オーバーレイ解析について

Spatial Analyst のライセンスで利用可能。

オーバーレイ解析は、最適地の選定、もしくは適地選定モデリングに利用する方法群です。 オーバーレイ解析は、異なる多様な入力値に対して統合的な解析を行うために、値に共通の評価尺度を適用する手法です。

適地選定モデルでは、特定の事象について最適、つまり最も選好度が高い場所を特定します。 適地選定解析で扱う課題の種類には次のようなものがあります。

  • 新しい住宅地開発用地はどこにするか
  • 鹿の生息地に適した場所はどこか
  • 経済的発展が最も見込まれる地域はどこか
  • 土石流の被害を最も受けやすい場所はどこか

オーバーレイ解析では通常、多種多様なファクターの解析を必要とします。 たとえば、新規の住宅地開発用地を選択するということは、用地費用、既存のサービスへの近接性、傾斜角、洪水の発生頻度などを評価することを意味します。 このような情報は、円、距離、度などの異なる値の尺度を持つ各種ラスター内にあります。 用地費用 (円) のラスターを施設までの距離 (メートル) のラスターに追加しても、有意義な結果を得ることはできません。

さらに、解析における各ファクターがすべて同じ重要度であるとは限りません。 用地の選択において用地の費用が、公共施設までの距離よりも重要であることがあります。 重要度を決めるのはユーザー自身です。

1 つのラスター内であっても、値の優先度を設定する必要があります。 特定のラスターの値の中には、用地に最適である場所 (0 ~ 5 度の傾斜角など) がある一方で、適している場所、適していない場所、さらには容認できない場所が含まれていることがあります。

オーバーレイ解析を実行するための一般的な手順を次に示します。

  1. 問題の定義
  2. 問題のサブモデルへの分割
  3. 重要度の高いレイヤーの決定
  4. レイヤー内のデータの再分類または変換
  5. 入力レイヤーへの重み付け
  6. レイヤーの追加または結合
  7. 最適な場所の選択
  8. 分析

手順 1 ~ 3 は、ほとんどすべての空間的問題の解決における共通の手順であり、オーバーレイ解析では特に重要です。

1. 問題の定義

問題の定義は、モデリングのプロセスの中で最も難解な側面の 1 つです。 ここでは、全体的な目的を明確にする必要があります。 オーバーレイ モデリングのプロセスにおける残りの手順でのすべての側面は、この全体的な目的を達成するためのものでなければなりません。

この目的に関連する構成要素を特定する必要があります。 構成要素の中には、相互に補完し合うものもあれば、競合する場合もあるかもしれませんが、 各構成要素は明確に定義し、それらがどう相互に作用するのかを確証しておく必要があります。

重要なのは、問題が何かを特定することだけでなく、さらに明確に理解し、問題が解決されるのはいつか、その事象が満たされるのはいつかということを定義する必要があります。 問題の定義では、モデルからの結果が成功かどうかを明確にするために、明確な計測値を設定しておく必要があります。

たとえば、スキー リゾートに最適な場所を選定するときは、収益を上げることが全体の目標となるでしょう。 モデル内に使用するすべてのファクターは、そのスキー場が有益なものとなるよう機能すべきです。

2. 問題のサブモデルへの分割

ほとんどのオーバーレイの課題は複雑です。したがって、思考を整理し、問題をより効率的に解決するために、オーバーレイの問題をサブモデルに分割してわかりやすくすることを推奨します。

たとえば、スキー リゾートに最適な場所を特定するための適地選定モデルは、そのスキー場を有益にすることを支援するサブモデルに分割できます。 1 つ目のサブモデルは、スキーヤーやスノーボーダーにとって好ましいさまざまな地形を持つ場所を特定する地形サブモデルなどになります。

人々がそのスキー場にアクセス可能かどうかは、アクセス性サブモデルで捉えることができます。 このサブモデルには、主要都市からのアクセスや一般道路でのアクセスを含めることができます。

費用サブモデルは、建設に最適な場所を特定します。 このサブモデルでは、より平坦な傾斜角や、電力および水道設備に近い場所がより適していると判断できます。

特定の属性またはレイヤーが複数のサブモデルに属することがあります。 たとえば、急傾斜は、地形サブモデルでは、適性が高い要素ですが、建築の費用サブモデルではマイナスの材料になります。

3. 重要度の高いレイヤーの決定

各サブモデルに影響する属性またはレイヤーを特定する必要があります。 各ファクターは、サブモデルによって定義される事象の構成要素を把握して記述します。 各ファクターはサブモデルの目的を達成するために機能し、各サブモデルはオーバーレイ モデル全体の目的を達成するために機能します。 事象の定義に使用するすべてのファクターのみがオーバーレイ モデルに含まれます。

特定のファクター向けにレイヤーの作成が必要なことがあります。 たとえば、幹線道路に近いほうが望ましい場合は、 道路からの各セルの距離を特定するために、[ユークリッド距離 (Euclidean Distance)] を実行して、距離ラスターを作成します。

4. 再分類/変換

異なる番号システムを直接結合することは有益ではありません。 たとえば、傾斜角を土地利用に追加しても、意味のある結果は得られません。 次に 4 つの主要な番号システムを示します。

  • 比率 - 比率スケールには基準点 (通常は 0) があり、このスケール内の番号は比較可能です。 たとえば、標高値は比率番号であり、50 メートルの標高は 100 メートルの半分の高さになります。
  • 間隔 - 間隔スケール内の値は互いに相関していますが、共通の基準はありません。 たとえば、pH スケールは間隔タイプであり、中間値の 7 を基準にして値が高いほどアルカリ性が増し、値が低いほど酸性が増します。 ただし、これらの値は完全に比較可能ではありません。 たとえば、pH 2 は pH 4 の 2 倍の酸性を意味していません。
  • 順序 - 順序スケールは、レースで最初にゴールした人、2 番目にゴールした人、3 番目にゴールした人というように順序を設定します。 順序が設定されますが、割り当てられた順序値は直接、比較することはできません。 たとえば、最初にゴールした人は必ずしも 2 番目にゴールした人の 2 倍の速さで走っていたわけではありません。
  • ノミナル – ノミナル (名目尺度) では、割り当てられた値と値の間に関係は存在しません。 たとえば、ノミナル (名目) 値である土地利用の値は相互に比較できません。 土地利用 8 は、まず間違いなく土地利用 4 の 2 倍を意味するものではありません。

各入力レイヤーには、潜在的に異なる値の範囲と異なるタイプの番号システムが含まれていることがあるため、解析用に複数のファクターを結合する前に、それぞれのファクターを共通の比率スケールに再分類または変換しなければなりません。

共通のスケールは事前に定義できます。たとえば、1 ~ 9 または 1 ~ 10 のスケールで、値が高いほどより選好度が高いように設定したり、0 ~ 1 のスケールで、特定の集合に所属する可能性を定義できます。

5. 重み付け

全体的な目標において、特定のファクターが他のファクターよりも重要な場合があります。 このような場合は、ファクターを結合する前に、ファクターの重要度を基にファクターに重み付けができます。 たとえば、スキー リゾートの用地の設定では、サブモデルの構築において、道路からの建設費用に関して傾斜角条件が道路までの距離の 2 倍の重要度があるとします。 この場合は、これらの 2 つのレイヤーを結合する前に、傾斜角条件の値を道路までの距離の 2 倍に設定する必要があります。

6. 追加/結合

オーバーレイ解析では、適地を特定するために、すべての入力ファクターにおける関係を一緒に設定する方が望ましいと言えます。 たとえば、適切に重み付けをした入力レイヤーは、すべて一緒に加重オーバーレイ モデルで結合することができます。 この結合処理では、ファクターが好条件であればあるほど、より望ましい場所となることが想定されています。 したがって、結果として得られる出力ラスターの値が高いほど、より適した場所となります。

他の結合方法も適用することもできます。 たとえば、ファジー ロジック オーバーレイ解析では、結合によるアプローチは、ある場所が複数の集合のメンバーである可能性について調べます。

7. 最適な場所の選択

ほとんどのオーバーレイ解析と適合性モデルでは、モデリングしている事象に最適な場所を識別することが最終的な目標です。 この事象には、有効に機能するために特定のサイズと空間的要件があります。 これらの要件には、機能するために必要な合計面積、この面積に分散する領域の数、領域の形状の特徴、領域間の最小距離と最大距離などがあります。

[領域の特定 (Locate Regions)] ツールを使用すると、定義された空間的制限を満たす、必要な領域の最適な組み合わせを識別することができます。

8. 分析

モデリング プロセスの最後の手順は、ユーザーによる結果の分析です。 候補にあがった理想の場所は条件を十分に満たしているでしょうか。 モデルで特定された最適な場所を調べるだけではなく、2 番めと 3 番めに選好度が高い候補地を調査すると有益な場合もあります。

特定された場所には訪ずれるべきです。 想像していたものと実際の様子が合っているか確認する必要があります。 モデルのデータが作成されてから状況が変化している場合があります。 たとえば、眺望がモデルへの入力条件の 1 つであり、眺望がよいほどその場所の選好度が高い場合を例にとると、 入力された標高データからモデルで最高の眺望の場所が特定されていても、その候補地を訪れてみると、建物がその場所の正面に建設され眺望を遮っていることがわかることがあります。

上記の手順すべてを考慮すると、場所が選択されます。

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