解析中に、特定の特性を持つ道路の通過を完全に禁止するか、回避するか、あるいは逆に優先するように、規制をネットワーク データ ソースに対して構成することができます。 たとえば、規制を使用して、歩行者が高速道路上を歩くのを防いだり、頭上が十分ではない道路上を車高の高いトラックが通過するのを防いだりできます。
規制が特定の解析に応じて順守または無視されるように、解析の実行時に規制のオン/オフを切り替えることができます。 特定の解析で用いる規制を制御する方法としては、移動モードの使用を推奨します。 規制をはじめとするさまざまな解析プロパティを使用して移動モードを構成し、ルート検索中の車両を適切にモデリングできます。 解析の実行時に、事前定義された移動モードを選択すると、モデリングする移動モードに合わせて規制などのプロパティを効率的に、矛盾なく設定できます。
規制属性は、その規制を使用する移動モードでデフォルト値を無効化できるパラメーターを含むように構成できます。 たとえば、Vehicle Height パラメーターを規制属性に追加できます。 このパラメーター値は、解析でモデリングされた車両の高さを示します。
いかなる場合も、規制属性は、ネットワーク データ ソースのネットワーク エレメントごとにブール (True または False) 値を返すように構成されます。 指定されたネットワーク エレメントについて、規制が True を返した場合、これは、規制を含む移動モードでの解析中にそのエレメントに使用タイプが適用されることを意味します。False の場合、評価対象のその特定のネットワーク エレメントに規制が影響を及ぼさないことを意味します。 また、規制には、規制がルート検索に与える影響を変更するために使用できる [使用タイプ] プロパティも含まれています。
規制の使用
[使用タイプ] プロパティに割り当てた値によって、規制属性が関連付けられているネットワーク エレメントが禁止されるか、回避されるか、優先されるかが決まります。 さらに、高、中、または低によって、ネットワーク エレメントを回避または優先する度合いを定義できます。 以下の 3 つのセクションでは、一般的な規制の使用法を紹介します。
ネットワーク エレメントの禁止
最も一般的な規制の使用法は、通過の禁止です。 たとえば、一方通行は、一方の方向は通過可能だが反対方向は通過できないように、規制属性を使用してモデル化することができます。 同様に、歩道に対する規制属性では、通過を完全に禁止することができます。歩道として識別されたネットワーク エレメントは、動力付き車両に対して生成されるすべてのルートから除外されます。
ネットワーク エレメントの回避
特定のネットワーク エレメント上の通過を禁止する代わりに、禁止規制を緩和して、通過の回避が不可能であるか、コストがかかりすぎる場合を除いて、解析でエレメントの通過を回避することができます。 たとえば、商用配送車両のルート解析で、私道の走行を回避したい場合は、規制属性を使用して、その [使用タイプ] プロパティを [回避] に設定します。 これにより、ほとんどの場合は私道が回避されます。ただし、私道での配送が発生した場合は、その目的地に到達するルートを生成できます。 また、ストップに向かう途中で私道を回避するとコストがかかりすぎる (つまり、私道を避けるための迂回路が長すぎる) 場合は、私道の回避が解析で容認され、車両は私道を通ることができます。
ネットワーク エレメントの優先
3 つ目の規制属性の使用タイプは優先規制です。 規制属性を優先使用タイプで構成することができます。 危険物 (hazmat) を運搬するトラックを考えてみます。 道路には、危険物の輸送が違法な道路、許可されている道路、その道路沿いで起こる事故は緊急対応要員にとって対処が最も容易なため優先される道路があります。 これらのルールをモデリングするには、危険物の輸送が違法である道路については [使用タイプ] の値を [禁止] にした規制属性を構成し、危険物の輸送が奨励される道路については [使用タイプ] の値を [優先] にした別の規制属性を構成します。 この結果、車両のルートは禁止された道路には決して設定されず、できるだけ優先道路に沿って設定されます。
使用タイプの値
ネットワーク エレメントを回避または優先する度合いは、[使用タイプ] に値を割り当てて定義できます。 具体的には、回避または優先の高、中、低の値と禁止には、デフォルトで次の値が使用されます。
- -1: 禁止
- 5: 回避 (高)
- 2: 回避
- 1.3: 回避 (低)
- 0.8: 優先 (低)
- 0.5: 優先
- 0.2: 優先 (高)
詳細:
上記 7 つのテキストの値は、それぞれが内部的には固定数値で表現されます。各数値は上記のリストのテキスト ラベルの前に表示されます。 指定されているテキストの選択肢と、それが基づく数値は、ほぼすべてのユーザーにとって十分です。 それでもなおエレメントを回避または優先するレベルを微調整する必要がある場合は、独自に数値を指定することができます。 カスタム値を指定するかどうかを判断するには、この値が解析に与える影響を知っておく必要があります。
コストがゼロより大きいエレメント (通常はエッジ エレメントが含まれます) の場合、制限のあるエレメントのコストは、これらの数値で乗算されて増減します。この結果により、解析中に、エレメントがより適していると見なされるか、適していないと見なされるかが決まります。 たとえば、優先されるエレメントは、0 よりも大きく 1 よりも小さいパラメーター値で乗算されるため、コストが小さくなり、解析の結果にエレメントが含まれる可能性が高くなります。 [優先: 高] の値は 0 に近く、[優先: 低] の値は 1 に近くなります (0 の値は入力できないことに注意してください。解析時にエラーが発生します)。回避するエレメントの場合は、規制の使用法の数値が 1 よりも大きく設定されます。
コストがゼロのエレメント (たとえば、ジャンクション エレメントは通常、ほとんどのネットワーク データセットでコストがゼロです) の場合、規制の使用法の数値が 1 より大きい場合は (回避するエレメント)、制限のあるエレメントのコストが各エレメントのこの規制の使用法の数値に増加し、解析中にそのエレメントが適していないと見なされます。 規制の使用法の数値が 1 未満の場合 (優先されるエレメント)、制限のあるエレメントのコストはゼロのままです。 エレメントのコストはすでにゼロであるため、制限のあるエレメントの優先度が上がるわけではないので注意してください。
エレメントを禁止する場合は、制限の使用法の値が内部的に -1 に設定されます。 わかりやすく言えば、Network Analyst では負のコスト値は通過不可能と解釈されると考えることができます。ただし、内部プロセスはこれよりも複雑です。
解析では、これらの変更されたコストが一時的に使用されるだけであることに注意してください。解析の出力やターンごとの案内に含まれることはありません。
カスタム値を入力するには、指定された数値を置き換えます。ラベルは適切なテキストで更新されます。
プロパティ
[規制] タブでは、ネットワーク データ ソースで使用可能な規制属性が上部セクションに、選択した規制に関連付けられたプロパティが下部セクションに表示されます。
[プロパティ] セクションには、選択された規制の構成方法が表示されます。 規制属性に関連付けられたメタデータと、パラメーターおよびエバリュエーターの構成方法に関する詳細が表示されます。
以下に、規制属性プロパティを示します。
- [名前] - 規制属性の名前。
- [使用タイプ] - 規制属性の使用タイプ。 これは、エバリュエーター値が [True] の場合に、規制属性によってネットワーク エレメントが禁止されるか、回避されるか、優先されるかを指定します。
- [パラメーター] - 特定の解析について変更できる値のプレースホルダーです。 それぞれのパラメーターに意味のあるデフォルト値が設定されていますが、この値は必要に応じて無効にすることができます。
- [エバリュエーター] - ネットワークに定義されている属性ごとに、ネットワークに含まれる各ソースおよび方向 (エッジの場合、順方向と逆方向) の値が指定される必要があります。 エバリュエーターは、各ソースおよび移動方向の属性の値を割り当てます。各エレメントのデフォルトのエバリュエーターは、属性のエバリュエーターが割り当てられていないソースと方向に使用されます。
注意:
ネットワーク データセットのネットワーク属性を編集する場合、そのネットワーク データセットを使用するレイヤーに関係しないプロジェクトで編集することがベスト プラクティスです。 そのネットワーク データセットを使用するレイヤーがプロジェクト内に存在する場合は、[ネットワーク データセット プロパティ] ダイアログ ボックスで一部の編集がブロックされることがあります。 空のプロジェクトを作成し、そのネットワーク データセットを含むジオデータベースへの接続を追加してから、そのプロジェクトで編集を行うことをお勧めします。 そのネットワーク データセットを使用するレイヤーが ArcGIS Pro セッションで開かれているときは、コスト属性や規制属性の追加、削除、名前変更を行うことができません。 これは、ネットワーク データセット スキーマの更新が正常に完了すること、およびそのネットワーク データセットを使用するレイヤーが開かれたときに正しく初期化されることを保証するためです。
注意:
いずれかのネットワーク属性を変更した場合は、接続性を再構築し、対象の属性を再計算して、ネットワーク エレメントを更新するためにネットワーク データセットを構築する必要があります。
規制属性の作成
移動モードで使用する規制属性を構成できます。 規制属性を作成するには、次の手順を実行します。
- [ネットワーク データセット プロパティ] ダイアログ ボックスでネットワーク属性にアクセスします。
- [規制] タブをクリックします。
- ダイアログ ボックスの右上隅にある [オプション] ボタン をクリックします。
- メニューの [新規] ボタン をクリックするか、Ctrl + N キーを押します。
[規制] セクションに新しい行が追加されます。
- [プロパティ] セクションの [名前] フィールドに新しい規制属性の名前を入力します。
- [使用タイプ] ドロップダウン リストから使用タイプを選択します。
- 必要に応じて、[パラメーター] セクションを展開して新しいパラメーターを追加します。
- [エバリュエーター] セクションで、エバリュエーターをソース フィーチャに割り当てます。
- [移動モード] タブをクリックします。
- 必要に応じて [規制] セクションを展開します。
新しい規制属性がリストに追加されます。
- [OK] をクリックします。
規制属性はネットワーク データセットに保存されます。
規制属性のコピー
選択した規制属性のコピーを作成するには、次の手順を実行します。
- [ネットワーク データセット プロパティ] ダイアログ ボックスでネットワーク属性にアクセスします。
- [規制] タブをクリックします。
- コピーする規制属性を選択します。
- ダイアログ ボックスの右上隅にある [オプション] ボタン をクリックします。
- [コピー] ボタン をクリックするか、Ctrl + Shift + N キーを押します。
選択した規制属性のコピーが作成され、類似の規制名を持つ新しい行が追加されます (たとえば、Oneway という名前の規制属性を作成した場合は、Oneway 2 という名前を持つ新しい規制属性が追加されます)。 この新しい規制属性のプロパティはすべて、コピー元の属性から継承されます。
- [OK] をクリックして、ネットワーク データセットに対する変更を保存します。
規制属性の削除
規制属性を削除するには、次の手順を実行します。
- [ネットワーク データセット プロパティ] ダイアログ ボックスでネットワーク属性にアクセスします。
- [規制] タブで、削除する規制属性を選択します。
- ダイアログ ボックスの右上隅にある [オプション] ボタン をクリックします。
- [削除] ボタン をクリックするか、Ctrl + D キーを押します。
選択した規制属性が削除されます。
注意:
規制属性が他の移動モードまたは属性で使用されている場合、[削除] オプションは利用不可になります。 [削除] ボタンにアクセスするには、選択した規制属性をすべての移動モードおよび属性から削除します。規制属性の編集
規制属性を編集して、プロパティまたは規制に関連する他の属性を変更できます。 規制属性を編集するには、次の手順を実行します。
- [ネットワーク データセット プロパティ] ダイアログ ボックスでネットワーク属性にアクセスします。
- [規制] タブをクリックします。
- 編集する規制属性を選択します。
- [プロパティ] セクションで、[名前] および [使用タイプ] プロパティを必要に応じて編集します。
- 必要に応じて、規制属性に関連付けられたパラメーターを編集します。
- 必要に応じて、規制属性のエバリュエーターを編集します。
- [移動モード] タブをクリックします。
規制属性に加えられた変更は、[規制] セクションに反映されます。