Spatial Analyst のライセンスで利用可能。
[バンド コレクション統計 (Band Collection Statistics)] ツールは、ラスター バンド セットの多変量解析に関する統計情報を提供します。 [共分散と相関行列を計算] オプションが有効になっている場合、各レイヤーの最小値、最大値、平均値、標準偏差などの基本的な統計パラメーターに加え、共分散行列と相関行列が出力されます。 [ヒストグラムを計算] オプションが有効になっている場合、ヒストグラムの統計情報が計算されて出力統計情報ファイルに追加されます。 出力ヒストグラム テーブルを指定した場合、ヒストグラム情報が格納される出力テーブルが作成されます。 出力ヒストグラム名を指定した場合、ヒストグラム チャートが作成されてコンテンツ ウィンドウに追加されます。
共分散行列には、分散および共分散の値が含まれます。 分散は、データの分布が平均からどのくらい離れているかを示す統計指標です。 分散を計算するには、すべてのセル値の平均と各セル値との差を求め、さらにその二乗平均を算出します。 各レイヤーの分散を、左上から右下へ移動する共分散行列の対角上に読み込むことができます。 分散はセル値の二乗で表されます。
共分散行列のその他のエントリーは、すべての入力ラスターのペア間の共分散です。 レイヤー i とレイヤー j の共分散を求めるには、次の数式を使用します。

ここで、
Z - セルの値
i, j - スタックのレイヤー
µ - レイヤーの平均
N - セルの数
k - 特定のセル
2 つのレイヤーの共分散は、該当する行と列の交点です。 レイヤー 2 とレイヤー 3 の共分散は、レイヤー 3 とレイヤー 2 の共分散と同じになります。 共分散行列の値はその単位に依存しますが、相関行列の値は依存しません。
相関行列は、2 つのデータセットの関係を表す相関係数の値を示します。 ラスター レイヤー セットの場合、一方のレイヤーのセル値に関係しているもう一方のラスター レイヤーのセル値を表します。 2 つのレイヤーの相関は、それらのレイヤー間の依存関係として計測されます。 つまり、「2 つのレイヤー間の共分散」÷「それらのレイヤーの標準偏差の積」で求めた比率に相当します。 比率なので単位は付きません。 相関を求める計算式は次のとおりです。

相関の範囲は +1 ~ -1 です。 正の相関は、2 つのレイヤーが直接関係していることを示します。たとえば、一方のレイヤーのセル値が大きくなると、もう一方のレイヤーのセル値も大きくなる場合などです。 負の相関は、一方の変数が変化すると、もう一方がそれに反比例して変化することを意味しています。 ゼロの相関は、2 つのレイヤーが互いに無関係であることを意味しています。
相関行列は対称をなします。 まったく同じ 2 つのレイヤーの相関係数は +1 なので、左上から右下までの対角線は 1.0000 になります。
出力統計情報ファイルの例
出力統計情報ファイルでは、カンマ区切り値 (CSV) 形式とマークダウン形式の 2 つの出力形式がサポートされています。 4 バンド入力ラスターでの、これらの形式の出力統計情報ファイルの例を以下に示します。
CSV 出力
出力統計情報ファイルがテキスト ファイルとして指定されている場合 (ファイル拡張子が .txt、.csv、または .asc)、カンマ区切り値 (CSV) 形式で保存されるため、他のソフトウェア (Excel など) にインポートしてさらに解析や視覚化を行うことができます。
[共分散と相関行列を計算] オプションと [ヒストグラムを計算] オプションの両方をオフにして作成されたテキスト ファイルの内容を以下に示します。 入力レイヤーのソース データのパスがファイルの先頭にリストされています。
Output Band Collection Statistics Input Layers Layer,Path Layer_1,C:\example\mb_data.tif\Band_1 Layer_2,C:\example\mb_data.tif\Band_2 Layer_3,C:\example\mb_data.tif\Band_3 Layer_4,C:\example\mb_data.tif\Band_4 Statistics of Individual Layers Layer,Min,Max,Mean,Std. Dev. 1,48.00000,255.00000,73.70110,11.90945 2,22.00000,255.00000,33.73108,7.49241 3,17.00000,255.00000,31.77404,11.40892 4,13.00000,255.00000,82.51136,17.67144
マークダウン出力
ファイル拡張子が .md として指定されている場合、出力統計情報ファイルはマークダウン形式で保存されます。
[共分散と相関行列を計算] オプションをオンにし、[ヒストグラムを計算] オプションをオフにして作成されたマークダウン ファイルの内容をプレーン テキスト ファイルとして表示したものを以下に示します。
# Output Band Collection Statistics ### Input Layers | Layer | Path | | ------: | ----------------------------: | | Layer_1 | C:\example\mb_data.tif\Band_1 | | Layer_2 | C:\example\mb_data.tif\Band_2 | | Layer_3 | C:\example\mb_data.tif\Band_3 | | Layer_4 | C:\example\mb_data.tif\Band_4 | ### Statistics of Individual Layers | Layer | Min | Max | Mean | Std. Dev. | | ----: | -------: | --------: | -------: | --------: | | 1 | 48.00000 | 255.00000 | 73.70110 | 11.90945 | | 2 | 22.00000 | 255.00000 | 33.73108 | 7.49241 | | 3 | 17.00000 | 255.00000 | 31.77404 | 11.40892 | | 4 | 13.00000 | 255.00000 | 82.51136 | 17.67144 | ### Covariance Matrix | Layer | 1 | 2 | 3 | 4 | | ----: | --------: | --------: | --------: | --------: | | 1 | 141.83498 | 86.72548 | 131.13040 | -54.33298 | | 2 | 86.72548 | 56.13628 | 84.01048 | -24.88371 | | 3 | 131.13040 | 84.01048 | 130.16340 | -53.35075 | | 4 | -54.33298 | -24.88371 | -53.35075 | 312.27971 | ### Correlation Matrix | Layer | 1 | 2 | 3 | 4 | | ----: | -------: | -------: | -------: | -------: | | 1 | 1.00000 | 0.97193 | 0.96509 | -0.25817 | | 2 | 0.97193 | 1.00000 | 0.98280 | -0.18794 | | 3 | 0.96509 | 0.98280 | 1.00000 | -0.26462 | | 4 | -0.25817 | -0.18794 | -0.26462 | 1.00000 |
レンダリング後のマークダウン出力
レンダリング後のマークダウン形式の出力ファイルの表示例を以下に示します。 この出力ファイルは、[ヒストグラムを計算] オプションをオンにし、[共分散と相関行列を計算] オプションをオフにして作成しています。

参考資料
詳細については、以下をご参照ください。
Snedecor, G. W., and W. G. Cochran. 1968. Statistical Methods, 6th ed. Ames, Iowa: The Iowa State University Press.