ラスターの日射量の仕組み

Spatial Analyst のライセンスで利用可能。

[ラスターの日射量 (Raster Solar Radiation)] ツールは、地球または月の数値表層モデルの各ラスター セルに対する日射量を計算します。

このツールは、地球または月のラスター サーフェスのすべてのセルに対する日射量を計算します。 主要出力ラスターの各セルの値は、一定時間内に受けた単位面積あたりの日射エネルギーの総量を表し、計測単位は 1 平方メートルあたりのキロワット時 (kWh/m2) です。 このツールの出力には、総日射量、直達日射量、散乱日射量ラスターと、入射した直達日射量の持続時間 (時間単位) が含まれます。 その結果をもとに、地理エリア全体の日射量マップを生成します。

入力サーフェス地形は、出力日射量の値の変動を決定します。 標高、方位 (傾斜角と傾斜方向)、地形フィーチャが作り出す影の変動がすべて、さまざまな場所での日射量に影響を与えます。 建物などの物体 (樹木、電力線、風力タービンなど) の影響を組み込むには、それらが入力サーフェスの一部でなくてはなりません。 たとえば、LIDAR から作成されたサーフェスには、建物と植生が含まれまることがあります。 このツールは、大気的な影響、標高、傾斜角とその方向、日ごとまたは季節ごとの太陽の角度の変化、周囲の地形による影の影響を考慮します。

日射量の適用例

日射量ラスターの結果を使い、他の GIS データやアプリケーションと組み合わせると、太陽の影響を受ける他のさまざまな処理を行えます。 その出力の応用例は次のとおりです。

  • 建物の屋上に設置されたソーラー アレイのエネルギー潜在力を計算する。
  • 適合性マップの一部として使用し、ソーラー ファームの最適な候補地を特定する。
  • 雪で覆われた山脈地域の融雪と雪解け水を予測する。
  • 農業および最適な収穫高における水資源への影響を理解する。

日射量の計算

日射量は、過去、現在、未来にかかわらず、あらゆる時間について、最大 1 暦年間隔で計算できます。 時間の構成は 、UTC (協定世界時) 形式の [開始日時] パラメーターと [終了日時] パラメーターで指定されます。 地球に限り、時間は入力分析エリアの各 [タイム ゾーン] などの標準時を指定できます。 必要に応じて、時間の構成によってはサマータイムに合わせることもできます。 計算でサポートされている最小時間は、地球の場合は 0.5 時間、月の場合は 2 時間です。 時間の設定は、開始時間と終了時間を含めます。 たとえば、2029 年 6 月 21 日の 1 日間について分析を行う場合、開始時間を「06/21/2024 12:00:00 AM」、終了時間を「06/21/2029 11:59:59 PM」に設定します。

分析を特定の対象位置に限定するには、[入力分析マスク] パラメーターを使用します。 たとえば、建物の屋上で受けた日射量を計算するには、建物フットプリントのマスクを適用します。 マスク エリアで定義されたセルに対してのみ結果が生成されるので、実行時間も削減されます。 分析マスクは、ツール実行時の分析範囲には影響しません。 つまり、隣接する建物やマスク エリア外の周辺の地形による障害は、指定されたエリアに対する日射量の計算に影響を及ぼすということです。

建物の屋上のラスター日射量分析
DSM で計算されるラスターの日射量出力は、建物フットプリントの入力分析マスクで定義された建物の屋上に対してのみ日射量の値を計算します。

地形パラメーター

日射量分析の内部計算では、サーフェスの傾斜角と傾斜方向を使用します。 [ラスターの日射量 (Raster Solar Radiation)] ツールは、デフォルトで入力サーフェス ラスターからこの情報を計算しますが、ツールへの入力として指定することもできます。 事前に計算されたラスターに [入力傾斜角ラスター] パラメーターと [入力傾斜方向ラスター] パラメーターを指定すると全体的な計算時間が短縮されます。これは、分析を繰り返し実行する場合や、高解像度で大規模なエリアを分析する場合に特に便利です。 [近傍距離] パラメーターと [適応近傍の使用] パラメーターは、傾斜角または傾斜方向の入力ラスターが指定されていない場合に適用されます。 これらのオプションのパラメーターを使用することで、入力サーフェス ラスターからの地形のローカル変動をどのように捉えるかを制御できるようになります。 近傍距離適応近傍、およびその用途については、「サーフェス パラメーターの仕組み」トピックをご参照ください。

時間間隔に対する日射量の計算

デフォルトでは、ツールは時間範囲全体に対して 1 つの総日射量の値を計算します。 [時間間隔の単位] パラメーター値と [時間間隔] パラメーター値に基づいて、指定間隔に対して複数の日射量を計算するには、[時間間隔に対する日射量の計算] パラメーターをオンにします。 時間間隔ごとに総日射量が計算されます。つまり、どの間隔も除外されず、部分値が返されることもありません。 時間間隔に対して日射量がない場合は、値 0 が返されます。

間隔は、指定した開始時間から終了時間まで計算されます。 開始時間と終了時間で指定された合計時間が時間間隔で均等に分割できない場合、合計期間は必要なタイム スライス数を提供するために内部的に延長されます。 たとえば、時間の構成が合計 14 日間で間隔が 3 日の場合、13 日目から 15 日目までの結果を提供できるよう、間隔の数を増やします。 最初のレコードは、常に開始時間に間隔を足した値になります (時間0 + 時間間隔)。 間隔は、指定した開始時間に基づきます。 たとえば、開始日時が「1/19/2023 05:00 PM」UTC で 1 日間隔の場合、間隔は午後 5 時から翌日の午後 5 時までの 24 時間となり、指定された終了時間まで継続します。

時間間隔の日射量の結果の確認

時間間隔分析の結果により、多次元ラスターEsri クラウド ラスター形式 (CRF) がデフォルトで作成されます。 多次元ラスターには、日射量の変数 (global_solar_radiation) と、指定間隔またはタイム スライスの時間ディメンションが含まれます。 多次元ラスター レイヤーを使用し、タイム スライスの日射量を探索できます。 [多次元] コンテキスト タブでは、タイム スライスを選択して表示し、多次元ラスター データを処理するためのツールと機能にアクセスできます。 多次元ラスター データの視覚化と分析を行うには、時系列プロファイル チャートを使用します。

次のスクリーンショットは、建物の屋上で受けた日射量の例と、3 地点の経時的な日射量を表すグラフを示します。

多次元ラスター データの視覚化と分析
時間間隔の日射量は多次元ラスター データを作成します。これをもとに、タイム スライスの日射量を探索できます。

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