最小二乗調整のラインとポイント

最小二乗調整はパーセル ファブリックで次のように機能します:

  • 調整では、現在と履歴の両方のパーセル境界線上の方向と距離のディメンションが使用されます。
  • 境界線または接続線に接続するポイントも計測として調整内で使用されます。
  • ラインのディメンションとポイントの座標を、調整内で重み付けすることができます。 高精度の座標とディメンションには高い加重が与えられます。つまり、変更の許容度が低くなります。 これらは元の位置またはディメンションに近い状態を保つことで、調整全体の結果に大きな影響を与えます。

パーセル ファブリックでの最小二乗調整の実行の詳細

最小二乗調整エンジンの詳細

最小二乗調整のライン タイプ

パーセル ラインと接続線は、異なるタイプの楕円体ベース ラインとして構成できます。 楕円ベース ラインは、AzimuthType フィールドのコード付きドメイン値に基づいて、最小二乗エンジンで処理されます。 AzimuthType フィールドは [PF_AzimuthType] ドメインを使用します。

方向タイプのコード値ドメイン

ラインは次のように処理されます。

  • コード付きドメイン値が 3 の場合、Direction フィールドの値は順測地で、この値が、計測タイプが測地方位角として DynAdjust 最小二乗エンジンに入力されることを示します。
  • コード付きドメイン値が 2、4、および 5 の場合、Direction フィールドの値は同等の方位角の計算に使用されることを示します。 算出された測地方位角は、計測タイプが測地方位角として、最小二乗エンジンに入力されます。
  • コード付きドメイン値が 1 の場合、Direction フィールドの値は測地ではなく、方向セットの一部として処理されることを示します。
  • コード付きドメイン値が 2、3、4、および 5 の場合、Distance フィールドの値は、計測タイプが楕円体の円弧の距離として最小二乗エンジンに入力されることを示します。

Distance フィールドの楕円体の円弧の距離の値は、最小二乗調整エンジンに入力する前にスケール処理できます。 値が標高にあり、楕円形表面まで減じる必要がある場合は、楕円体の円弧の距離がスケール処理されます。 Is COGO Ground フィールドが [True] の場合、楕円体の円弧の距離の値は、計測タイプが楕円体の円弧の距離として最小二乗エンジンに入力される前に、[縮尺] フィールドの縮尺係数が乗算されます。

Scale フィールドの値は、結合縮尺係数ではなく、標高補正に関連する係数です。 楕円体の円弧の距離の値をスケール処理する公式は、次のとおりです。

ellipsoid arc distance on the ellipsoid = scale factor * ellipsoid arc distance at elevation

楕円体の円弧の距離は、最小二乗調整エンジンへの入力前にこの方法でスケール処理できる唯一の計測タイプです。 標準距離の計測値は、下記の「DynAdjust エンジンでのパーセル ファブリックの Z 属性処理」で説明されているように、斜距離に変換することでスケール処理されます。

最小二乗調整の自然境界

パーセル ファブリックでは、COGO 対応ラインは、COGO ディメンションを持つ 2 ポイント ラインです。 2 ポイント ラインは、始点と終点を持つ単一の直線または曲線で、ほとんどのパーセル境界線を表します。

パーセル ファブリック内の自然境界を表すその他のパーセル ラインがあり、これらのラインはポリラインで表されます。 ポリラインは、線分と、各セグメントの端の頂点で構成されています。 自然境界の形状を表すラインの屈曲には、追加の頂点が発生します。

最小二乗調整では、自然境界を表すポリラインは、ポリラインに COGO 属性がある場合、2 ポイント ラインと同じと見なされます。 ポリラインの COGO 属性は、ポリラインの始点と終点を結ぶ仮想的な直線を表します。 ポリラインに COGO ディメンションがある場合、最小二乗調整は、2 ポイント ラインと同じ方法で処理します。

次の図では、緑色のラインで表される自然境界には、ラインの始点と終点間の方向と距離を定義する COGO 属性があります。

最小二乗調整の自然境界

最小二乗調整では、COGO 属性と、2 ポイント ライン フィーチャの始点と終点の座標が解析で使用されます。 調整ではフィーチャのジオメトリーは考慮されません。 調整結果をパーセル ファブリックに適用すると、自然境界ポリライン ジオメトリーを含むライン ジオメトリーは、相似変換を使用して変換および更新されます。

次の図では、隣接する 2 つの区画の間の自然境界のジオメトリーは、最小二乗調整の結果が適用された後、歪みが生じていません。 ベクトルはパーセル ファブリック ポイントの位置の変化を示し、右側のパーセルは更新された調整を示しています。

最小二乗調整後の更新された自然境界

自然境界および最小二乗調整に関する推奨事項

場合によっては、自然境界のポリライン ジオメトリーは、始点と終点の配置がバランスを欠く可能性があります。 次の図では、自然境界の形状は、最小二乗調整で COGO 属性を表すために使用される破線になります。

最小二乗調整の自然境界

ポリライン フィーチャを別々のポリライン フィーチャに分割すると、最小二乗調整において、始点と終点、および COGO ディメンションのバランスがよりよい分布結果になります。 次の図では、自然境界のポリライン ジオメトリーは、パーセル ファブリック ポイント X1、X2、X3 の位置で分割され、4 つの個別のフィーチャと、バランスがよりよい COGO ディメンション、始点、終点の分布を作成します。

最小二乗調整での自然境界の分割

最小二乗調整のポイント

パーセル ポイントは、次のようなポイント タイプとして最小二乗調整に入力されます:

  • フリー - 通常のパーセル ポイントです。 ポイント形状のジオメトリーは、最小二乗調整の結果がパーセル ファブリックに適用される際に更新されます。
  • 加重 - XY Accuracy フィールドに精度値を割り当てることで、フリー ポイントの座標に重み付けすることができます。
  • 制約付き - 座標は固定され、最小二乗調整の結果がパーセル ファブリックに適用される際には更新されません。

フリー ポイント

Adjustment Constraint フィールドが [XY はフリー、Z は制約] に設定されている場合、パーセル ファブリック ポイントはフリーです。 これがデフォルトです。

フリー ポイントの座標は、最小二乗調整によって再計算され、調整後の最良の位置の推定値が得られます。 ベクターは調整後のフリー ポイントに対して作成され、AdjustmentVectors フィーチャクラスに格納されます。 ベクターは、ポイントの元の座標位置から調整後の座標位置への移動を表します。 最小二乗調整の結果がパーセル ファブリックに適用される際、フリー ポイントにベクターが適用され、座標位置や形状ジオメトリーが更新されます。 また、これらのポイントに接続されているパーセル ラインおよびポリゴンの形状ジオメトリーも更新されます。

注意:

ポイントの Fixed Shape フィールドが [はい] に設定されている場合、ポイント形状は、最小二乗調整の結果がパーセル ファブリックに適用される際には更新されません。

加重ポイント

ポイントを最小二乗調整で加重ポイントに設定するには、Adjustment Constraint 属性を [XY フリー、Z 制約付き] に設定し、XY Accuracy フィールドにアプリオリ精度推定を追加します。 加重ポイントは、フリー ポイントより、最小二乗調整の結果に与える影響が大きくなります。

最小二乗調整による加重ポイントのポイント座標を再計算する際は、アプリオリな精度推定が調整の結果に影響します。 精度の高い加重ポイントは、精度の低い加重ポイントよりも調整量が少ない (調整ベクトルが短い) と予想されます。

最小二乗調整の結果をパーセル ファブリックに適用する際、加重ポイントは指定された標準偏差 (精度) と、そのポイントに接続されたラインのディメンションの影響に応じて調整します。 精度の高い加重ポイントは、精度の低い加重ポイントよりも調整量が少ない (移動量が少ない) と予想されます。

加重ポイントの X および Y フィールドに格納された座標値は、測地緯度と測地経度の計測値に変換され、DynAdjust 最小二乗エンジンに入力されます。 調整後の測地緯度と測地経度の計測値は、AdjustmentLines フィーチャクラスに格納されます。 加重ポイントは、調整後の座標が選択したネットワークの調整後の解に適合しない場合、外れ値としてフラグ付けすることができます。

注意:
加重ポイントの XY Accuracy フィールドの値が高いほど、そのポイントの移動許容範囲が大きくなり、その座標が解の最終的な調整後座標に与える影響は小さくなります。 XY Accuracy フィールドの値が低いほど、解の最終的な調整後座標に与える影響は大きくなります。 これは、XY Accuracy フィールドの値が高いほど調整ネットワークの加重が低くなり、XY Accuracy フィールドの値が低いほど加重が高くなる相関性があることを意味しています。 XY Accuracy フィールドの値の有効な範囲は、0.005 ~ 10 メートル (0.015 ~ 30 フィート) です。

加重ポイントが帰属する座標値は、最小二乗調整で次のように処理されます。

  • 加重ポイントの X および Y フィールドに座標が存在しない場合 (NULL の場合)、最小二乗解析では、そのポイントの形状ジオメトリーが使用されます。
  • 最小二乗調整の結果がパーセル ファブリックに適用される際、加重ポイントの XYZ フィールドに格納されている座標値は変化しません。 調整により、(ポイントの加重に基づいて) ポイントの空間位置が更新されます。 調整後の座標は、AdjustmentPoints フィーチャクラスの Adjusted XAdjusted Y、および Adjusted Z フィールドに格納されます。
  • ベクターは移動後の加重ポイントに対して作成され、AdjustmentVectors フィーチャクラスに格納されます。

制約付きポイント

ポイントを最小二乗調整で制約付きに設定するには、Adjustment Constraint 属性を [XYZ が制約] に設定します。 制約付きポイントの座標は、最小二乗調整で固定されます (移動しません)。 制約付きポイント座標の精度は 5 ミリメートルで、XY Accuracy フィールドに入力された精度の値をオーバーライドします。 制約付きポイントの座標は、最小二乗調整の結果に最も大きな影響を与えます。

制約付きポイントは、次のように入力され、最小二乗調整で処理されます。

  • 制約付きポイントの X および Y フィールドに座標が存在しない場合 (NULL の場合)、最小二乗調整では、そのポイントの形状ジオメトリーが使用されます。
  • 制約付きポイントは固定され、移動しません。 ただし、制約付きポイントの形状ジオメトリーが XYZ フィールドの座標値と異なる場合、最小二乗調整の結果がパーセル ファブリックに適用される際に、帰属する座標に一致するように更新されます。

最小二乗調整の距離と標高

パーセル レコード ドキュメント内のディメンションは、通常は地表レベルで表され、いずれの地図投影法にも依存しません。 距離はポイント間の平均標高を通る水平線上で表され、各ポイントにおける実際の標高は考慮されません。 パーセル レコード ドキュメントのディメンションは、パーセル ファブリック ライン フィーチャクラスの COGO 属性フィールドに格納されます。

斜距離

DynAdjust エンジンではポイント間の斜距離が使用されます。 各ポイントにおける標高が考慮されるため、水平なラインではなく斜めのラインになります。 パーセル ラインが DynAdjust エンジンに入力されると、パーセル ファブリック ラインの距離ディメンションは同等の斜距離に変換されます。

斜距離はパーセル ファブリック ポイント フィーチャクラスの Z 属性フィールドに格納されている標高値を使用してリアルタイムで計算されます。 ポイントの Z 属性値が Null の場合、そのポイントは標高 0 (海面) にあるものと見なされます。 入力ラインの元の COGO ディメンションは変更されません。

[最小二乗法調整によるパーセルの分析 (Analyze Parcels By Least Squares Adjustment)] ツールを使用して加重最小二乗調整を実行すると、計算されたパーセル ラインの斜距離が調整ライン解析レイヤーの Measurement フィールドに取り込まれます。 Measurement フィールドを確認するには、[コンテンツ] ウィンドウの [解析] グループを展開し、[調整ライン] の下の [距離] サブレイヤーの属性テーブルを開きます。

斜距離は常に、パーセル ラインの元の水平距離より長くなります。

Z 属性

最小二乗調整から正確な結果を得るために、ポイントの標高を Z 属性フィールドに必ずしも取り込む必要はありません。 ただし、長いラインの両端にポイントがある場合は特に、ポイントの標高によって調整結果が改善されます。

各ポイントに標高を割り当てる際に、標高の精度はそれほど高くなくてもかまいません。 標高は、地形図ベースマップ上のスポット標高または World Elevation サービスから取得したコンターから内挿できます。

DynAdjust エンジンでは、ポイントの Z 属性フィールドに格納されている標高値のみが使用されます。 ポイント ジオメトリーは使用されません。