Oracle でのジオデータベースのアップグレード

Standard または Advancedのライセンスで利用可能。

エンタープライズ ジオデータベースをアップグレードする目的は、新機能と修正された不具合を利用するために、ジオデータベースのシステム テーブル、ストアド プロシージャ、タイプ、および機能を更新することです。 使用しているデータベース バージョンが使用する ArcGIS クライアントでサポートされなくなった場合、データベースもアップグレードする必要があります。

ArcGIS Pro または ArcGIS Server の最新バージョンをインストールするか、サービス パック、パッチ、またはホット フィックスを既存のインストールに適用し、ジオデータベースをアップグレードします。

注意:

ジオデータベースをアップグレードしなかった場合でも、使用しているデータベース バージョンが最新のリリースの ArcGIS ソフトウェアでサポートされなくなることがあります。 システム要件を必ず確認して、サポートされているデータベース リリースを引き続き使用するようにしてください。 そのデータベース バージョンがサポートされなくなった場合、ジオデータベースをアップグレードする必要があります。 アップグレードの間隔が長くなるほど、アップグレード プロセスが複雑になります。

ArcGIS Pro 3.5 を使用してジオデータベースをアップグレードする場合、アップグレードされたジオデータベースのバージョンは 11.5.0.x になります。

アップグレードの前に必要な以下の手順を完了してから、[ジオデータベースのアップグレード (Upgrade Geodatabase)] ジオプロセシング ツールまたは Python スクリプトを使用してジオデータベースをアップグレードします。

アップグレードする前に

ジオデータベースを含め、エンタープライズ システムをアップグレードする前に、まず計画を立てます。 開発サーバーまたはテスト サーバーで新しいバージョンをテストして、すべてのクライアント アプリケーションで動作することを確認します。

新しいシステムが想定したとおりに機能することが確認できたら、アップグレードのスケジュールを設定します。アップグレードに必要な人員を確保し、各担当者が割り当てられたタスクを実行するために必要な権限を持っていることを確認します。

次の点に注意してください。

  • ユーザースキーマ ジオデータベースのアップグレードのサポートは終了しました。 現時点では、sde ジオデータベースはアップグレードできますが、ユーザースキーマ ジオデータベースはアップグレードできません。 ユーザースキーマ ジオデータベースに接続できますが、アップグレードすることはできません。
  • ベータまたはプレリリース バージョンのソフトウェアからのアップグレードはサポートされません。
  • お使いのデータベース リリースがアップグレード対象の ArcGIS バージョンをサポートしている場合は、10.8.1、10.9.x、または 11.x のジオデータベースから直接アップグレードできます。

    以前のバージョンのジオデータベースからアップグレードするには、最初にジオデータベースを 10.8.1、10.9.x、または 11.0 にアップグレードする必要があります。 最新のジオデータベースにアップグレードする前に、そのバージョンのアップグレードの手順に従います。

    Oracle データベースが最新のリリースのジオデータベースでサポートされていない場合、ジオデータベースを最新のリリースにアップグレードするには、データベースとジオデータベースを複数回アップグレードする必要があります。

    たとえば、Oracle 11.2.0.4 で 10.7.1.x ジオデータベースを使用している場合、Oracle 12.1.02 など、ArcGIS 10.7.1 でサポートされている新しいバージョンにデータベースをアップグレードします。

    次に、Oracle 12.1.02 をサポートし、最新のリリースの ArcGIS でもサポートされている Oracle のバージョンをサポートするバージョンにジオデータベースをアップグレードします。 たとえば、ジオデータベース バージョン 10.9.1 にアップグレードできます。次に、ArcGIS の最新リリースでサポートされているバージョンに Oracle をアップグレードします。 これにより、最新の ArcGIS バージョンにジオデータベースをアップグレードできるようになります。

    ジオデータベースの中間アップグレードでは、そのジオデータベース バージョンのアップグレード手順に従い、バージョンを移行するたびにジオデータベースをテストします。 同様に、データベース ベンダーから提供されている各データベース バージョンのアップグレード手順に従い、バージョンを移行するたびにテストします。

  • Oracle 12c データベース内のジオデータベースはアップグレードできません。 最初にサポートされている Oracle バージョンにアップグレードしてから、ジオデータベースをアップグレードできます。
  • ジオデータベースを以前のバージョンにダウングレードするための正式なメカニズムはありません。 新しいバージョンにアップグレードした後でジオデータベースをダウングレードする場合は、古いジオデータベース バージョンを含むバックアップ ファイルからデータベースを復元することができます。
  • Oracle OPEN_CURSORS パラメーターが大きな値 (2,000 など) に設定されており、その設定がジオデータベースと同期されていることを確認します。
  • ジオデータベースを現在のリリースにアップグレードすると、ジオデータベースはログ ファイル テーブルにグローバル一時テーブルのみを使用します。

以下は、ジオデータベースをアップグレードする前に実行する手順のチェックリストです。

  1. 使用する Oracle と ArcGIS のバージョンの組み合わせが Esri でサポートされているかどうかを確認するには、「Oracle に関する ArcGIS の要件」をご参照ください。
  2. ArcGIS クライアント リリースを混在して使用することの効果について理解し、特定のデータセット タイプを個別にアップグレードする必要があるかどうかを判断するには、「クライアントとジオデータベースの互換性」をご参照ください。
  3. ジオデータベースをアップグレードできるかどうかを確認します。

    これを行うには、移行する ArcGIS クライアントのバージョンを、1 台のコンピューターにインストールします。 ArcGIS Pro をインストールしたら、ジオデータベースに接続し、[データベース プロパティ] ダイアログ ボックスを開いて、ジオデータベースをアップグレードできるかどうかを確認できます。 ArcGIS Server (エンタープライズ エディション) をインストールした場合、ArcPyDescribe 関数を使用して、ジオデータベースをアップグレードできるかどうかを確認できます。

    # Open Python.
    cd /arcgis/server/tools
    ./python
    
    # Import ArcPy.
    import arcpy
    
    # Create a connection to the geodatabase.
    arcpy.CreateDatabaseConnection_management("/tmp/",
                                              "egdb_connection.sde",
                                              "ORACLE",
                                              "myogdb",
                                              "DATABASE_AUTH",
                                              "sde",
                                              "mysdepassword",
                                              "SAVE_USERNAME",
                                              "myconnection")
    
    # Check the geodatabase release.
    isCurrent = arcpy.Describe('/tmp/egdb_connection.sde').currentRelease
    
    print(isCurrent)

    false が返された場合、ジオデータベースをアップグレードできます。 true が返された場合、ジオデータベースをアップグレードする必要はありません。 以降の手順を省略してください。

  4. Oracle Text コンポーネントがインストールされていることを確認します。

    Oracle ではデフォルトで Text コンポーネントがインストールされますが、デフォルトのインストールを実行していない場合、Text コンポーネントがインストールされていない可能性があります。

    このコンポーネントがインストールされているかどうかを確認するには、SYSTEM ユーザーまたはデータベースの DBA 権限のあるユーザーとしてサイン インし、次の SQL ステートメントを実行します。

    SELECT owner, object_name
    FROM all_objects
    WHERE object_type = 'PACKAGE'
      AND object_name = 'CTX_DDL';
    レコードが返されなかった場合は、Text コンポーネントがインストールされていません。 Oracle のインストールを実行して、Text コンポーネントをインストールします。

  5. データベースのバックアップを作成します。
  6. ArcGIS の外部にあるジオデータベース システム テーブルに追加したカスタム機能 (トリガーや追加のインデックスなど) をすべて削除します。

    アップグレード手順では、ユーザーがシステム テーブルに追加したカスタマイズは考慮されません。 このようなカスタマイズによってシステム テーブルのスキーマ変更が妨げられた場合、アップグレードが失敗します。

  7. ジオデータベース管理者に、ジオデータベースのアップグレードに必要な権限を付与します。

    必要な権限の一覧については、「Oracle でのジオデータベースの権限」をご参照ください。

  8. SQL からデータに直接アクセスする場合、Oracle サーバー上にある既存の st_shapelib を新しいバージョンのライブラリに置き換えます。

    My Esri から新しい st_shapelib ファイルをダウンロードします。

    必ず、Oracle サーバーのオペレーティング システムに対応するライブラリを使用してください。

    ライブラリを Oracle サーバー上の以前とは異なる場所に配置する場合、extproc が新しいライブラリの場所を指すように再構成し、Oracle リスナーを再起動する必要があります。 詳細については、「Oracle の ST_Geometry にアクセスするための extproc の構成」をご参照ください。

  9. アップグレードするジオデータベースに接続しているユーザーがいないことを確認します。 ジオデータベースにユーザースキーマ ジオデータベースが含まれる場合も、データベース内のユーザースキーマ ジオデータベースに接続しているユーザーが存在しないことを確認します。

    ジオデータベースに現在接続しているユーザーのリストを確認するには、ArcGIS Pro[ジオデータベース管理] ダイアログ ボックスを開きます。

これで、ジオデータベースをアップグレードできるようになりました。

ジオデータベースのアップグレード

ArcGIS Pro[ジオデータベースのアップグレード (Upgrade Geodatabase)] ツール、または ArcGIS Pro または ArcGIS Server コンピューターで実行する Python スクリプトを使用して、ジオデータベースをアップグレードできます。

注意:

ジオデータベースをアップグレードする場合、現在の接続構文を使用して接続する必要があります。 以前の接続構文を使用すると、アップグレード プロセスは失敗します。 接続構文の詳細については、「ArcGIS から Oracle への接続」をご参照ください。

ジオデータベースにブランチ バージョン対応データが含まれている場合は、追加のアップグレード後の手順が必要になる場合があります。 手順については、「ジオデータベースのアップグレード (Upgrade Geodatabase) の詳細」をご参照ください。

[ジオデータベースのアップグレード (Upgrade Geodatabase)] ツールの使用

[ジオデータベースのアップグレード (Upgrade Geodatabase)] ジオプロセシング ツールは、次のいずれかから開きます。

  • データ管理ツールボックス内のジオデータベース管理ツールセット
  • ArcGIS Pro 内の [データベース プロパティ] ダイアログ ボックスの [一般] タブにある [アップグレードの実行] ボタン

[データベース プロパティ] からツールを開いた場合、[入力ジオデータベース] テキスト ボックスにジオデータベース接続情報が事前に入力されています。

Esri では、[前提条件を確認] および [ジオデータベースをアップグレード] オプションをオンのままにすることをお勧めします。 これにより、ジオデータベースのアップグレードを続ける前に、アップグレードを行うための前提条件を満たしているかどうかが確認されます。

前提条件のチェックでは、ジオデータベースへの他のアクティブな接続が検出され、接続しているユーザーにジオデータベースをアップグレードするための十分な権限があるかどうか、データベースが XML 列に対応しているかどうか、すべてのデータセットを開くことができるかどうか、データベースとライブラリのリリースが同じかどうかが確認されます。 前提条件のいずれかが満たされていない場合、ツールは終了します。 アップグレードの手順を再度実行する前に、問題を修正する必要があります。

確認の結果は、ジオプロセシング ツールのダイアログ ボックスで報告されます。 チェックで不合格になった場合は、c:\Users\<user name>\AppData\Local\ESRI\<ArcGIS product> フォルダーにある GDBUpgrade.log ファイルにも結果が書き込まれます。

すべてのチェックに合格した場合、ツールはアップグレードに進みます。 前提条件チェックとアップグレードの状態は、ジオプロセシング ツールの進行状況を示すダイアログ ボックスに表示されます。 アップグレードが失敗すると、情報が GDBUpgrade.log ファイルに書き込まれます。 ユーザーの TEMP ディレクトリにある sde_setup.log ファイルに追加情報が書き込まれます。 ユーザーが一時ディレクトリを構成していない場合は、システムの TEMP ディレクトリが使用されます。

スクリプトの実行

Python スクリプトを使用してジオデータベースをアップグレードするには、次のサンプル スクリプトのいずれかをコピーしてテキスト エディターに貼り付け、サイトに固有の情報に使用するように変更し、そのファイルを保存して閉じて、実行します。

ヒント:

ArcGIS Server コンピューターからの Python の実行については、「ArcGIS Server および ArcPy」をご参照ください。

例では、SDE ユーザーとして接続する既存のデータベース接続ファイル (.sde) があることを前提としています。 接続ファイルが存在しない場合は、アップグレードする前にファイルを作成します。

# Name: upgradesdegdb_example.py
# Description: Uses existing database connection file
# on a Windows computer to run prerequisite check
# and upgrade an enterprise geodatabase.

# Import arcpy module
import arcpy
 
# Local variables:
Output_Workspace = "C:\\ArcGIS\connection_files\<Connection file>"
Default_gdb = "C:\\ArcGIS\connection_files\<Connection file>"

# Process: Upgrade Geodatabase
arcpy.UpgradeGDB_management(Default_gdb, "PREREQUISITE_CHECK", "UPGRADE")
# Name: upgradesdegdb_example.py
# Description: Uses existing database connection file
# on a Linux computer to run prerequisite check
# and upgrade an enterprise geodatabase.

# Import arcpy module
import arcpy
 
# Local variables:
Output_Workspace = "<user>/connections/<Connection_file>"
Default_gdb = "<user>/connections/<Connection_file>"

# Process: Upgrade Geodatabase
arcpy.UpgradeGDB_management(Default_gdb, "PREREQUISITE_CHECK", "UPGRADE")