チュートリアル: オフラインマップの作成—ArcGIS Pro

インターネットに接続できない場所でも現場作業を行えますが、GIS データを使える必要があります。インターネットを必要としないマップを作成して、そのマップを現場のデバイスで使用できます。Explorer for ArcGIS、または ArcGIS AppStudio か ArcGIS Runtime SDK で構築されたカスタムアプリを使用できます。このチュートリアルでは、次の作業を行う方法を説明します。

オフライン (インターネット接続なし) で使用できるマップの作成
Explorer for ArcGIS での匿名によるマップの使用

前提条件

このチュートリアルを実行するには、ArcGIS Publisher エクステンションが必要です。

プロジェクトを検索して開く

このチュートリアルで使用されるデータは、プロジェクトパッケージとして ArcGIS Pro 経由で ArcGIS Online からダウンロードできます。データは、USGS (United States Geological Survey) から一般に提供されているデータです。

ArcGIS Pro の開始ページで [別のプロジェクトを開く] をクリックします。
[ポータル] をクリックしてから、[参照] をクリックします。
[すべてのポータル] フィルターをクリックして、オフラインマップの作成例を検索します。
プロジェクトパッケージを選択して、[OK] をクリックします。
プロジェクトがダウンロードされて開かれ、Operational、VTPK_Source_BM、Basemap の 3 つのマップが表示されます。

サンプルプロジェクトの探索

プロジェクト内の 3 つのマップ (Operational、VTPK_Source_BM、Basemap) を探索して、モバイルマップパッケージで共有されているデータを把握します。3 つのマップはすべてリンクしており、1 つのマップをズームし画面移動すると、その他のマップが更新され、同じ範囲と縮尺レベルで表示されます。

Operational マップをクリックしてアクティブ化します。
Operational マップは、対象の場所、ポイント、地域で構成されます。このマップのレイヤーは、オフラインマップに検索可能でクリック可能なフィーチャを提供します。Operational マップを作成すると、ユーザーがフィーチャを属性で検索し、フィーチャをタップしてポップアップを表示できるようになります。
VTPK_Source_BM ベースマップをクリックしてアクティブ化します。
VTPK_Source_BM マップには、イエローストーン国立公園とグランドティトン国立公園の境界が表示されます。このマップの情報は、操作レイヤーの背景参照データを提供します。ベースマップのレイヤーは視覚化のためだけです。オフラインマップを使用すると、ポップアップを使用して属性にアクセスできなくなるか、ベースマップのフィーチャを検索できなくなります。このマップにユーザーに操作させるレイヤーがある場合、そのマップを Operational マップに移動します。
Basemap マップをクリックしてアクティブ化します。
Basemap マップは空です。後でこのマップを VTPK_Source_BM マップで使用して、ベクタータイルベースマップを作成します。
Operational マップをクリックします。[マップ] リボンをクリックし、[ベースマップ] ドロップダウンメニューをクリックして、VTPK_Source_BM ベースマップを選択します。
これで、Operational マップには、操作レイヤーの下に VTPK_Source_BM ベースマップが表示されます。
マップ上で画面移動やズームを行い、ベースマップと操作データを十分に理解します。これにより、操作レイヤーがベースマップレイヤーとどのように連携するかわかります。
ラベルが表示されない場合は、更新ボタンをクリックして、マップビューを更新します。

ベクタータイルパッケージの作成

効率の良いオフラインマップを作成するには、ベクターデータのベクタータイルパッケージ (*.vtpk) とラスターデータのタイルパッケージ (*.tpk) で構成されるベースマップが必要です。ここでは、ベースマップにベクタータイルを使用します。ベクタータイルパッケージは必須ではありませんが、描画パフォーマンスを向上させるために使用することをお勧めします。また、ベクタータイルパッケージは属性へのアクセスやフィーチャのユーザー操作を提供しないため、ベースマップに特に役立ちます。

マップのすべてのコンテンツのオフラインマップを作成できますが、既存のマップのサブセクション用に 1 つまたは複数のオフラインマップを作成するのが一般的です。たとえば、米国全体のマップはあるが、特定の市のオフラインマップのみを対象にするものとします。これを想定して、このマップの一部 (グランドティトン国立公園) だけを対象としたオフラインマップを作成します。

VTPK_Source_BM ベースマップをクリックして、グランドティトン国立公園の範囲にズームします。
[コンテンツ] ウィンドウでベースマップを右クリックし、[プロパティ] をクリックします。
[範囲] タブで [カスタム範囲] をクリックし、[次から計算] ドロップダウンメニューをクリックして、[現在の表示範囲] をクリックします。
ベクタータイルパッケージを作成するため使用するジオプロセシングツールは、定義されたマップ範囲のベクタータイルを作成します。
[マップ] リボンの [全範囲] をクリックして、マップの範囲が期待どおりの範囲であることを確認します。
[メタデータ] タブで、ベースマップの説明を入力します。
入力マップに説明がないと、[ベクタータイルパッケージの作成 (Create Vector Tile Package)] ジオプロセシングツールは失敗します。
[解析] リボンで、[ツール] をクリックします。
[ジオプロセシング] ウィンドウが表示されます。
ベクタータイルパッケージを検索して、[ベクタータイルパッケージの作成 (Create Vector Tile Package)] をクリックします。
[ベクタータイルパッケージの作成 (Create Vector Tile Package)] ツールダイアログボックスが表示されます。
[入力マップ] ドロップダウンメニューをクリックして [VTPK_Source_BM] を選択します。
[出力ファイル] に任意の場所とファイル名を指定します。
[ArcGIS Online | Bing Maps | Google マップ] をオフにします。
ArcGIS Online/Bing Maps/Google マップのタイルスキーマを使用するには、入力マップが Web メルカトル球体補正投影法である必要があります。北米測地基準 1983 であるデータの再投影を避けるには、[ArcGIS Online | Bing Maps | Google マップ] をオフにします。
タイルスキーマには、入力マップの投影法を使用するタイルスキーマが自動的に入力されます。
[最大キャッシュ縮尺] を 0 に設定します。
一部のオフラインマップ使用事例では、マップを拡大する必要があります。最大キャッシュ縮尺を 0 に設定しない場合、デフォルトの最大キャッシュ縮尺を超えてズームすると、ベクタータイルパッケージの表示が停止します。最大キャッシュ縮尺を 0 に設定することで、必要に応じてズームすることができ、引き続きベクタータイル情報も表示できます。
残りのパラメーターはそのままにしておきます。
[実行] をクリックします。
VTPK_Source_BM ベースマップのベクタータイルパッケージが作成されます。このベクタータイルパッケージを空のベースマップで使用できます。

ベクタータイルパッケージをベースマップとして設定

ベクタータイルパッケージをベースマップとして使用するには、パッケージを空のベースマップに追加してベクタータイルベースマップを使用するように Operational マップを設定します。

Basemap マップをクリックしてアクティブ化します。
[マップ] リボンで [データの追加] をクリックします。
前のセクションで作成したベクタータイルパッケージを参照し、[OK] をクリックします。
Operational マップをクリックします。[マップ] リボンをクリックし、[ベースマップ] ドロップダウンメニューをクリックして、ベクタータイルパッケージを含んでいる Basemap ベースマップを選択します。
これで、Operational マップのベースマップが Basemap ベースマップに更新されました。
[コンテンツ] ウィンドウで、[Basemap] を右クリックして [レイヤーにズーム] をクリックします。
マップの範囲がベースマップに一致し、オフラインで使用するために共有する分析範囲になります。

マップの使いやすさの向上

オフラインマップをより使いやすくするために、検索機能とブックマークを含めます。検索を実現するには、フィーチャ検索またはロケーターのいずれかを使用します。両方のワークフローを完成させます。

メモ:

サポートされる検索機能はアプリによって異なります。Explorer ではどちらもサポートされます。ArcGIS Navigator は、ロケーターのみをサポートしています。これらのオプションは、ArcGIS AppStudio アプリまたは ArcGIS Runtime SDK アプリを使用している開発者も使用できます。

フィーチャ検索

ユーザーがフィーチャを検索できるようにするには、次の手順に従います。

[マップ] リボンで [場所検索] をクリックします。
[場所検索] ウィンドウが表示されます。アクティブなポータルに関連付けられたロケーターが表示されます。オフラインマップユーザーまたは組織のメンバーではないユーザーにマップを共有する場合は、このロケーターにはアクセスできません。
[場所検索] タブで [オプション] ボタンをクリックして、[プロバイダー設定] をクリックします。[場所検索用のレイヤーの構成] ボタンをクリックします。
[レイヤーの選択] ダイアログボックスが表示されます。マップに含まれるすべてのフィーチャレイヤーが表示されます。
ユーザーが山頂を検索できるようにするには、[TowerSummitMinesDam] を選択して、[OK] をクリックします。
このマップに含まれる操作レイヤーの多くは、同じポイントフィーチャクラスの Geonames USA を参照します。レイヤー定義クエリは、さまざまな Geonames 対象ポイントの種類のグループ化に使用されます。
[場所検索] ウィンドウが更新され、[場所検索用のレイヤーの構成] ウィンドウが表示されます。レイヤー内のすべてのフィールドがウィンドウにリスト表示され、検索用に構成できます。
FEATURE_NAME のデフォルト検索モードは [含む] です。これにより、マップユーザーが検索する文字を含む、TowerSummitMinesDam レイヤーにあるすべてのフィーチャの検索結果が返されます。
代わりに [等しい] を使用している場合、ユーザーは FEATURE_NAME 属性に一致する正確な文字列を入力する必要があります。
[保存して [プロバイダー設定] に戻る] ボタンをクリックして、[プロバイダー設定] に戻ります。
これで、TowerSummitMinesDam が [プロバイダー設定] の下に表示されます。組織が提供しているロケーターをオフにして、[場所検索ウィンドウに戻る] ボタンをクリックし、[場所検索] タブに戻ります。[検索] テキストボックスを使用して、TowerSummitMinesDam レイヤー上でフィーチャ検索をテストします。
1. Grand Te を検索すると、検索結果にフィーチャ Grand Teton が返されます。

ロケーター

次の手順を使用して、ロケーターを作成します。

[ジオプロセシング] ウィンドウを開きます。まだ開いていない場合は、[解析] リボンで [ツール] をクリックしてアクセスできます。
住所ロケーターの作成 (Create Address Locator) を検索して、[住所ロケーターの作成 (Create Address Locator)] をクリックします。
[住所ロケーターの作成 (Create Address Locator)] ツールダイアログボックスが表示されます。
[住所ロケーターのスタイル] ドロップダウンメニューをクリックして、[General - Gazetteer] を選択します。
[General - Single Field] も対象ポイントの検索に適しています。
[参照データ] ドロップダウンメニューをクリックして、[LocalePopPlace] を選択します。[プライマリテーブル] のデフォルトロールはそのまま使用します。
[地名] ドロップダウンメニューをクリックして、[FEATURE_NAME] を選択します。
[出力住所ロケーター] に任意の場所とファイル名を指定します。
[候補の表示の有効化] をオンにします。
ユーザーが検索文字列をマップに入力すると、候補が表示されます。これはフィーチャ検索では使用できません。
候補は ArcGIS Pro のファイルベースのロケーターではサポートされていませんが、Explorer for ArcGIS と ArcGIS Navigator ではサポートされており、ArcGIS AppStudio アプリと ArcGIS Runtime SDK アプリの開発者は使用できます。
[実行] をクリックします。
LocalePopPlace レイヤーに基づくロケーターが作成されます。
[場所検索] ウィンドウを開き、[オプション] ボタンをクリックして、そのロケーターがロケーターのリストに自動的に追加されていることを確認します。
1. [場所検索] タブをクリックして、White Grass を検索します。
2. 検索結果に White Grass Rand と White Grass Ranger Station の両方が返されることに注意してください。

ブックマーク

ブックマークは、ユーザーがすばやくズームできる定義済みの指定範囲を提供します。モバイルマップパッケージを共有すると、ブックマークはオフラインマップに含められます。

対象範囲内の湖の 1 つにズームします。
[マップ] リボンの [ブックマーク] ドロップダウンメニューをクリックして、[新しいブックマーク] をクリックします。
[ブックマークの作成] ダイアログボックスが表示されます。
ブックマークの名前と説明を入力して [OK] をクリックします。
ブックマークがマップに追加されます。
必要に応じて、交通量が多いと予測されるエリアのブックマークを追加します。

ポップアップ

ポップアップを使用すると、ユーザーはマップ上のフィーチャをタップして、そのフィーチャに関する情報を確認できます。ArcGIS Pro で定義したポップアップは、オフラインマップに含まれます。

[コンテンツ] ウィンドウで建物レイヤーを右クリックして、[ポップアップの有効化] をクリックします。ポップアップがすでに有効になっている場合は、手順 2 に進んでください。
このレイヤーを再び右クリックして、[ポップアップの構成] をクリックします。
[ポップアップ] ウィンドウが表示されます。
デフォルトでは、ポップアップにレイヤー内のすべてのフィールドが含まれます。編集ボタンをクリックして、エレメントに含まれるフィールドを編集できます。ポップアップにエレメントを追加するには、ウィンドウの上部でオプションをクリックします。
ポップアップの構成の詳細については、「ポップアップの構成」をご参照ください。

モバイルマップパッケージの作成と共有

マップを作成して、フィーチャ検索とポップアップを備えた操作レイヤー、ベクタータイルを使用するベースマップ、共通の範囲にアクセスするためのブックマーク、追加検索のロケーターを含めました。これで、マップをモバイルマップパッケージとして共有できます。

まだアクティブになっていない場合は、Operational マップをクリックします。[コンテンツ] ウィンドウで Basemap レイヤーを右クリックして、[レイヤーにズーム] をクリックします。
[共有] リボンで、[パッケージ] グループの [モバイルマップ] をクリックします。
[モバイルマップのパッケージ化] ウィンドウが表示されます。デフォルトでは、モバイルマップパッケージはアクティブなポータルにアップロードされます。これをデフォルトのままにしておきます。
マップパッケージの名前を入力します。一意の名前を使用して、後で Explorer for ArcGIS で見つけられるようにします。
[サマリー] フィールドの入力として、マップのメタデータが自動的に使用されます。キーワードを [タグ] フィールドに追加して、ユーザーがパッケージを見つけられるようにします。
デフォルトの範囲オプション [現在の表示範囲] を使用します。
[対象地域] ポリゴンフィーチャクラスを使用すると、オフラインマップのカスタム範囲を指定できます。たとえば、米国内の 5 大都市エリアのポリゴン境界があるフィーチャクラスを使用できます。
[クリップ] をオンにします。
[クリップ] をオンにすると、選択した範囲の外にあるフィーチャがクリップされます。前の例に従って、米国内の 5 大都市エリア外のフィーチャが都市エリアの境界でクリップされます。モバイルマップパッケージに含まれるロケーターも選択された範囲に制限され、ユーザーはマップ上にある場所のみを検索できるようになります。
メモ:
[範囲] オプションと [クリップ] オプションは、ベクタータイルパッケージには適用されません。これらの設定に関係なく、ベクタータイルパッケージ全体がパッケージに含まれます。
[ロケーターを含める] をオンにします。ドロップダウンメニューをクリックして、作成したロケーターを選択します。
ArcGIS Publisher エクステンションがある場合、[匿名ユーザーの有効化] をオンにできます。
匿名での使用により、ArcGIS 組織のメンバーでないユーザー用にモバイルマップパッケージを作成できます。Explorer for ArcGIS を匿名で (サインインせずに) 使用できるため、ユーザーはアプリを使用するための ArcGIS ユーザー名が不要です。匿名ユーザーを有効にすると、ログイン認証情報とは無関係に、モバイルマップパッケージはアクセスできるユーザーがダウンロードして使用できるようになります。
パッケージの共有方法を指定します。
- [すべての人に公開] - このオプションを選択すると、コンテンツがパブリックになります。誰もがコンテンツにアクセスして表示することができます。
- [組織] - このオプションは、組織アカウントでサインインした場合に表示されます。このオプションを選択すると、コンテンツを組織内のすべての認証済みユーザーと共有できます。
- [グループ] - 所属するグループのメンバーとコンテンツを共有できます。
共有レベルをアイテムの所有者に設定するには、すべてのオプションをオフにしておきます。
[共有の完了] で [分析] をクリックして問題がないか確認します。
エラーと警告は [メッセージ] タブにリストされます。メッセージを右クリックしてヘルプトピックを開くか、ソフトウェアで処置を行います。Web レイヤーを共有するには、エラーを解決する必要があります。警告の解決は推奨されますが、必須ではありません。
GIS リソースの解析の詳細
整合チェックが完了したら、[パッケージ] をクリックしてパッケージを作成します。

Explorer for ArcGIS でのオフラインマップの使用

これで、モバイルマップパッケージを作成し共有したので、次は Explorer for ArcGIS を使用してモバイルマップパッケージを使用します。

モバイルデバイスで Explorer for ArcGIS アプリを開きます。[サインインしないで続行] オプションをクリックします。
匿名ユーザーとして Explorer for ArcGIS で操作しています。パッケージをパブリックに共有しない場合、または匿名アクセスを有効にしていない場合は、先に進むことはできません。
ArcGIS Pro から共有したモバイルマップパッケージを検索します。
検索結果で、マップの横にあるダウンロードオプションをクリックします。
マップはデバイス上にダウンロードされ、マップのリストの [デバイス] セクションで使用できます。
マップをタップして開きます。
モバイルマップパッケージを作成したときに選択した範囲のマップが開きます。
検索ボタンをクリックして、「Grand Teton」を検索します。
作成したブックマークにアクセスするためのブックマークボタンをタップし、ブックマークをクリックして指定した範囲に移動します。
フィーチャをタップすると、ポップアップの構成で定義されているそのフィーチャに関する情報がポップアップに表示されます。

効率的で役に立つオフラインマップを作成するためにベクタータイル、フィーチャ検索、ブックマーク、およびポップアップを使用して ArcGIS Pro でオフラインで使用するためのマップを作成しました。次に、このマップをモバイルマップパッケージとして ArcGIS Online 組織と共有し、Explorer for ArcGIS を使用してモバイルデバイスでオフラインでパッケージを使用しました。

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前提条件

プロジェクトを検索して開く

サンプル プロジェクトの探索

ベクター タイル パッケージの作成

ベクター タイル パッケージをベースマップとして設定