LAS 形式は、.las ファイル内に座標系情報を格納します。 この情報を維持する方法は、LAS ファイルのバージョンおよびポイント記録形式によって異なります。これらは、.las ファイルに格納される属性と値に影響するプロパティです。 現在の LAS バージョンは 1.0、1.1、1.2、1.3、1.4 です。 以下の表に、各バージョンがサポートするポイント記録形式をまとめます。
LAS バージョン 1.0 ~ 1.3 は、GeoTIFF タブを使用して座標系を格納し、LAS バージョン 1.4 は GeoTIFF と Well-Known Text (WKT) の両規則をサポートします。 座標系情報の GeoTIFF メタデータ標準は、TIFF ラスターをジオリファレンスするために設計された一般的な規則です。 LAS はラスター形式ではないため、現実世界で適切に配置するには、GeoTIFF タグのサブセットのみが必要です。 ArcGIS では、GeoTIFF 情報は、さまざまな地理空間データ形式を読み書きするためのライブラリである GDAL (Geospatial Data Abstraction Library) を使用して解釈されます。 WKT 標準は、OGC (Open Geospatial Consortium) によって採用された、テキストベースの空間参照の説明です。 ポイント形式が 0 ~ 5 の LAS 1.4 ファイルは、空間参照を GeoTIFF または WKT として格納でき、新しいポイント形式 6 ~ 10 は WKT のみをサポートします。
座標系情報の場所も LAS バージョンによって異なります。 各 .las ファイルは、以下のエレメントで構成されています。
- パブリック ヘッダー ブロック
- 可変長レコード (VLR)
- ポイント データ レコード
- 拡張可変長レコード (EVLR) - LAS 1.3 と 1.4 でのみ使用可能
- LAS 1.3 では、ポイント データ記録形式 4 と 5 にのみ使用でき、元の LIDAR 調査からの波長データ パケットを格納することを目的としています。
- LAS 1.4 では、すべてのポイント データ記録形式でサポートされており、EVLR はさまざまな情報に対処できます。
LAS バージョン 1.0 ~ 1.3 では、座標系はファイルの可変長レコード部分に格納されます。これはバイナリ ファイルの先頭近くにあり、書き込まれた後は更新できません。 LAS 1.4 では、座標系情報は VLR または EVLR のいずれかに書き込むことができます。情報を更新するには、新しい座標系を EVLR 部分に書き込み、元の情報を変更して削除されたことを示します。
LAS データセットと個別の LAS ファイルの座標系
LAS データセット (*.lasd) は複数の .las ファイルと .zlas ファイルを参照して、連続するファイルの大規模なコレクションの視覚化と処理をサポートできます。 一般的に、1 つの LAS データセットで使用されるデータの座標系は同じになりますが、座標系が異なるファイルも LAS データセットで表示できます。 LAS データセットには、データの処理時に使用される座標系となる独自の座標系があります。 通常、LAS データセットの座標系は、それに追加する最初の .las 入力ファイルまたは .zlas 入力ファイルから取得されますが、これは LAS データセットの作成時に変更できます。
LAS データセットがマップまたは 3D シーンに追加される最初のデータセットの場合、その空間参照によりマップの座標系が定義されます。 LAS データセットによって参照されるが座標系が異なる .las ファイルまたは .zlas ファイルは、リアルタイムで再投影され、マップの座標系で描画されます。 標高ラスターなどの派生データ プロダクトを作成するためにジオプロセシング ツールにより LAS データセットが処理されるとき、出力のデフォルト座標系は LAS データセットからの空間参照を使用します。 これは、出力座標系環境設定で変更できます。
水平座標系と鉛直座標系
水平座標系は LAS データセットの XY 配置を定義し、鉛直座標系はその Z 配置を定義します。 この情報があることにより、データが正確に配置されるようになります。 データに水平座標系のみが定義されている場合、Z 単位は水平座標系から推定されます。 そのようなデータで X 座標と Y 座標が地理座標系に設定されている場合、その Z 単位はメートルであると想定されます。
.las ファイルと .zlas ファイルの再投影
[LAS の投影 (Project LAS)] ツールを使用して、ある座標系から別の座標系に 1 つ以上の .las ファイルと .zlas ファイルを再投影できます。 このツールを使用すると、ある測地基準系から別の測地基準系にデータを変換しているときに、適切な地理 (測地基準) 変換を簡単に選択できます。 鉛直測地基準系変換を実行するには、ArcGIS Coordinate Systems Data パッケージをインストールする必要があります。 このソフトウェアは、My Esri ページからダウンロードできる個別のインストールを通じて提供されます。 座標系の補足ファイルのインストールの詳細については、こちらをご参照ください。
.las 出力ファイルまたは .zlas 出力ファイルを作成するほとんどのジオプロセシング ツールは、出力座標系および地理座標系変換の環境設定を通じてデータの再投影をサポートしています。 このようなツールを [LAS の投影 (Project LAS)] ツールの代わりに使用すると、不要な中間データの作成を避けることができます。 下記の操作を利用する必要がある場合は、次のツールを使用してデータを再投影することを検討してください。
- [LAS の間引き (Thin LAS)] - データのポイント密度を減らします。
- [LAS タイルの作成 (Tile LAS)] - 点群を通常のタイル スキーマに細分化します。
- [LAS の抽出 (Extract LAS)] - 点群をクリップしてフィルターします。
LAS 座標系のよくある問題
LAS 形式の ASPRS (American Society for Photogrammetry and Remote Sensing) 標準では、空間参照を含む .las ファイルが必要です。 ただし、常にそうなるとは限りません。 LAS データは、GPS 測位が不可能な屋内空間で収集される場合があります。 写真測量手法から生成された点群に空間参照が定義されていない場合もあります。 LAS 形式ファイルの空間参照情報が存在しない、不完全である、または正しく定義されていない場合もあり、間違った場所に表示される原因となります。
空間参照情報が存在しないか認識できない .las ファイルまたは .zlas ファイルのデータセット プロパティを表示すると、座標系が不明なファイルとしてリストされます。 GeoTIFF タグを使用して空間参照を格納する LAS 形式ファイルの空間参照情報が部分的に書き込まれ不完全なときは常に、GCS WGS84 であるとしてレポートする可能性もあります。 これは、GDAL ライブラリが不完全な GeoTIFF 空間参照データを解釈する方法に起因します。
.las ファイルで発生する可能性があるもう 1 つの問題は、データが Z ディメンションに沿って強調または圧縮されているように見える可能性があることです。 これは一般的に、データのレンダリングに使用されている距離単位と、高さ情報が収集された単位が一致しない場合に発生します。 データセットに x,y 座標系のみが定義され、Z 座標系が定義されていない場合は、高さ情報の表示に x,y 座標系の距離単位が使用されます。 異なる単位の水平座標系の間でこのようなデータが再投影されると、Z 単位は定義されていないため変換されません。 こうしたシナリオで発生するスケーリングの歪みを解決するには、正しい Z 座標系を定義する必要があります。
.prj ファイルを使用して空間参照の問題を修正
ArcGIS Pro では、空間参照情報が存在しないか空間参照情報にエラーがある .las ファイルまたは .zlas ファイルの座標系は、.prj 補助ファイルで定義できます。 この補助ファイルは .las ファイルまたは .zlas ファイルと同じ場所にあり、同じベース名を共有しますが、拡張子は .prj です。 .prj ファイルは WKT 規則を使用して座標系を格納し、その存在により .las ファイルまたは .zlas ファイル内の情報が上書きされます。
[投影法の定義 (Define Projection)] ジオプロセシング ツールを使用して、個別の .las ファイルまたは .zlas ファイルの .prj ファイルを作成できます。 [座標系] パラメーターで未来的の空間参照を定義し、.prj ファイルをすべてのファイルに対して作成するか、空間参照が存在しないファイルのみに対して作成するかを指定することで、[LAS データセットの作成 (Create LAS Dataset)] ジオプロセシング ツールを使用して、.las ファイルまたは .zlas ファイルのコレクションの .prj ファイルを作成することもできます。
LAS データが最初にジオリファレンスされたがファイルに埋め込まれた空間参照情報が欠落しているか正しく定義されていない場合、ArcGIS Pro でデータを配置するには、正しい情報で .prj ファイルを作成するだけで十分です。 LAS データがジオリファレンスされていない場合、カスタマイズ可能なローカル マップ投影法を使用して、外縁実世界の位置に配置されるように x,y 平面に沿ってデータをシフトおよび回転できます。 ローカル投影法は、建物や小さな近傍などの小さいプロジェクト エリアを表すデータに役立ちます。 ローカル投影法を使用してデータセットをジオリファレンスしたら、他のアプリケーションで認識される標準の座標系に再投影できます。 ローカル投影法の詳細。
水平測位のローカル投影法と同様、ArcGIS Pro では、3D データの高さ単位を定義する不明な高度系も提供します。 これにより、Z 座標系が定義されておらず、距離単位が一致しない水平座標階があるデータで発生する Z 単位の歪みを修正できます。
空間参照が .prj ファイルで定義されている .las ファイルまたは .zlas ファイルをサードパーティのアプリケーションで使用すると、.prj 内の座標系が認識されない可能性があります。 他のアプリケーションが修正された情報を認識するようにするには、.prj ファイル内の座標系を .las ファイルまたは .zlas ファイルに埋め込む必要があります。 新しい .las ファイルを出力するジオプロセシング ツールを使用して、この情報を埋め込むことができます。 LAS 形式ファイルを出力する上記のツールに加えて、[LAS の変換 (Convert LAS)] ツールを使用して、異なる LAS バージョンとポイント記録形式で新しい LAS ファイルを作成することもできます。