テレイン データセットは、何億、あるいは何十億ものポイントに関係するプロジェクトの縮尺を変更するよう設計されています。 テレイン ツールを利用すれば、通常はデータベースの問題を引き起こす LIDAR などの大規模なポイント コレクションの使用が容易になります。 スケーラビリティは、主にテレイン ピラミッドとマルチポイント シェープ タイプによって実現されます。
テレイン ピラミッドの構築は、縮尺依存のデータ削減方法を実施することでパフォーマンスを向上します。 ピラミッドは、近似精度のサーフェスの作成に必要なデータのみを参照します。 小規模なアプリケーションでは、データを間引きしたサブセットがあれば十分なので、リアルタイムのサーフェスの構築、表示、および解析がより高速になります。 元のデータが移動したり平均化されることはありません。 計測値の正確な位置情報が維持されます。 テレイン データセットの構築には、Z 許容値およびウィンドウ サイズという 2 つのタイプのピラミッドを使用することができます。
Z 許容値ピラミッド タイプを使用すると、ポイントを間引くために使用される Z 許容値に基づくフィルターのアプリケーションにより、ピラミッドが構築されます。 重要でないポイントを削除して、最高解像度データを基準とした、高さ方向の精度の近似値内にある派生サーフェスを生成します。
ピラミッド タイプがウィンドウ サイズの場合、ピラミッドの構築は、ウィンドウ サイズ フィルターの指定によって実施されます。 このピラミッド タイプでは、データを等面積 (ウィンドウ) に分割し、各エリアから 1 つか 2 つのポイントのみを見本として選択することにより、各ピラミッド レベルのポイントを間引きします。 水平サンプル密度を制御する際には主として、高地ポイント、低地ポイント、または平均標高ポイントに対して制御可能なバイアスが使用されます。
さらに、ラインとポリゴンの適用はピラミッド レベル単位で制御されます。 たとえば、ブレークラインの適用を最上位の 1 つまたは 2 つのピラミッド レベル解像度に制限できます。 対象エリアの境界や湖岸線などの一部のフィーチャは、すべての縮尺による表現が必要な場合がありますが、詳細表現が同じである必要はありません。 ジェネラライズされた表現は、粗い縮尺 (小縮尺) では使用できますが、完全な詳細表現は、大縮尺でのみ適用されます。
ピラミッド レベルごとに、垂直方向の許容値またはウィンドウ サイズと、縮尺閾値が割り当てられます。 これは、テレイン データセットをマップ上に表示する際に、各レベルに関連付けられた縮尺範囲を制御するために使用されます。 ピラミッド レベルの数、それらの許容値、閾値はすべて、ユーザーが定義することができます。
テレイン ピラミッドは累積的です。 ピラミッド内のレベルごとに、そのレベルで必要なすべての計測値の独立した別個のセットが含まれるのではなく、 粗いレベルのピラミッドからより微細なレベルに達するまでに、粗いレベルに属する計測値にさらに計測値が追加されていきます。 最高解像度レベルは、それより低いレベルのすべての計測値に他のいくつかの計測値を加えた合計になります。 これにより、テレイン使用時のパフォーマンスが向上し、ストレージ領域のオーバーヘッドが低下します。
テレイン ピラミッドは、[テレインの作成] ジオプロセシング ツールを使用して定義されます。 テレイン データセットを作成する方法の詳細については、「ジオプロセシング ツールを使用したテレイン データセットの作成」をご参照ください。
Z 許容値ピラミッド タイプ
Z 許容値ピラミッド タイプは、最高解像度データを基準とした各ピラミッド レベルの垂直方向の精度を制御します。 ピラミッド レベルの垂直方向の精度は常に、最高解像度のソース データの精度を基準とします。 たとえば、ソース データの既知の垂直方向の精度が 0.5 フィートで、最初のピラミッドの z 許容値が 1 フィートの場合、最初のピラミッドの絶対精度は 1.5 フィートです。
必要とされるピラミッド レベルの数とピラミッド レベルごとの z 許容値を決定する必要があります。 これらの決定に影響をおよぼす主な要因には、使用するテレイン データセットの縮尺範囲、z 範囲、およびテレイン内の高さの変動があります。 ピラミッド レベルを定義するために使用できる方法の 1 つは、コンター マップ モデルに従うことです。
Z 許容値ピラミッド レベルの定義
コンター マップ モデルを使用してピラミッド レベルを定義するには、次の手順を実行します。
- テレインからコンター マップを構築するために使用する標準的なマップ縮尺セットについて検討します。
- 縮尺を最大から最小の順に並べます。 コンター間隔が各縮尺に応じた間隔になります。 テレイン データセット ピラミッドにこれらの設定を適用します。
- 各マップ縮尺のピラミッド レベルを定義し、レベルごとの縮尺閾値を対応するマップ縮尺に設定します。 Z 許容値は、その縮尺で使用するコンター間隔の半分に設定してください。
次のピラミッド定義例では、1:5,000 よりも大きな表示縮尺には最大解像度データが使用されます。 1:5,000 ~ 1:12,000 の表示縮尺には、0.5 単位の Z 許容値に基づくピラミッド レベルが使用され、1:12,000 ~ 1:24,000 では 1.0 単位の Z 許容値レベル、1:24,000 ~ 1:100,000 では 2.5 単位の Z 許容値レベル、1:100,000 よりも小さな縮尺では 5.0 単位の Z 許容値レベルが使用されます。
Z 許容値ピラミッド レベルの基準にするコンター マップ シリーズの例
マップ縮尺 | コンター間隔 (メートル) |
---|---|
1:5,000 | 1 |
1:12,000 | 2 |
1:24,000 | 5 |
1:100,000 | 10 |
テレイン データセットの縮尺閾値レベルおよび対応するテレイン データセットの Z 許容値ピラミッド レベル
縮尺の閾値 | Z 許容値 (メートル) |
---|---|
5,000 | 0.5 |
12,000 | 1 |
24,000 | 2.5 |
100,000 | 5 |
ウィンドウ サイズ ピラミッド タイプ
ピラミッド レベル解像度は、ウィンドウ サイズによって定義されます。 ウィンドウ サイズ ピラミッド タイプは、データを等面積 (ウィンドウ) に分割し、各エリアから 1 つか 2 つのポイントを見本として選択することにより、各ピラミッド レベルのポイントを間引きします。
各ウィンドウのポイント選択は、次のいずれかの基準に基づきます。
- 最小 Z 値を持つポイント
- 最大 Z 値を持つポイント
- 最小 Z 値と最大 Z 値の両方を取得する 2 つのポイント
- 平均 Z 値に最も近いポイント
ピラミッド レベル解像度は、ウィンドウ サイズによって定義されます。 これは、区画を定義する各四角形のエリアの辺の長さです。 より解像度の低いピラミッド レベルは、大きなウィンドウ サイズで定義されます。 大きなウィンドウ サイズを使用すると、ポイントの選択元になるエリアが比較的少数になります。 エリアごとに 1 つまたは 2 つのポイントしか選択されないため、多量の間引きとジェネラライズが実施されることになります。 より解像度の高いピラミッド レベルは、より小さなウィンドウ サイズを使用して定義されます。 ウィンドウが小さいほどエリアが多くなるため、ポイントが増え、間引きが減り、詳細情報が増えます。
Z 許容値ベースのピラミッドと同様に、ウィンドウ サイズ ピラミッド タイプは累積的です。 ピラミッドに使用されるポイントは、より粗いレベルで選択されたすべてのポイントに、指定したレベルに固有の追加のセットを加えた合計になります。 累積ピラミッドは、各ピラミッド レベルでそれぞれのデータの完全コピーを必要としないため、格納効率が高くなります。 以下の図は、各ウィンドウでポイントがどのように選択されるかを示します。
ポイント選択方法の推奨
最高解像度のピラミッド レベルでは、平均ポイント間隔以上のウィンドウ サイズを使用する必要があります。 平均よりも近いポイントが多く存在することがわかっている場合、Z 平均は一部のポイントを効果的に間引きできるため、この値を使用します。 それ以外の場合は、平均ポイント間隔の 2 倍の値を使用します。
最小 Z 値/最大 Z 値によるポイント選択方法を使用している場合は例外です。この場合は、平均間隔の 4 倍を使用する必要があります。 最も粗いピラミッド レベルでは、テレインの x または y 範囲に基づくウィンドウ サイズを使用する必要があります。 ピラミッド レベルが 1/500 ~ 1/1000 の範囲内の場合、x 範囲と y 範囲の大きい方を推奨します。 最も効率的なピラミッドは、互いに 2 の累乗であるウィンドウ サイズで作成されます。 まず、最小ウィンドウ サイズを決定し、そこから先に進みます。
選択基準を使用して、さまざまなピラミッド レベルの対応するエリアの見本として選択されるポイントが決定されます。 基準ごとに、特定のタイプのデータまたはアプリケーションで有効なバイアスが提供されます。 バイアスがフル解像度ピラミッド レベルを分類したり、フル解像度ピラミッド レベルに影響を与えたりすることはありません。
方法 | 目的 | 推奨されるアプリケーション |
---|---|---|
最小 Z | 低地、河川、渓谷に対するバイアス |
|
最大 Z | 高地、尾根、丘陵に対するバイアス |
|
最小 Z 値/最大 Z 値 | 極値をキャプチャします。他のオプションほど多く間引きしません。 |
|
平均 Z | 極値を回避します。 |
|
追加間引き
ウィンドウ サイズ ピラミッドを使用する場合は、追加間引きを含めることができます。 これにより、ウィンドウのフィルター処理を通じて実施される間引き以上にピラミッド レベルのポイント数を削減できます。 この処理は、各ウィンドウのデータを調べることで、最も粗いピラミッド レベルのウィンドウ サイズから開始されます。 ウィンドウ内のポイントの Z 値の範囲がユーザー定義の閾値内にある場合、そのエリアは平坦と見なされます。 ウィンドウ サイズ処理で通常行われるようにエリアに対して 1 つまたは 2 つのポイントが選択されますが、残りのすべてのポイントは、残りのレベルで再びフィルター処理されるのではなく、フル解像度のピラミッド レベルに割り当てられます。 エリアは平坦であるため、より小さなウィンドウ サイズで追加ポイントを選択する必要はありません。
追加間引き処理の推奨事項
追加間引きが有効な場合、平坦なエリアで使用されるポイント数が削減されます。 エリア内のポイントの高さがユーザー定義の追加間引きの閾値内にある場合、そのエリアは平坦であると見なされます。 その効果は、ピラミッド レベルの解像度が高いほど明白になります。より小さなエリアは、より大きなエリアよりも平坦である可能性が高いためです。
追加間引きの閾値は、ノイズ フロアを上回るように、少なくともデータの垂直方向の精度と同程度に設定する必要があります。 大きな値を指定するほどより多くのポイントが間引きされ、パフォーマンスがある程度向上しますが、サーフェス フィーチャを解決または区別する能力は低下します。
- [間引き量 (少)] — 線形の途切れ (たとえば、建物の側面や森林の境界) を保持するのに最適です。 地面ポイントと地面以外のポイントの両方を含む LIDAR にお勧めします。 間引き量 (少) では、間引きされるポイントは最も少なくなります。
- [間引き量 (中)] — パフォーマンスと精度のバランスをとります。 間引き量 (少) ほど詳細は保持されませんが、全体的に多くのポイントを除外しつつ、できるだけ近い結果を生成します。 間引き量 (中) は、あらゆるタイプのデータに適した細線化メソッドです。
- [間引き量 (多)] — 最も多くのポイントを削除しますが、鮮明に描写されたフィーチャが保持される可能性は低くなります。 傾斜がなだらかに変化する傾向のあるサーフェスに、使用を限定する必要があります。 たとえば、間引き量 (多) は、地表 LIDAR や水深測量に効果的です。
ウィンドウ サイズ ピラミッド レベルの作成
ピラミッド レベルは次の情報に基づいています。
- ポイント データの平均ポイント間隔は 1 メートルです。
- ポイント間隔に大きな差異はないため、ほとんどのポイントは約 1 メートル離れています。
- データ範囲は東西に 20km、南北に 10km です。
次の例では、ウィンドウ サイズを 2 (メートル) から始めて、2 の累乗 (2、4、8、16、32) ずつ増やします。 20 キロメートルの 1/500 と 1/1000 の範囲内になるため、32 で停止します。 各ウィンドウ サイズでは、この例では前の縮尺閾値の 2 倍の大きさである縮尺閾値を使用します。その結果、次のピラミッド定義となります。
1 メートルのポイント間隔データのピラミッド定義のサンプル
ウィンドウ サイズ | サイズ変更 |
---|---|
2 | 3,000 |
4 | 6,000 |
8 | 12,000 |
16 | 24,000 |
32 | 48,000 |