ジオコーディングは、多くのワークフローに組み込まれており、ワークフローごとに結果が異なります。 一致と見なされるジオコーディング結果のスコアが特に、一部のワークフローで高くなることがあります。 出力内容をマップ上に表示する際に、ルート検索に使用されるストリートの片側ではなく、屋上またはパーセルの重心に表示させたい場合があります。 このようなニーズに合わせて、ロケーターを調整する方法を次のセクションで説明します。
注意:
ロケーターをサービスとして共有または公開する場合、ジオコーディング オプションのサポートは、使用している ArcGIS Enterprise、ArcGIS Enterprise on Kubernetes、またはスタンドアロン ArcGIS Server のバージョンによって異なります。
範囲外の一致
番地がデータ内のライン セグメントには存在しないが、妥当な閾値内にあり、存在する可能性が高い状況で、ストリート セグメントとの照合を行うには、[範囲外の一致] を [はい] に設定します。 このプロパティを [はい] に設定すると、入力された番地に番地範囲の値が最も近いストリート セグメントの終点に、ジオコード結果が配置されます。 これで、データが 100 パーセント最新のものでなくなるため、一致候補の欠落がなくなります。 番地の範囲からやや外れる一致の Addr_type フィールド値は、StreetAddressExt です。 このプロパティを [いいえ] に設定すると、ジオコード結果は、ストリート名レベルの一致になりますが、同じ名前の複数のストリート セグメントが等しく入力と一致して、ストリート名の Addr_type フィールドの値が同じである可能性があるため、これはあいまいな結果といえます。
[範囲外の一致] を [はい] に設定すると、ストリート住所のあいまい検索での空間精度が向上します。 たとえば、Main Street の一方の側には 2-100 の番地があり、もう一方の側には 1-99 の番地があるとします。 「109 Main Street」など、この範囲にない番地を検索します。 [範囲外の一致] が [いいえ] に設定されている場合、Main Street とのストリート名レベルの一致がロケーターによって返され、入力値に最も近いストリート セグメントの中心に、ジオコード結果が配置されます。 ただし、この場合に [範囲外の一致] を [はい] に設定すると、さらに正確な一致が返され、Main Street の番地が 1-99 の範囲にあるストリート セグメントの終点に配置されます。
注意:
[範囲外の一致] 設定は、ストリート住所の一致に対応していて、その一致を返すロケーターにのみ適用されます。
優先位置タイプ
ジオコーディング結果をマップ上に表示して、今後の解析に使用することができます。 ポイントが住所の屋上またはパーセルの重心を表現できるように、[優先位置タイプ] 設定を [住所の位置] に変更します。 住所の位置が、住所を表現するフィーチャの中心に最も近くなります。 反対に、ジオコーディング結果をルート検索アプリケーションで使用して、より効果的にルート検索を実行できるように、ポイントをストリートの片側に配置することができます。 この場合には、[ルート検索の位置] オプションの選択が最適です。 ルート検索の位置は通常、ストリートに近い、車両が到着する位置になります。 以下の図では、緑のドットは [ルート検索の位置] オプション、ピンクのドットは [住所の位置] オプションを表します。
注意:
選択した優先位置が見つからない場合は、それ以外の位置タイプが返されます。 [優先位置タイプ] 設定は、ポイント住所、パーセル、および POI の一致に対応していて、その一致を返すロケーターにのみ適用されます。
一致とする最小スコア
[一致とする最小スコア] 設定は、一致と見なされるために住所が参照データ内の有力候補とどれだけ正確に一致しなければならないかを制御できる閾値になります。 有力候補が閾値を下回っている場合、その住所は候補と一致しません。
ロケーターの一致とする最小スコアは、0 ~ 100 の間の値です。 完全一致のスコアは 100 です。高い信頼度での住所の一致を必要とするワークフローでは、[一致とする最小スコア] を高い閾値に設定します。 閾値の設定を高くすると、最も信頼度の高い一致だけが返されるようになります。 一致する住所の数をできるだけ増やす必要があり、正確に一致しない可能性のある住所が多少あってもかまわない場合は、閾値の設定を低くします。
バッチ ジオコーディングで一致と見なされるには、有力候補の一致とする最小スコアと一致しているか、それを上回っていなければなりません。 複数の一致が見つかった場合は、一致スコアが最も高い候補が採用されます。
注意:
複数ロールのロケーターで、[一致とする最小スコア] を設定すると、ロール間の組み込みのフォールバック ロジックがオーバーライドされる可能性があります。 その場合、ロケーターで低精度のロールに一致する結果が表示されず、高精度のロールに一致する結果のみが表示されます。
候補とする最小スコア
[候補とする最小スコア] 設定によって、対話的ジオコーディング (ジオサーチ) で返される有力候補が決定されます。 たとえば、[場所検索] ウィンドウで場所を検索した場合、候補とする最小スコアの閾値を下回っている候補は表示されません。 ロケーターの [候補とする最小スコア] は、0 ~ 100 の間の値です。 [候補とする最小スコア] の値は、対話的再照合でも使用されます。たとえば、[住所の再照合] ウィンドウには、候補とする最小スコアと一致しているか、それを上回っている候補だけが表示されます。
サイド オフセット
[サイド オフセット] 設定は、ジオコードの結果がストリート ライン セグメントからどれだけ離れているかを決定します。 一部のロケーター ロールでは、ストリートのそれぞれの側の住所範囲情報が含まれる参照データ ([ストリート住所] など) が使用されます。 これらのロールに基づくロケーターは、住所がストリートのどちら側に位置するかを特定することができます。 カートグラフィックや近接解析では、[ストリート住所] や [距離範囲] ロールのロケーターを使用する場合、ジオコーディングしたフィーチャにサイド オフセットを指定できます。
エンド オフセット
ライン ジオメトリの参照データを使用するロケーターは、ジオコーディングした住所の参照フィーチャに沿って、場所を内挿することができます。 参照フィーチャの端にあるフィーチャが、交差点など他のフィーチャの上に重なることを防ぐために、ロケーターでは、ジオコーディングした住所の場所に対して、エンド オフセットを適用することができます。 [ストリート住所] または [距離範囲] ロールに基づくロケーターのエンド オフセット設定は、直線距離で表すことができます。
次の図では、100 MAIN ST という住所が 8 メートルのサイド オフセット距離で、ストリート フィーチャからオフセットされています。 この住所は、ストリート フィーチャの端に該当し、ストリート フィーチャの端に揃えて配置されます。
ストリートが斜めに交差している場合にオフセット距離を指定すると、住所の配置に望ましくない影響を与え、住所が MAIN ST ではなく、OAK AV に属しているように見えることがあります。 この状態を次の図に示します。
適切なストリート フィーチャの中央に向けて、住所の位置を調整するエンド オフセットを指定することができます。 エンド オフセットを使用すると、前の図で示したような状態の多くが修正されます。 この例では、10 パーセントのエンド オフセットを使用して、ストリート フィーチャの長さの 10 パーセントに相当する距離だけ、住所をストリート フィーチャの中央に向けて移動しています。
交点コネクタ
ストリート フィーチャが含まれるロケーターでは、ストリート住所に加えて、ストリートの交差点のジオコーディングがサポートされます。 交差点の検索は、交差するストリート名と、追加の識別情報 (都市、郵便番号、その両方など) で構成されます。 交差点の住所には、1 本目のストリート名と交点コネクタ、検索対象の 2 本目のストリート名が必要です。 たとえば、交差点の検索として「Redlands Blvd and New York St 92373」や「Redlands Blvd & New York St Redlands Ca」は、どちらも有効です。
[交点コネクタ] 設定では、ロケーターで交点コネクタとして認識されるすべての文字列を指定することができます。 交点コネクタには、&、@、|、\ などがありますが、 デフォルトでは、各国で一般的に使用されている交点コネクタが、国ごとに構成されます。 デフォルトの交点コネクタをオーバーライドするには、シンボルや単語の独自のリストをこの設定に追加します。 交点コネクタのリストは、引用符で囲んだカンマ区切りのリストです (「"&","|","//","@"」など)。
注意:
ストリートの交差点の一致に対応しているのは、[住所] ロケーター ロールのみです。
行政区画名なしで一致
[行政区画名なしで照合] 設定は、行政区画なしで構築されたロケーター用に、以前使用されていた設定です。 行政区画 (市、地域、近隣など) なしでロケーターを構築すると、同じストリート名を含む住所を照合した場合に、ジオコーディング品質が低下する可能性があるため、この方法はお勧めしません。 また、行政区画なしでロケーターを構築すると、ジオコーディングのパフォーマンスにも影響があります。 地域の略称情報 (米国の州など) を使用すると、ロケーター内で、州道に関する既存のデータを拡張することができます。 たとえば、「State Hwy 39」という名前の高速道路がデータ内にあり、地域の略称フィールドに「CA」というデータが含まれている場合は、代替ストリート名を含む代替名テーブルを使用していなくても、「CA-39」のジオコーディング結果が返されます。
包括的なゾーンのマッチング
[包括的なゾーンのマッチング] 設定を使用すると、入力都市名と正確に一致していなくても、住所が都市と一致するようになります。 場合によっては、ユーザーがその地域をよく知らないために、入力都市名が正しくない、または代替都市名が欠けていることがあります。 [包括的なゾーンのマッチング] が [はい] に設定されていると、都市名が正しくなくても、住所が一致できます。 [包括的なゾーンのマッチング] が [いいえ] に設定されていると、一致は返されないか、一致スコアが大幅に低くなります。 デフォルトの設定値は [はい] です。
提示オプション
リターン コレクション
[リターン コレクション] 設定では、コレクション (POI カテゴリ) を候補に含めるか、無効にするかを選択できます。 無効にすると、参照データの場所についてのみ候補が返され、ロケーターに組み込まれているカテゴリのコレクションについては返されなくなります。 この設定はデフォルトで有効になっており、POI ロールおよびカテゴリ付きで構築されたロケーターにのみ適用されます。 以下の例では、プロパティがオンのとき (California Food、Car Wash、Casino が候補として返されます) と、オフのとき (California Food、Car Wash、Casino が候補として返されません) の動作を示しています。
注意:
[リターン コレクション] 設定をオフにすると、カテゴリ コレクションと出現頻度の高い場所名コレクション (再出現する場所名の 1 %) の両方がオフになります。
部分的な番地の候補を表示
[部分的な番地の候補を表示] 設定を有効にすると、番地の値の一部だけが入力された場合に、番地の候補が返されます。 このオプションは、番地がストリート名の後に続く国にのみ適用されます。 たとえば、「Neuhauser Straße 1」と入力すると、1 がデータ内の番地の一部でしかない場合でも、番地が 1 で始まる候補が返されます。 返される候補の数を調整するには、[ロケーターのプロパティ] ダイアログ ボックスの [パフォーマンス] ページで、表示される候補のデフォルト数設定を変更します。
注意:
[ポイント住所] ロケーター ロールだけが、部分的な番地の候補に対応しています。 このプロパティは、番地がストリート名の後に続く国でのみサポートされます。
ベース アドレスの候補表示でサブアドレスのサマリーを表示
[ベース アドレスの候補表示でサブアドレスのサマリーを表示] 設定を有効にすると、ベース アドレスを入力した後で、住所のサブアドレス ユニットのサマリーが返されます。 サブユニットのサマリーは、参照データ内の属性に基づく一連のサブユニット値にするか、参照データ内でユニット タイプが混在している場合、またはロケーター内で複数のサブアドレス エレメントがマッピングされている場合は、住所のサブユニットの数にすることができます。 ユニット フィールドに値を含まないベース アドレスを表すフィーチャは、ベース アドレスを入力した後で、サブユニットのサマリーを確認できるように、ロケーターに配置する必要があります。
サブアドレスの候補
ロケーターで使用されるサブアドレス候補ストラテジーのいずれかを選択すると、有効なサブアドレス候補が返されます。 デフォルトでは、返される候補の数は 5 ですが、この設定 (表示される候補のデフォルト数) および表示される候補の最大数設定を [ロケーターのプロパティ] ダイアログ ボックスの [パフォーマンス] ページで調整することができます。
- [完全なユニットが入力された後に候補を表示] - サブユニットを含む住所を検索する場合、サブアドレスの場所の候補が返されるようにするには、「35 Orchard Ct, Unit 101」の Unit 101 のように、完全なサブアドレス名を入力する必要があります。 これがデフォルトです。
- [部分的なユニットが入力されたときに候補を表示] - サブアドレスの値の一部だけが入力された場合に、サブアドレスの候補が返されます。 unit、suite、floor、building、lot、# などのユニット タイプをユニットの値の前に付けるのは任意です。 たとえば、「3700 Dean Dr Unit 25」または「3700 Dean Dr,25」と入力すると、2501-2508 at 3700 Dean Dr, Ventura, CA 93003 のように、25 で始まるユニットが、候補として返されます。
- [ベース アドレスが入力されたときに候補を表示] - ベース アドレスが入力された後で、サブアドレスの候補が返されます。 たとえば、「3700 Dean Dr」と入力すると、ベース アドレスの場所に関連している候補が返されます。 このオプションを選択した場合は、完全なユニットまたは部分的なユニットを入力することもできます。 ユニット フィールドに値を含まないベース アドレスを表すフィーチャは、ベース アドレスの候補リストを確認できるように、ロケーターに配置する必要があります。
サポートする国
複数の国のデータを含むロケーターがある場合は、1 つまたは 2 つの国に存在することが判明している住所や場所の検索を実行できます。 検索を絞り込み、これらの国以外での一致を除外するように、国の設定を変更することができます。
注意:
この設定は、テーブルのジオコーディングおよび [住所のジオコーディング (Geocode Addresses)]、[ファイルのジオコーディング (Geocode File)]、[テーブルから場所をジオコーディング (Geocode Locations from Table)] の各ジオプロセシング ツールを使用しているときに、使用可能な [国] の値に影響を与えます。
サポートするカテゴリ
複数の住所タイプに対応しているロケーターがある場合は、特定のタイプとの一致を除外するように、設定を変更することができます。 たとえば、ポイント住所レベル、ストリート住所レベル、ストリート名レベル、郵便番号レベルとの一致に対応できるロケーターがあるとします。 郵便番号レベルとの一致があまりにも目的に合っていないと思われるので、郵便番号レベルとの一致を除外することにします。 この設定で、ジオコーディングの精度を制御できます。 ロケーターが [POI] ロールに基づくもので、カテゴリをサポートしている場合は、場所名または関連するカテゴリを検索できます。 [ロケーターの作成 (Create Locator)] ツールまたは [フィーチャ ロケーターの作成 (Create Feature Locator)] ツールによって作成した、すべてのロールのロケーターは、座標の検索 (MGRS、USNG、XY など) をデフォルトでサポートしています。
注意:
この設定は、テーブルのジオコーディングおよび [住所のジオコーディング (Geocode Addresses)]、[ファイルのジオコーディング (Geocode File)]、[テーブルから場所をジオコーディング (Geocode Locations from Table)] の各ジオプロセシング ツールを使用しているときに、使用可能な [カテゴリ] の値に影響を与えます。
構築されたカスタム ロケーターおよび ArcGIS StreetMap Premium ロケーターで使用可能な、サポートされているカテゴリのリストを次の表に示します。
カテゴリ | サブカテゴリ | ロール |
---|---|---|
住所 | ポイント住所、サブアドレス | ポイント住所 |
パーセル | パーセル | |
住所 | ストリート住所、交差点、ストリート間、ストリートのミッドブロック、ストリート名 | ストリート住所 |
POI* | ロケーターによって異なります | POI |
住所 | 距離マーカー | 距離マーカー |
住所 | 距離マーカー | 距離範囲 |
郵便番号 | 基本の郵便番号 | 郵便番号 |
郵便番号 | 基本の郵便番号、郵便番号拡張 | 郵便番号拡張 |
郵便番号 | 基本の郵便番号、郵便地区 | 郵便地区 |
居住域 | ブロック、セクター、近郊、地区、市、都市圏、小地域、地域、テリトリー、国、ゾーン | 行政区域: ブロック、セクター、近郊、地区、市、都市圏、小地域、地域、テリトリー、国、ゾーン |
座標系 | 経緯度、XY、YX、MGRS、USNG | すべてのロール |
* ArcGIS StreetMap Premium ロケーターの場合、可能性のある POI カテゴリは、World Geocoding Service のカテゴリに類似しています。 [ロケーターの作成 (Create Locator)] ツールを使用して構築されたロケーターの場合は、ユーザーがカテゴリを定義します。
リバース ジオコーディングでサポートされるフィーチャ
複数のフィーチャ タイプをサポートするロケーターがある場合、リバース ジオコーディング操作に使用するときに、このロケーターから返される結果のタイプを制限するように、この設定を変更することができます。 たとえば、リバース ジオコーディング時に、ロケーターから住所が返されるようにする場合は、[ポイント住所] および [ストリート住所] を選択します。 ある位置の郵便番号の説明を取得することに主な関心がある場合は、[郵便番号] のみを選択します。
注意:
この設定は、[リバース ジオコード (Reverse Geocode)] ツールを使用しているか、この場所の情報ツールで、対話型リバース ジオコーディングを使用している場合に指定できる [フィーチャ タイプ] の値に影響を与えます。
リバース ジオコーディングの検索許容値は、単一ロールのロケーターの場合や、この設定について単一のフィーチャ タイプのみが選択されている、または [リバース ジオコード (Reverse Geocode)] ツールの [フィーチャ タイプ] 値としてチェックされている場合は、検索許容値の階層で制限されるか、500m になります。 リバース ジオコーディングを実行しており、POI、パーセル、郵便番号、行政区域の結果を返したい場合は、ロケーターを作成する際に、これらのフィーチャを表すポリゴンを使用します。 入力がフィーチャの境界と交差する場合は、リバースの結果が返されます。
入力位置を返す
この設定により、リバース ジオコーディング操作用に返されるジオメトリが元の入力ジオメトリか、返される一致アドレスのジオメトリかが決まります。 デフォルトでは、このプロパティは [False] に設定され、返される一致アドレスのジオメトリが返されます。 このプロパティが [True] に設定されると、リバース ジオコーディング操作により、元の入力ポイントのジオメトリが返されます。 この設定は、[この場所の情報] と [リバース ジオコード] ジオプロセシング ツールで適用されます。