Spatial Analyst のライセンスで利用可能。
パスを使用し、最適な方法で位置を接続するには、[最適リージョン接続 (Optimal Region Connections)]、[最適パス (ライン) (Optimal Path As Line)]、[最適パス (ラスター) (Optimal Path As Raster)] ツールを使用します。 ただし、狭いポリラインや、幅 1 セル分のパスに限定されない結果が必要な場合もあります。 位置間の移動にかかる総コストが特定の閾値以下の、幅広の 2D エリアが必要であるとします。 このエリアを「コリドー」と呼びます。
最適パスを所定の距離でバッファーしてエリアを生成できます。 しかし、この手法では、移動者にとって重要な条件を適切に反映できないことがあります。 たとえば、最適パスを囲むシンプルなバッファーに工業団地が含まれている場合、そのエリアを野生動物のコリドーに含めるには不適切です。 位置をつなぐコリドーの幅は、位置間で実際の累積コストがセルによって変動するのに応じて変わります。 工業団地は野生動物にとって高コストになるため、そのエリアはコリドーに含まれません。
コリドーは、所定の累積コスト以下の、可能なすべてのコスト パスを網羅します。 [コリドー (Corridor)] ツールは、ソース間で作成された累積コストの合計を計算します。 その結果から、コスト閾値以下の値を持つセルを選択し、コリドーを定義します。
コリドーの用途の例
コリドーは、以下のようなさまざまなシナリオで解析を解決するために使用されます。
- シカ保全計画で、シカ生息地の 2 つのパッチを最適なコリドーで接続する。
- 地下パイプライン候補の可能なルートを特定する。
- 2 つの公園を接続するときに、サイクリング ロード候補を敷設できるエリアを決定する。
コリドー解析
距離の解析は、概念的に、次の関連機能領域に分けることができます。
- 直線距離を計算し、必要に応じて、バリアまたはサーフェス ラスターを使用して計算を調整します。
- 必要に応じて、コスト サーフェス、ソース特性、垂直方向ファクター、および水平方向ファクターにより、その距離に達する速度を決定します。 累積距離ラスターを作成します。
- 最適ネットワーク、特定のパス、またはコリドーを使用し、生成される累積距離サーフェス上で領域を接続します。
以下の図に示すように、3 つ目の機能エリアから、コリドーを使用して位置を接続します。
新設された公園 (明るい緑のポリゴン) にはクマの集団が生息しています。また、4 つの管理事務所のうちの 1 つ (黄色のポイント) の周辺エリアには、2 つ目の集団が生息しています。 コリドーにより、クマが 2 つの位置間を移動できるようになります。
コリドー マップから閾値を指定し、それをもとにコリドーの幅を決定します。
コリドーの作成
2 つのソース間のコリドーを特定するための一般的な処理は以下のとおりです。
- 1 つ目のソース位置から、分析範囲のその他すべてのセルまでの累積距離を計算します。
- 2 つ目のソース位置から、分析範囲のその他すべてのセルまでの累積距離を計算します。
- 各セルに対し、2 つのソース間の累積距離の合計を計算します。
- 2 つのソース間の合計累積距離が、所定の閾値以内であるセルを特定します。
コリドーの結果を作成するには、次の手順を実行します。
1 つ目のソースの距離累積を計算します。
- [距離累積 (Distance Accumulation)] ツールを開きます。
- [入力ラスター、またはフィーチャ ソース データ] パラメーターに、ソースとして接続する最初の位置 (Source A) を指定します。
- Source A の出力距離ラスターに名前を付けます。
- [入力コスト ラスター] パラメーターでコスト ラスターを指定します。
移動者の方向は、コリドーに組み込むことはできません。 したがって、垂直方向ファクター、水平方向ファクター、または[移動方向] ソース特性パラメーターの値を指定してはなりません。
- [実行] をクリックします。
- [距離累積 (Distance Accumulation)] ツールを開きます。
- [入力ラスター、またはフィーチャ ソース データ] パラメーターに、ソースとして接続する 2 つ目の位置 (Source B) を指定します。
- Source B の出力距離ラスターに名前を付けます。
- 手順 4 に従って、同じパラメーターを指定します。
- [実行] をクリックします。
- [コリドー (Corridor)] ツールを開きます。
- 手順 5 で作成した最初の位置 (Source A) の出力を、[入力コスト距離ラスター 1] パラメーター値として指定します。
- 手順 10 で作成した 2 つ目の位置 (Source B) の出力を、[入力コスト距離ラスター 2] パラメーター値として指定します。
- 出力コリドー ラスターに名前を付ける
- [実行] をクリックします。
- [ラスター演算 (Raster Calculator)]、[属性で抽出 (Extract by Attributes)]、または [Con] のいずれかのツールを開きます。
- 手順 15 で、[コリドー (Corridor)] ツールで作成した出力ラスターを入力として使用します。
- 閾値を指定します。
- 出力ラスターに名前を付けます。
- [実行] をクリックします。
最小コスト コリドーによる位置の接続
コリドーは、2 つのソース位置を接続する最小コスト地理エリアを定義します。 ソース間のすべての無方向性コスト パスが含まれています。これらのコスト パスは所定の累積コスト以下です。 そこに含まれるコリドーとパスが無方向性なのは、ソース間の移動方向がどちらでもかまわないからです。
コリドー作成処理
コリドー ラスターを作成するには、2 つのデータセットが必要です。1 つは最初のソース位置を定義するデータセットで、もう 1 つは 2 つ目の位置を定義するデータセットです。 [距離累積 (Distance Accumulation)] ツールを使用し、最初のソースの累積コスト ラスターを作成します。 次に、同じツールを使用して、2 つ目の位置の累積コスト ラスターを作成します。 これら 2 つの結果を [コリドー (Corridor)] ツールへの入力として使用します。これにより、2 つのソース間の累積コストの合計が作成されます。 最後に、許容可能な閾値を特定し、その閾値以下のセルのみを選択して、最終的なコリドー ラスター結果を作成します。
コリドーの方向性と閾値
コリドーは無方向性なので、1 つのソースから別のソースへの移動にかかるコストは、2 つ目のソースから最初のソースに戻る場合と同じです。 ただし、[距離累積 (Distance Accumulation)] ツールの両方の実行に対し、同じ設定を使用することが重要です。
コスト サーフェスとサーフェス ラスターを使用すると、距離をより複雑にモデル化できるようになります。 ただし、垂直方向ファクター、水平方向ファクター、または移動方向ソース特性は移動方向に依存するため、これらのパラメーターは使用できません。
以下の図に、送電線プロジェクト案に対して作成されたコリドーの例を示します。 コリドーのコストを評価するための唯一の基準は、土地買収コストです。 最終的なコリドー (明るい赤) には、最小コスト パス (濃い赤のライン) よりも最大で 10% 高いコストがかかっているすべてのパスが含まれています。 コリドーの幅はラインに沿って変化し、コリドーは所々で顕著に分岐します。 最小コスト パスの周辺に固定幅のバッファーが生成された場合は、異なる結果となります。
合計累積コストが、最小コスト パスよりも最大で 10% 大きいすべてのセルを選択すると、結果は 10% コスト コリドーとして解釈できます。
コリドー幅
通常、コリドーの狭い部分は、コリドーがコストの影響を最も受けやすいエリアを表します。これらの部分を通過するルートのオプションはあまりありません。 送電線の例を見ると、コリドーの狭い部分は最初に購入するべき位置を表します。これは、コリドーのその部分では、送電線を設置できる余地が少ないからです。 これらのエリアは、コリドーにおいて最も重要な位置となります。
野生動物のコリドーの場所を決定する際、コリドーの狭い部分は、動物が地表を移動するときに最もリスクが高い場所を表すことがあります。 野生動物がこれらの場所を通過できるオプションが少ないため、これらの狭いエリアを保護することが最も重要になります。
コリドー幅の重要性を視覚化する方法として、谷間を流れる河川が挙げられます。 谷間が広い平地であれば、河川はさまざまな流路でその部分を通過できます (抵抗を最小限に抑える)。 洪水が起こると、河川が堤防からあふれて広くなり、場合によっては流路が変わることもあります。 しかし、谷間が峡谷に向かって狭くなり、両側に急峻な壁がそびえ立つ部分では、河川が流路を変えられる余地はなくなります。 峡谷の狭い部分周辺のコストは、高くなると見なすことができます。 この概念を視覚的に理解するには、以下の「参考情報」セクションをご参照ください。 この図では、最小コスト パスは河川で、さまざまなコスト閾値は等高線として表されます。
適切な閾値
閾値は、コスト サーフェスの単位に依存します。 ドル単位のコストは、定義しやすい単位の 1 つです。 ただし、野生動物のコリドーにおいてコスト単位が優先される場合は、閾値の判断には困難が伴います。 生物学的な閾値と主観的な優先コスト単位の関連付けは、正当化がさらに難しくなります。
このような場合は、適切な幅を得られるまで、複数の閾値が試されます。 可能であれば、閾値を客観的な基準で導き出すことが理想です。
コリドーの島
指定された閾値によって、上記の送電線のコリドーの例のように、コリドーが枝分かれしていて不連続であるエリアでは、生成されるコリドーに島が作成されることがあります。 島のセルの累積コストは高くなり、コリドーはその周囲を迂回することになります。
複数のソース位置
入力累積コスト ラスターの作成に使用される一意のソースの数は、必ずしも 1 つだけとは限りません。 複数のソースを [距離累積 (Distance Accumulation)] ツールに入力できます。 ソース間の累積コスト値と指定された閾値によって、単一のコリドーだけではなく、ソース間で複数のコリドーを作成できます。
セルごとにコリドーを計算
以下の図に、単独のセル位置に対してコリドーを作成する方法を示します。 この処理は、入力ラスターの各セルに対して行われますが、ここではデモ目的のため 1 つのセルのみを示します。
コリドーを作成するには、[距離累積 (Distance Accumulation)] ツールを使用して 2 つのコスト累積ラスターを作成します。1 つ目はソース A、もう 1 つはソース B からです。
[コリドー (Corridor)] ツールは、2 つの累積コスト サーフェスの合計値を計算します。
出力ラスターは 2 つのソース間の 1 つの最小コスト パスを定義するわけではなく、ソース間の累積コストの範囲を特定します。 つまり、ソース A に到達するための最小累積コストと、ソース B に到達するまでの最小累積コストの和は、セルを通過するパスの合計累積コストに等しいということです。 パスがソース A とソース B 間のセルを通過する場合は、最小累積コストになります。
ここで閾値を指定し、コリドーの幅を決定します。
所定の閾値以下の累積コスト値を持つすべてのセルがラスターから選択され、コリドーが作成されます。 閾値を適用すると、生成される出力は最小コスト パス (単独のライン) ではなく、セルの最小コスト コリドーとして見なされます。
コリドーの解釈
コリドーの幅は、そのラインに沿って大幅に変動します。 最小コスト パス周辺の固定距離のバッファーではありません。 必要な最小幅を定義し、一連の最小コスト パスが許容可能なコリドーを形成するかどうかを決定します。
コリドーは、最小コスト パスの位置の不確実性を示すという考え方もできます。 ある最小コスト パス周辺の 10% コリドーは、コストの高さが最小コスト パスの 10% 以内のすべてのパスを視覚的に表現したものです。
コリドーは、最小コスト パスが位置における変化の影響を受けやすい部分を示すことができます。 上記の送電線の例でみると、コリドー上部の幅広のエリアは安価な土地にあるため、コストに多大な影響を及ぼすことなく、そのエリア内でパスの位置を変える選択肢が多くなります。 反対に、コリドー中間の狭い部分では、代替的な最小コスト パスは空間的に制限があり、選択肢はほとんどありません。
参考情報
以下のセクションでは、位置をコリドーで接続するための追加情報を提供します。
コリドー閾値を定義するための代替的なツール
条件句を使用してコリドーの幅を定義する閾値は、いくつかのツールで指定できます。 以下に、その 3 つについて説明します。 閾値は、100 累積コストです。
Con ツール
[Con] ツール ([条件] ツールセット) を、次の設定で使用します。
- [Con] ツールを開きます。
- [コリドー (Corridor)] の出力を [入力条件付きラスター] パラメーターとして指定します。
- [式] パラメーターでステートメント「"Value < 100"」を構築します。
- [式が TRUE のときの入力ラスター、または低数値] パラメーター値に「100」を指定します。
- [条件式が FALSE のときの入力ラスター、または低数値] パラメーターは空のままにしておきます。
- 出力ラスターに名前を付けます。
- [実行] をクリックします。
[属性で抽出 (Extract By Attributes)] ツール
[属性で抽出 (Extract by Attributes)] ツールを次の設定で使用します。
- [属性で抽出 (Extract By Attributes)] ツールを開きます。
- [コリドー (Corridor)] ツールの出力を [入力ラスター] パラメーター値として指定します。
- [Where 句] パラメーターで「"Value < 100"」を構築します。
- 出力ラスターに名前を付けます。
- [実行] をクリックします。
Test ツール
[Test] ツールを次の設定で使用します。
- [Test] ツールを開きます。
- [コリドー (Corridor)] ツールの出力を [入力ラスター] パラメーター値として指定します。
- [Where 句] パラメーターでステートメント「"Value < 100"」を構築します。
- 出力ラスターに名前を付けます。
- [実行] をクリックします。
コリドーの理解
2 つの距離累積ラスターを足し、閾値を設定することでコリドーが作成される理由を理解するために、最もシンプルな幾何的なケースを見ていきましょう。 直線は、平面上の 2 つのポイント間の最小コスト パスです。 ポイント C がそのライン上にある場合、AC + CB = AB となります。 これをコリドーの用語で表現すると、C から A、および C から B への累積コストの合計は一定であるとともに、最小となります (線 AB の長さ)。 その結果、直線は A と B 間の 0% コリドーとなります。 これは、逆方向ラスターを必要としない最小コスト パスを作成する、もう 1 つの方法でもあります。
C がラインから離れると (最小コスト パスから離れる)、AC が C から A への新しい最小コスト パスとなり、CB が C から B への最小コスト パスになります。 その結果、AC + CB > AB となります。 同一の合計コストを持つすべてのポイントが、元の最小コスト パス周辺で楕円を形成します。 C から A と B を接続するすべての最小コスト パスは、コリドーに含まれています。 コリドーの用語で表現すると、楕円とは最小コスト パス周辺の X パーセント コリドーです。 送電線の例でも見たように、コリドーの始点では、最小コスト パス周辺の最小コスト コリドーは、そのパス周辺の固定幅バッファーと異なります。
これは、より一般的な最小コスト パスを処理する場合にも当てはまります。 0% コリドーは最小コスト パスと同じです。閾値コリドーが大きくなると、そのコリドー内のすべてのセルとすべてのパスを含むコンター ループが形成されます。
移動方向が最小コスト パス解析において重要ではない場合は、コリドーを使用して、最小コスト パスの不確実性や、最小コスト パス周辺の許容可能なコスト閾値以内に配置できる代替的な無方向性パスのすべての位置を視覚化できます。
コリドーの視覚化
コリドーを 3D 表示すると、洞察と新たな視点を得ることができます。 最小コスト パスは、合計累積コスト入力サーフェスから構築された、峡谷の比較的なだらかな面になり、さまざまな X パーセント コリドーが峡谷の壁の等高線を形成します。 峡谷の壁の任意のポイントから下降して、ソースを得る必要があります。つまり、そのパーセントのコリドー以内であることを示す等高線よりも下側にいなくてはならないということです。
送電線の例において、コリドーの幅広の部分は、上記の画像で幅広く平らな窪地内にあります。 累積コストを追加で費やせる場合は、閾値を増やすことができます。 幅広い窪地では、コリドーの幅が非常に大きくなるため、パスの経路の選択肢が多くなります。 峡谷の壁は、その投資があまり効果をなさない部分を指します。