テレイン スキーマ プロパティ

テレイン データセットのプロパティは、テレイン データセットの作成過程でさまざまなステージを通して設定されます。テレイン データセットのスキーマ プロパティを以下に示します。

平均ポイント間隔

テレイン データセットを作成するときには、入力測定値の平均ポイント間隔を指定する必要があります。テレイン データセットはこの情報を使用して、入力計測値を分割するための水平タイル システムを定義します。平均ポイント間隔は、ポイントをバインド (グループ化) して仮想タイル システムを作成する手段として使用されます。タイル システムの原点は、フィーチャクラスのドメインに基づきます。ターゲット フィーチャ データセットの横方向の単位で間隔を指定します。このシステムは、空間検索のパフォーマンスを向上させるためにテレインによって使用されるメカニズムの 1 つです。データを処理しやすいまとまりに分割する手助けにもなります。ほとんどの場合、タイル システムはテレインによって内部で管理されます。そのため、このデータをユーザー自身でタイル分割してチャンクに切り分ける手間はかかりません。

通常、平均ポイント間隔はデータ取得プロセスの一部として定義され、メタデータとして記録されます。データの平均ポイント間隔がわからない場合は、明示的に決定する必要があります。テレインの平均間隔には、ポイントや頂点間の最も一般的な距離を表すものを使用するのが最も効果的です。たとえば、0.2 メートルだけ離れたポイントと 5 メートル離れたポイントがいくつかあるものの、大部分のポイントが約 2 メートルの間隔であるという場合は、その値を指定する必要があります。範囲外データによる影響は、ほとんどあるいはまったくありません。解像度の異なるデータセットからのデータを処理する場合は、関与するすべての使用データセットからの最小ポイント間隔を使用します。[ポイント ファイルの空間統計情報 (Point File Information)] ツールを使用します。

標高値のソース

フィーチャクラスをテレインに追加する際、フィーチャクラスが z 値を持つかどうかを指定し、z 値を持つ場合はそのソースも指定する必要があります。3D フィーチャの場合、z 値は Shape ジオメトリとともに存在します。ジオメトリへの参照である [Shape] フィールドをソースとして指定します。ArcGIS Pro でフィーチャクラスの [レイヤー プロパティ] ダイアログ ボックスの [ソース] タブを調べると、フィーチャクラスが 3D かどうかがわかります。

サーフェス フィーチャ タイプ (SF タイプ)

フィーチャクラスをテレインに追加する際には、そのサーフェス フィーチャ タイプ (SF タイプ) を指定する必要があります。これは、フィーチャクラスがテレイン データセット サーフェスの定義において果たす役割を設定します。マスポイント、ブレークライン、および複数のポリゴン タイプがあります。ブレークラインとポリゴンには、ハードおよびソフトの定義もあります。これらは、サーフェスがフィーチャ上で滑らかに交差する (ソフト) か、鮮明な途切れが生じる可能性がある (ハード) かを Natural Neighbor 内挿法に示します。テレイン データセットは、さまざまなタイプのデータから作成することができます。これには、LIDAR や SONAR による測量から得られたポイント、ステレオ写真から得られたブレークラインやポイント、その他さまざまな形式の測量データがあります。サポートされるジオメトリ タイプは、ポイント、マルチポイント、ライン、およびポリゴンです。

マスポイント

ポイントおよびマルチポイント フィーチャクラスは、標高点としてのみ表現することができます。標高点サーフェス フィーチャ タイプは、複数のポイントを 1 つのレコードに保管するために使用されます。ポイントは、局所的な最高点、最低点、最高でも最低でもなく単に規則的間隔でサンプリングされた地点、などを記録したものです。LIDAR などの新しいセンシング技術により、大規模な標高点配列の生成が可能となり、そこから高解像度のテレイン データセットの構築が可能となりました。多くの場合、LAS などのデータ ファイル形式をジオデータベース内のマルチポイント フィーチャクラスに読み込み、テレイン データセットを構築するためのデータ ソースとして使用することができます。LAS データセットをジオデータベースに読み込むための [LAS → マルチポイント (LAS to Multipoint)] ジオプロセシング ツールが用意されています。

ブレークライン

ブレークラインの各頂点には高さ (Z) 値が記録されています。これらは 1 つ以上の三角形のエッジの連続です。通常、ブレークラインは尾根や河川などの自然物か、道路などの建設物を表します。

クリップ ポリゴン

クリップ ポリゴンは、テレイン サーフェスの境界線を定義するために使用されます。これらはデータ エリアの形状が不規則な場合に必要となります。クリップ ポリゴンがなければ、データ エリアは凸包になります。

イレース ポリゴン

イレース ポリゴンはテレインに穴を空けます。つまり、テレイン内の特定のエリアを、何のデータも存在しない、内挿処理などからは除外されるべきエリアとしてマーキングします。イレース ポリゴンが適用されたエリアは何もない空間として表示され、解析では NoData エリアとして扱われます。

置換ポリゴン

置換ポリゴンは、高さが一定であるエリアを定義します。通常は、水域または平坦な人工フィーチャを表すために使用されます。平坦なものとして扱いたいエリアでも、エリア内での高さの計測値はばらついていることがあります。それを、置換ポリゴンを使用して平らにならすことができます。エリア内の高さの計測値に問題がないことがわかっている場合は、置換ポリゴンではなくブレークラインを追加します。そうすると、三角網生成で必要な作業が少なくなります。また、ブレークラインのほうが速く追加されます。

ハードまたはソフト サーフェス フィーチャ タイプ (SF タイプ)

ハードおよびソフト修飾子は、サーフェス上のそれぞれの場所で傾斜角に明確な途切れが生じるかどうかを示すために、ラインおよびポリゴン フィーチャ タイプで使用されます。この情報は、Natural Neighbor 内挿法のロジックに影響します。ハード ラインやハード ポリゴン境界線と交差する場合を除き、テレイン サーフェスは滑らかであると解釈されます。

標高点以外のすべてのサーフェス フィーチャ タイプ (SF タイプ) で、ハードとソフトの区別がサポートされます。ハード フィーチャの例としては、湖の汀線、河川、建設用地、道路の縁石、切通しなどが挙げられます。ソフト フィーチャの例としては、調査対象地域を囲む境界線、なだらかな地形での尾根線や谷線、隙間エリアの境界線、コンターなどが挙げられます (コンターは標高点として追加することもできます)。

テレイン ピラミッド

ピラミッドは、一部のアプリケーションにおいて処理効率向上を図るためにテレイン データセット用に生成される詳細レベルです。ピラミッドは、縮尺による一般化の一形式として使用されます。ピラミッド レベルは、精度要件が縮尺によって緩和されることを利用します。それらの概念と目的はラスター ピラミッドと似ていますが、実装は異なります。

テレイン ピラミッドは、ポイントの間引きと呼ばれるポイント削減プロセスを通じて生成されます。これにより、特定のエリアのサーフェスを表すために必要な計測値の数を削減します。ピラミッド レベルごとに使用される計測値が少なくなり、それに応じてサーフェスの表示に必要な精度要件が低下します。元のソース計測値も低解像度ピラミッドで使用されますが、その数は少なくなります。ピラミッドには、リサンプリングしたデータ、平均化したデータ、または派生したデータは使用されません。

テレインのオーバービュー

テレインのオーバービューは、テレイン データセットの最も解像度の低い表現であり、小さな縮尺で高速に描画することを目的としています。オーバービューは、テレイン データセットの範囲全体を表示するときにデフォルトで描画されるものです。オーバービューは、ベクター ベースのサムネイル表現です。ポイント ベースのデータ ソースは、テレインのオーバービューで常に使用されます。テレインに属する他のフィーチャクラスは、作成プロセスでそれぞれのプロパティを TRUE に設定することによって、オーバービューに表示することができます。オーバービューに表示する必要のあるフィーチャクラスのみを TRUE に設定します。たとえば、詳細なブレークラインは必要ないと思われますが、特にデータ境界が不規則な形状の場合には、クリップ ポリゴンが必要になる可能性があります。境界が詳細な場合はそれを一般化し、より低解像度の表示をオーバービューに使用します。より詳細なピラミッド レベルでは、詳細なバージョンを使用する必要があります。

グループ

グループは、ラインおよびポリゴン フィーチャの複数の詳細レベルを定義するために使用されます。テレインには、ラインやポリゴンを自動的に一般化する方法がないので、これを事前に行い、フィーチャの使用方法をグループ定義を通じてテレインに知らせる必要があります。

たとえば、大きな縮尺でのみ使用すべき、非常に詳細なクリップ ポリゴン フィーチャクラスがあるとします。[ポリゴンの単純化 (Simplify Polygon)] ツールを使用して、小さい縮尺で使用するための一般化されたバージョンを 1 つか 2 つ作成し、グループを定義するとができます。各ポリゴン フィーチャクラスに同じグループ ID を割り当てることにより、それらが同じ主題 (調査対象地域境界など) に属することをテレインに知らせます。そして、それぞれが使用されるピラミッド レベルを表すために、さまざまな解像度範囲を割り当てます。各ポリゴン フィーチャは同じものを異なる詳細レベルで表すため、重複のないさまざまなピラミッド レベルで適用する必要があります。同じグループ ID を持つ複数のフィーチャクラスを検出した場合、テレインはそれらが異なるピラミッド レベルに属していることを確認します。テレイン データセットにはポイントまたはマルチポイントを一般化する手法があるので、それらはグループ化されません。

埋め込みフィーチャクラス

テレイン ピラミッドに大量の格納領域が必要になることがあります。そのサイズは、テレインに属するフィーチャクラス内のジオメトリのサイズとほぼ同じです。一般に、LIDAR または SONAR のように大量のポイントを表す場合、格納のコストが高くなりすぎることがあります。このような場合は、大きなマルチポイント フィーチャクラスをテレイン データセットに埋め込むと、格納領域が節約できます。

マルチポイント フィーチャクラスを埋め込むと、そのジオメトリ (およびオプション) で LAS LIDAR 属性がテレイン ピラミッド構造に直接コピーされます。このコピーは構築プロセスで実行されます。テレインの構築後、フィーチャクラスはポイントのコンテナーとなるので、ソース フィーチャクラスは参照されなくなります。そのフィーチャクラスは削除可能なので、格納領域を回収することができます。スキーマの編集を伴うその後の構築では、処理のためにほぼ同じ領域が一時的に必要になることに注意してください。

ピラミッド解像度範囲

最小および最大の解像度範囲は、ポリラインまたはポリゴンのサーフェス フィーチャ タイプとして追加されたフィーチャクラスに使用されます。これらの解像度範囲は、サーフェスでフィーチャに適用されるピラミッド レベルの範囲を定義します。テレインのピラミッド レベルの解像度を考慮し解像度閾値を指定します。

固定ポイント

アンカーは、テレイン データセットのすべてのピラミッド レベル全体にわたって維持されています。これらはフィルター処理および間引きの対象外です。このため、ピラミッド レベルをどんな解像度で使用するかに関係なく、テレイン サーフェス内にアンカーを確実に表示できます。このことは、表示と解析の両方の処理に当てはまります。

アンカー ポイントがサポートされている意図は、テレイン内に常時存在するコントロール ポイント、ベンチマーク、および高品質な測深値など、重要な計測値の比較的小規模なコレクションを保存するオプションを提供することです。応用例の 1 つとして、ナビゲーション セーフティが挙げられます。これは、一般化されたピラミッド レベルを解析に使用することにより、険しい山頂 (大気) とシャロー フィーチャ (水) をサーフェス モデル内に確保しながら、他の重要性の低い情報と一緒に除外されないようにしたものです。

アンカー プロパティは、テレイン データセットに追加されている場合、ポイント フィーチャクラスに割り当てることが可能です。マルチポイント フィーチャクラスは、到達しうるサイズ上の理由からアンカー ポイントとしてはサポートされません。このプロパティを変更するには、フィーチャクラスをいったん除去してから、別の設定値を使用して追加し直します。

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