ポータル プロジェクトは、ArcGIS Enterprise ポータルで作成、格納、管理される ArcGIS Pro プロジェクトです。 ポータル プロジェクトを作成するには、ArcGIS Pro 3.5 および ArcGIS Enterprise 11.4 以降のバージョンのポータルが必要です。 以前のバージョンの ArcGIS Enterprise や ArcGIS Online ではポータル プロジェクトはサポートされていません。
ポータル プロジェクトは、1 人のユーザーが 1 台のコンピューターで使用することも、共同で作業する複数のユーザーが使用することもできます。 このプロジェクトはポータル上で管理および更新されます。 そのため、ポータル プロジェクトは、静的 (通常は完成した) プロジェクトを交換するためのファイル形式であるプロジェクト パッケージ (.ppkx) とは異なります。
ポータル プロジェクトのコンポーネントはローカル プロジェクトのコンポーネントと同じです。 ここにはマップ、レイアウト、レポート、プレゼンテーション、スタイル、タスク、リンク チャート、および同様のアイテムが含まれています。 ただし、構造上、このプロジェクトは .aprx ファイルとしてではなく、JSON アイテムとしてリソースとともにポータルに格納されます。
ポータル プロジェクトには、ホーム フォルダー、デフォルト ジオデータベース、デフォルト ツールボックスがあります。 これらのアイテムはポータルには格納されず、ローカル ドライブ、ネットワーク ドライブ、またはデータベースに格納されます。 ポータル プロジェクトにはフォルダー接続および他のリソースへの接続も含まれる場合があります。
ポータル プロジェクトは次のような複数の方法で使用できます。
- 1 人のユーザーが 1 台のコンピューター上でプロジェクトを使用できます。 この方法では、ローカル ドライブやネットワーク ドライブ上での破損や障害からプロジェクトが保護されます。
- 1 人のユーザーが複数のコンピューター上でプロジェクトを使用できます。 この方法では、ユーザーは仕事用のコンピューターと自宅のコンピューターなどからプロジェクトでの作業を行えます。
- 1 人のユーザーが他のユーザー用のプロジェクトを作成できます。 たとえば、管理者は ArcGIS Enterprise 組織内の個々のユーザーまたはグループに、すぐに使用可能なプロジェクトを提供することができます。
- 多くのユーザーが同じプロジェクトを使用できます。 この方法では、スキルや責任が異なる複数のユーザーが共同でプロジェクトの作業を行うことができます。
必要とされるポータル プロジェクトの設定は用途によって異なります。 たとえば、共同作業プロジェクトは、プロジェクトのデフォルト アイテムとデータをすべてのユーザーが使用できるように構成する必要があります。 構成では、ホーム フォルダーの場所、デフォルト ジオデータベース、デフォルト ツールボックスを指定するとともに、共有プロパティを設定します。 ポータル プロジェクトは、ArcGIS Enterprise 組織や、組織内のグループと共有できます。 これらのレイヤーをパブリックに共有することはできません。
ポータル アプリケーションで、ポータル プロジェクトはアイテム説明ページとプロジェクト所有者の [マイ コンテンツ] コレクションで [Pro プロジェクト] ラベルによって識別されます。
ポータル プロジェクトを初めて開くと、コンピューター上のデフォルトの場所にフォルダーが作成され、ポータル プロジェクトのアイテム ID に従って名前が付きます (この名前は長い英数字文字列です)。ポータル プロジェクトのリソースがダウンロードされ、プロジェクト ファイル (.aprx) がこれらのリソースから作成されてフォルダー内に格納されます。 ポータル アイテムのメタデータとサムネイル画像もダウンロードされてフォルダーに格納されます。
ポータル プロジェクトに対する作業はローカルに保存されているプロジェクト ファイルで行われます。 プロジェクトは ArcGIS Pro タイトル バーのクラウド アイコンによってポータル プロジェクトとして識別されます。
ポータル プロジェクトを保存すると、次のことが行われます。
- プロジェクトのローカル コピーが更新されます。
- 変更内容がポータルにアップロードされ、共同作業者が使用できるようになります。
- 他のユーザーによってポータルに保存された変更内容がローカル コピーにダウンロードされます。
別のプロジェクトを開いたり ArcGIS Pro を終了した場合、ポータル プロジェクトのローカル コピーはコンピューター上に残ります。 共同作業者が各自のローカル コピーに変更を加えてポータルに保存するに従い、ポータル プロジェクトの状態はローカル コピーとは異なるものになっていきます。 次にプロジェクトを開いたときには、最後に保存した状態でローカル コピーが開きます。他のユーザーがポータルに保存した変更は自動的にダウンロードされません。
ローカル コピーに変更を加えてプロジェクトを保存すると、前述のプロセスが実行されます。つまり、ローカルでの変更内容がアップロードされ、ポータルでの変更内容がダウンロードされます。 この時点で、プロジェクトのローカル コピーが最新の状態になります。 プロジェクトを保存するということは、ローカル コピーとポータル プロジェクトを同期することであると考えることができます。
ポータル プロジェクトは相互に表示されません。 プロジェクトを開いたときに、他の誰かが自分のローカル コピーでそのプロジェクトで作業をしているか、または他の人がどのような変更を加えているかはわかりません。 他のユーザーによって行われた作業に関する通知は、自分が行ったアップロード済みの変更が他のユーザーと競合している場合にのみ表示されます。
たとえば、自分と同僚の両方が同じマップに対して異なる変更を加えたとします。 両者はローカル コピーで作業しているため、もう一方が行った変更をリアル タイムで確認することはできません。 同僚がプロジェクトのローカル コピーを保存すると、その変更内容がポータルにアップロードされます。 自分が後からローカル コピーを保存した場合、同僚の変更内容が自分の変更内容によって自動的に上書きされるのではなく、 競合が検出され、[プロジェクトの競合] ダイアログ ボックスが表示されます。 競合を解決する方法として、変更をポータルにプッシュするか、ポータルから同僚の変更をプルするかを決定する必要があります。 同僚の変更内容を確認することはできないため、決定する前に同僚と相談する必要があります。
競合は、マップ、レイアウト、レポートなどのプロジェクト アイテム レベルで検出および解決されます。 たとえば、自分がマップ レイヤーのシンボルを変更し、同僚が同じマップに対して関連性のない変更を加えた場合 (新規レイヤーの追加、ベースマップの変更、マップの座標系の変更など)、競合が生じます。 つまり、競合するのは個々の設定、プロパティー、エレメントではなく、プロジェクト アイテムということです。
競合を解決した場合、あなたのマップか同僚のマップのいずれかが全体としてポータルに保存されます。
競合が検出された場合、競合が解決するまで変更のアップロードとダウンロードは行われません。 競合を解決した後は、競合していないすべての変更内容が、競合していた変更内容とともに処理されます。 たとえば、マップ 1 で競合を解決した後、競合がなかったマップ 2 に対する変更内容もポータルにアップロードされます。 さらに、競合がなかったマップ 3 に対する同僚の変更内容が、ポータルからプロジェクトのあなたのローカル コピーにダウンロードされます。
アクセスと管理
ポータル管理者とポータル プロジェクト アイテム所有者は、ポータル アプリケーションでポータル プロジェクトの共有プロパティとその他のプロパティを管理できます。 共有設定はポータル プロジェクト全体に適用されます。 つまり、ポータル プロジェクトのすべてのプロジェクト アイテムが同じ共有プロパティーを持つことになります。
共同作業用のポータル プロジェクトは共有の更新グループと共有する必要があります。 共有の更新グループのメンバーは、ポータル プロジェクトを開き、修正して変更内容をポータルに保存することができます。
ポータル プロジェクトは組織またはグループと共有することもできます。 プロジェクトが共有されている組織またはグループのメンバーは、そのプロジェクトを開いて表示することができます。 プロジェクトはポータルからダウンロードされるので、これらのユーザーは変更を加え、プロジェクトのローカル コピーに変更内容を保存できます。 ただし、変更内容をポータルに保存することはできません。 必要に応じ、ポータル プロジェクトを新しいローカル プロジェクトとして保存できます。 適切な権限があれば、新しいポータル プロジェクトとして保存することもできます。
フィーチャ レイヤーを編集する権限を持つ組織メンバーは、ポータル プロジェクト内のマップ レイヤーによって参照されるデータを編集することができます。 ポータル プロジェクトを更新する権限は必要ありません。
主要な機能
ポータル プロジェクトの主要な機能には、次のようなものがあります。
- ポータル プロジェクトへの同時マルチユーザー アクセス
- クラウドベースのストレージとセキュリティ
- ArcGIS Pro は Microsoft OneDrive やその他のクラウドベースの製品を ArcGIS Pro 用の非仮想作業環境としてサポートしていません。
- 仮想プライベート ネットワーク (VPN) を使用しない、複数コンピューターからのプロジェクトへのアクセス
- オペレーティング システムではなく ArcGIS Enterprise ポータルでの権限の管理
ソフトウェア要件
ポータル プロジェクトには次のアプリケーションが必要です。
- ArcGIS Pro 3.5
- ArcGIS Enterprise 11.4 以降のバージョン
ArcGIS Pro 3.5 で作成されたポータル プロジェクトは、ArcGIS Pro 3.4 以前のバージョンで開くことはできません。