時空間キューブの概要

空間データには時間要素が含まれていることがよくあります。 時空間キューブは、この時空間データの 3D 表現です。 時空間キューブでは、空間パターンと時間パターンを分析し、将来の値を予測し、2D および 3D でデータや分析結果を視覚化することができます。

時空間キューブの構造

時空間キューブは位置とビンから構成されます。

位置

位置とは、2D 空間 (x,y) における位置であり、時空間ビンのジオメトリーです。 位置は静的であり、時空間キューブの作成時に定義されます。 これによって、作成される時空間キューブのタイプが決まります。 時空間キューブがグリッド キューブの場合、位置は規則的な形状の四角形または六角形のグリッドによって形成され、定義済み位置のキューブの場合、州のポリゴンや観測所ポイントなどのように、位置が事前に定義されています。

時空間キューブの位置の図

ビン

1 つのビンは 1 つの位置と 1 つの時間ステップを表します。 各ビンには、空間 (x,y) と時間で固定された位置があります。 3 つ目の次元である時間が位置に追加されます。 各ビンは、時空間キューブの作成時に定義された同じ期間を表します。

時空間キューブのすべての位置に同じ数のビンが割り当てられます。 同じ位置にあるビンによって時系列が形成されます。 時空間内の同じ時間にあるビンによってタイム スライスが形成されます。 時空間キューブのビン総数を調べるには、[時空間キューブの記述 (Describe Space Time Cube)] ツールを使用します。

時空間キューブのビンの図

時空間キューブの作成

入力データの形式によって、時空間キューブの作成に使用する方法が決まります。 時空間キューブの作成には次のツールを使用できます。

ポイントの集約による時空間キューブの作成 (Create Space Time Cube By Aggregating Points)

分析範囲全体の各位置で集約したい時間フィールドを含むポイント フィーチャが存在する場合は、[ポイントの集約による時空間キューブの作成 (Create Space Time Cube By Aggregating Points)] ツールを使用します。 このツールによって、グリッド キューブ (フィッシュネットまたは六角形) か、ポイントが集約されるポリゴン (ニューヨーク市の窃盗事件など) を指定した場合には定義済み位置のキューブが生成されます。

ポイントの集約による時空間キューブの作成ツールの図

注意:

このツールは、[入力フィーチャ] パラメーター値としてポイント フィーチャクラスのみを受け付けます。 データがテーブル形式の場合、[XY テーブル → ポイント (XY Table To Point)] ツールを使用してポイント フィーチャクラスを作成します。

各ビンには、ビン内のポイントの数を示す COUNT フィールドが割り当てられます。 各ビンには、入力データセットから属性を集計する追加のフィールドも割り当てられる場合があります。

作成時に時空間キューブに含まれる属性の詳細

ポイントの集約による時空間キューブの作成の詳細

定義済みの位置から時空間キューブを作成 (Create Space Time Cube From Defined Locations)

時間経過に伴って変化しないフィーチャの位置、およびパネル データや場所データなどの時間をかけて収集された属性値または測定値が存在する場合は、[定義済みの位置から時空間キューブを作成 (Create Space Time Cube From Defined Locations)] ツールを使用します。 これにより、定義済みの位置によって構造化されたキューブが作成されます。 時間集約を選択した場合、各期間に、選択した属性の要約統計量が含まれます。 時間集約を選択しなかった場合、各期間に、属性のセットが 1 つ含まれます。

定義済みの位置から時空間キューブを作成の図

定義済みの位置からの時空間キューブの作成の詳細

多次元ラスター レイヤーから時空間キューブを作成 (Create Space Time Cube From Multidimensional Raster Layer)

多次元ラスターの場合、[多次元ラスター レイヤーから時空間キューブを作成 (Create Space Time Cube From Multidimensional Raster Layer)] ツールを使用して、多次元ラスターを時空間キューブに変換します。 セルの形状によって、キューブがグリッド キューブ (正方形セル) になるか定義済み位置のキューブ (四角形のセル) になるかが決まります。

多次元ラスター レイヤーから時空間キューブを作成ツールの図

多次元ラスター ポイントからの時空間キューブの作成の詳細

時空間キューブのタイプ

時空間キューブは、グリッド キューブまたは定義済み位置のキューブのいずれかです。 キューブのタイプは時空間キューブの作成時に決まります。

グリッド キューブと定義済み位置のキューブの主な違いは時空間キューブの構造にあります。 グリッド キューブの位置は、四角形または六角形フィーチャから成る規則的な形状のグリッドによって形成されます。 定義済み位置のキューブでは、位置とその形状に制限はありません。 どちらのタイプの時空間キューブも、「時空間キューブの視覚化」、「時空間パターン分析」、「時系列予測」の各ツールセットのすべてのツールへの入力として使用できます。

注意:

[時空間キューブの記述 (Describe Space Time Cube)] ツールを使用して、既存の時空間キューブのタイプを調べることができます。

グリッド キューブ

グリッド キューブ構造にはロウ、カラム、および時間ステップが含まれます。 ロウ数とカラム数と時間ステップ数を掛け合わせると、キューブ内のビンの総数がわかります。 ロウとカラムによってキューブの空間範囲が決まり、時間ステップによって時間範囲が決まります。 グリッド キューブは常に四角形になります。 ただし、すべての時間ステップについてデータがない位置は視覚化されず、解析には含まれません。

グリッド キューブの図

定義済み位置のキューブ

定義済み位置のキューブ構造には、フィーチャおよび時間ステップが含まれています。 フィーチャ数と時間ステップ数を掛け合わせると、キューブ内のビンの総数がわかります。 フィーチャによってキューブの空間範囲が決まり、時間ステップによって時間範囲が決まります。

多次元ラスター レイヤーから作成された定義済み位置のキューブは、多次元ラスター レイヤーのセルと同じ数のフィーチャを持ち、多次元ラスター レイヤーのディメンションと同じ数の時間ディメンションを持ちます。

空間パターン解析と時間パターン解析

時空間キューブを作成した後、「時空間パターン分析」ツールセットの任意のツールを使用して、空間パターンと時間パターンを見つけることができます。 このツールセットの各ツールでは、解析結果から成るフィーチャクラスが作成されます。 さらに、[変化ポイントの検出 (Change Point Detection)][時空間ホット スポット分析 (Emerging Hot Spot Analysis)][時系列クラスタリング (Time Series Clustering)][時系列相互相関 (Time Series Cross Correlation)][ローカル外れ値分析 (Local Outlier Analysis)] の各ツールでは、元の時空間キューブが解析結果によって更新されます。

ツール説明質問

変化ポイントの検出 (Change Point Detection)

時系列の統計的特性 (平均値、標準偏差、線形トレンド) が時空間キューブの各位置で変化したときの時間ステップを検出します。

  • 時系列の統計的特性 (平均値、標準偏差、線形トレンド) は経時変化するか?
  • 時系列の統計的特性はいつ変化するか?
  • 時系列の統計的特性はどのように経時変化するか?

時空間ホット スポット分析 (Emerging Hot Spot Analysis)

時空間キューブ内のポイント密度 (カウント) または値のクラスタリングを検出してから、各位置でこれらのホット スポットとコールド スポットのトレンドをカテゴリに分類します。 カテゴリには、新規、連続性、増大、持続性、減衰、散発性、振動、および履歴のホット スポットとコールド スポットがあります。

  • 高値と低値はどこでいつクラスタリングしたか?
  • これらのクラスターは統計的に有意か?
  • ホット スポットまたはコールド スポットは所定の位置でどのように経時変化するか?

ローカル外れ値分析 (Local Outlier Analysis)

統計的に有意なクラスターおよび外れ値を空間と時間の両方から特定します。

  • 空間的および時間的なクラスターと外れ値が存在するのはどこか?
  • クラスターと外れ値は統計的に有意か?

時系列クラスタリング (Time Series Clustering)

時系列の特性の類似度に基づいて、時空間キューブに格納された時系列のコレクションを区分します。 時間経過に伴う類似する値がある、同時に増減する傾向がある、類似する繰り返しパターンがあるという 3 つの条件に基づいて、時系列がクラスター化されます。

  • 時空間キューブ内の各位置の時系列特性は類似しているか?
  • 時間が経過しても値が類似している位置、時間が経過しても均衡を保つ位置、または時間が経過しても類似した滑らかな周期的パターンを示す位置はどれか?

時系列の相互相関 (Time Series Cross Correlation)

時空間キューブに格納された 2 つの時系列間のさまざまなタイム ラグにおける相互相関を計算します。

  • ある位置における 2 つの時系列間の相互相関はどの程度か?
  • 相互相関が最も強いラグ (シフト) はいくつか?

時系列予測

時空間キューブを作成した後、「時系列予測」ツールセットのツールを使用できます。 このツールセットには、時空間キューブの各位置における将来の値を推定する 3 つのツールと、予測モデルを比較するモデル評価ツールが 1 つ含まれています。 このツールセットのツールでは、出力フィーチャクラスと、必要に応じて時空間キューブに、予測結果が保存されます。 次の予測ツールを使用できます。

ツール説明

カーブ フィット予測 (Curve Fit Forecast)

シンプルな曲線適合を使用して時系列をモデル化し、時空間キューブ内の各位置における将来の値を予測します。

指数平滑法 (Exponential Smoothing)

Holt-Winters 指数平滑法を使用し、各場所のキューブの時系列を季節的コンポーネントとトレンド コンポーネントに分解して、時空間キューブの各場所における値を予測します。

フォレストベース予測 (Forest-based Forecast)

Leo Breiman と Adele Cutler により開発された教師付き機械学習方法であるランダム フォレスト アルゴリズムを転用してモデルを作成し、時空間キューブの各位置の値を予測します。

位置による予測評価 (Evaluate Forecasts By Location)

時空間キューブの各位置に対して、複数の予測結果から最も正確な予測を選択します。 このツールを使用すると、時系列予測ツールセット内の複数のツールを同じ時系列データで使用し、各位置に対して最適な予測を選択できます。

時空間キューブの視覚化

時空間キューブの視覚化」ツールセットのツールを使用して、時空間キューブ内の解析結果と変数を視覚化できます。 時空間キューブを 2D または 3D で視覚化できます。 結果を 2D で視覚化するには、[時空間キューブを 2D で視覚化 (Visualize Space Time Cube in 2D)] ツールを使用します。 結果を 3D で視覚化するには、シーンを開いて [時空間キューブを 3D で視覚化 (Visualize Space Time Cube in 3D)] ツールを使用するか、[時空間キューブ レイヤーの作成 (Make Space Time Cube Layer)] ツールを使用して時空間キューブ レイヤーを作成します。

注意:

時空間キューブを 3D で視覚化するには、[時空間キューブ レイヤーの作成 (Make Space Time Cube Layer)] ツールを使用することをおすすめします。 [時空間キューブを 3D で視覚化 (Visualize Space Time Cube in 3D)] ツールと [時空間キューブ レイヤーの作成 (Make Space Time Cube Layer)] ツールのどちらを使用しても 3D で時空間キューブを視覚化できますが、時空間キューブ レイヤーの作成ツールで作成された時空間キューブ レイヤーの方が、表示テーマのオプションの数が多く、時空間キューブの視覚化に使用可能な機能が多く備わっています。

時空間キューブを 2D と 3D で視覚化することにより、次の操作を実行できます。

  • 特定の位置における結果を集計し、複数の位置での結果を表示して比較する。
  • 時空間キューブの構造を把握する。
  • データと解析結果を表示および操作して、結果についての理解を深める。

表示テーマ

表示テーマは、時空間キューブに含まれている変数、解析結果、予測結果を視覚化する既定の 2D および 3D シンボルです。 これらの表示テーマによって、解析結果がさらに見やすく、時空間キューブ内のデータをさらに直観的に探索できるようになります。 表示テーマを選択するには、[時空間キューブを 2D で視覚化 (Visualize Space Time Cube in 2D)] ツールまたは [時空間キューブを 3D で視覚化 (Visualize Space Time Cube in 3D)] ツールで [表示テーマ] パラメーターを設定するか、「時空間キューブ リボン」の [テーマ] ギャラリーで表示テーマを選択します。

各タイプの解析に 1 つ以上の表示テーマが存在します。 時空間キューブで使用できるすべての表示テーマのリストを取得するには、[時空間キューブの記述 (Describe Space Time Cube)] ツールを使用します。 次の表に、「時空間パターン分析」ツールセットと「時系列予測」ツールセットのツールで選択可能な表示テーマのオプションを示します。

ツール2D テーマ3D テーマ時空間キューブ レイヤーのテーマ

変化ポイントの検出 (Change Point Detection)

時系列の変化ポイント

時系列の変化ポイント

変化ポイント

時空間ホット スポット分析 (Emerging Hot Spot Analysis)

ホット/コールド スポットのトレンド

ホット/コールド スポットのトレンド

ホット スポット タイプ

ホット スポットの p 値

ホット スポットの Z スコア

ローカル外れ値分析 (Local Outlier Analysis)

ローカル外れ値分析の結果

ローカル外れ値のパーセンテージ

最新期間のローカル外れ値

空間近傍のない場所

クラスター/外れ値分析の結果

ローカル外れ値タイプ

Local Moran's I

ローカル外れ値の Z スコア

ローカル外れ値の p 値

時系列クラスタリング (Time Series Clustering)

時系列クラスタリングの結果

時系列の相互相関 (Time Series Cross Correlation)

時系列相互相関の結果

カーブ フィット予測 (Curve Fit Forecast)

データ トレンドの位置

予測結果

時系列外れ値の結果

予測結果

時系列外れ値の結果

予測結果

残差値

時系列の外れ値

指数平滑法 (Exponential Smoothing)

予測結果

時系列外れ値の結果

予測結果

時系列外れ値の結果

レベル コンポーネント

トレンド コンポーネント

季節コンポーネント

レベル + トレンド コンポーネント

予測結果

残差値

時系列の外れ値

フォレストベース予測 (Forest-based Forecast)

予測結果

時系列外れ値の結果

予測結果

時系列外れ値の結果

予測結果

残差値

時系列の外れ値

位置による予測評価 (Evaluate Forecasts By Location)

予測結果

予測結果

予測結果

残差値

2D と 3D での時空間キューブの視覚化の表示テーマの詳細

時空間キューブ レイヤーの視覚化の表示テーマの詳細

ユーティリティー

ユーティリティー」ツールセットには、時空間キューブを作成する前にデータを準備し、時空間キューブのコンテンツをまとめ、既存の時空間キューブのサブセットを作成して新しい時空間キューブを作成するのに役立つツールが含まれています。

欠損値の補完ツール

データに NULL 値が含まれることがあります。 NULL 値があると、分析結果に悪影響が及ぶことがあります。 たとえば、欠損値があるフィーチャは、解析から除外されます。 時空間キューブを作成する際に、サマリー フィールド レコードに NULL 値が存在するフィーチャは、出力キューブから除外されます。 これらの入力フィーチャを除外する代わりに、[欠損値の補完 (Fill Missing Values)] ツールを使用して既存のデータに基づき、欠損しているデータ値を推定できます。 グローバル統計、空間近傍、または時空間近傍を使用して欠損値を補完できます。

注意:

時空間キューブを作成する前に、入力データ内の欠損値に対処することをおすすめします。 入力フィーチャ レイヤーから「データ エンジニアリング ビュー」を開き、各フィールドの NULL 値を特定して補完できます。

時空間キューブの記述 (Describe Space Time Cube)

時空間キューブには、次のようなさまざまな形式があります。

  • グリッド キューブ、定義済み位置のキューブ、予測キューブ
  • 1 つの変数または複数の変数を含む
  • 1 つの解析結果または複数の解析結果を含む
  • 短時間 (1 日など) または長時間にわたる期間
  • 小さな領域 (近傍など) または大きな領域 (世界など) の全体に広がる
時空間キューブのコンテンツと特性を理解することが重要です。 時空間キューブとそのコンテンツをまとめるには、[時空間キューブの記述 (Describe Space Time Cube)] ツールを使用します。

時空間キューブのサブセット ツール

[時空間キューブのサブセット (Subset Space Time Cube)] ツールは、選択したサブセット方法と条件に基づき、少ない時間ステップと位置で新しい時空間キューブを作成します。 時間ステップ間隔や位置ジオメトリーを含むビンの構造は変更されません。

その他のツール

時空間パターン マイニング」ツールボックスには、時空間キューブの解析に使用できるツールが多数含まれていますが、時空間キューブを作成する前に、データの準備、平滑化、または変換が必要になる場合があります。 「空間統計」ツールボックスに含まれるいくつかのツールは、[時系列の平滑化 (Time Series Smoothing)] ツールや [率の計算 (Calculate Rates)] ツールなど、データの処理に役立ちます。

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