ラスター データは、衛星画像、航空カメラ、スキャンされたマップなど、多くのソースから取得されます。最新の衛星画像や航空カメラは比較的正確な位置情報を持つ傾向がありますが、すべての GIS データと位置を合わせるために若干の調整が必要な場合があります。スキャンされたマップや過去のデータには通常、空間参照情報が含まれていません。これらの場合、正確な位置データを使用して、ラスター データをマップ座標系に位置合わせするかジオリファレンスする必要があります。マップ座標系は、地図投影 (地球の曲面を平面に描写する方法) を使用して定義されます。
ラスター データをジオリファレンスする際には、マップ座標を使用してその位置を定義し、マップ フレームの座標系を割り当てます。ジオリファレンスしたラスター データは、他の地理データと一緒に表示、検索、解析することができます。[ジオリファレンス] タブにあるジオリファレンス ツールを使用すると、ラスター データセットをジオリファレンスできます。
一般的に、データのジオリファレンスには 4 つのステップがあります。
- 投影データと位置合わせするラスター データセットを追加します。
- [ジオリファレンス] タブを使用してコントロール ポイントを作成し、ラスターをマップ内の既知の位置と接続します。
- コントロール ポイントとエラーを確認します。
- 配置が正しいことを確認したら、ジオリファレンス結果を保存します。
ラスターとコントロール ポイントの位置合わせ
一般に、ラスター データをジオリファレンスするには、ジオリファレンスしたラスターやベクター フィーチャクラスなど、目的のマップ座標系に存在する既存の空間データ (ターゲット データ) を使用します。このプロセスでは、ラスター データセット上の位置と空間参照情報が定義されているデータをリンクする、複数の地上コントロール ポイントを識別します。コントロール ポイントは、ラスター データセットと現実の座標で正確に特定できる位置です。道路または河川の交差点、河口、岩の露出、防波堤の終端、規定の耕地の角、道路の角、または 2 列の生け垣の交差部分など、さまざまなタイプのフィーチャを特定可能な位置として使用することができます。
コントロール ポイントは、ラスター データセットを既存の位置から空間的に正しい位置にシフトおよび幾何補正するために、変換の際に使用されます。ラスター データセット上の 1 つのコントロール ポイント (始点) と位置合わせされたターゲット データ上の対応するコントロール ポイント (終点) 間の接続は、コントロール ポイント ペアとして使用されます。
作成する必要があるリンクの数は、ラスター データセットをマップ座標に変換するために使用する変換の複雑さに応じて異なります。ただし、追加するリンクの数が多いほど、位置合わせの精度が向上するとは限りません。リンクを 1 つのエリアに集中させるのでなく、可能な限りラスター データセット全体に分散させる必要があります。一般に、リンクがラスター データセットの各角の近くに少なくとも 1 つ存在し、内部に複数存在する場合に、最もよい結果が得られます。
通常は、ラスター データセットとターゲット データとのオーバーラップが大きいほど、ラスター データセットをジオフリファレンスするポイント間の間隔が広くなるため、位置合わせの結果がよくなります。たとえば、ターゲット データがラスター データセットの面積の 4 分の 1 を占めるだけの場合、ラスター データセットの位置合わせに使用できるポイントはオーバーラップした部分に限定されます。したがって、オーバーラップ以外のエリアは正しく位置合わせされない可能性が高くなります。ジオリファレンスしたデータは、位置合わせしたデータと同じ程度の精度しか持たないことを認識する必要があります。誤差を最小限に抑えるには、目的に応じて、最も高い解像度と最も大きな縮尺のデータをジオリファレンスに使用する必要があります。
ラスターの幾何補正
十分なコントロール ポイントを作成すると、ラスター データセットをターゲット データのマップ座標に変換できます。多項式変換、スプライン、アジャスト、射影変換、相似多項式など、さまざまなタイプの変換方法を使用して、ラスター内の各セルの正しいマップ座標位置を決定することができます。
多項式変換では、コントロール ポイントと LSF (最小二乗法) アルゴリズムに基づいて構築された多項式を使用します。多項式はグローバルな精度に対して最適化されますが、ローカル精度は保証されません。多項式変換から、次の 2 つの式が得られます。1 つは入力 (X, Y) 位置に対する出力 X 座標を計算するための式で、もう 1 つは入力 (X, Y) 位置に対する出力 Y 座標を計算するための式です。LSF (最小二乗法) アルゴリズムの目的は、すべてのポイントに適用できる一般公式を導くことであり、通常はコントロール ポイントの位置がわずかに移動します。この手法に必要な非相関コントロール ポイントの数は、ゼロ次多項式で 1、一次アフィン多項式で 3、二次多項式で 6、三次多項式で 10 でなければなりません。低次の多項式はランダムなエラーを返す傾向がある一方で、高次の多項式は外挿エラーを返す傾向があります。
0 次多項式はデータをシフトするために使用されます。すでにジオリファレンスされているデータをほんの少しだけずらしたい、というときによく使用されます。0 次多項式シフトに必要なコントロール ポイントは 1 つだけです。いくつかのコントロール ポイントを作成しておいて、その中から最も正確と思われるコントロール ポイントを選択することをお勧めします。
一次多項式変換は、画像をジオリファレンスするためによく使用されます。一次 (アフィン) 変換を使用して、ラスター データセットのシフト、サイズ変更、回転を実行します。通常は、この操作により、ラスター データセット上の直線が幾何補正されたラスター データセット上の直線にマッピングされます。このため、ラスター データセットの正方形や長方形は、一般に、任意の縮尺と角度方向の平行四辺形に変更されます。次に、アフィン (一次) 多項式変換を使用してラスター データセットを変換するための式を示します。6 つのパラメーターにより、ラスターの行および列をマップ座標に変換する方法がどのように定義されるかがわかります。
最小限の 3 つのコントロール ポイントでは、一次変換で使用される数学方程式により、各ラスター ポイントをターゲット位置に厳密にマッピングすることができます。コントロール ポイントが 4 つ以上あると、誤差 (残差) が生じ、それらがすべてのコントロール ポイントに分配されます。それでも、リンクは 4 つ以上追加すべきです。3 つだけの場合、1 つの不正確なコントロール ポイントの変換結果全体に及ぼす影響がそれだけ大きくなります。したがって、作成するリンクの数が増えるほど数学的な変換の誤差が大きくなる可能性がありますが、変換の全体的な精度も高まります。
変換次数が高いほど、訂正できる歪みが複雑になります。ただし、三次よりも高い変換が必要になることはめったにありません。次数の高い変換にはより多くのリンクが必要なので、徐々に処理時間が長くなります。一般に、ラスター データセットをストレッチ、サイズ変更、または回転させる必要がある場合は、一次変換を使用します。ただし、ラスター データセットを曲げたりカーブさせたりする必要がある場合は、二次変換または三次変換を使用します。
アジャスト変換は、グローバル LSF とローカル精度の両方に対して最適化されています。これは、多項式変換と TIN (不規則三角網) 内挿手法を組み合わせたアルゴリズムに基づいて構築されています。アジャスト変換では、2 組みのコントロール ポイントを使用して多項式変換を実行した後、コントロール ポイントをローカルで調整し、TIN 内挿手法を使用してターゲット コントロール ポイントに一致させます。アジャストには、最低でも 3 つのコントロール ポイントが必要です。
相似変換は、元のラスターの形状を維持しようとする一次変換です。ベスト フィットよりも形状の維持が重要であるため、他の多項式変換よりも RMS 誤差が大きい傾向にあります。相似変換には、最低でも 3 つのコントロール ポイントが必要です。
射影変換は、ラインを直線に保てるように幾何補正できます。この変換を行うと、変換前に平行であったラインが平行でなくなる場合があります。射影変換は、傾斜した画像、スキャンされたマップ、Landsat や Digital Globe などの一部の画像プロダクトに特に便利です。射影変換を実行するには、最低 4 個のリンクが必要です。4 個のリンクのみを使用する場合、RMS エラーはゼロになります。これより多いポイントを使用する場合、RMS エラーはゼロより少し大きくなります。射影変換には、最低でも 4 つのコントロール ポイントが必要です。
スプライン変換は真のラバーシート変換方式であり、ローカル精度に対して最適化されますが、グローバル精度に対して最適化されません。スプライン変換は、スプライン関数、つまり隣接した多項式間で連続性と滑らかさを保つ区分的多項式に基づきます。スプラインはソース コントロール ポイントをターゲット コントロール ポイントに正確に変換します。コントロール ポイントから離れた場所にあるピクセルが正確であるという保証はありません。この変換は、コントロール ポイントが重要な場合に効果的であり、正しい位置合わせが要求されます。コントロール ポイントを追加すればするほど、スプライン変換の全体的な精度を向上させることができます。スプラインには、最低でも 10 個のコントロール ポイントが必要です。
RMS 誤差の解釈
一般公式を引き出してコントロール ポイントに適用すると、残差誤差の量が返されます。誤差とは、始点が終了した場所と実際に指定された位置との差です。合計誤差を求めるには、すべての残差の合計である RMS (二乗平均平方根) を利用して、RMS 誤差を計算します。この値は、さまざまなコントロール ポイント間の変換の一貫性を表します。誤差が特に大きい場合は、コントロール ポイントを削除および追加して、誤差を調整することができます。
RMS 誤差は、変換の精度を査定するのに適していますが、RMS 誤差の値が低いからといって位置合わせが正確であるとは限りません。たとえば、不正確に入力されたコントロール ポイントが原因で、変換に重大な誤差が含まれている可能性もあります。同じ品質のコントロール ポイントを多く使用するほど、多項式によって入力データが出力座標に変換される精度が高まります。一般に、アジャストおよびスプライン変換では、0 に近い RMS が得られます。ただし、これは画像が完全にジオリファレンスされることを意味するわけではありません。
順変換残差は、データ フレームの空間参照と同じ単位でエラーを表示します。逆変換残差は、エラーをピクセル単位で表示します。順変換 - 逆変換残差は、ピクセルでの精度の計測値です。すべての残差がゼロに近いほど精度が高いと見なせます。
ジオリファレンス情報の保持
ラスター データセットをジオリファレンスした後は、[ジオリファレンス] タブの [新規保存] コマンド、または [幾何補正 (Warp)] ツールを使用して、ラスター データセットを永続的に変換することができます。また、[ジオリファレンス] タブの [更新] コマンドを使用して、変換情報を補助ファイルに更新することもできます。
[新規保存] または [幾何補正 (Warp)] ジオプロセシング ツールは、マップ座標と空間参照を使用してジオリファレンスされた新しいラスター データセットを作成します。ArcGIS では、ラスター データセットと他の空間データを一緒に表示する際には、特に永続的に変換する必要はありません。ただし、そのデータを解析に使用する場合や、ワールド ファイルで作成された外部ジオリファレンス情報を認識しない別のソフトウェア パッケージで使用する場合は、永続的に変換する必要があります。
ジオリファレンスを更新すると、変換情報が外部ファイルに格納されます。ラスター データセットを永続的に変換する場合とは異なり、新しいラスター データセットは作成されません。ラスター データセットが TIFF などのファイル ベースである場合、通常、変換は「.aux.xml」の拡張子を持つ外部 XML ファイルに格納されます。ラスター データセットが BMP などの未処理の画像で、変換がアフィン変換である場合は、ワールド ファイルに書き込まれます。ラスター データセットがジオデータベースに含まれている場合、更新するとジオデータ変換がラスター データセットの内部補助ファイルに格納されます。