ジオコーディングは多くのワークフローに組み込まれており、ワークフローごとに結果が異なります。 一致と見なされるジオコーディング結果のスコアが特に一部のワークフローで高くなることがあります。 出力内容をマップ上に表示する際に、ルート検索に使用される道路の片側ではなく、屋上または区画の重心に表示させたい場合があります。 このようなニーズに合わせてロケーターを調整する方法を次のセクションで説明します。
範囲外の一致
番地がデータ内のライン セグメントには存在しないが、妥当な閾値内にあり、存在する可能性が高い状況で、道路セグメントとの照合を行うには、[範囲外の一致] を [はい] に設定します。 このプロパティを [はい] に設定すると、住所が番地の範囲から少し外れている道路セグメントの終点にポイントが配置されます。 これで、データが 100 パーセント最新のものでなくなるため、一致候補の欠落がなくなります。 番地の範囲からやや外れる一致の Addr_type フィールド値は StreetAddressExt です。
注意:
[範囲外の一致] 設定は、ストリート住所の一致に対応していて、その一致を返すロケーターにのみ適用されます。
優先位置情報
ジオコーディング結果をマップ上に表示して、今後の解析に使用することができます。 ポイントが住所の屋上または区画の重心を表現できるように [優先位置情報] 設定を [住所位置] に変更します。 住所位置が、住所を表現するフィーチャの中心に最も近くなります。 反対に、ジオコーディング結果をルート検索アプリケーションで使用して、より効果的にルート検索を実行できるようにポイントを道路の片側に配置することができます。 この場合には、[ルート検索位置] オプションの選択が最適です。 ルート検索位置は通常、道路に近い、車両が到着する位置になります。 以下の図では、緑のドットは [ルート検索位置] オプション、ピンクのドットは [住所位置] オプションを表します。
注意:
選択した優先位置情報が見つからない場合は、それ以外の位置情報タイプが返されます。 [優先位置情報] 設定は、ポイント住所、区画、および POI の一致に対応していて、その一致を返すロケーターにのみ適用されます。
一致とする最小スコア
[一致とする最小スコア] 設定は、一致と見なされるために住所が参照データ内の有力候補とどれだけ正確に一致しなければならないかを制御できる閾値になります。 有力候補が閾値を下回っている場合、その住所は候補と一致しません。
ロケーターに設定できる最小一致スコアは、0 ~ 100 の間の値です。 完全一致のスコアは 100 です。高い信頼度での住所の一致を必要とするワークフローでは、[一致とする最小スコア] を高い閾値に設定します。 閾値の設定を高くすると、最も信頼度の高い一致だけが返されるようになります。 一致する住所の数をできるだけ増やす必要があり、正確に一致しない可能性のある住所が多少あってもかまわない場合は、閾値の設定を低くします。
バッチ ジオコーディングで一致と見なされるには、有力候補の一致とする最小スコアと一致しているか、それを上回っていなければなりません。 複数の一致が見つかった場合は、一致スコアが最も高い候補が採用されます。
注意:
複数ロールのロケーターで [一致とする最小スコア] を設定すると、ロール間の組み込みのフォールバック ロジックがオーバーライドされる可能性があります。 その場合、ロケーターで低精度のロールに一致する結果が表示されず、高精度のロールに一致する結果のみが表示されます。
候補とする最小スコア
[候補とする最小スコア] 設定によって、対話的ジオコーディング (ジオサーチ) で返される有力候補が決定されます。 たとえば、[場所検索] ウィンドウで場所を検索した場合、候補とする最小スコアの閾値を下回っている候補は表示されません。 ロケーターに設定できる [候補とする最小スコア] の値の範囲は 0 ~ 100 です。 [候補とする最小スコア] の値は対話的再照合でも使用されます。たとえば、[住所の再照合] ウィンドウには、候補とする最小スコアと一致しているか、それを上回っている候補だけが表示されます。
サイド オフセット
[サイド オフセット] 設定は、ジオコードの結果が道路のライン セグメントからどれだけ離れているかを決定します。 一部のロケーター ロールでは、道路のそれぞれの側の住所範囲情報が含まれる参照データ ([住所] など) が使用されます。 これらのロールに基づくロケーターは、住所が道路のどちら側に位置するかを特定することができます。 カートグラフィックや近接解析では、[住所] や [距離範囲] ロールのロケーターを使用する場合、ジオコーディングしたフィーチャにサイド オフセットを指定できます。 精度の高いオフセット結果を返すには、ロケーターの構築時に [ロケーターの作成 (Create Locator)] ツールで [グローバルで極めて高い] または [ローカルで極めて高い] 精度タイプを選択します。
注意:
[グローバルで極めて高い] または [ローカルで極めて高い] 精度タイプを使用して作成されたロケーターは、ArcGIS Pro 2.6 以降および ArcGIS Enterprise 10.8.1 以降で使用できます。
エンド オフセット
ライン ジオメトリの参照データを使用するロケーターは、ジオコーディングした住所の参照フィーチャに沿って場所を内挿することができます。 参照フィーチャの端にあるフィーチャが、交差道路など他のフィーチャの上に重なることを防ぐために、ロケーターではジオコーディングした住所の場所に対してエンド オフセットを適用することができます。 [住所] または [距離範囲] ロールに基づくロケーターのエンド オフセット設定は、直線距離で表すことができます。 精度の高いオフセット結果を返すには、ロケーターの構築時に [ロケーターの作成 (Create Locator)] ツールで [グローバルで極めて高い] または [ローカルで極めて高い] 精度タイプを選択します。
次の図では、「100 MAIN ST」という住所が 25 フィートのサイド オフセット距離で道路フィーチャからオフセットされています。 この住所は道路フィーチャの端に該当し、道路フィーチャの端に揃えて配置されます。
道路が斜めに交差している場合にオフセット距離を指定すると、住所の配置に望ましくない影響を与え、住所が MAIN ST ではなく OAK AV に属しているように見えることがあります。 この状態を次の図に示します。
交点コネクタ
道路フィーチャが含まれるロケーターでは、ストリート住所に加えて道路の交差点のジオコーディングがサポートされます。 交差点の検索は、交差する道路名と、追加の識別情報 (都市、郵便番号、その両方など) で構成されます。 交差点の住所には、1 本目の道路名と交点コネクタ、検索対象の 2 本目の道路名が必要です。 たとえば、交差点の検索として「Redlands Blvd and New York St 92373」や「Redlands Blvd & New York St Redlands Ca」はどちらも有効です。
[交点コネクタ] 設定では、ロケーターで交点コネクタとして認識されるすべての文字列を指定することができます。 交点コネクタには、&、@、|、\ などがありますが、 デフォルトでは、各国で一般的に使用されている交点コネクタが国ごとに構成されます。 デフォルトの交点コネクタをオーバーライドするには、シンボルや単語の独自のリストをこの設定に追加します。 交点コネクタのリストは、引用符で囲んだカンマ区切りのリストです (「"&","|","//","@"」など)。
注意:
道路の交差点の一致に対応しているのは、[住所] ロケーター ロールのみです。
ゾーンなしで一致
[行政区画名なしで照合] 設定は、行政区画なしで構築されたロケーター用に以前使用されていた設定です。 行政区画 (市、地域、郵便番号など) なしでロケーターを構築すると、同じ道路名を含む住所を照合した場合にジオコーディング品質が低下する可能性があるため、この方法はお勧めしません。 また、行政区画なしでロケーターを構築すると、ジオコーディングのパフォーマンスにも影響があります。 地域の略称情報 (米国の州など) を使用すると、ロケーター内で州道に関する既存のデータを拡張することができます。 たとえば、「State Hwy 39」という名前の高速道路がデータ内にあり、[地域の略称] フィールドに「CA」というデータが含まれている場合は、代替道路名を含む代替名テーブルを使用していなくても、「CA-39」のジオコーディング結果が返されます。
サポートする国
複数の国のデータを含むロケーターがある場合は、1 つまたは 2 つの国に存在することが判明している住所や場所の検索を実行できます。 検索を絞り込み、これらの国以外での一致を除外するように、国の設定を変更することができます。
注意:
この設定は、[テーブルのジオコーディング] および [住所のジオコーディング (Geocode Addresses)]、[ファイルのジオコーディング (Geocode File)]、[テーブルから場所をジオコーディング (Geocode Locations from Table)] の各ジオプロセシング ツールを使用しているときに使用可能な [国] の値に影響を与えます。
サポートするカテゴリ
複数の住所タイプに対応しているロケーターがある場合は、特定のタイプとの一致を除外するように、設定を変更することができます。 たとえば、ポイント住所レベル、ストリート住所レベル、道路名レベル、郵便番号レベルとの一致に対応できるロケーターがあるとします。 郵便番号レベルとの一致があまりにも目的に合っていないと思われるので、郵便番号レベルとの一致を除外することにします。 この設定で、ジオコーディングの精度を制御できます。 ロケーターが POI ロールに基づくもので、カテゴリをサポートしている場合は、場所名または関連するカテゴリを検索できます。 [ロケーターの作成 (Create Locator)] ツールまたは [フィーチャ ロケーターの作成 (Create Feature Locator)] ツールによって作成した、すべてのロールのロケーターは、座標の検索 (MGRS、USNG、XY など) をデフォルトでサポートしています。
注意:
この設定は、[テーブルのジオコーディング] および [住所のジオコーディング (Geocode Addresses)]、[ファイルのジオコーディング (Geocode File)]、[テーブルから場所をジオコーディング (Geocode Locations from Table)] の各ジオプロセシング ツールを使用しているときに使用可能な [カテゴリ] の値に影響を与えます。
構築されたカスタム ロケーターおよび ArcGIS StreetMap Premium ロケーターで使用可能な、サポートされているカテゴリのリストを次の表に示します。
カテゴリ | サブカテゴリ | ロール |
---|---|---|
住所 | ポイント住所、サブアドレス | ポイント住所 |
区画 | 区画 | |
住所 | ストリート住所、交差点、道路名 | ストリート住所 |
POI* | ロケーターによって異なります | POI |
住所 | 距離マーカー | 距離マーカー |
住所 | 距離マーカー | 距離範囲 |
郵便番号 | 基本の郵便番号 | 郵便番号 |
郵便番号 | 基本の郵便番号、追加の郵便番号 | 追加の郵便番号 |
郵便番号 | 基本の郵便番号、郵便地区 | 郵便地区 |
居住域 | ブロック、セクター、近郊、地区、市、都市圏、亜区、地域、テリトリー、国、ゾーン | 行政区域: ブロック、セクター、近郊、地区、市、都市圏、亜区、地域、テリトリー、国、ゾーン |
座標系 | 経緯度、XY、YX、MGRS、USNG | すべてのロール |
* ArcGIS StreetMap Premium ロケーターの場合、可能性のある対象ポイント カテゴリは World Geocoding Service のカテゴリに類似しています。 [ロケーターの作成 (Create Locator)] ツールを使用して構築されたロケーターの場合は、ユーザーがカテゴリを定義します。
リバース ジオコーディングでサポートされるフィーチャ
複数のフィーチャ タイプをサポートするロケーターがある場合、リバース ジオコーディング操作に使用するときにこのロケーターから返される結果のタイプを制限するように、この設定を変更することができます。 たとえば、リバース ジオコーディング時にロケーターから住所が返されるようにする場合は、[ポイント住所] および [住所] を選択します。 ある位置の郵便番号の説明を取得することに主な関心がある場合は、[郵便番号] のみを選択します。
注意:
この設定は、[リバース ジオコード (Reverse Geocode)] ツールを使用しているときに使用可能な [フィーチャ タイプ] の値に影響を与えます。