてトレース結果に表示されます。
構成オプション | 説明 |
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バリア フィーチャを含める |
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始点でバリアを無視する
「バリア」が始点である場合、トレース構成でそれらのバリアを無視します。
構成オプション | 説明 |
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始点でバリアを無視する |
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ネットワークの一貫性の確保
ネットワークの一貫したエリアは、ネットワーク トポロジが検証され、「ダーティ エリア」がないエリアです。 検証は、トレースがネットワーク トポロジからネットワークに関する最新の情報を読み取っていることを保証する唯一の方法です。
[トレース (Trace)] ツールの [一貫性の検証] 構成オプションは、トレース結果のネットワーク トポロジの一貫性を保証します。 [一貫性の検証] が true に設定されている場合、ダーティ エリアがトレース パスと交差するとトレース操作が失敗します。 これが発生した場合、下の例に示すように、ダーティであると判明したトレース パス内のフィーチャのクラス名および Global ID を含むエラーがツールによって返されます。
ERROR 002041: One or more dirty areas were discovered.
[[NHDFlowline: {0DBFACDA-45D6-BA67-33CE-A750BE632C05}]]
Failed to execute (Trace).
編集に関連付けられたダーティ エリアを削除するには、ネットワーク トポロジを「検証」する必要があります。
注意:
トレース結果に不整合に関するエラーを発生させるのは、削除操作、既存のネットワーク フィーチャの更新、またはエラー フィーチャの作成によって作成されたダーティ エリアのみです。 新しく作成されたフィーチャのダーティ エリアからは、[一貫性の検証] チェックの失敗は発生しません。
[一貫性の検証] チェックボックスをオンにしないで実行したトレースは、予期しないトレース結果につながる場合があります。 たとえば、1 つのフィーチャがネットワークから削除され、これによって位置 A と位置 B の間のパスだけが切断されている場合、 削除されたフィーチャに対してダーティ エリアが作成されます。 ネットワーク トポロジの検証の前に、[一貫性の検証] オプションをオフにした状態で、位置 A を起点としてトレースを実行し、「接続フィーチャを検索」します。 このトレースは位置 B に到達し、ツールは警告なしで完了します。 位置 B に到達したのは、A と B を接続するフィーチャを削除したことが、検証操作により、ネットワーク トポロジで更新されていないためです。
上のシナリオで [一貫性の検証] オプションをオンにした場合、ダーティ エリアにトレースが到達して削除されたフィーチャをマークすると、ツールがエラーを返し、ダーティ エリアに遭遇してトレースが失敗したことをユーザーに知らせます。 トレースするエリアに関するトポロジの検証の後、トレースは位置 B に到達できなくなります。削除されたフィーチャがネットワーク トポロジに反映されたからです。 トレースされるエリアの範囲全体のネットワーク トポロジが検証されない場合、他のダーティ エリアも発生する可能性があります。
構成オプション | 説明 |
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一貫性の検証 |
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トレース内容の制御
トレース中は、停止位置を示すためにバリアが使用されます。その位置を超えるフィーチャはトレースされません。 トレースの結果には、バリアを超えるフィーチャは含まれませんが、必要に応じてバリア自体を含めることができます。 [不定フローを許可] および [高度な設定] 内のパラメーターなどの他のパラメーターは、ネットワーク パスの通過可能性を管理する対象の定義に役立ちます。
不定フローを許可
上流トレースや下流トレースを実行する場合、トレース解析は Flow direction ネットワーク属性内の値を使用して方向性を決定します。 一部のシナリオでは、双方向の流れを示す不定フロー方向のライン フィーチャがある場合があります。 このオプションは、パスに沿った不定フローがあるフィーチャをトレースするか、トレースの通過可能性を停止するかを指定します。 このパラメーターは、上流トレースまたは下流トレースを実行する場合にのみ適用されます。
構成オプション | 説明 |
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不定フローを許可 |
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高度な設定
[トレース (Trace)] ツールの [高度なオプション] セクションには、トレースの通過可能性を制御する「条件バリア」と「関数バリア」があります。 条件バリアはネットワーク属性に基づく式で、トレースを停止する場所を定義します。 関数バリアは、条件を満たしたときにトレースを停止する場所を定義します。
通過可能性の適用範囲は、[トレース (Trace)] ツールで [通過可能性の適用] とラベルが付けられている traversability_scope パラメーターでさらに制御されます。 このパラメーターは、ジャンクションとエッジの両方、ジャンクションのみ、またはエッジのみに通過可能性を適用するかを決定します。 たとえば、通過可能性をジャンクションのみに適用し、エッジが条件バリアで指定された条件を満たしている場合、通過可能性の適用範囲により、トレースはエッジで停止しません。
詳細については、「バリア」をご参照ください。
関数の設定
関数は、トレース対象のフィーチャに関連付けられたネットワーク属性に関する計算を実行できるトレース構成です。 オプションのネットワーク属性フィルターを各関数に追加できます。 指定すると、関数は、ネットワーク属性フィルターに適合するフィーチャにのみ適用されます。 関数内のフィルターを使用して、条件付き要件を導入します。 たとえば、PathType 属性が値 Paved を含むすべてのラインの長さを合計します。 1 つのトレースに対して複数の関数を指定できます。
注意:
関数 (Add、Average、Count、Max、Min、Subtract) を含む割り当て可能なネットワーク属性を使用するトレースは、「エッジ エレメント」に基づいて割り当て可能な結果を返します。 たとえば、接続したトレース内の関数を使用して shape length 属性をカウントすると、ライン全体ではなく個々のエッジ フィーチャに基づくカウントが返されます。 詳細については、「割り当て可能なネットワーク属性」をご参照ください。
返される内容の制御
トレース結果に返されるものを制御するために、[出力条件] および [結果タイプ] という 2 つのパラメーターが用意されています。
出力条件
[出力条件] フィルターは、ネットワーク属性の使用をサポートし、フィルターに指定した条件に適合するかどうかを確認するために、トレース中に発生したすべてのフィーチャを審査します。 「ネットワーク属性」は、ネットワーク トポロジに存在し、1 つ以上のフィーチャクラスのフィールドに関連付けられます。 出力条件に、ネットワーク属性の名前、演算子、ネットワーク属性に有効な値を指定します。
トレイル ネットワークに関するシナリオを考えます。この場合、舗装された道路を返すためにネットワーク属性が入力されます。 この場合、Trails クラスに PathType という名前のフィールドがあります。 このフィールドは、[Surface] という名前のネットワーク属性に関連付けられています。 [出力条件] パラメーターを構成して、値が [Paved] に等しい [Surface] ネットワーク属性を持つフィーチャクラスを検索します。 トレースの結果に、このフィールドと値 [Paved] を持つフィーチャクラスのフィーチャと、PathType フィールドのないクラスのフィーチャが含まれます。
[結合方法] パラメーターを使用して、複数の [出力条件] 値を実装することができます。 どちらのタイプの出力も使用可能で、複数の出力タイプを設定できます。 たとえば、出力タイプを組み合わせることで、長さ 1,000 メートルを超えるすべての舗装道路を返すことができます。
結果タイプ
オプションの [結果タイプ] パラメーターを使用すると、トレースによって返される結果のタイプを制御できます。 [集約されたジオメトリ]、[選択]、[ネットワーク レイヤー]、[接続性]、[エレメント] の各結果タイプは、別々または同時に指定して、それぞれ、フィーチャ レイヤーの出力ジオメトリを生成する、選択セットを生成する、グループ レイヤー内のフィーチャ レイヤーの選択セットとしてトレース結果を返す、幾何学的一致によって接続されたネットワーク機能の接続性グラフを返す、フィーチャに基づく情報を .json ファイルに返す、などの処理を行えます。
パラメーター | オプション |
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結果タイプ |
注意:エンタープライズ ジオデータベースの場合、[接続性] オプションを使用するには、ArcGIS Enterprise 10.9.1 以降が必要です。 |
[集約されたジオメトリ] オプションを使用すると、フィーチャクラスのマルチパート ジオメトリとしてトレース結果を得ることができます。 このオプションは、始点およびエッジ フィーチャのミッドスパンに配置されたバリアの位置を優先して、部分的なフィーチャの結果を返します。
以下の図で、下流トレースで選択と集約されたジオメトリの結果タイプ オプションを使用した場合の違いを比較してください。 下のネットワークは、9 つのエッジ エレメント (e1、e2、e3 などで表される) から構成される 5 つのライン フィーチャ (f1、f2、f3、f4、f5 で表される) を含みます。
バリア フィーチャを含むこの例では、選択結果が、7 つのエッジ エレメント (f1::e1、e2、e3、f2::e1、e2、および f5::e1、e2) から構成される、5 つのポイント フィーチャと 3 つのライン フィーチャを返します。 集約されたジオメトリの結果では、同じフィーチャが返されますが、エッジ エレメント f1::e1,e2 および f5::e2 は除外されます。
[バリア フィーチャを含める] 構成オプションがオンで、エッジに沿ってバリアが配置されている場合、トレースはバリア フィーチャで停止し、そのエッジの部分的なフィーチャ ジオメトリをトレース結果に返します。 [バリア フィーチャを含める] オプションがオフの場合、トレースは、ミッドスパンの接続性によって検知された先行するラインの終点またはジャンクションで停止します。
下図は、[バリア フィーチャを含める] オプションを使用して、トレース結果にバリア フィーチャを含めたり除いたりするときのトレース結果の違いを示しています。 この例では、始点とバリアの両方がエッジに沿って配置されています。 このオプションが有効な場合、選択結果は、7 つのエッジ エレメント (f1::e1、e2、e3、f2::e1、e2、および f5::e1、e2) から構成される、4 つのポイント フィーチャと 3 つのライン フィーチャを返します。 集約されたジオメトリ結果は、同じ 3 つのフィーチャを返しますが、エッジ エレメント f1::e1 および f5::e2 を除外します。 [バリア フィーチャを含める] がオフのバリア フィーチャを除外しようとした場合、選択結果は変わりませんが、集約されたジオメトリの結果ではさらに f1::e2 が除外されます。
結果タイプに [集約されたジオメトリ] オプションが選択されている場合、トレース出力の振舞いを定義するために、追加で 4 つのパラメーターが用意されています。
- 以前のトレース結果をすべて消去
- トレース名
- 集約されたポイント
- 集約されたライン
[以前のトレース結果をすべて消去] チェックボックスを使用して、集約されたジオメトリを格納するために選択されたフィーチャクラスのコンテンツに対して、切り捨てまたは追加を行うことができます。 デフォルト オプションは、以前のトレース結果を上書きし、現在のトレース操作のみに関する集約されたジオメトリを表示します。
パラメーター | オプション |
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以前のトレース結果をすべて消去 |
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オプションの [トレース名] パラメーターを使用して、トレース操作の文字列識別子を作成し、トレース結果の識別を支援できます。 [以前のトレース結果をすべて消去] パラメーター チェックボックスをオフにして使用すると、複数のトレース操作を実行して、出力される集約されたジオメトリのフィーチャクラス内の結果を比較できます。
[集約されたポイント] および [集約されたライン] パラメーターを使用して、集約された結果ジオメトリを格納するためのフィーチャクラスを指定できます。 デフォルトでは次に示すように、各パラメーターに、プロジェクトのデフォルトのジオデータベースに格納されるシステム生成のフィーチャクラスが入力されます。
- Trace_Results_Aggregated_Lines - ライン フィーチャクラス
- Trace_Results_Aggregated_Points - マルチポイント フィーチャクラス
これらのフィーチャクラスは、存在しない場合、自動的に作成されます。 既存のフィーチャクラスも、集約されたジオメトリの格納に使用できます。 デフォルト以外のフィーチャクラスを使用する場合、そのフィーチャクラスは、TRACENAME という名前の文字列フィールドを含み、出力のジオメトリ タイプに一致する必要があります。
部分的なフィーチャの結果をともなう出力ジオメトリを生成すると、トレースをより正確に表現でき、他のタスクに対してトレース結果の比較や再利用が可能になります。
注意:
ジオプロセシング オプションの「ジオプロセシング ツールが既存のデータセットを上書きすることを許可」を無効にすると、集約されたジオメトリの結果タイプの出力フィーチャクラスがプロジェクトのデフォルト ジオデータベースに存在する場合、ツール検証の問題が生じる可能性があります。 これを解決するには、ジオプロセシング オプションを有効にするか、プロジェクトのデフォルト ジオデータベースで集約されたポイント、ライン、およびポリゴン フィーチャクラスの名前を変更します。
結果タイプで [選択] オプションを選択した場合は、追加の [選択タイプ] パラメーターで、選択の適用方法や選択がすでに存在する場合に実行する操作を定義できます。
パラメーター | オプション |
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選択タイプ |
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[ネットワーク レイヤー] 結果タイプ オプションは、グループ レイヤー内のフィーチャ レイヤーの選択セットとしてトレース結果を返します。 ArcGIS Pro でこのオプションを選択すると、新しいグループ レイヤーがマップに追加されます。 フィーチャ レイヤーは、トレースによって返されたフィーチャを含むクラスでのみ作成されます。 各フィーチャ レイヤーには、ModelBuilder および Python のトレースの結果を操作するために使用できる、トレースにより返されたフィーチャの選択セットが格納されます。
[ネットワーク レイヤー] オプションを選択して、追加の [出力グループ レイヤー名] パラメーターで、作成する出力グループ レイヤーの名前を付けます。 ArcGIS Pro で操作する場合、新しいグループ レイヤーが指定した名前でアクティブなマップに追加されます。
[接続性] 結果タイプ オプションは、トレースの結果を、ジオメトリの一致によって接続されたネットワーク フィーチャの接続性グラフとして返します。 このオプションを選択すると、接続性は、指定した場所にある解析可能な .json ファイルに出力され、データをユーザー独自のグラフに表すため、他のシステムにインポートされます。 接続性情報は、トレースによって返されたネットワーク フィーチャに対してのみ返されます。
結果タイプとして [接続性] オプションが選択された場合、追加の [出力 JSON] パラメーターが、.json 出力ファイルの場所を指定するために追加されます。
[エレメント] 結果タイプ オプションは、トレースの結果を、フィーチャに基づく情報として返します。 このオプションを選択した場合、フィーチャに基づく情報が、指定された場所にある .json ファイルに出力されます。このファイルは、追加の解析を実行するための入力として使用できます。
[エレメント] オプションが選択された場合、追加の [出力 JSON] パラメーターが、.json 出力ファイルの場所を指定するために追加されます。 .json 出力ファイルには、elements の下位で通過したすべてのネットワーク フィーチャに対する次の情報が格納されます。
- networkSourceId
- globalId
- objectId
追加情報はライン フィーチャに対して返されます。
- positionFrom および positionTo
名前付きトレース構成の読み込み
名前付きトレース構成では、共有と再利用のために作成する複雑なトレースをすることができます。 [トレース (Trace)] ツールを使用すると、既存の名前付きトレース構成を読み込み、トレースのプロパティを定義できます。 これにより、トレースに関連付けられたユーザー エクスペリエンスが簡素化され、組織内に共通したトレースの再利用の一貫性をもたらします。
パラメーター | オプション |
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トレース構成の使用 |
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[トレース構成名] パラメーターは、トレースのプロパティを定義するトレース構成の名前を指定します。 このパラメーターは、[トレース構成の使用] が有効な場合にのみ使用できます。
注意:
また、[トレース] ウィンドウの [名前付き構成] タブで、すでに構成済みの名前付きトレース構成を使用してトレースを実行することもできます。