Image Analyst ライセンスで利用できます。
スペクトル ライブラリーとは、画像内で正確なマテリアル識別と分類を支援する参照スペクトルのデータベースです。 さまざまなマテリアルが電磁スペクトルにおいてエネルギーを反射、吸収、または放出するかを表すスペクトル シグネチャーのライブラリーです。 ライブラリー内の各スペクトル シグネチャーは、植生や土壌のタイプ、鉱物、水分、建設物などのマテリアルに関する辞書の定義のようなものです。 これらのライブラリーは現場計測や慎重にキャリブレーションされた画像から構築することもできますが、最も信頼性の高いスペクトル ライブラリーは、研究所の環境で使用する分光計から生成されます。 ライブラリーのスペクトル シグネチャーには、反射率の値に加え、これらの反射率の値が収集された波長範囲が含まれます。
多くの場合、スペクトル シグネチャーは、よく知られた空中センサーや宇宙センサーに合わせてリサンプリングされるか、画像から計測された反射率である場合もあります。 アナリストは、これらを使用して画像のピクセル スペクトルを比較および照合し、衛星画像、航空画像、ドローン画像におけるマテリアルの識別や分類を支援します。
スペクトル ライブラリーのサポート
ArcGIS は、以下のスペクトル ライブラリーおよび形式をサポートしています:
- USGS スペクトル ライブラリー - このライブラリーには、研究所、現場、および航空機搭載型の分光計で計測されたスペクトルが含まれており、紫外線から遠赤外までの波長 (0.2 ~ 200 ミクロン) を網羅しています。 特定の鉱物、植物、化学化合物、建設物の研究所でのサンプルが計測されます。 スペクトル ライブラリー データには、マテリアル名、スペクトル範囲、バンド数が含まれます。
- Esriスペクトル ライブラリー - Esri スペクトル ライブラリー (.esl) ファイルには、センサー、マテリアル名、波長のリスト、値が含まれます。
- ENVI スペクトル ライブラリー - ENVI スペクトル ライブラリー (.sli) は、スペクトル シグネチャーのコレクションを格納するために使われるバイナリー ファイル形式で、波長、単位、マテリアル名などのメタデータを含むコンパニオン ヘッダー (.hdr) があります。
スペクトル ライブラリーの閲覧と表示
ArcGIS Pro では、スペクトル ライブラリーのスペクトル シグネチャーを視覚化し、使用するためのスペクトル ライブラリー ブラウザーとスペクトル シグネチャー ビューアーを用意しています。
スペクトル ライブラリー ブラウザー
[スペクトル ライブラリー ブラウザー] ウィンドウでは、スペクトル ライブラリーで選択したスペクトル シグネチャーを開き、参照や検索、表示することができます。
[スペクトル ライブラリー ブラウザー] ウィンドウを開くには、[画像] タブで [スペクトル解析] ボタン、[新しいスペクトル シグネチャー ビューアー] の順にクリックします。 [スペクトル ライブラリー ブラウザー] の上部パネルでは、スペクトル ライブラリーに含まれるスペクトル シグネチャーをテーブルにリストします。 このテーブルには、マテリアル名、スペクトル シグネチャーの範囲、スペクトル シグネチャーを定義するバンド数が記載されています。 スペクトル シグネチャーのリストは、ツリー ビューかリスト ビューのいずれかで表示できます。

[スペクトル ライブラリー ブラウザー] の機能の詳細については、スペクトル ライブラリー ブラウザー ウィンドウの操作をご参照ください。
スペクトル ライブラリー ビューアー
[スペクトル ライブラリー ビューアー] ウィンドウでは、スペクトル ライブラリーで選択したスペクトル シグネチャーを開き、参照や検索、表示することができます。 ツールを使用してスペクトル シグネチャーを調査して計測し、対象のスペクトル シグネチャーを選択し、新しい Esri スペクトル ライブラリー ファイル (.esl) に保存します。 [スペクトル シグネチャー ビューアー] ウィンドウには、シグネチャー ビューアーとスペクトル シグネチャー パネルの 2 つのコンポーネントがあります。

[スペクトル シグネチャー ビューアー] の機能の詳細については、スペクトル シグネチャー ビューアーとスペクトル シグネチャー ウィンドウの操作をご参照ください。
[スペクトル シグネチャー ウィンドウ] について以下に示します。

スペクトル ライブラリーの使用
スペクトル ライブラリーを使用すると、リモート センサーによる画像の解析機能が大幅に拡大します。 画像データを既知のスペクトル シグネチャーとリンクすることで、アナリストはフィーチャやマテリアルをより細かく識別できるようになるので、より定量的なアプローチが可能になります。 スペクトル シグネチャーは、各マテリアルのベースライン参照を提供します。リモート センシングのツールや技法を用い、それに対する偏差を検出、関連付け、計測できます。 これらの偏差により、大気条件 (エアロゾルの含有、拡散、吸収など) の効果と、画像におけるフィーチャやマテリアルのスペクトル応答に影響を与える物理的および環境的要因を評価できます。
アナリストは、以下のような画像解析のために、ライブラリーのスペクトル シグネチャーを使用します:
- 画像のターゲット マテリアルの識別 - スペクトル マッチングでは、スペクトル アングル マッパー (SAM)、スペクトル情報発散 (SID)、正規化スペクトル類似度 (NS3) などの手法を用いて、リモート センシング画像のピクセルのスペクトルをスペクトル ライブラリー内にある既知のシグネチャーと比較します。 詳細については、「スペクトルを使用してターゲットを検出 (Detect Target Using Spectra)」ジオプロセシング ツールをご参照ください。
- 分類するデータをトレーニングする - スペクトル ライブラリーは、教師付き分類器のトレーニングをサポートするための参照データセットとして使用されます。 直接的な現場計測を行えない場合に、グランド トゥルース スペクトルを提供します。
- スペクトル分解およびサブピクセル解析 - マテリアル スペクトルは、アナリストがスペクトル分解を行い、各ピクセル内の異なるマテリアルの部分占有率を推定するのに役立ちます。
- 結果の検証 - スペクトル ライブラリーは分類結果を検証するために使用され、識別されたマテリアルが予想されるスペクトル応答と一致するかどうかを確認します。

スペクトル シグネチャー ライブラリーは、分類およびディープ ラーニング オブジェクト検出のための画像トレーニング データを選択する際に特に有益です。 スペクトル シグネチャーから生成されたトレーニング データは、従来の画像判読方法で収集されたデータと比べ、より純度が高い傾向があります。 この純度は、画像から特定のマテリアル、オブジェクト、フィーチャを検出する上で極めて重要です。 トレーニング サンプルは、ライブラリー内のスペクトル ライブラリー シグネチャーと手動で比較し、検証できます。 ターゲット フィーチャのスペクトル シグネチャーを画像から直接収集し、スペクトル シグネチャーと関連付けることで、画像内のマテリアルやフィーチャを識別および分類できます。
前述のように、ブラウザーとビューアーを使用してスペクトル ライブラリー内のマテリアルのスペクトルを視覚化、計測、解析する能力は、画像解析において多数のオプションを提供します。 さらに、選択したスペクトル シグネチャーを識別して保存できるので、マテリアル スペクトルのカスタム ライブラリーを構築することもできます。 このようなカスタマイズされたライブラリーはさまざまな用途やプロジェクト向けに設計でき、ArcGIS の画像解析ツール、ラスター関数、ワークフロー ウィザードで完全にサポートされています。 スペクトル ライブラリー ファイル (.esl および .sli) と、作成および保存したスペクトル ライブラリーは、スペクトルを使用してターゲットを検出 (Detect Target Using Spectra)、リニア スペクトル分解 (Linear Spectral Unmixing)、ライブラリー スペクトルのリサンプリング (Resample Library Spectra) など、スペクトル ライブラリーの入力を使用するスペクトル解析ツールで使用できます。