ゾーン間の空間的関連性 (Spatial Association Between Zones) ツールの詳細

[ゾーン間の空間的関連性 (Spatial Association Between Zones)] ツールは、同じエリアの 2 つの地域化の空間的な関連性の程度を測定します。各地域化は、ゾーンと呼ばれるカテゴリのセットで構成されます。ゾーン セット同士の関連性は、各地域化内のゾーンとゾーンの重複エリアによって決まります。同様に、各地域化のゾーンが他の地域化の多数のゾーンと大きく重なっている場合、空間的関連性は最も低くなります。主な出力は、空間的関連性のグローバルな関連付けを表す、0 (一致なし) ~ 1 (ゾーンの完全な空間配置) の範囲の 1 つの数字です。オプション出力を使用すると、両方の地域化の特定ゾーンまたはゾーンの特定の組み合わせについて、関連性を計算および視覚化することもできます。各ゾーン セットは、ポリゴン フィーチャまたはラスターとして入力され、各フィーチャまたはラスター セルのゾーンを示すためにカテゴリ フィールドが使用されます。

ゾーン間の空間的関連性 (Spatial Association Between Zones)

青色とオレンジ色のゾーンの高い関連性と低い関連性を示した例です。

適用例

以下に、このツールの使用例を示します。

  • 森林管理者は、林相図を、林相に対する昆虫伝染病リスク (低、中、高) のマップと比較することにより、害虫管理を計画できます。これにより、森林管理者は、昆虫が媒介する病気のリスクがどの林相で最も高いか、最も低いかを判断できます。
  • 生態学者は、傾斜、土地被覆、水域距離などの変数を組み込んで、灰色オオカミの生息地適合性分類マップを作成しました。生態学者は、最終的な適合性マップが、作成に使用された各変数にどの程度対応しているかを測定することに関心があります。生態学者は、このツールを何回か実行して、適合性マップと各変数の間の関連性の数値尺度を算出できます。1 つの変数とよく一致し、残りの変数とはあまり一致しないということは、最終的な適合性に対し 1 つの変数が過度に影響していることを示している可能性があります。

関連性の測定

ゾーン間の空間的関連性を測定するために使用される統計は、V 尺度 (V-Measure) と呼ばれます。他のゾーン セットの値を観察することにより 1 セットのゾーンについて取得できる情報の量を定量化します。たとえば、ある場所の林相がわかっている場合、同じ場所の土質をどの程度確信できますか? 同様に、土質がわかっている場合、どの程度の確信を持って林相を予測できますか? この 2 つの質問が同じでない理由を理解するため、特定の土質が特定の林相にのみ出現するが、その林相は多くの土質で構成されていると仮定してみます。ある場所がこの土質であることがわかっている場合、その土質は 1 種類の林相にのみ存在するため、その場所の林相を断定できます。ただし、ある場所がこの林相であることがわかっている場合、その林相には多くの土質が出現するので、その場所の土質はわかりません。林相が異なる土質に分割されるほど、その場所の土質の予測はますます難しくなります。最悪の場合、森林のすべてのエリアがすべての土質に均等に分割される場合、ある土質を差し置いて別の土質を予測する根拠はありません。このように、林相と土質の関連性を測定するには、一定の林相内の土質の多様性に着目し、一定の土質内の林相の多様性に着目する必要があります。

わかりやすいよう、最初のゾーン セットを「入力ゾーン」、2 番目のゾーン セットを「オーバーレイ ゾーン」と呼びます。V 尺度は、入力ゾーン内のオーバーレイ ゾーンの多様性とオーバーレイ ゾーン内の入力ゾーンの多様性を測定し、これら 2 つの値の調和平均を計算することによって算出されます。3 つのグローバルな関連性の尺度は次のとおりです。

  • グローバルな関連性の尺度 - V 尺度、つまり入力ゾーンとオーバーレイ ゾーンの間の全体的な関連性の尺度です。値の範囲は 0 (関連性がまったくない) ~ 1 (完全に一致する) です。この値は、2 つの地域化のどちらが入力ゾーンおよびオーバーレイ ゾーンに指定されているかには依存しません (入力ゾーンとオーバー レイゾーンは逆に指定でき、この値は変わりません)。統計は、次の 2 つのグローバルな関連性尺度の調和平均を計算することによって決まります。
  • 入力ゾーン内のオーバーレイ ゾーンのグローバルな一致 - 各入力ゾーン内のオーバーレイのカテゴリの一貫性の尺度で、0 ~ 1 の範囲です。値 1 は、各入力ゾーンはゾーン内にオーバーレイ ゾーンを 1 つのみ含んでいること (ゾーンの完全な一致) を示します。0 に近い値は、入力ゾーンが、オーバーレイ ゾーンの多数のカテゴリに均等に分割されている (1 つのオーバーレイ ゾーンに対し一致性が低い) ことを示します。この尺度は、「参考資料」セクションで参照されている論文では完全性と呼ばれています。
  • オーバーレイ ゾーン内の入力ゾーンのグローバルな一致 - 各入力ゾーン内のオーバーレイのカテゴリの一貫性の尺度です。この値は、他のグローバル一致値に類似していますが、オーバーレイ ゾーン内の入力ゾーンの変動性を測定します。これらの 2 つの尺度は、入力ゾーンとオーバーレイ ゾーンが逆になると、値が入れ替わります。この尺度は、「参考資料」セクションで参照されている論文では均質性と呼ばれています。

これら 3 つのグローバルな関連性の尺度は、ジオプロセシング メッセージとして表示され、派生した出力として返されます。これらの派生出力は、Python スクリプトの変数として参照、あるいは ModelBuilder の他のツールへの入力として使用することができます。各尺度の式は、下の「参考資料」セクションに記載された資料をご参照ください。

ゾーンの一致の空間的調査

V 尺度の計算に使用される 2 つのグローバルな一致尺度はそれぞれ、入力ゾーンとオーバーレイ ゾーンの各交差に空間的に分割できます。これらの各交差は、トウモロコシ (作物タイプ) と水はけのよい土壌 (土壌排水クラス) の間の対応など、入力ゾーンとオーバーレイ ゾーンの特定の組み合わせの対応を測定します。これらの特定の組み合わせは、ゾーンがポリゴンとラスターのどちらとして指定されたかに応じて、[出力フィーチャ] パラメーターまたは [出力ラスター] パラメーターで作成できます。グローバルな関連性と一致の尺度とは異なり、ローカルの一致尺度の値が小さいほど、ゾーンの組み合わせの一致性が高いことを示します。最小値 0 は、完全な一致を示します。ローカルな尺度には上限はありませんが、2 を超えることはめったにありません。

出力フィーチャまたはラスターは、マップに追加されると、特定のオーバーレイ ゾーン内の特定の入力ゾーンの一致とオーバーレイ ゾーン内の入力ゾーンの一致を同時に表す配色で表示されます。青の色合いが明るくなるほど、入力ゾーン内のオーバーレイ ゾーンの一致性がより高いことを示し、ピンクの色合いが明るくなるほど、オーバーレイ ゾーン内の入力ゾーンの一致性がより高いことを示します。最も明るい灰色で表示されたエリアは、両方向で最も高い一致を示し、最も暗い紫色は、両方向での一致のレベルが最も低いことを示します。

2 変量配色

メモ:

2 変量配色を作成するには、入力ゾーン内のオーバーレイ ゾーンの一致とオーバーレイ ゾーン内の入力ゾーンの一致の両方に少なくとも 3 つの個別値が存在する必要があります。この場合、交差のゾーン別集計を表示することをお勧めします。

たとえば、下の画像は、温度域と気候帯の交差を示しています。全体的に一致レベルが最も高いのは、国の最南端と最北端の地域にあり、明るい灰色の交差領域で示されています。一致レベルの最も低いのは、中央および西部の地域に沿って見られます。

温度域と気候帯の交差

交差部分には、特定ゾーンの組み合わせの一致を視覚化するための 2 つのチャートも表示されます。1 つは、[入力ゾーン内のオーバーレイ ゾーン サマリー] という、入力ゾーンのカテゴリごとに分かれたバー チャート (横棒グラフ) です。各バー チャートは、オーバーレイ ゾーンと入力ゾーンの交差領域を示します。

たとえば、次の画像では、入力ゾーンは林相であり、オーバーレイ ゾーンは病害虫リスク カテゴリです。各林相について、各病害虫リスク カテゴリ内の交差領域にバー チャートが表示されています。左端のバー チャートは、[California Mixed Conifer] という林相が [リスクなし] カテゴリと広く交差していますが、エリアのおよそ 3 分の 1 が [リスクあり] か、すでに [病害虫あり] になっています。[Lodgepole Pine] という林相では、エリアのおよそ 3 分の 1 がリスクなしですが、この林相のごく一部ですでに病害虫が存在しています。右端の [Pinyon Juniper Woodland] という林相では、ごく一部にリスクがあるか現在病害虫が存在しています。調査領域内ではこの林相の全体的な面積が小さいため、3 つのバーはすべて、California Mixed Conifer と Lodgepole Pine よりも Pinyon Juniper Woodland の方が短くなっています。

入力ゾーン内のオーバーレイ ゾーンを集約したチャート

2 つ目は [オーバーレイ ゾーン内の入力ゾーンの集約] チャートです。これは 1 つ目のグラフに似ていますが、各オーバーレイ ゾーン内の入力ゾーンの交差領域を示しています。

交差のゾーン別集計

入力ゾーンとオーバーレイ ゾーンの交差の最大数は、入力ゾーンのカテゴリ数にオーバーレイ ゾーンのカテゴリ数を乗算した値になります。非常に多くの可能な組み合わせや 2 変量配色、さらにバー チャートを使用しても、どの特定の入力ゾーンがどの特定のオーバーレイ ゾーンに一致するかを判別しにくい場合があります。組み合わせが多すぎてそれぞれを個別に評価できない場合は、入力ゾーンとオーバーレイ ゾーンのそれぞれについて、ゾーン別に一致を集計することをお勧めします。これにより、他の地域化の一部のゾーンに一致する入力ゾーンとオーバーレイ ゾーンを識別できます。ただし、どのゾーンに一致するかは正確にはわかりません。続いて出力フィーチャまたは出力ラスターとチャートを使用すると、一致の正確な組み合わせを特定できます。入力ゾーンおよびオーバーレイ ゾーンがポリゴンの場合は、[入力ゾーン内のオーバーレイ ゾーンの一致] および [オーバーレイ ゾーン内の入力ゾーンの一致] パラメーターを使用してこれらの集計作成することができます。いずれかがラスターとして入力されている場合、集計は出力ラスターのフィールドとして保存されます。マップに追加した際、明るい色で表示されているエリアは、一致性が高いエリアを示しています。

交差の集計

参考資料

詳細情報および数学的な詳しい説明は次の資料をご参照ください。

  • Nowosad, J., Stepinski, T. F. (2018). "Spatial association between regionalizations using the information-theoretical V-measure." International Journal of Geographical Information Science. https://doi.org/10.1080/13658816.2018.1511794