コンポジット ロケーターについて
コンポジット ロケーターは、1 つ以上の個別ロケーターまたはジオコード サービスで構成される仮想ロケーターです。コンポジット ロケーターでは、ローカルに使用するか、サービスとして使用するかに関係なく、ジオコーディングを複数のソースから 1 つのロケーターに結合させることができます。コンポジット ロケーターを使用すると、住所が一度にさまざまなデータセットに基づく複数のロケーターと照合されるようにジオコーディングすることができるため、一致した結果のジオコーディング精度が上がります。
アトランタ市の信頼できるデータに基づいて独自のロケーターをすでに作成しており、アトランタ市内の場所と隣接する各市内の場所をジオコーディングする場合は、アトランタの道路の参照データに基づくロケーターと ArcGIS World Geocoding Serviceで構成されたコンポジット ロケーターを使用すると、最適な一致が返される可能性があります。このコンポジット ロケーターでは、関係するロケーターのフィルターを作成して、アトランタ市内の住所が独自のアトランタの道路ロケーターで照合され、隣接する各市内の住所が ArcGIS World Geocoding Serviceで照合されるようにすることができます。
最適な一致が見つかる可能性が高い別のロケーターへの切り替えができることがコンポジット ロケーターを使用する別の理由でもあります。たとえば、郡行政機関は、運輸省から入手した道路データセットに基づく個別ロケーターと査定人の事務所から入手した区画データセットに基づく個別ロケーターで構成されたコンポジット ロケーターを作成し、そのコンポジット ロケーターを使用して、道路への水の流出量が極端に多い住民を特定できます。区画ロケーターは、参照データ内の正確なフィーチャを参照するため、リストの先頭に表示されます。つまり、区画ロケーターは、番地の範囲に基づく道路中心線ロケーターよりも精度が高くなります。住所が区画と一致しない場合は、区画ロケーターから、次に最適な一致を検索する道路中心線ロケーターに切り替えることができます。
コンポジット ロケーターには、関係するロケーターおよびジオコード サービスへの参照が格納されていますが、個々のロケーターの実際の住所情報、インデックス、参照データは含まれていません。個々のロケーターとほぼ同じ方法で、コンポジット ロケーターを新規プロジェクトおよび既存のプロジェクトに追加できます。
コンポジット ロケーターの構築
コンポジット ロケーターの作成は、通常、次のワークフローで構成されます。
- 個々のロケーターの作成または既存のロケーターまたはジオコード サービスの特定
- [コンポジット住所ロケーターの作成 (Create Composite Address Locator)] ジオプロセシング ツールを使用して、関係するロケーターを指定します。
- 入力住所フィールドの割り当て
- 必要に応じて、選択基準を指定します。
- 出力コンポジット ロケーターの名前と保存先の指定
コンポジット ロケーターを作成するには、既存のロケーターから開始します。コンポジット ロケーター作成の初期段階で、検索プロセスの計画を立てます。たとえば、最初に地方の道路データを含むロケーターを検索できます。十分な結果が得られない場合は、次に州全体の道路や全国規模の道路を含むロケーターを使用して住所を検索できます。最終的には、郵便番号や市などの特定ゾーンを検索するロケーターを使用することをお勧めします。
コンポジット ロケーターを作成するときには、どのロケーターを使用するかを入力フィールドの値に基づいて指定することができます。たとえば、コンポジット ロケーターが使用するロケーターが、ある特定の市の道路情報を含む標準的なものである場合、その特定の市の名前を含まないアドレスはすべて除外することができます。選択基準を使用すると、特定の住所に対する基準を満たさない登録ロケーターが除外されるため、ジオコーディング処理をより効率的に実行できます。選択基準を指定しないと、関係するすべてのロケーターに対して住所がジオコーディングされます。
選択基準は、住所のテーブルをジオコーディングするときに使用されます。[場所検索] ウィンドウでの単一行入力による住所検索時には適用されません。
次の手順では、[コンポジット住所ロケーターの作成 (Create Composite Address Locator)] ジオプロセシング ツールを使用してコンポジット ロケーターを作成する方法を説明します。
- [ジオプロセシング] ウィンドウを開きます。
- ワークスペースの上部にある [解析] タブで [ツール] ボタン をクリックします。
- ワークスペースの上部にある [解析] タブで [ツール] ボタン をクリックします。
- [コンポジット住所ロケーターの作成 (Create Composite Address Locator)] ツールを選択します。
- [ジオプロセシング] ウィンドウで、[ツールボックス] を選択します。
- ジオプロセシング ツールボックスのリストから、[ジオコーディング ツール] を選択します。
- ジオコーディング ツールのリストから、[コンポジット住所ロケーターの作成 (Create Composite Address Locator)] ツールを選択します。
- [住所ロケーター] テキスト ボックスの横にある [参照] ボタン をクリックします。
[住所ロケーター] ダイアログ ボックスが表示されます。
- コンポジット ロケーターで使用する最初のロケーターに移動し、[開く] をクリックします。
- コンポジット ロケーターに含めるすべてのロケーターを追加するまで、[住所ロケーター] テキスト ボックス (必要に応じて、さらに表示されます) へのロケーターの追加を繰り返します。
関係するロケーターを [住所ロケーター] テキスト ボックスに追加すると、そのロケーターに自動的に名前が付けられ、[名前] テキスト ボックスに表示されます。住所のテーブルをジオコーディングするプロセスでは、住所がジオコーディングされた個々のロケーターの名前が、出力フィーチャクラスに属性として保存されています。必要に応じて、名前をクリックして変更することができます。名前にスペースまたは特殊記号を含めることはできません。名前の最大長さは 14 文字です。
ロケーターが表示されている順序によって、ジオコーディング プロセスでロケーターが使用される順序が決まります。リストの一番上にあるロケーターが最初に使用され、それ以降、順番に使用されます。
- ツールの [フィールド マップ] の部分の値を確認します。
関係するロケーターごとに、ジオコーディングに指定される入力フィールドが異なる場合があります。関係するロケーターをツールに追加すると、入力フィールドが自動的に作成され、割り当てられます。各フィールドとその内容は、関係するロケーターによって生成されます。[フィールド マップ] セクションには、一意の入力フィールドがそれぞれ表示され、関係するロケーターごとにすべての入力フィールドの内容 (サブフィールド) のリストが表示されます。これらのフィールドが、コンポジット ロケーターの入力フィールドになります。
フィールドの割り当てを確認して、変更する必要があるかどうかを決定することができます。コンポジット ロケーターにより、入力フィールドがデフォルトのフィールド名とプロパティとともに作成されます。たとえば、下記のステップ 11 の画像の場合、フィールド名 Street、City、State、ZIP が 2 つの関係するロケーターによって入力されます。同じ入力フィールドに割り当てる必要のある関連したロケーターが存在するが、フィールド名がそれぞれ異なるため、同じ入力フィールドに割り当てることができない場合があります。たとえば、2 つのロケーターの両方に郵便番号情報が存在するが、一方は ZIP としてデータを参照し、もう一方は ZIPCode としてデータを参照している場合があります。これら 2 つの値を同じ入力フィールドに割り当てる必要がありますが、2 つの名前が異なっているため、割り当てることができません。以下の手順では、フィールドの割り当てプロセスの一環として、関係するロケーターのサブフィールドを別の入力フィールドに移動する方法について説明します。
- 関係するロケーターの入力住所フィールドを割り当てます。
関係するそれぞれのロケーターの入力フィールドを確認し、コンポジット ロケーター全体としての入力フィールドを決定します。これらのフィールドは、[コンポジット住所ロケーターの作成 (Create Composite Address Locator)] ツール上では、コンポジット ロケーターの入力フィールドとして表示されます。
フィールドの割り当てでは、関係するロケーターの入力フィールドを、コンポジット ロケーターの適切な入力フィールドに移動または再グループ化する操作が必要になる場合があります。これを行うには、変更する入力フィールドの値を選択します。サブフィールドの値が右に表示されます。移動したい関係するロケーターのサブフィールド値の左にある矢印をクリックし、ドロップダウン メニューから移動先の場所を選択して、[選択した場所に移動] ボタンをクリックします。上矢印ボタン または下矢印ボタン を使用して、入力フィールドを上または下に移動したり、[選択アイテムの削除] ボタン をクリックして、入力フィールドを削除したりすることもできます。これらのオプションは、個々の入力フィールドをクリックすると表示されます。
コンポジット ロケーターにより、入力フィールドがデフォルトのフィールド名とプロパティとともに作成されます。この情報を表示するには、表示する入力フィールドをクリックした後、右にある [プロパティ] タブをクリックします。各フィールドには、名前とエイリアス名 (新しいコンポジット ロケーターを使用してジオコーディングするときに、[住所のジオコーディング (Geocode Addresses)] ツールに表示される名前) が含まれています。テキスト ボックスに表示されている値を変更することによって、フィールドのプロパティを変更できます。
コンポジット ロケーターの新しい入力フィールドを作成する必要がある場合は、次の手順を実行します。
- [新しいフィールドの追加] ボタン をクリックします。
既存の入力フィールドの下に、[新しいフィールド] テキスト ボックスが表示されます。
- 新しい入力フィールドの名前を入力します。
- 新しい入力フィールドを選択した状態で、右にある [プロパティ] タブをクリックします。
- [名前] テキスト ボックスに、入力住所フィールドの名前を入力します。
名前にスペースまたは特殊記号を含めることはできません。名前の最大長さは 32 文字です。
- [住所のジオコーディング (Geocode Addresses)] ツールに表示される名前を変更する必要がある場合は、[エイリアス] テキスト ボックスに任意のエイリアスを入力します。
エイリアス名にはスペースまたは特殊記号を含めることができます。
- 入力フィールドのサイズ (文字数) を指定します。
- 表示されるチェックボックスを使用して、住所のテーブルをジオコーディングするときに、この入力フィールドを必須フィールドにするかどうかを指定します。
- 必要に応じて、サブフィールドを入力フィールドに追加するには、[プロパティ] タブの横にある [サブフィールド] タブをクリックした後、[サブフィールドの追加] ドロップダウン リストをクリックして、リストから値を選択します。
サブフィールドを作成すると、他の入力フィールドとまったく同じように、移動したり編集したりすることができます。
フィールドの割り当てが完了すると、選択基準を設定できるようになります。各登録ロケーターに対して 1 つだけの選択基準をサポートしています。
- [新しいフィールドの追加] ボタン をクリックします。
- 必要に応じて、選択基準を指定します。
- ツールの [選択基準] の部分で、関係する各ロケーターの右にある [選択基準] 列のテキスト ボックスに、オプションの式を入力します。
関係する各ロケーターに対して追加できる選択基準は、1 つのみです。有効な選択基準の例は、「"City" = 'Atlanta'」です。これを、テキスト ボックスに直接入力します。
- ツールの [選択基準] の部分で、関係する各ロケーターの右にある [選択基準] 列のテキスト ボックスに、オプションの式を入力します。
- 出力ロケーターの名前と出力先は、自動的に選択されます。これらの値を変更するには、[出力コンポジット住所ロケーター] テキスト ボックスの横にある [参照] ボタン をクリックします。
[出力コンポジット住所ロケーター] ダイアログ ボックスが表示されます。
- ロケーターを保存する場所を指定し、ロケーターに名前を付けてから [保存] をクリックします。
- [実行] をクリックします。
処理が終了すると、ロケーターが [カタログ] ウィンドウの [ロケーター] フォルダーに追加されます。前に指定した保存場所でロケーターを検索することもできます。新しく作成したコンポジット ロケーターを新規プロジェクトまたは既存のプロジェクトに追加して、住所テーブルのジオコーディングに使用できます。
注意:
関係するロケーターを選択するときに、別のコンポジット ロケーターを参照するように選択することができます。ただし、ロケーターがループしないことを確認してください。たとえば、コンポジット ロケーター A がコンポジット ロケーター B を関係するロケーターとして使用し、コンポジット ロケーター B がコンポジット ロケーター A を関係するロケーターとして使用した場合、反復するループが作成されて、ジオコーディングが失敗します。
メモ:
- コンポジット ロケーターに指定できるロケーターの最大数は 30 ですが、10 を超えないことをお勧めします。ジオコーディングが大幅に遅くなる可能性があるためです。
- 最初の参加するロケーターの空間参照が、コンポジット ロケーターの空間参照として使用されます。ロケーターが使用されている場合、デフォルトで、ジオコーディング結果はロケーターと同じ空間参照で保存されます。
- ローカル コンポジット ロケーターで関係するロケーターが [ロケーターの作成 (Create Locator)] または [フィーチャ ロケーターの作成 (Create Feature Locator)] ツールを使用して作成された場合、コンポジット ロケーターは [場所検索] ウィンドウでそれらのロケーターからの候補を返します。[住所ロケーターの作成 (Create Address Locator)] ツールを使用して作成された関係ロケーターは、ファイル フォルダーに格納されているコンポジット ロケーターによる候補を返しません。
- [フィーチャ ロケーターの作成 (Create Feature Locator)] ツールで作成されたロケーターをコンポジット ロケーターに追加する際には、注意して処理する必要があります。なぜなら、[名前] フィーチャ ロケーター ロール フィールドのフィールド マッピングによって、予期しない動作が発生する可能性があるためです。[POI] ロールに基づいて [ロケーターの作成 (Create Locator)] ツールで作成されたロケーターを使用することをお勧めします。
- 関係するロケーターのいずれかが候補表示を有効にして作成された場合、それらのロケーターは、ArcGIS Enterprise ポータルでホストされるジオコード サービスまたはロケーターとして公開または共有される際に、コンポジット ロケーターでも候補表示が有効になります。候補表示を無効にして作成されたロケーターには、候補表示の機能がありません。そのため、コンポジット ロケーターは、候補表示が完全に有効化されている場合もあれば、部分的に有効化されている場合もあります。