ArcGIS Field Maps モバイル アプリを使用した、オフライン イベント データの収集と編集

Location Referencing ライセンスで利用可能です。

多くの組織では、複数のメンバーが ArcGIS Pipeline Referencing で管理されるリニア リファレンス データの保守を担当します。 これらの業務には、LRS イベント データを収集または更新する必要がある現場の作業者が含まれることがあります。

現場でのデータ収集は長時間におよび、接続が制限されている遠隔地で実施されることもあります。 このイベント データが ArcGIS Field Maps を使用してオフラインで収集された場合、イベントがシステムと同期される前に、収集されたイベントのルート情報が変更される可能性があります。

イベントがシステムに同期される際に正しく配置されるようにするには、同期サービスが Field Maps で非接続環境でのイベント収集中に行われたルート編集を比較し、その期間に編集されたルート上のイベントに、構成されたイベントの振舞いを適用することができます。

Pipeline Referencing は、iOS または Android 上の Field Maps モバイル アプリを使用して、「同期が有効なフィーチャ サービス」からのオフライン イベント データの収集および編集をサポートしています。

Field Maps モバイル アプリの要件の詳細

次の図は、「非接続環境での編集および同期の全体的なワークフロー」を示しています。

オフライン データの収集と公開のワークフローの概要

フィーチャ サービスで、データのローカル コピー (レプリカ) をダウンロードするには、「リニア リファレンスおよびバージョン管理」機能のほか、「レプリカ トラッキング」および「同期」機能が有効である必要があります。 これにより、モバイル作業者は非接続環境の現場でデータを収集および編集できます。

レプリカがデバイスにダウンロードされると、関連付けられたレプリカ バージョンがデフォルト バージョンから自動的に作成されます。 ユーザーはローカル データを編集し、接続性が確保された時点でそのデータを関連付けられたレプリカ バージョンと同期させることができます。 同期により、収集されたローカル データが関連付けられたレプリカ バージョンにプッシュされ、ArcGIS Pro でデフォルト バージョンにポストできます。

注意:

モバイル作業者がオフライン中に収集したデータを同期する場合、デフォルト バージョンのルートが編集されると [イベントの振舞いを適用 (Apply Event Behaviors)] ツールが自動的に実行されます。 オフライン マップのデータ収集中にデフォルト バージョンでルートが編集されなかった場合、ツールは実行されません。

更新は、関連付けられたレプリカ バージョンからデフォルト バージョンにポストされたら確認できます。

ワークフロー全体を次の 3 つのパートに分けることができます。

オフライン フィーチャ サービスで使用するためのデータの準備

オフライン データを収集するには、まずオンライン データの準備および公開手順を実行します。

次のデータ準備手順を実行します。

  1. 公開する必要があるすべてのフィーチャ レイヤーのレプリカ トラッキングを有効化します。

    [レプリカ トラッキングの有効化 (Enable Replica Tracking)] ツールを使用するか、ArcGIS Pro[カタログ] ウィンドウで [管理] をクリックし、[レプリカ トラッキング] チェックボックスをオンにします。

  2. フィーチャ サービスを公開するには、次の手順に従います。
    1. フィーチャ サービスのフィーチャ プロパティで、[同期を有効化] チェックボックスを使用して同期を有効にします。
    2. [Z 値のあるフィーチャにデフォルトを適用] チェックボックスをオンにし、[フィーチャの挿入または更新時のデフォルトの Z 値] を「0」に設定します。
    3. [同期] オプションを設定して、「ダウンロードされたマップごとにバージョンを作成」します。 このオプションの詳細については、「レプリカ バージョンとの同期」をご参照ください。
      フィーチャ プロパティ ウィンドウ
  3. サービスとして公開する際に、バージョン管理とリニア リファレンス機能が有効になっていることを確認します。
    注意:

    [同期] セクションの 3 つのバージョン作成オプションのうち、Field Maps アプリを使用して LRS イベントを収集および更新する際は、[ダウンロードされたマップごとのバージョンの作成] オプションのみをお勧めします。

    [ユーザーごとのバージョンの作成] オプションはブランチ バージョン対応データセットをサポートしておらず、LRS データに使用することはできません。

    [なし] オプションを使用すると、データがデフォルト バージョンに直接同期されます。 このオプションでは、他の編集者が加えた変更を確認して、これらの変更の競合を解決することはできず、デフォルト バージョンに最後に適用された編集内容がデフォルト バージョンに保存されます。

オフライン フィーチャ サービスで使用するデータの準備の詳細

オフライン データの収集および編集に使用する Web マップの作成

上記の必要な機能を備えたフィーチャ サービスが公開されたら、次の手順を使用して Web マップを作成します。

  1. Web ブラウザーを開いて ArcGIS 組織アカウントにサイン インします。

    ArcGIS Online を使用している場合、https://www.arcgis.com/home にアクセスします。

    ArcGIS Enterprise を使用している場合、ポータルに移動します。

  2. ArcGIS 組織の Web サイトの上部にある [マップ] をクリックし、[Map Viewer] を開きます。
  3. [追加] メニューをクリックして [レイヤーの検索] を選択し、公開済みの同期が有効化されたフィーチャ サービスを検索します。
    レイヤーの検索
  4. 同期が有効化されたフィーチャ サービスの追加ボタンをクリックし、フィーチャ サービスを Web マップに追加します。

    追加ボタン

  5. [ベースマップとして使用] オプションを使用して、オフラインでの使用が有効化されたベースマップを Web マップに追加します。
  6. [保存] をクリックします。

    [マップの保存] ダイアログ ボックスが表示されます。 マップのタイトルのほか、必要に応じてタグ、サマリー、サーバー フォルダーを指定します。

    注意:

    すべての Web マップでベースマップが必要です。 ポータルに含まれているデフォルトの Esri ベースマップは、オフラインでは使用できません。 「Esri ベースマップを ArcGIS Online から Web マップに追加」します。

    オフライン用のレイヤー タイプ要件の詳細

オフライン エリアの定義とデータの収集および同期

事前にオフライン マップ エリアを作成して、オフライン作業者の作業環境を簡素化することをお勧めします。 オフライン マップ エリアを利用すると、Web マップの特定エリアのデータをパッケージ化することで、オフラインで使用するマップを迅速かつ簡単にダウンロードできます。

1 つの Web マップに複数のオフライン エリアを定義できます。 「オフライン マップ エリアを定義」するには、複数のオプションがあります。 オフラインでのモバイル作業者の作業環境を簡素化するには、ArcGIS Enterprise ポータルを使用することをお勧めします。

注意:

オフライン マップ エリアを作成、編集、管理」するには、マップの所有者であり、サーバー権限を持っている必要があります。

オフライン マップ エリアのデバイスへのダウンロード

Field Maps をインストールし、オフライン マップ エリアをデバイスにダウンロードするには、次の手順を実行します。

  1. ArcGIS 組織の Field Maps Web アプリを開き、オフラインで取得するマップの [オフライン] オプションが [オフライン] タブで有効になっていることを確認します。
  2. Field Maps アプリの要件」を確認し、お使いのデバイスがサポートされていることを確認します。
  3. デバイスに Field Maps アプリをインストールします。
    注意:

    ファイアウォールの内側にある ArcGIS EnterpriseField Maps アプリ データを公開する場合、ArcGIS ServerPortal for ArcGIS に使用されているのと同じ「SSL 証明書」をモバイル デバイスにインストールする必要があります。

    モバイル アプリの構成の詳細

  4. Web マップに定義済みのオフライン マップ エリアが存在する場合、「定義済みマップ エリアのダウンロード」の手順を実行します。

    必要に応じて、Web マップに指定されていないオフライン エリアが存在する場合、お使いのモバイル オペレーティング システムに適した手順を使用して、「マップ エリアを定義およびダウンロード」します。

Field Maps を使用したオフライン データの収集と編集

次のセクションは、Field Maps を使用して現場のイベント データをキャプチャするマップ エディターに関連しています。

イベントを収集する場合、以下を検討してください。

  • Field Maps アプリでイベントを追加するには、イベントのルート ID とメジャー情報を指定する必要があります。 日付はオプションですが、推奨します。
  • イベント データのみを収集および編集できます。 キャリブレーション ポイント、中心線、またはルートが作成または編集された場合、同期処理は失敗します。
  • ラインまたはポイント イベントを追加できます。

Field Maps からのデータの同期

モバイル デバイスでデータを同期するには、次の手順を実行します。

  1. ネットワーク接続が回復したら、[マップ オーバーフロー] メニューをタップします。

    オフラインで実行した編集が [自動同期] オプションの下にリストとして表示されます。 サーバーと同期する前に、編集内容を確認できます。

    Field Maps の自動同期オプション

イベントの作成および同期シナリオ

以下の例では、既存のルートに現場のイベントを追加し、データベースと同期する様子を説明します。

フィールド データの収集を行うため、レプリカ データベースが 2023 年 1 月 3 日に作成されました。

次の図は、マップがオフラインになった時点で存在する 2 つのルート (R1 と R2) を示しています。

編集前のオフライン マップ内のルート

次の表に、オフライン マップが作成されたときのルートの詳細を示します。

ルート ID始点メジャー終点メジャー開始日終了日

R1

5

15

1/1/2023

<NULL>

R2

10

50

1/1/2023

<NULL>

次の表は、このシナリオのイベント レコードに対して構成されたイベントの振舞いを示しています。

イベント名イベントの振舞い

E1

維持

E2

廃止

E3

移動

E4

カバー

次の図は、Field Maps を使用してルートに追加されたイベントを示しています。

Field Maps を使用して追加されたイベント レコード

次の表は、イベント レコードの詳細を示しています。

イベント IDルート ID始点メジャー終点メジャー開始日終了日属性

E1 ID1

R1

5

15

1/1/2023

<NULL>

DOTClass, Class1

E2 ID1

R1

5

15

1/1/2023

<NULL>

Elevation, 20

E3 ID1

R1

5

15

1/1/2023

<NULL>

OperatingPressure, 800

E4 ID1

R1

5

15

1/1/2023

<NULL>

TemporaryOutage, Region1

E1 ID2

R2

10

50

1/1/2023

<NULL>

DOTClass, Class1

E2 ID2

R2

10

50

1/1/2023

<NULL>

Elevation, 20

E3 ID2

R2

10

50

1/1/2023

<NULL>

OperatingPressure, 800

E4 ID2

R2

10

50

1/1/2023

<NULL>

TemporaryOutage, Region1

マップがオフラインだった間、ルート R1 は 2023 年 1 月 5 日に始点から延長され、ルート R2 は変更されていません。 ルートの編集はデータベースに接続されたオフィスで実施され、イベントの追加は非接続環境の現場で実施されていることに注意してください。

同期前かつ延長後のルート

次の表に、R1 が始点で延長された後のデフォルト バージョンのルートに関する詳細を示します。

ルート ID始点メジャー終点メジャー開始日終了日

R1

5

15

1/1/2023

1/5/2023

R1

0

12

1/5/2023

<NULL>

R2

10

50

1/1/2023

<NULL>

ネットワーク接続が確立されると、現場で収集されたデータ (イベント) がデータベースに同期されます。

次のワークフローはイベントの振舞いが適用されるルートを示しています。

ルートおよび同期後に適用されるイベントの振舞い

データがオフラインになった日以降に (フィールドでイベントが追加または編集された) ルートが編集された場合、イベントの振舞いは同期後に自動的に実行されます。

R1 は 2023 年 1 月 5 日に延長 (編集) されており、レプリカの日付である 2023 年 1 月 3 日よりも後であるため、同期後に R1 に追加されたイベントに対してイベントの振舞いが適用されます。 R2 は変更されていないため、イベントの振舞いは適用されず、ロケーション エラーのみが計算されます。

次の図は、同期後のルートおよびイベントを示しています。

同期後かつ延長後のルート

新しく作成されたイベント レコードは、次の属性を持っています。

  • E1 ID1 は、2 つのタイム スライスで表されます。 維持イベントの振舞いが延長に対して構成されているため、最初のレコードが示すように、元のイベントは 2023 年 1 月 5 日に廃止されます。 新しいタイム スライスの日付は 1/5/2023 〜 <Null> で、ルートが延長されたため、メジャー 0 〜 12 が含まれています。
  • E2 ID1 は延長に対して廃止イベントの振舞いが構成されているため、ルートが拡張された後、イベントは廃止されます。 終了日が <Null> から 1/5/2023 に変更されます。
  • E3 ID1 は、2 つのタイム スライスで表されます。 移動イベントの振舞いが延長に対して構成されているため、最初のレコードが示すように、元のイベントは 2023 年 1 月 5 日に廃止されます。 新しいタイム スライスの日付は 1/5/2023 〜 <Null> ですが、メジャー 5 〜 15 は維持されます。 このため、終点メジャー 15 をルート上に配置できず、現時点でルートにメジャー 0 〜 12 が含まれているため、イベントのロケーション エラーが発生します。
  • E4 ID1 は、2 つのタイム スライスで表されます。 カバー イベントの振舞いが延長に対して構成されているため、最初のレコードが示すように、元のイベントは 2023 年 1 月 5 日に廃止されます。 新しいタイム スライスの日付は 1/5/2023 〜 <Null> ですが、イベントは依然としてルート全体をカバーしています。

ルート R2 のイベントに対して、同期後にロケーション エラーが発生します。 ルート R2 は現場でのデータの収集中に編集されていないため、R2 にイベントの振舞いは適用されません。

次の表は、同期後のイベントの詳細を示しています。

イベント IDルート ID始点メジャー終点メジャー開始日終了日ロケーション エラー属性

E1 ID1

R1

5

15

1/1/2023

1/5/2023

エラーなし

DOTClass, Class1

E1ID1

R1

2

12

1/5/2023

<NULL>

エラーなし

DOTClass, Class1

E2 ID1

R1

5

15

1/1/2023

1/5/2023

エラーなし

Elevation, 20

E3 ID1

R1

5

15

1/1/2023

1/5/2023

エラーなし

OperatingPressure, 800

E3 ID1

R1

5

15

1/5/2023

<NULL>

終点メジャーとの部分一致

OperatingPressure, 800

E4 ID1

R1

5

15

1/1/2023

1/5/2023

エラーなし

TemporaryOutage, Region1

E4 ID1

R1

0

12

1/5/2023

<NULL>

エラーなし

TemporaryOutage, Region1,

E1 ID2

R2

10

50

1/1/2023

<NULL>

エラーなし

DOTClass, Class1

E2 ID2

R2

10

50

1/1/2023

<NULL>

エラーなし

Elevation, 20

E3ID2

R2

10

50

1/1/2023

<NULL>

エラーなし

OperatingPressure, 800

E4 ID2

R2

10

50

1/1/2023

<NULL>

エラーなし

TemporaryOutage, Region1,