Spatial Analyst のライセンスで利用可能。
[最適領域接続 (Optimal Region Connections)] ツールは、最小コスト パスの最適ネットワークを特定し、一連の入力領域を接続します。 2 つの位置間を接続する、別々のパスは作成しません。
複数の領域があり、領域間の最適な移動方法をプロットするネットワークを作成するときに、このツールを使用します。 たとえば、領域として生息地パッチ、公園、伐採場を指定できます。 結果として生成されるネットワークには、生息地をつなげる野生動物のコリドー、公園をつなげるサイクリング道路、伐採場をつなげる伐採道路などがあります。
生成されるネットワークでは、パスを使用して領域間を移動できます。他の領域を通過して、遠方の領域に到達することもできます。
コスト サーフェス入力を指定すると、生成されるネットワークは最小コスト パスのネットワークになります。 入力ソースのみを指定すると、最短パスのネットワークのみが生成されます。
最適ネットワークでは、移動方向はどちらでもかまいません。 移動者がある領域から次の領域に移動しても、あるいは 2 つ目の領域から最初の領域に戻っても、累積コストは同じです。 移動方向が解析において関連性がある場合は、[最適パス (ライン) (Optimal Path As Line)] ツールを使用します。
最適ネットワークの用途の例
位置間の最小コスト パスの最適ネットワークを使用すると、次のようなさまざまなシナリオを解決できます。
- 災害復旧活動において、救助隊と医療スタッフの拠点を 5 つ特定しました。 拠点間の補給ルートの最適なネットワークを策定したいと考えています。
- 森林伐採で、切り出した材木を運ぶ道の最もコスト効率のよいネットワークを作成したいと考えています。
- 消火活動において、複数の本部間で消火資源を移動する経路の最適なネットワークを特定したいと考えています。
- 適合性モデルから、ボブキャットの最適な 10 の生息地域を特定しました。 メタ個体群の中で遺伝的多様性を維持するために、ボブキャットが自然のコリドーの最適なネットワークを通って生息地域間を移動することを望んでいます。
最適ネットワーク解析
距離の解析は、概念的に、次の関連機能領域に分けることができます。
- 直線距離を計算し、必要に応じて、バリアまたはサーフェス ラスターを使用して計算を調整します。
- 必要に応じて、コスト サーフェス、ソース特性、垂直方向ファクター、および水平方向ファクターにより、その距離に達する速度を決定します。 累積距離ラスターを作成します。
- 最適ネットワーク、特定のパス、またはコリドーを使用し、生成される累積距離サーフェス上に領域を接続します。
3 つ目の機能領域から、パスの最適ネットワークを使用して領域を接続した状態を以下の図に示します。 シナリオには、森林管理事務所のコレクションに対応する 4 つの領域 (紫のドット) と数本の河川 (青いライン) が含まれています。
領域は、バリアを適用したコスト サーフェス上で、最適ネットワークで接続されます。
距離アロケーション出力を検証すると、下部の 2 つの領域が接続されていない理由がわかります。 河川バリアがあるため、これらの領域はコスト近傍ではありません。
最適ネットワークの作成
最適ネットワーク出力を作成するには、次の手順を実行します。
- [最適領域接続 (Optimal Region Connections)] ツールを開きます。
- 接続する領域を [入力ラスターまたは領域フィーチャ データ] パラメーターで指定します。
- 出力最適接続ネットワーク名を指定します。
- 必要に応じて、バリア データセットを入力します。
- 該当する場合は、[入力コスト ラスター] パラメーターのコスト サーフェスを指定します。
- 必要であれば、[隣接する接続の出力フィーチャクラス] パラメーターの名前を指定します。
- 必要に応じて、[距離計算の方法] パラメーター値または [領域内の接続] パラメーター値を指定します。
- [実行] をクリックします。
最適領域接続ツール
[最適領域接続 (Optimal Region Connections)] ツールは、最小コスト パスの最適ネットワークを特定し、一連の入力領域を接続します。
入力を指定します。
まず、ソース領域を特定します。
領域には、ポイント、ライン、ポリゴン、またはラスター セルのグループを使用できます。 領域は、接続する位置を特定します。 フィーチャ データセットの位置は、領域として見なされます。 入力がラスターの場合、領域は同じ値を持つ連続したセルのグループです。
次の図には、入力領域 (色付きのポリゴン) がコスト サーフェス レイヤー上に表示されています。
最小コスト領域の決定
最小コスト領域は、[距離アロケーション (Distance Allocation)] ツールによる計算を使用し、ソース以外のセルごとに特定されます。
次の図には、入力領域が関連距離アロケーション レイヤー上に表示されています。 アロケーション ラスターに含まれる各セルの値は、最も安価な (最も少ない) 累積コストで到達できる領域を特定します。
コスト パスの作成
各領域とその隣接コスト領域の間にコスト パスが作成されています。
次の図には、入力領域と各領域から隣接コスト領域への最小コスト パス (マゼンタのライン) が関連コスト アロケーション レイヤー上に表示されています。
領域とパスのグラフへの変換
領域と生成されたパスがグラフに変換されます。 この場合、グラフとは、グラフ理論を通じてペアワイズ リレーションシップをモデル化するために使用される数学的構造を指します。 変換後は、領域が頂点になり、パスがエッジになります。 パスの累積コストは、エッジのウェイトになります。
概念上、この変換は次の図で表現できます。 番号付きの円が頂点 (領域) であり、頂点間を接続している線がエッジ (最小コスト パス) です。 エッジのウェイトは、パスの累積コストに相当します。 この図では、コストが高くなるにつれ、線が太くなります。
注意:
このツールの仕組みを十分に把握するには、グラフ理論の基礎知識を習得しておくことをお勧めします。 グラフ理論に関して多数のリソースを入手できますが、まずはウィキペディア (https://en.wikipedia.org/wiki/Graph_theory) の内容を参考にしてもかまいません。
最も効率的な (コストが最小となる) 方法で頂点 (領域) 間を接続するグラフ理論によって、最小スパニング ツリーが決定されます。 最小スパニング ツリーは必ずしも一意であるとは限りません。最善と見なされるエッジが 2 つ以上存在する可能性があるからです。
注意:
最小スパニング ツリーに関する詳しい情報は、ウィキペディア (https://en.wikipedia.org/wiki/Minimum_spanning_tree) など、Web 上で確認できます。
ライン フィーチャへのマッピング
最小スパニング ツリーに含まれる領域とパスの空間表現がマッピングされ、出力フィーチャクラスに戻されます。
次の図には、最小スパニング ツリーに含まれる入力領域と最小コスト パスのネットワーク (マゼンタのライン) が関連コスト サーフェス レイヤー上に表示されています。
隣接するコスト領域への出力パス
必要に応じて、隣接コスト領域へのパスのフィーチャクラスを出力できます。 この出力を使用して独自のネットワークを作成したり、最小スパニング ツリーにパスを追加したり、Network Analyst で詳しく解析したりできます。
コスト サーフェスが指定されない場合、可能な限り短い距離で領域を接続するパスのネットワークが出力されます。
注意:
[最適領域接続 (Optimal Region Connections)] ツールはバリアを優先します。 バリアは、マスク内またはコスト サーフェス ラスター内のバリア パラメーターまたは NoData セルによって指定できます。 作成されたネットワークは、これらのバリアの周囲をナビゲート中にソースから各場所に到達するまでの、最短または最小コストの物理的な距離を特定します。
参考情報
以下のセクションでは、パスの最適ネットワークを使用した領域の接続に関するその他の情報を提供します。
複数の領域にまたがるパス
各パスは個別の線形フィーチャで表現されるので、共通セグメントを通るパスのラインが重複します。
接続されたパスのネットワークで、入力領域がポリゴンまたはマルチセル領域のラスターであれば、パスは領域内のポイントまで続きます。これにより、移動者は他の領域に到達するために、あるパスから入り、領域内を移動して、別のパスから出ることが可能になります。 移動者が領域内をどのように移動するかはわかっていないため、領域内で拡張されたセグメントにはコストは割り当てられず、領域内の移動にもコストはかかりません。 線形領域の場合も同じで、別のパスに到達するまで線形領域に沿って移動する分のコストはかかりません。
一連の個別の最小コスト パスを基準に生成された接続ネットワークを説明するため、以下の図には、領域を接続する 2 通りの方法の違いを示します。 1 つ目の図には、[最適パス (ライン) (Optimal Path As Line)] ツールの入力として [距離累積 (Distance Accumulation)] ツールの出力を使用した結果を示します。 この場合、パスは領域のエッジにしか届きません。 2 つ目の図には、[最適領域接続 (Optimal Region Connections)] ツールによって作成された、領域間を接続しているパスのネットワークを示します。 この場合、パスは領域の中まで続いていることがわかります。つまり、移動者はあるパスから領域に入り、別のパスから領域を出ることができます。
[最適領域接続 (Optimal Region Connections)] の出力は、トポロジ的に正しいネットワークであるため、Network Analystで追加の解析を行う際に使用できます。
[最適領域接続 (Optimal Region Connections)] ツールで [領域内の接続] パラメーターに [接続なし] を指定すると、パスが複数の領域にまたがることがなくなります。
最適領域接続ツールと最適パス (ライン) ツール
[最適領域接続 (Optimal Region Connections)] ツールは、いくつかの入力領域間のパスの最適ネットワークを作成します。 [距離累積 (Distance Accumulation)] ツールと [最適パス (ライン) (Optimal Path As Line)] ツールを組み合わせて使用すると、特定されたソースと目的地間のパスが作成されます。 [距離累積 (Distance Accumulation)] ツールと [最適パス (ライン) (Optimal Path As Line)] ツールのシーケンスは、領域をソースとして分離し、それを目的地として特定された他の領域と接続することを繰り返して、パスのネットワークを作成するために使用されることもあります。 このプロセスはリージョンごとに繰り返され、結果の最小コスト パスが結合されます。
この反復手法の制限を以下に示します。
- 各領域と他のすべての領域との接続は組み合わせで実施される処理で、特に領域数が多い場合には、膨大な数のパスが作成されてしまう可能性があります。 この手法では、現在地と遠方の領域間にある複数の領域を接続する一連のパスを使用し、遠方の領域に到達することができません。
- 大量のパスが生成されないようにするには、多くの場合、2 つの領域間の最も近い直線距離を使用してソースと目的地を特定します。 ただし、2 つの領域が地理的には近くても、山や河川などのフィーチャが間にあることによって移動コストがかかることがあります。 [最適領域接続 (Optimal Region Connections)] ツールは、最小コストの近接性に基づいて、接続する領域を決定します。
- 多くの場合、さまざまな領域からの複数のパスは、共通の領域に対して 1 つの同じ最小コスト パスを共有します。 共通部分がラスター パスである場合 ([最適パス (ラスター) (Optimal Path As Raster)] ツールで作成されたラスター パスなど)、解析するのは困難です。 それ以降の解析を実施するには、各パスを別々のエンティティとして扱う方が便利です。
- [最適パス (ライン) (Optimal Path As Line)] ツールで作成されたパスは、領域のエッジにしか到達しません。 パスの接続済みネットワークは作成しません。
領域とゾーン
領域は、[最適領域接続 (Optimal Region Connections)] への入力として使用されます。 領域は、フィーチャまたはラスター データセットのいずれかです。 入力領域がフィーチャ データである場合、フィーチャはラスターに変換されます。 領域は、同一セル値を持つ、連続したセルのグループです。 ゾーンとは、ラスター内で同じ値を持つすべてのセルを指します。 ゾーンは 1 つの領域で構成されることも、複数の不連続の領域で構成されることもあります。 [最適領域リージョン接続 (Optimal Region Connections)] で、同じ値を持つが互いに接続されていないセル群が入力にある場合、不連続のセルを含む単一の領域として扱われます。 その結果、到達するためのコストが最小の領域内にあるセル群のみがネットワークで接続されます。入力内のすべてのセルが接続されるわけではありません。
複数の不連続のセル群を含む入力は、[リージョン グループ (Region Group)] ツールを使用して、一連の個別の領域に変換できます。 [最適リージョン接続 (Optimal Region Connections)] への入力として [リージョン グループ (Region Group)] の出力を使用すると、各領域が他のすべての領域に接続されるため、生成されたネットワークを介して入力のすべてのセルに到達できます。
最適領域接続ツールのサンプル シナリオ
以下に、[最適リージョン接続 (Optimal Region Connections)] ツールを使用する一般的なシナリオを示します。
- 最適ネットワーク (最小スパニング ツリー) が目的の出力です。
- [距離累積 (Distance Accumulation)] および [最適パス (ライン) (Optimal Path As Line)] を使用して最適ネットワークへの特定のパスを追加し、最適ネットワークが捕捉できなかった領域に接続します。 たとえば、複数の森林火災への消火活動を行う際に、状況が変化したときに消防士が使用する避難経路を追加します。
- 隣接領域へのすべてのパスの任意の出力からネットワークを作成します。 [選択 (Select)] ツールを使用してパスを選択します。
- 上記のシナリオのいずれかを Network Analyst ネットワークに変換して、領域間の移動に関する別の解析を行ってください。