Image Analyst ライセンスで利用できます。
ArcGIS Image Analyst エクステンションに含まれる Full Motion Video (FMV) は、FMV 準拠のビデオ データの再生および地理空間解析機能を提供します。FMV 準拠とは、ビデオ ストリームと関連するメタデータを 1 つのビデオ ファイルにまとめたもので、ビデオが地理空間に対応しています。センサー システムは、カメラ指向情報、プラットフォームの位置および姿勢などのデータを収集し、ビデオ ストリームにエンコードすることで、各ビデオ フレームが地理的位置情報に関連付けられるようにします。
地理空間に対応した動画データと、ArcGIS Pro の計算機能を併用することで、センサー動特性と視野 (FOV) を認識しながら動画を表示し、操作して、この情報をマップ ビューに表示することができます。また、ビデオ ビューまたはマップ ビューのいずれかでフィーチャ データを解析および編集し、テレストレーション機能を提供することもできます。
FMV はメタデータを使用して、画像空間解析の画像座標系が静止画を変換する方法と同様に、ビデオ画像空間とマップ空間の間の座標をシームレスに変換します。この変換は、GIS 内のその他すべての地理空間データおよび情報を十分に考慮した状態で、ビデオ データ解釈の基礎を提供します。たとえば、動画を再生しながらマップ ビュー上の動画フレームのフットプリント、フレーム中央、画像プラットフォームの位置に加え、建物とその ID などの GIS レイヤー、ジオフェンス、その他の関連情報を表示することができます。
FMV データは、収集された直後にリアルタイムまたはフォレンジック解析を行うことができます。対象位置の最新画像であることが多いため、状況認識に適しています。たとえば、自然災害後の損害評価に携わっている場合、FMV を使用してドローンから収集した最新のビデオ データを既存の GIS データ レイヤーとともに解析できます。ビデオ フットプリントはマップ上に表示されるため、ビデオに表示される建物やインフラストラクチャを正確に把握したり、その状態を評価したり、ビデオおよびマップ内の地表フィーチャをマークしたり、その位置をブックマークしたり、メモに記したりすることができます。FMV を使用することで、実用的な情報を迅速に評価、分析、出力でき、タイムリーな意思決定をサポートします。
FMV の特長とメリット
FMV は重要なメタデータを活用し、視覚的な解析処理ツールを提供するほか、プロジェクトおよびミッションクリティカルなワークフローをサポートする ArcGIS Pro プラットフォーム機能も提供します。
- FMV は ArcGIS Pro に完全に統合されているため、システム アーキテクチャ、データ モデル、ツールおよび機能、および ArcGIS プラットフォーム全体への共有機能を活用することができます。
- ライブストリーム ビデオやアーカイブされたビデオを表示および解析します。
- ビデオ プレイヤーは、コンピューター ディスプレイの任意の場所に移動したり、サイズを変更したり、最小化したり、閉じたりできます。
- ビデオ プレイヤーはマップ表示にリンクされているため、以下を実行できます。
- マップへのビデオ フットプリント、センサー位置、および視野の表示。
- ビデオ プレイヤーで収集された情報を、既存の GIS データとともにマップ上に投影および表示できます。
- マップを更新してビデオ フレームを拡大し、ビデオに追従してマップ全体が表示できます。
- 複数のビデオを同時に開いて再生できます。各ビデオおよび関連情報はマップに表示される際、一意の色で識別できます。
- 直感的なデジタル ビデオ レコーダー (DVR) コントロール、画像およびビデオ クリップ キャプチャ、および解析ツールを使用できます。
- メタデータをリアルタイムで表示できます。
- ブックマークの作成および管理。
- 対象位置および現象のマーク。
- 表示を GPU で高速化できます。
これらの機能は、情報豊かな空間コンテキストをビデオ解析プロセスに統合するワークフローの構成要素となります。
Full Motion Video の概要
FMV は主に運用環境の意思決定サポートに使用されます。FMV のユーザー、収集および利用方法を理解することで、FMV の機能を評価するための重要なコンテキストを得ることができます。
FMV を使用する業種
FMV は、遠隔地、人が近づきにくい場所、危険な場所の監視に役立ちます。次のような組織が FMV を使用しています。
- 公共管理および危機管理
- 防衛
- 石油会社
- 地方政府および連邦政府
- 国境監視
- 公共サービス
- 天然資源担当者
FMV には多くの用途があります。
- 危機管理および公共管理
- 状況認識
- 損害評価
- 応答
- 減災
- セキュリティ監視
- 資産管理
- コリドーのマッピング、監視、および管理
- 電気、ガス、水道などのユーティリティ伝送およびその他の輸送
- 道路、橋、鉄道、高速道路、陸海空港などの交通
- 無線基地局やインフラストラクチャなどの通信
- 自然インフラストラクチャや人工インフラストラクチャなどの水文解析
- リーチごとの河川バッファー、生息地、多様性マッピング、リンクなどの水辺
- 防衛
- インテリジェンス、監視、偵察
- ミッション サポート
- スパイ防止活動
- インフラストラクチャの監視
- インベントリ
- 新規開発
- 計画に対する現況の確認
- コンプライアンスおよび安全管理
FMV データの収集方法
ArcGIS Pro の FMV アプリケーションは、さまざまなリモート センシング プラットフォームから収集されたデータを使用します。ビデオ データおよびメタデータは同時に収集され、メタデータはリアルタイムにセンサー プラットフォーム (MISB 準拠) 上でビデオ ファイルにエンコードされるか、後で多重化と呼ばれる処理手順でビデオ ファイルにエンコードされます。
FMV データは、以下のさまざまなセンサー プラットフォームから収集されます。
- 無人航空機 (UAV、UAS、RPV、ドローン)
- 固定翼およびヘリコプター航空機プラットフォーム
- 周回軌道宇宙センサー
- 車載カメラ
- ハンドヘルド モバイル デバイスおよびカメラ
- 永続的な監視のための固定デバイス
FMV は、以下の 12 種類のビデオ形式をサポートしています。
説明 | エクステンション |
---|---|
MPEG-2 トランスポート ストリーム | .ts |
MPEG-2 プログラム ストリーム | .ps |
MPEG ファイル | .mpg |
MPEG-2 ファイル | .mpg2 |
MPEG-2 ファイル | .mp2 |
MPEG ファイル | .mpeg |
VLC (MPEG2) | .mpeg2 |
MPEG-4 ムービー | .mp4 |
MPEG-4 ファイル | .mpg4 |
H264 ビデオ ファイル | .h264 |
VLC メディア ファイル (MPEG4) | .mpeg4 |
VLC メディア ファイル (VOB) | .vob |
FMV ケーパビリティ
FMV は、ライブストリーミング ビデオを利用した緊急を要する状況認識および緊急時応急措置から、監視用の時間単位または日単位のアーカイブ ビデオの解析や、過去のアーカイブ データのフォレンジック分析まで、さまざまな運用環境をサポートしています。それぞれの用途には、直感的な視覚化および解析ツールが必要です。これらのツールにより、対象のフィーチャや状況を迅速かつ簡単に識別および記録し、抽出された情報を意思決定者や関係者に提示します。意思決定をサポートする FMV 機能は、以下の必須機能に分類されます。
ビデオ プレイヤー
ビデオ プレイヤーはデジタル ビデオ レコーダー (DVR) と呼ばれ、一般的な DVR に合わせた、使い慣れた外観と操作性を実現しています。ビデオ プレイヤーには、再生、早送り、巻き戻し、早送り、次のステップへ進む、前のステップに戻る、先頭へのジャンプ、またはビデオの最後へのジャンプなど、標準的なビデオ コントロールが含まれています。ビデオが再生モードまたは一時停止モードの間、ビデオの拡大およびローミングを行うことができます。ビデオ フレーム内の拡大ビューのサイズと位置が、外観図ウィンドウに表示されます。
ビデオがディスプレイに読み込まれると、ビデオ ファイルが [コンテンツ] ウィンドウに表示され、メイン リボンに [表示] タブが表示されます。[表示] タブには、ビデオの操作、グラフィックスの追加と管理、およびビデオ メタデータの表示を行うツールが含まれています。これらのツールは、簡単に操作できるよう DVR でも利用できます。
ツールの操作には、関連付けられたマップ ビューの拡大による地表でのフル ビデオ フレームの表示、地表でのセンサー地表トラックおよびビデオ フレームの視野の表示、マップの拡大および移動による地表でのビデオの追従などがあります。これらのツールを使用すると、ビデオ データの操作時に地理的状況を把握できます。
その他のツールには、ビデオ ブックマークのキャプチャ、アノテーション、保存のほか、単一ビデオ フレームの画像としてのキャプチャ、ビデオ クリップのエクスポートなどがあります。
グラフィックスの追加
ビデオ プレイヤーに表示される対象地表フィーチャを収集するには、そのフィーチャをマークします。このフィーチャはマップにも表示されます。逆に、マップ ビューで地表フィーチャをマークすると、フィーチャはビデオ プレーヤーにも表示されます。これらのポイントをフィーチャクラスとして保存し、今後の解析にフル活用することもできます。
ブックマーク
ビデオ ブックマークの作成は、ビデオを解析する際に対象の現象やフィーチャを記録するための重要な機能です。ビデオ ブックマークは、再生、一時停止、早送り、巻き戻しなど、ビデオ再生のさまざまなモードで収集できます。ブックマークは、ビデオ ブックマークの収集時に開く [ブックマーク] ウィンドウに記述できます。ブックマークは、ArcGIS Pro [マップ] タブの [ナビゲーション] グループにある [ブックマーク] ウィンドウで収集および管理されます。
メタデータのビデオへの追加
必須のメタデータを含むビデオのみを FMV で使用できます。プロ仕様の空中ビデオ データ収集システムは、一般的に必要なメタデータを収集し、リアルタイムでビデオ ファイルにエンコードします。このデータは、ライブストリーミング モードまたはアーカイブされたファイルから FMV アプリケーションに直接入力できます。
消費者向けのビデオ コレクション システムでは、1 つの FMV 準拠ビデオ ファイルに結合する必要がある、個別のビデオ データとメタデータ ファイルが生成されることがよくあります。この処理はソフトウェアで実行され、多重化と呼ばれます。FMV は、適切なメタデータをビデオ ファイルの適切な位置にエンコードして、1 つの FMV 準拠ビデオ ファイルを生成する [ビデオ マルチプレクサー (Video Multiplexer)] というツールを提供しています。各ビデオおよびメタデータ ファイルは、タイム スタンプを使用して、ビデオ ファイル内の適切な位置に適切なメタデータ エンコードを同期します。
メタデータは、X、Y、Z 位置を示す GPS、高度計、慣性測定ユニット (IMU)、カメラの方向を示す他のデータ ソースなどの適切なセンサーから生成されます。メタデータ ファイルは、カンマ区切り値 (CSV) 形式である必要があります。
FMV メタデータを使用して、ビデオ センサーのフライト パス、ビデオ画像フレーム センター、およびビデオ画像フレームの地表のフットプリントが計算されます。FMV は、87 個のパラメーターで構成される MISB (Motion Imagery Standards Board) メタデータ仕様もサポートしています。指定したすべての MISB パラメーターが、全 87 個のパラメーターまたはサブセットを含めて、最終的な FMV 準拠ビデオにエンコードされます。
FMV パラメーター セットの中には、地表に投影されたビデオ画像フレームの四隅のマップ座標を含むものがあります。四隅のマップ座標を指定した場合、この値が使用されます。指定されていない場合、ツールは必須パラメーターのサブセットからビデオ フットプリントを計算します。
ビデオ フレーム フットプリントの相対的な頂点を計算して、マップ上にフレーム アウトラインとして表示するには、FMV に次の 12 個の必須メタデータ フィールドが必要です。
- UNIX タイムスタンプ
- Sensor Latitude
- Sensor Longitude
- Sensor Altitude
- Platform Heading
- Platform Pitch
- Platform Roll
- Sensor Relative Roll
- Sensor Relative Elevation
- Sensor Relative Azimuth
- Horizontal Field of View
- Vertical Field of View
メタデータが完全かつ正確な場合、ツールはビデオ フレームの四隅を計算し、ビデオ フレーム アウトラインのサイズ、形状、位置をマップ上に表示します。これら 12 のパラメーターは、ビデオとマップ間の変換の算出、マップ上でのビデオ フットプリントの表示、その他の機能 (ビデオとマップのデジタイズやマーキングなど) の有効化を実行するのに最低限必要なメタデータで構成されます。
生成される多重化ビデオ ファイルのパフォーマンスは、メタデータ ファイルに含まれるデータの種類と品質、およびビデオ データとメタデータ ファイルの同期の精度によって異なります。メタデータが正確でないか異常値が含まれている場合、これらの差異はビデオにエンコードされ、ビデオが再生されるときにマップに表示されます。metadata.csv ファイルに UNIX Time Stamp、Sensor Latitude、および Sensor Longitude フィールドのみが含まれている場合、センサーの位置がマップ上に表示されますが、ビデオ フレーム フットプリントは表示できません。また、ビデオ内のフィーチャのデジタイズや距離の測定などの機能もサポートされません。
メタデータは、C:\Program Files\ArcGIS\Pro\Resources\FullMotionVideo から入手した FMV メタデータ テンプレート (FMV_Multiplexer_Field_Mapping_Template.csv) に入力できます。このテンプレートには、ビデオ フレーム フットプリントの計算に必要な 12 個の必須メタデータ フィールドと、MISB 仕様に含まれる追加のフィールドが含まれています。メタデータ フィールド名が FMV に必要なフィールドと一致しない場合は、FMV_Multiplexer_Field_Mapping_Template.csv テンプレートの FMV フィールド名と照合することができます。
ビデオ データとメタデータは時刻同期していることが理想です。ビデオとメタデータをリンクするタイム スタンプが正確に同期されていない場合、マップ上のビデオ フットプリントとセンサーの位置は、ビデオ プレイヤーのビューからオフセットされます。時間シフトが観測可能で一貫性がある場合、マルチプレクサーではメタデータのタイミングがビデオと合致するよう調整することができます。時間シフトは、オプションの CSV ファイルを作成し、ビデオ内のオフセット位置と関連する時間の不一致を識別する [ビデオ マルチプレクサー (Video Multiplexer)] ツールに入力することで適用されます。FMV_Multiplexer_TimeShift_Template.csv から取得した C:\Program Files\ArcGIS\Pro\Resources\FullMotionVideo テンプレートを使用してオフセットを調整します。テンプレートには、時間シフトが発生するビデオ内の位置を示す elapsed time 列、および時間オフセット量を示す time shift 列が含まれています。ビデオおよびメタデータ間の時間シフトに一貫性がない場合、ビデオ内の複数の位置を、テンプレート内の関連するタイムシフトとともに表示できます。これにより、マルチプレクサーがビデオのタイミングに対して適切なメタデータを配置する位置を指示できます。
概要
FMV の地理空間対応特性は、リアルタイムまたはフォレンジック分析および状況認識アプリケーションに最適です。マップ上にビデオ フレーム フットプリントおよびフライト パスを投影および表示する機能により、ビデオに重要なコンテキストを与え、ビデオ プレイヤーとマップで双方向なフィーチャ コレクションを実現できます。
これらの機能とアノテーション付きのビデオ ブックマークを使用すると、アナリストは今後の分析に役立つビデオ フレームまたはセグメントを特定し、この情報を他の関係者と簡単に共有することができます。FMV 準拠ビデオとフル GIS 機能を統合することにより、重要なコンテキスト情報を合成して、運用環境での情報に基づく意思決定をサポートすることができます。