画像およびラスター チャート

チャートは、複数の変数からの表形式データとラスター データをグラフィカルな形式で特徴付けることができる重要な解析ツールです。 ArcGIS Pro のチャート機能を利用すると、このような変数のデータを地理的に選択できるようになります。 このため、変数と地理的関係の両方について直感的に理解することができます。 たとえば、ラスター データについて、農地などの選択された対象地域別に変数を調べたり、栽培期間にわたって異なる作物の種類の画像スペクトル シグネチャを調べたりすることができます。

ベクター、ラスターおよび画像データを調べるときのチャート ツールには、多くの共通点があります。 画像内のスペクトル バンドの相互関係を解析できるのと同様に、ベクター データから属性の散布図を視覚化して、散布図内の変数の相関関係を調査することができます。

ベクター データと画像データの解析でチャートが使用される方法は、多くの場合、データのタイプによって異なります。 たとえば、ベクター データについて、変数の相互関係を調査し、関係を設定して定量化する場合がある一方で、画像について、フィーチャの抽出操作に使用されるバンドの相互関係を削減する場合があります。 さらに、表形式データとカテゴリ ラスター データは不連続ですが、画像データは連続しています。 データのタイプによるこの違いは、チャートにおけるそれぞれのタイプの処理および解析方法の最も基本的な部分に関係しています。

チャートを作成する方法の詳細

画像およびラスター チャートについて

リモート センシング画像および解析ラスター データには、データが表現する地理に関する信頼性の高い情報が含まれます。 画像内のあらゆるピクセルは、地理的位置を表すスペクトルおよび空間計測を意味します。 多くの場合、表示されているフィーチャのスペクトル シグネチャのサンプルを表現するバンド情報が 4 つ以上存在します。 科学データの場合、特定の位置において複数の時間範囲にわたる複数の変数の調査が可能である複数の時系列データであることがあります。 画像または科学データをラスターとして表示することは、データを視覚化して理解するための最も一般的な方法ですが、2 つ以上の対象フィーチャに関連する細部を比較したり、期間全体を通してパターンを調べたりする場合は特に、視覚的なマップ ビューとは異なるプレゼンテーションを用いた方が、情報をより明確に伝えることができます。

マルチスペクトル画像内のフィーチャのスペクトル シグネチャを調査できるように設計されたチャートは画像に固有のものです。 ラスター チャートでは、バンドのスペクトル波長を正しく描画するために画像のメタデータが使用されるとともに、この情報を使用して、比較および解析のためのピクセルのグループが指定されます。 このため、リモート センシングおよび画像処理手法に基づいたフィーチャ抽出の設計が可能となり、植生の健康状態や水質のマップなどのラスター プロダクトを取得することができます。 取得されたカテゴリ データ プロダクトを生成するために連続画像データを処理したら、ベクターベースのチャートを使用して、これらのデータをさらに詳細に解析できます。

画像およびラスター チャートには、画像バー チャート、画像ヒストグラム チャート、画像散布図、スペクトル プロファイル チャート、および時系列プロファイル チャートの 5 つの種類があります。

画像バー チャート

バー チャートを使用して、カテゴリ ラスター データの分布を可視化できます。 たとえば、バー チャートを使用して、各土地被覆カテゴリのピクセル数や、特定のリスク クラスに属している総面積を把握できます。 画像バー チャートを使用すると、各カテゴリの主題ラスター データの分布を可視化できます。 ラスターでバー チャートを使用するには、属性テーブルが必要です。

さまざまな土地被覆タイプのピクセルの分布を表したバー チャート

画像ヒストグラム チャート

画像を使用する際には、一般的にその画像に含まれている情報の型を理解する必要があります。 バンド内の値の統計的分布を見れば、センサーの動作性能や画像が収集されたときの条件について洞察が得られます。 また、画像品質の重要な側面を特徴付けるための指標も得られます。 画像ヒストグラム チャートでは、そのバンドのピクセル分布を視覚化および解析することができます。 画像ヒストグラムの解析には、分布の歪度などの統計的測定、平均値と中央値のプロット、および標準偏差を示すためのバーが含まれます。

近赤外バンド内のピクセルの分布を示す画像ヒストグラム チャート

画像散布図

散布図には、フィーチャ データのスペクトル情報が描画され、散布図ごとに 2 つのバンド情報を視覚化できます。 これは、バンド情報にどの程度の相関関係があるかを理解する上で役立つだけでなく、画像内の対象フィーチャをハイライト表示するさまざまなバンドの組み合わせを選択する際に役立ちます。 異なるバンドにあるピクセルの相関性が高い場合、画像の分類に必要なバンドは数個で済みます。 複数のフィーチャを構成するピクセルが分離可能であることがバンド散布図に示されている場合、これは、両方のバンドが画像分類に使用される有力な候補であることを示しています。

散布図で選択条件を満たすピクセルが、マップ表示内でハイライト表示されます。

また、散布図は、タッセルド キャップ、主成分分析、さまざまな指標など、変換された画像データの特性の分析でも役立ちます。 散布図の分布におけるフィーチャの位置により、植生の健康状態と作物の成長段階や山火事が発生した後の燃焼の重大度などの現象を直感的に理解できるようになります。

スペクトル プロファイル チャート

スペクトル プロファイル チャートでは、画像上の領域または地表フィーチャを選択して、画像内のすべてのバンドのスペクトル情報を確認することができます。 このチャートは、その領域内の対象フィーチャのスペクトル フィンガープリントを提供します。 たとえば、2 つの農地を比較して、これらの農地に同じ作物が含まれるかどうかを判断する場合は、それぞれの農地のエリアを 1 つ選択して、各バンドのピクセル値のサマリーを農地ごとにスペクトル プロファイル チャートで表示することができます。 スペクトル シグネチャの差異は、各チャートのスペクトル内の平均値、標準偏差のひげ、およびそれらの場所を確認することで明らかになります。 非スペクトル バンドもプロットできます。これは、解析ラスター データセットから指標またはデータを視覚化する場合に重要です。 これを行うと、スペクトル シグネチャが類似しているか、それとも分離可能であるかを、それぞれのフィーチャのバンド情報に基づいて判断できます。

[箱と平均ライン] チャートで表示した地表フィーチャのスペクトル プロファイル

スペクトル プロファイル チャートは、フィーチャのスペクトル シグネチャを理解し特性を区別するためや、画像が正しく処理されていることを確認するために役立ちます。 また、大気補正を実行したり、画像分類のために画像を前処理したりするラスター関数の設計にこれらのチャートを役立てることができます。

時系列プロファイル チャート

時系列プロファイル チャートは、時系列の画像データを対象とする解析ツールとして機能します。 時間の経過に伴う変化を時系列プロファイルによって視覚化することで、傾向を表示して、他の次元の変数、バンド、値と同時に比較できるようにします。 たとえば、作物の生育状態が栽培期間にわたってどのように変化するかを視覚化したり、生育状態を複数年にわたって比較したりできます。

多次元の 1 つの変数に関する時系列プロファイル チャート

時系列プロファイル チャートの機能を使用すると、トレンド解析を実行し、特定の場所にある多次元ラスター データについての洞察を得て、経時的に変化していく値を折れ線グラフの形式でプロットできます。 時系列プロファイル チャートは対話形式です。つまり、時系列プロファイル上の 1 つのポイントを選択すると、そのポイント値が抽出されたタイム スライスにマップ表示がシームレスに切り替わるため、データ内を簡単に移動できるようになります。 時系列プロファイル チャートは、ラスター データの時系列解析に関わるさまざまな科学アプリケーションで使用できます。

ピクセル時系列変化エクスプローラー

[ピクセル時系列変化エクスプローラー] では、CCDC (Continuous Change Detection and Classification) 手法または干渉と回復における Landsat ベースの傾向検出 (LandTrendr) 法を使用して、1 つのピクセル値の経時的な変化を特定できます。 これにより、データセット全体に対して [CCDC を使用した変化の解析 (Analyze Changes Using CCDC)] ツールまたは [LandTrendr を使用した変化の解析 (Analyze Changes Using LandTrendr)] ツールを実行する前に、特定の変化イベントに焦点を当てるようにモデル パラメーターを調整できます。 たとえば、森林地域内のピクセルが時間とともにどのように変化し、環境への影響 (火災や深刻な干ばつなど) に対応したかを視覚化できます。

CCDC アルゴリズムを使用した 1 つのバンドのピクセル時系列変化チャート

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