管理者としてさまざまなバージョンを操作して、利用可能な機能を理解するうえで、ArcGIS クライアント、ジオデータベース、およびユーティリティ ネットワーク データセットのバージョン間の互換性を認識することは重要です。
サービスベースのアーキテクチャを使用しているユーティリティ ネットワークのエンタープライズ配置では、ArcGIS Pro および ArcGIS Enterprise のリリースとユーティリティ ネットワークのバージョンに応じて、利用できる機能が異なります。 ユーティリティ ネットワークのシングルユーザー配置では、機能は、ArcGIS Pro のリリースとユーティリティ ネットワークのバージョンによって異なります。 必須ではありませんが、これらのソフトウェアは、連携して動作するように設計されているので、可能な限り、バージョンを同期しておくことをお勧めします。
ユーティリティ ネットワーク バージョン
[ユーティリティ ネットワーク バージョン] 値は、ユーティリティ ネットワーク データセットのスキーマ バージョンを示し、[ユーティリティ ネットワーク プロパティ] ダイアログ ボックスのネットワーク プロパティ タブにある [一般] セクションに記録されます。
次の表は、ユーティリティ ネットワーク データセットを作成またはアップグレードする場合に、さまざまなリリースの ArcGIS Pro および ArcGIS Enterprise で作成されるユーティリティ ネットワークのバージョンを示しています。
| ユーティリティ ネットワーク バージョン | 互換性のある ArcGIS Pro バーション | 互換性のある ArcGIS Enterprise バーション |
|---|---|---|
3 | 2.4 以降 | 10.7 以降 |
4 | 2.6 以降 | 10.8.1 以降 |
5 | 2.7 以降 | 10.9 以降 |
6 | 3.0 以降 | 11.0 以降 |
7 | 3.3 以降 | 11.3 以降 |
ユーティリティ ネットワークの作成またはアップグレード
ユーティリティ ネットワークは、エンタープライズ ジオデータベース、ファイル ジオデータベース、またはモバイル ジオデータベースに作成できます。 エンタープライズ ジオデータベース内にユーティリティ ネットワークを作成するには、データベース プラットフォームが最小リリースを満たしている必要があります。 詳細については、ArcGIS Pro のデータベース要件をご参照ください。
| データベース プラットフォーム | 最小リリース |
|---|---|
| SQL Server | SQL Server 2017 |
Oracle 19.3.0.0 | |
| PostgreSQL | PostgreSQL 13.13 |
| SAP HANA | SAP HANA 2.0 SPS 05 |
情報モデルで、スキーマの変更により導入された新しい機能を利用するには、ユーティリティ ネットワーク データセットをアップグレードする必要があります。 エンタープライズ配置を操作する場合、ArcGIS Pro と ArcGIS Enterprise のバージョンと、現在の [ユーティリティ ネットワーク バージョン] の値によって、アップグレードが可能かどうかが判断できます。
すべての ArcGIS Pro および ArcGIS Enterprise リリースで、スキーマの変更が導入されるわけではなく、新しいリリースに移行する際に、ユーティリティ ネットワーク データセットのアップグレードが必要なわけではないことに留意してください。 アップグレードするだけで、新しいユーティリティ ネットワーク バージョンの新バージョンで導入された機能を利用できます。
- エンタープライズ配置を使用する場合、ArcGIS Pro のバージョンとポータルのフェデレーション サーバーを使用して、互換性のある [ユーティリティ ネットワーク バージョン] 値が決定されます。
- さまざまなバージョンの ArcGIS Enterprise がインストールされた複数コンピューターの配置を使用する場合、ポータルのフェデレーション サーバーがすべてチェックされ、使用可能な最新リリースと互換性のあるユーティリティ ネットワークのバージョンが作成されます。
- ユーティリティ ネットワークのシングルユーザー配置を使用する場合、ArcGIS Pro のバージョンのみが互換性のある [ユーティリティ ネットワーク バージョン] 値を決定します。
- 移行を計画しているシングルユーザー配置で、ユーティリティ ネットワークを作成する場合、使用される ArcGIS Pro のリリースで、ターゲット ArcGIS Enterprise リリースと互換するユーティリティ ネットワークのバージョンが作成されることを確認してください。
上記のマトリックスを使用すると、次のシナリオで、作成時とアップグレード時に、[ユーティリティ ネットワーク バージョン] の値がどのように決定されるかを理解できます。
- ArcGIS Pro 3.3 および ArcGIS Enterprise 11.3 のエンタープライズ配置で、ユーティリティ ネットワークを作成すると、[ユーティリティ ネットワーク バージョン] 7 が作成されます。
- ArcGIS Pro 3.1 および ArcGIS Enterprise 11.3 のエンタープライズ配置で、ユーティリティ ネットワークを作成すると、[ユーティリティ ネットワーク バージョン] 6 が作成されます。
- ArcGIS Pro 2.9 および ArcGIS Enterprise 10.8.1 のエンタープライズ配置で、ユーティリティ ネットワークを作成すると、[ユーティリティ ネットワーク バージョン] 4 が作成されます。
- たとえば、ArcGIS Pro 2.9 は、バージョン 5 の作成をサポートしますが、ArcGIS Enterprise 10.8.1 がサポートする最高バージョンは、バージョン 4 です。
- ArcGIS Pro 3.3 および ArcGIS Enterprise 11.1 を使用して、エンタープライズ配置の [ユーティリティ ネットワーク バージョン] 3 をアップグレードすると、[ユーティリティ ネットワーク バージョン] 6 が作成されます。
- ArcGIS Pro 3.1 のシングルユーザー配置で、ユーティリティ ネットワークを作成またはアップグレードすると、[ユーティリティ ネットワーク バージョン] 6 が作成されます。
ユーティリティ ネットワークの利用と操作
さまざまなバージョンおよびユーティリティ ネットワークを操作する場合の原則として、ArcGIS クライアント アプリケーション (ArcGIS Pro、ArcGIS Enterprise など) は下位互換性があります。 つまり、最新バージョンの ArcGIS Pro および ArcGIS Enterprise では、それ以前のすべてのバージョンのユーティリティ ネットワークにアクセスし、利用、編集、共有することができます。 次の例は、ユーティリティ ネットワークとの下位互換性を理解するのに役立ちます。
- ArcGIS Pro 3.3 では、ArcGIS Enterprise 11.3 の [ユーティリティ ネットワーク バージョン] 7 にアクセスし、編集および共有することができます。
- ArcGIS Pro 3.3 では、ArcGIS Enterprise 10.9.1 の [ユーティリティ ネットワーク バージョン] 4 にアクセスし、編集および共有することができます。
- ArcGIS Pro 3.1 では、ArcGIS Enterprise 11.3 の [ユーティリティ ネットワーク バージョン] 6 にアクセスし、編集および共有することができます。
エンタープライズ配置では、ユーティリティ ネットワーク バージョンが ArcGIS Pro リリースでサポートされていて、新しい機能が含まれていない限り、それ以前のバージョンの ArcGIS Enterprise を使用して、サービス経由で、最新バージョンのユーティリティ ネットワークにアクセスし、編集することができます。 これは、新しいバージョンのユーティリティ ネットワークを使用して、一部のクライアントのワークフローをサポートしているが、エディターが、旧バージョンの ArcGIS Pro を引き続き使用している場合に便利です。
注意:
以前のリリースのクライアント ソフトウェアでは、新しい機能が含まれたユーティリティ ネットワーク データセットを開いたり、操作したりすることができない場合があります。
- 多倍長整数フィールドや 64 ビット Object ID フィールドなどの新しいフィールド タイプを含むユーティリティ ネットワーク レイヤーを、それらをサポートしないクライアントを使用して開くことはできません。 以下の例をご参照ください。
- ArcGIS Field Maps は現在、ArcGIS Enterprise 11.3 で [ユーティリティ ネットワーク バージョン] 7 をサポートしていません。[ユーティリティ ネットワーク バージョン] 6 を作成するには、ユーティリティ ネットワーク パッケージのツールボックスのバージョン 3.3.1 (以降) を使用してユーティリティ ネットワークをステージングするか、エンタープライズ配置で ArcGIS Pro 3.1 を使用してユーティリティ ネットワーク データセットを作成またはアップグレードできます。
- 特定の Arcade バージョンでリリースされた機能を使用する場合、属性ルールを使用するとユーティリティ ネットワークの下位互換性に影響を及ぼすことがあります。
次の例は、リリースが混在しているサービスを介して、ユーティリティ ネットワークを操作する場合の上位互換性を理解するうえで参考になります。
- ArcGIS Pro 3.1 では、ArcGIS Enterprise 11.3 の [ユーティリティ ネットワーク バージョン] 7 サービスにアクセスし、編集することができます。
- ArcGIS Pro 2.9 では、ArcGIS Enterprise 11.1 の [ユーティリティ ネットワーク バージョン] 6 サービスにアクセスし、編集することができます。
- ArcGIS Pro 2.9 は、[ユーティリティ ネットワーク バージョン] 6 を共有するために使用することはできません。これは、ArcGIS Pro 2.9 クライアントは、データベース コネクションを通じて、[ユーティリティ ネットワーク バージョン] 6 を開くことができないからです。
- ArcGIS Pro 3.3 は、ArcGIS Enterprise 11.1 で [ユーティリティ ネットワーク バージョン] 7 を共有するために使用することはできません。これは、ArcGIS Enterprise 11.1 は、ユーティリティ ネットワーク バージョンをサポートしていないためです。
シングルユーザー配置では、旧バージョンの ArcGIS Pro で、ユーティリティ ネットワークの新しいバージョンを開くことはできません。 たとえば、ArcGIS Pro 3.1 は、ファイル ジオデータベース、モバイル ジオデータベース、またはエンタープライズ データベース コネクションを通じて、[ユーティリティ ネットワーク バージョン] 7 を開くことはできません。