測地線距離と平面距離

Spatial Analyst のライセンスで利用可能。

距離ツールには、平面距離または測地線距離を使用して計算するオプションがあります。 平面距離とは直線のユークリッド距離で、2D 直交座標系で計算されます。 測地線距離は、地球の曲面上の距離として、3D 球体空間で計算されます。

距離解析と地図投影

地球は、やや平坦化された 3D の球体、または楕円体です。 地球をマップ上で表現するため、カートグラファーは 3D 空間と 2D 空間を数学的に変換した地図投影法を開発しました。 投影することでデータはさまざまな形で歪むため、距離、角度、面積の計測値に影響が及びます。 特定の経線や緯線、あるいはポイントなど、マップ上の特定の部分に対してこれらの特性のいずれか、または複数の特性を維持できるよう、数々の投影法が策定されました。 中には、一部の特性を正確に維持できる地図投影もありますが、すべての距離を正確に維持できる投影法はありません。 真の方向を維持する投影法が策定されましたが、どの投影法も距離と方向の両方を完全に維持できません。

Spatial Analyst 距離ツールが、任意の位置間のどの方向でも距離と方向を正確に計算するためには、測地線距離を使用する必要があります。

測地線距離と平面距離の違い

デフォルトの状態では、ツールは、測地線オプションに対応していない旧バージョンとの下位互換性を保つため、また、高速で実行できるため、平面距離を使用します。 測地線距離の結果の方が精度が高いため、速度よりも精度が優先される場合は、こちらの方法を使用することをお勧めします。

平面と測地線で、距離と方向がどのように計算されるかは、地図投影法と分析範囲の規模によって異なります。 たとえば、メルカトル図法や Web メルカトル図法などのほとんどの円筒図法で計算された距離と測地線距離を比較すると、赤道付近の低緯度の地域の差は小さいですが、極に近づくにつれ差は大きくなります。 赤道直下の 2 つの都市であるシンガポールとナイロビ間の距離はおよそ 7,440 キロメートルで、Web メルカトル図法での平面距離の誤差は 1 メートル未満です。 高緯度の都市を見てみると、たとえばレイキャビクとモスクワ間の測地線距離は約 3,310 キロメートルですが、Web メルカトル図法の平面距離は 6,890 キロメートルです。 平面距離には歪みがあり、真の測地線距離の約 2 倍になります。

ユニバーサル極心平射図法などの方位図法を極地で使用すると、距離と方向は極に近ければ測地線による計算に近くなり、赤道に近づくにつれ段階的に歪みが生じます。

一般に、投影の歪みは原点または投影法の中心で最も小さく、そこから離れるほどに大きくなります。

選択した都市周辺で平面バッファーと測地線バッファーを適用した世界地図
選択した都市から 1,000 キロメートルの距離バッファーの比較で、Web メルカトル平面距離 (紫) と測地線距離 (青) を使用します。 距離の歪みは、赤道から離れるにつれて大きくなります。

平面距離と測地線距離の差は、ソースからの距離に比例して大きくなります。 都市や郡などの小さい地域を対象としている場合は、平面と測地線の差は、国規模を対象にしている場合よりも小さくなります。 分析範囲の規模と地図投影の歪みの影響が重なると、歪みがさらに大きくなります。 Web メルカトル図法などの投影法では、極に近づくにつれ、同じ距離歪みで解析できるエリアが小さくなります。

測地線と平面の距離計測における具体的な違いを理解するには、[計測] ツールを使用して [平面] モードと [測地線] モードの両方で距離を計測します。

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